デビュー前から世界音楽コンベンションに招聘されるなど注目を集めていた、シンガーソングライターのビッケブランカ。過去のインタビューでは、幼い頃からポップスに触れて「楽曲を分解することが好きだった」と語っていた彼。その飽くなき探求心は自身の作品を作るうえで重要な役割を果たしている。その彼がメジャーデビュー後初のシングル「ウララ」を18日にリリースする。「春」をテーマに昭和歌謡のエッセンスを織り交ぜた表題曲をはじめ、収録曲それぞれに異なる音楽性を封じ込めたものになっている。

 今作では、1曲1曲に対してのアプローチを変えているが、それでも自然体だ。ヒット曲を分析した事もあるという彼だが、今回の取材では「それがいかに不毛かすぐに思い知りました」と語り、「本来音楽は人を勇気付け、マイナスを少しでもプラスに転がすためにあると思う」とも話した。ナチュラルながら多彩、それでいて人々を魅了する彼の音楽センスはどこからくるのだろうか。

 新作を切り口に、ビッケブランカの今の考えに迫った。今回のインタビューから、ビッケブランカの面白い人間性、そして奥深い音楽性がみえてくる。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】

作曲のお供は類語辞典

——「ウララ」を制作するに至った経緯を教えてください。制作されたミュージックビデオはミュージカルの様な楽しい映像に仕上がっています。

ビッケブランカ

 実は、撮影日は朝が早くて…。なので、顔がむくんでいるんです(笑)。現場は代官山の結婚式場でした。ストーリー的には昭和というか、時代が少し戻ったという様な感じです。楽曲でもそういうコンセプトに挑戦しているので、映像もそれにリンクするような形にしています。そのテーマを監督さんとお話して、あとはお任せして。良い物になりました。

 作曲の段階から音楽の流行にあまり流されずにやりたかったんです。例えば、歌番組の(歌詞)テロップがまだ出ていなかった頃は、聴いただけで歌詞を理解してもらわなければいけないじゃないですか。時代の変遷はもちろんありますけど、昔の歌詞の方が強いと僕は思うんです。恥ずかしげもなくまっすぐな言葉をサビの頭で言い放ってみようかな、というのが楽曲制作のスタートでした。

 もう一つの軸として「春」という主題もありました。春の軽快で、出会いも別れもある感じ。季節の曲を昔はよく書いていたんですけど、最近はやっていなかったのでやってみようと。私自身、楽曲の軽快さと調子を合わせる癖があるので、出会いや別れを扱っても自然と暗くなり過ぎない曲に仕上がりました。

——それだけテーマが定まっていると、作曲はスムーズに進みましたか?

 苦しくはないんですけど、練りに練りました。僕は「曲が降りてきた!」という感覚はないんですよ。ピアノの前に座って「よし、考えよう!」と、そこからメロディを作ります。じっくりじっくり考えて、頭の中で出来上がってパソコンに打ち込んでいく。なので、座る時間の方が長いくらい。頭の中で考える分には音色も自由自在なので(笑)。この曲はAメロ、サビ、Bメロの順番で作った気がします。

 歌詞に関しても初めに英語で作って機械に起こして、音源としてデモを作って。それで「これいけるじゃん」となってから「さあ、歌詞考えよう」となりますので、メロディと同時にという事はあんまりないですね。

——「ウララ」というタイトルと、古き良き表現の混じった歌詞が生まれた背景を教えてください。

 歌詞はトライ&エラーを繰り返して、色々ありました。「違うな、違うな、これだな」と。「春」という言葉は重要なところ以外には使いたくなくて、春を言い換える言葉はないかなと思って類語辞典を引いたんです。その近辺で「うらら」という言葉が目に留まっていたんでしょうね。それが、歌詞が出来ていく中で、タイトルに採用されたという事です。

 僕の作詞に類語辞典はマストなんです(笑)。ネットよりも辞典を開く方が早いし、余計な文字が目に入ってくるのでアイディアが広がっていきやすい。英単語とかは携帯でやっちゃいますけど、作詞に関してはいかにイメージを膨らませるかというところがあるので、類語辞典は大事です。心機一転の時には買い替えているくらいです。

——昭和歌謡からのインスピレーションもあったそうですが。

 両親が音楽好きだったんですよ。母は昭和に流行っていた海外の音楽を、父はフォークや日本の音楽を聴かせてくれました。太田裕美さんの「木綿のハンカチーフ」だったり、チューリップやビリーバンバンとか。そういったものを聴きながら「何という良い歌だ。昔ながらのまっすぐで健気で」と思っていて。そのときに感じたそのイメージを自分の楽曲に活かしました。

 昔の音楽に比べると、現代の音楽って物足りなく聴こえてしまうんですよ。歌詞やサウンド、雰囲気に頼りがちというか、何となく意味ありげな感じはあるけれど、ストレートには伝わりづらいみたいな。

 だけど自分はそれをしない様にして、その時に良いお手本になったのが昭和の音楽でした。さも意味ありげ、でも掘ったら何もないではなく、はっきりと意味がわかってしまう歌詞。それでありながら、人間の記憶や感覚に触る言い回し。言葉の順番だけでそれを成し遂げていこうと、しっかり考えられている点が良かった。

——それは歌詞的な良さですね。メロディ的にはいかがですか。

 昭和歌謡にはロングトーンが多い、という印象があります。でもそれは僕には合わないんです。僕はあまりロングトーンが得意ではないし、タタタタタと刻むのが好きなので、そこは取り入れてはいないですね。なので、僕の「ウララ」を形容するのであれば、「昔より言葉数のちょっと多くなった昭和歌謡」みたいな感じです。音の質感もあります。昔のままやったらリバーブ(残響)がすごいので。そこも現代のはっきりした感じでやっています。