ロックバンドのザ・クロマニヨンズが8日、東京・八王子のオリンパスホール八王子で、『ザ・クロマニヨンズ ツアー ラッキー&ヘブン 2017-2018』の東京公演をおこなった。2017年8月にシングル「どん底」をリリース、そして表題曲を収録した11枚目の最新アルバム『ラッキー&ヘブン』を同年10月にリリースしたザ・クロマニヨンズ。その10月から始まった今回の全58公演のツアーも、いよいよ4月14日の富山・クロスランドおやべ メインホールでのファイナルが目前となった。そんな時期を迎えた彼らは意気込み溢れんばかりに、この日会場に訪れた多くのファンとともに、あっという間に駆け抜け、熱く盛り上げた。【取材=桂 伸也】

脈絡など無い、だがそれこそが自然

甲本ヒロト(撮影=柴田恵理)

 満員御礼のホール。様々な年齢層の客が席を埋める中で、ザ・クロマニヨンズの登場を待ちわびる。そして開演の時刻、会場にはブザーの音が響き渡った。そして前説によるしばしの時間を挟み、いよいよ幕開け。ジュディ・ガーランドの「Luck Day」をSEに、4人がステージに現れると、会場からは拍手と共に大きな歓声が響き渡った。淡々とプレーの準備を始めようとする他のメンバーとは対照的に、ボーカルの甲本ヒロトはステージに登場してからずっと、狂ったように体を動かし続ける。観衆の思い以上に“ロックしたい”、そんな思いがあふれているようにも見える。そして「オーライ! ロックンロール!」という甲本の叫びと共にステージは始まった。

 「みんな元気だったか? 元気じゃなくても、元気になって帰れよ!」、曲と曲の狭間で、そんな声をかける甲本。まるでバスケットボールのディフェンスのように足を踏ん張りながら、マイクを持ち一心不乱に歌い続ける彼のその姿は、おなじみともいえる彼のスタンス。ステージ側からの猛烈なアピールがおこなわれるわけでもない、むしろ観衆とのコミュニケーションよりも、自分の歌に集中するだけ。そんな姿にも見えるが、彼のその姿を見ているだけで、観衆は気持ちをグッとステージに引き込まれてしまう。見て分かるようなアピールをしないその姿が、かえって彼自身の放つ特別な何かを、猛烈にアピールする。

真島昌利(撮影=柴田恵理)

 「デカしていこう」でスタートしたステージは、途中シングル「どん底」のカップリング曲「ぼー」を挟みつつ、一気に8曲目の「盆踊り」までアルバム『ラッキー&ヘブン』の曲の順番どおりに披露される。リズムが多様化した現在の音楽シーンにおいて、彼らのサウンドは、純然たる8ビートという印象が強い。小林勝、桐田勝治のシンプルながら堅実なリズム、そしてエッジの利いた真島昌利のギターだからこそ、その印象が余計に強く感じられる。その中でも、祭り囃子のリズムを彼らなりに吸収した「盆踊り」では、フッと程良く緊張感を解き、特別なフックをもたらす。真っ暗になった会場で、余計な照明もない、薄暗さも感じられたステージは、彼らのピュアな音楽の核心の部分を、さらに引き出していたようにも見えた。

 続いて甲本の「このあたりで、他のアルバムの曲もやらせてください! いっぱいあるんだよ」という呼びかけから、7枚目のアルバム『YETI vs CROMAGNON』より「チェリーとラバーソール」「ヘッドバンガー」と続く。何の脈絡も無く、素朴な語り口で声を上げ、そして曲に移る。曲の調子が変わるのなら、もっと自然な流れをと、普通のライブでは考えるのだろうが、何かそういうことを考えている風には微塵も感じられない。それがかえって、ザ・クロマニヨンズらしい姿とも見える。

全力で、しかし名残惜しく

小林勝(撮影=柴田恵理)

 そして、9枚目のアルバム『JUNGLE 9』の「今夜ロックンロールに殺されたい」より、曲は再び『ラッキー&ヘブン』の楽曲へ。甲本のブルースハープがゆったりとした雰囲気をかもし出す「ユウマヅメ」は、火照った会場を少しクールダウンし心地よい空気で満たす。かと思えば「ワンゴー」でリズムは再び疾走する。エキサイティングな展開に、観衆も自然にサビで掛け合いを始めたりと、すっかりザ・クロマニヨンズのペースでステージは進んでいく。

 全体にブルージーな雰囲気を見せた「ジャッカル」が終わると、また甲本は突然語り始めた。ニューアルバムの曲がもう1曲しか残っていないからと、もったいつけるかのようにまた別アルバムの曲をプレーすることを。対して彼は「やっぱりザ・クロマニヨンズの曲をザ・クロマニヨンズがやるのは最高です!」とも語る。聴けばごく当たり前のことのようにも思えるが、それは自身の曲に対する思いの強さを、改めて語っている様でもある。

 「ペテン師ロック」からは、ステージやフロアの誰もが、思いが止まらない様子が見て取れる光景が、そこに現れた。止まることのない、走り続けるリズムに時には飛び跳ね、踊り、そして声を上げて歌う。そんな観衆を、甲本のブルースハープと真島のギターが猛烈に煽りをかける。この皆が思い切り楽しんだひと時も、振り返ればあっという間。「今日限りのザ・クロマニヨンズのバージョン、1回きりのものをやりました!」と全力でこの日を駆け抜けたことを語りながら「名残惜しいな…」と付け加えつつ、ラストナンバーの「散歩」へ。その名残惜しさを表現したかのように、ゆったりしたリズムの上に、ポップだがちょっぴり切なさも感じるメロディが響く。そんな気持ちが観衆にも届いたのか、フロアの観衆は全員後サビをハーモニーでフォローしていく。

桐田勝治(撮影=柴田恵理)

 そんな気持ちとは裏腹に、あっさりと終わったステージ。名残惜しそうな観衆のしばしのアンコールを受け、3曲のプレーに応じたザ・クロマニヨンズ。最後の「タリホー」では、観衆が聖歌を歌うかのように、サビを高らかに歌う。ザ・クロマニヨンズのファンにとって、ライブ会場はまさに聖地。そんな厳かな雰囲気すら感じさせるほどのまばゆい光景がそこにはあった。そして「ありがとう! 楽しかった! またやりたい! またやらせてください! ロッケンロー!」という甲本の叫びと共に、この日のステージは幕を下ろした。

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