韓国の4人組ボーカルユニットのForte Di Quattro(フォルテ・ディ・クアトロ)の来日公演『Forte Di Quattro 運命のハーモニー 〜プレミアム・コンサート〜』が13日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールでおこなわれた。この日は、雅楽演奏家の東儀秀樹と豪出身のシンガー、サラ・オレインがゲストで出演した。

 リーダーのコ・フンジョンを中心にTJ・ソン、イ・ビョリ、キム・ヒョンスという、結成以前からも十分なキャリアを持った4人のボーカリストで構成されたこのグループは、韓国初のクロスオーバー・シンガー・グループを誕生させる目的で企画された、韓国テレビ局、JTBCのオーディション番組『ファントム・シンガー』の優勝グループ。

 2017年5月にリリースされたデビュー・アルバム『Forte Di Quattro』は、Jazzボーカルなどのジャンルで有名な世界的音楽レーベル、Deccaから発売。同アルバムは韓国インターパーク 2017ベスト・アルバム総合ランキングでEXO、BTS等に続き第4位、クラシック部門で第1位を獲得と、まさにクロスオーバーな活躍を展開。同年におこなわれた初のライブ・ツアーも大好評、ソウル公演はチケット発売後15分で完売、すべての公演もソールド・アウトし追加公演が開催されるなど、破竹の勢いでその人気を伸ばしている。

 さらに同年11月にはニューアルバム『Classica』をリリース、日本でも2018年4月4日に日本盤として『アヴェ・マリア〜CLASSICA』がリリースと、いよいよその勢いがこのステージにて日本にも上陸。彼らのこれからの歩みを予感させる、聴き応えたっぷりのステージが披露された。

第一部〜彼らの持ち味を存分に生かし、深く聴かせるステージ

東儀秀樹とサラ・オレイン(撮影=宇野寛之)

 定刻になり、ブザーの音と共に会場の照明が落とされると、ステージ前面に下ろされた幕が開き、バックバンドの面々がステージに現れた。ドラマーの合図から不穏な音を奏でていたバンドだが、やがてその音は、映画『2001年宇宙の旅』のテーマとして有名なリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」の導入部分へと変わり、新たな衝撃の予感を導く。

 一転して繊細なハープの音色と共に荘厳なハーモニーが流れ始めると、バンドの後に組まれた櫓の上に、いよいよ4人は盛大な拍手と歓声に迎えられ登場する。ステージは、デビュー・アルバムに収録された曲「オデュッセイア」でスタートする。静かに始まった楽曲を、丁寧に、かつ情感も豊かに歌う4人。繊細な表現を丁寧に歌い上げるが、非常に声質がクリアでシャープなイメージもあり、また男声らしい低音が強く感じられるところからだろうか、彼らのグループ名でもある「forte」(イタリア語で“強い”の意味)を雰囲気として醸し出す。続くバラードの「永遠にあなたのもの」、ワルツの「遠い星のように」と、やさしい印象のある楽曲が続くが、高いスキルで歌い上げるそのハーモニーは秀逸ながら、楽譜では表せない、彼らならではの感情表現的な風味をそのサウンドに吹き込む。

 『2018平昌冬季オリンピック大会』でフィギュアスケートの羽生結弦選手が、エキシビションを披露した際に使われたことでも有名な楽曲「ノッテ・ステラータ(星降る夜)」では、ヒョンスが「この曲を聴くと、羽生選手のスケートのように美しく滑りそうになるよ」などと冗談っぽくコメント、フンジョンがそれに対して「じゃあ僕が歌うから」と、その一部をバレエと歌で披露し観衆を笑わせるなど、クラシカルなキャリアを持つという部分で見せるお堅いイメージをことごとく粉砕、親しみを覚える一面を見せる。

 また第一部には日本人アーティストのゲストとして、雅楽演奏家の東儀秀樹が登場。お互いの出会いが衝撃であり、またこのようなステージで“仲間”となれたことを光栄に感じていることなどを語りながら、いつかいずれかの機会でのコラボレーションをと、お互いの思いを明かしあう。そしてステージは東儀の演奏による、ジャコモ・プッチーニ作曲の歌劇『トゥーランドット』のアリア「誰も寝てはならぬ」に続き、ファルセットが魅力的な「天使の糧」、そして叙情的な「アヴェ・マリア」を披露。盛大な拍手を受けながら、4人は一度ステージを降りた。

第二部〜豪華ゲストに、観衆までも入り乱れ楽しさを演出

Forte Di Quattro(撮影=宇野寛之)

 休憩時間を挟みおこわれた第二部は、4人のアカペラで始まる、ポップな雰囲気のある「愛の教科書」で始まった。続いて、この日二人目のゲストとしてボーカリストのサラ・オレインを紹介。かつて4人が日本を訪れた際、サラがパーソナリティーを務めるラジオ番組でForte Di Quattroを紹介したことがきっかけでコンタクトしたことが明かされ、サラもそのときから彼らの音楽に「衝撃を受けていた」と、賞賛の言葉を贈る。

 そして4人はサラとのセッションによる「ウィングス」を披露、さらに第一部で招いた東儀を再びステージに招き入れ、豪華なセッションによる「ルーナ」を披露、レンジの広い音でその世界観を広げ、観衆を魅了した。

 いよいよステージも終盤、オレインの独唱による「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」から、続いて出てきたのは、なぜかサングラスを掛けたソン一人。「TJさんの歌教室」と銘打ち、これから披露する歌のサビ部分を、この日訪れた観衆と共に歌うべくレクチャーを始めた。その親しみやすくユーモアのあるパフォーマンスで思わず笑い声も上がりながら、すっかりソンの動きに引き込まれてしまう観衆。披露されたのは、ジプシー・キングスの演奏でも有名なサンバ曲「ヴォラーレ」。ここまで彼らが見せていた“聴かせる”雰囲気から、観衆も参加しての“お祭り騒ぎ”へ。ついにはTJもフロアに下りて、観衆とのコンタクトを楽しむ。さらにフンジョンも登場し、コールドプレイ「Viva La Vida〜美しき生命」も会場全体で合唱と、まさにクロスオーバーなひと時。

 そしてラストは彼らの持ち味である情感豊かな歌声を十二分に発揮する情熱的な「Destino〜運命」に続いて、クラシカルで静かな「アダージョ」にて、4人はステージを去る。そしてアンコールにて、日本への思いを込めるかのように、美空ひばりの代表曲の一つ「川の流れのように」。4人を代表しフンジョンが、今回のステージに対して「今度来るときには、日本語がもっとうまくなって帰ってきて、皆さんとのコミュニケーションを楽しみたい」と日本の観衆に深い親しみを感じた様子を明かし、マイケル・ジャクソンの代表曲の一つ「ヒール・ザ・ワールド」でステージに幕を下ろした。韓国から訪れたファンも入り混じり、アットホームな雰囲気でおこわれたこの日のステージは、国も越えた深い関係を感じる、そんな余韻を残したライブとなった。

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