自分を奮い立たせるために書いた曲

――さて「N」はNHKの番組でパラアスリートの中西麻耶選手とお会いしてできた曲ということですが、お会いしてみて感じたことは?

NakamuraEmi

 とんでもない凄い人というのが一番です。自分も初めてインタビューをする立場だったので、右足義足、パラリンピック選手、色々大変だった、となると、何を聞いたらいいか、何を言っちゃいけないかなと色々気にしていました。健常者の自分が何かを気にしてその人と接するほど、その人は小さな人ではなくて…。キャパが凄いというか、色んなものを乗り越え過ぎているんでしょうね。カッコ良すぎて、結局自分が凄く応援されて、自分って情けないなと思わされて帰ってきたくらいです。凄くカッコいい女性でした。

――インタビューをするというのは凄く良い経験だったのですね。

 色々覚えました。自分がインタビューを受けるときは、みなさんどういう順序で聞いていたかなとか色々考えても上手くできなかったんですけど。でも、そういうこともどうでもよくしてくれるくらいの答えがいっぱい返ってきまして。

――特に刺さった言葉は?

 いっぱいあるんですけど、自分の価値観が変わったのは、麻耶ちゃんが海外に行ったときに、その国ではバスでは全員座っていて、若い盲目の男の子が座っていたらしいんです。そこにおばあちゃんが乗ってきて、そうしたら他の人が「ちょっとどいてあげなさい。おばあさん来たから」と言ったらしいんです。「わかりました」と言っておばあさんが座る、それが当たり前と。「目が見えないけど、若いし大丈夫でしょ?」という考え方が凄いなと。日本って障がい者を健常者と同じようには扱わないじゃないですか。

 障がいというものに対し、みんなが普通だと思っている、変な偏見ではなく、そこが凄いと思いました。この日本も、当たり前にそこら中に、目が見えない人も車いすの人も普通に行動できる環境をつくらないと駄目だと思いました。

――私が障がいを持つ方にインタビューをさせていただいて、衝撃を受けた言葉が「人間みんな完璧ではない」というものだったんです。「それが見えているか見えていないかというだけ」と言われまして、確かにそうだなと思いました。「自分はこれをハンデだと思っていない」とも仰っていましたから。

 考え方が大きくて偏見がとれますよね。「これはありがたいことだから」と麻耶ちゃんも言っていました。

――それで歌詞にある<盲目の若者とお婆さん 残り1席はどちらに譲る?>というくだりは入れたいと。

 衝撃だったので…。意味は伝わらないかもしれないけど、何か考えてもらうきっかけになればと思って。

――考えるという行為が大事ですからね。そして、続いての「かかってこいよ」はTVアニメ『メガロボクス』のEDテーマです。

 ボクシングで殴られて血だらけでも立ち上がってまた戦いにいく。とにかく自分と戦う感じに惹かれました。相手を倒すんだけど、それよりもまず自分が痛みなんかに負けるかというところがボクシングなんだろうなと思いました。

 色んな言葉が色んな形でネットやSNSで飛び交う中で、自分に迷ったり悩んだりすることもたくさんあるけど、結局は言った相手にどうこうではなくて、とにかく自分がそこからどうのし上がるか、自分が何を信じるかとなったときに、やっぱり信じられるのは自分自身なんだなと思いまして。それが主人公の姿と一致して、自分を奮い立たせるために書いた曲です。

――言葉で受ける痛みもそうですよね。SNSなどの無責任な発言や誹謗中傷など色々ありますが。それを「見ない」というのも個人的にはありかと。

 そうですね。それも大事だと思います。

――それでも痛みを伴うような言葉が入って来ちゃうときもあると思うんです。そういったときはEmiさんはどうされますか?

 まだ私は少ない方だと思うんですけど、そういう言葉が飛び交ってきたときに、自分がそれによって打ちのめされるか、立てるか、試されているのかなと思います。その言葉に負けちゃったら自分が自分でなくなっちゃいそうだから。正直、今はまだ探り中です。きっとミュージシャンよりもタレントさんの方が大変だと思うんです。どうやって頑張っているんだろうと色々調べたりとか(笑)。精神状況をどうやって保っているのだろうかとか。

――気になりますよね。

 今はそういう状況なので、乗り越え切れてないというところもあります。まずはひとつ一つの言葉を一回聞いて、「こう考える人もいる、こう思う人もいる」でもまずは自分を支えてくれている人達を思うと、これだけ今は大事な仲間がいるんだから、その仲間と作っているものをまず信じて、自分を信じてあげて頑張ることしかないかと思って。はっきりした答えは見つかっていないんですけど、戦い中です(笑)。だからこそ「自分頑張れよ」という曲になりました。

――MVではラジオ局で歌っていますが、それは伝えるということにおいてラジオに何か大きな意味が?

 監督の志村知晴さんに「Emiさんの音楽に支えられているのでやりたいです」というメールを頂いて、それがきっかけでした。ラジオで知晴さんが私の音楽を聴いてくださったそうなんです。これだけ私が勇気付けられているから、きっとラジオでふいにEmiさんの音楽を聴いて元気になる人がいるはずだからと仰ってくださって。色んな人に私の声がラジオで届くというテーマで映像を作りたいという案を出してくださったんです。ラジオという言葉は「新聞」という曲にも入っているし、そういうのが凄く嬉しかったので。

――その新聞という言葉も「星なんて言わず」という曲にも入っていたり。他の曲とリンクしていますが、それは意識して?

 意識していなかったです。言いたいことがそうなっちゃうんですね(笑)。被っちゃうから変えた方がいいかなと思うんですけど、無意識に出てきたんだからいいんだなと。そういう風に詰め込んでいます。

――SNSなども、色々考えた方が良い時期にきているのかなと感じています。議論をすることは良いことだと思うし、意見をすることも良いことだと思うんですが、少し言い方に問題がある場合があるなと。

 そうですよね。私達の世代は言葉が一番大事だとわかっているけど、若い方はSNSとかLINEとか、それがメインの生活だと思うので逆にもっと傷付いちゃうんじゃないかなって。若い方だと直接のコミュニケーションが減っているからこそ、まわりを囲む言葉が一番その子を大きく左右してしまうんじゃないかなと何となく感じたりしています。言葉よりも目の前の人とか環境とか、その中にいる自分が一番大事なんじゃないかと。自分に対してもまわりの人にも思ってくれたら嬉しいなと思います。

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