7人組女性アイドルグループのBiSが4日、東京・両国国技館でおこなわれたワンマンライブ『BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR FiNAL WHO KiLLED IDOL??』を開催。新旧織り交ぜたナンバーで全21曲を披露し観客を魅了した。また、メンバーのプー・ルイは同公演をもってグループを卒業。プー・ルイは第一期のBiSが2014年に解散した時点で時が止まっていたと言い、「BiSはわたしにとって一番の汚点であり、一生の誇りです。わたしはBiSとわたしとの戦いに、自分の手で決着をつけてやろうと思います。そして、止まっていたわたしの時計を進めます」と前向きに語り、最後のステージを締めくくった。アンコールではプー・ルイを除く6人の新生BiSでステージを披露。メンバーは「誰にもアイドルを殺せない!!」と叫び、新たな船出を切った。【取材=長澤智典】

2階席の奥まで人が埋まりやがって。

 1月6日、中野heavy sick ZEROでおこなわれた東名阪ツアー『BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR』の初日公演。その舞台上でプー・ルイは、3月4日の両国国技館でのワンマンライブ『BiS 2nd BEGiNNiNG TOUR FiNAL WHO KiLLED IDOL??』を持ってグループを脱退の発表。それは、研究員(BiSファンの呼称)のみならず、BiSを知る人たちに大きな衝撃を与えた。何故なら、プー・ルイこそBiSの象徴なのだから。

プー・ルイ(撮影=sotobayashi kenta)

 この日、両国国技館は2階席まで満員の観客たちにより埋め尽くされた。

 MCでプー・ルイは、「わたしが卒業するからって、2階席より上も埋まりやがって」と皮肉まじりに叫んでいた。解散する前の第一期BiS時代に両国国技館でワンマン公演をおこなったときは、2階席を埋めることが出来なかった。そのときの公演への皮肉も含めながらも、何よりプー・ルイ自身が、これだけ多くの人たちにBiSが愛されている事実を素直に喜んでいたようだった。

 中には、プー・ルイの卒業を聞きつけて久しぶりにライブへ足を運んだ人たちもいただろう。それでも構わない。大切なのは、BiSというアイドルシーンにおける“輝き、汚点な存在”へ興味関心を示す人が5000人もいたという事実。実際にライブに足を運べなかった人たちも加えたら、どれくらいこの日のライブを観たかった人たちがいて、どれくらいBiSの存在に熱い視線を注いでいる人たちがいることやら…。

 我々が勝手にイメージを抱くアイドル像という姿を次々と壊しながら、新しいアイドルとしての生き方を…いや、アイドルシーンの中でも異端な存在として新しい独創的な道を作り続けてきたBiSだけに、その度合いが熱狂/信者的であれ興味関心程度であろうと、彼女たちの動きを気にしたくなるのも事実。その異端な道へ続くアイドルたちも確実に増やしてきた。だからこそ、プー・ルイの卒業はアイドル業界のみならず、つねに先端の音楽シーンの動きに敏感であり、サブカル的なムーブメントを好む人たちにとって、とても大きな衝撃だっただろう。その現実を踏まえたら、両国国技館だって小さすぎる会場だったのかも知れない。

誰がアイドルを殺したのか…

 悪魔が手にする大きな鎌を模倣した7つのオブジェ。舞台後方には、絞首刑のための縄と死刑台を用意。巨大なバックドロップに記された「WHO KILLED IDOL??」の文字。誰がアイドルを殺したのかって!? もちろんそれはファンたちであり、メディアであり、なによりアイドル本人だ。求める声が大きくなるにつれ生まれる苦悩や葛藤。それが、新たな現象を生み出す糧にもなれば、その渦の中へ巻き込まれた当人を殺すことにも繋がる。でもそれは、昔から連綿に続く「脚光を浴びた存在の宿命」というもの。

BiS(撮影=sotobayashi kenta)

 ライブは、BiSの再始動を告げる楽曲として発表した「BiSBiS」からスタート。BiSの始まりを告げた楽曲が「BiS」だったように、新生(第二期)BiSも「BiSBiS」と題した楽曲で。何より、BiSの中心メンバーだったプー・ルイの卒業公演の1曲目を、新たな始まりを告げる歌で幕開けたところが、なんともBiSらしい冴えたやりかた。

 続く「Give me your love 全部」からは、新旧織り混ぜた、BiSの歩みを知る人も知らない人も熱狂できる楽曲のオンパレードだ。場内の熱気も急上昇…いや、この日も、最初から研究員たちの求める熱気は凄かった。「Give me your love 全部」に合わせ気持ちが沸きたてば、「nerve」の登場に大興奮。メンバーたちも、舞台を駆けながら自由奔放に歌い踊れば、会場中の人たちもわちゃわちゃとした熱狂へどっぷり溺れていた。

 挑発的な姿勢を持って場内の熱をさらに熱くさせた「My lxxx」。メンバーたちがステージ上でサークルを作り、くるくると走り回った胸キュンナンバーの「レリビ」。「CHANGE the WORLD」でも、わくわくがどんどん加速してゆく。会場中から突き上がる無数の拳と絶叫。熱狂が止まらない、この興奮を止めたくない。

 さらにBiSは、ラウドでスクリーモな「IDOL」やブラスの音色も印象深いハードな「SOCiALiSM」を通し、両国国技館を、感情をバーストさせた観客たちの熱気という絵筆で隅々まで塗りたくっていった。

これはバトルだ

 表情は、一変。とても軽やかでポップでメロウな「太陽のじゅもん」が飛び出した。とかく、熱狂を求めるライブをBiSに求めがちな傾向も強いが、こういう胸をキュッとうずかせ、一緒にサビ歌を口ずさみたくなる温かい歌もBiSの魅力を形作る大切な要素だ。

BiS(撮影=sotobayashi kenta)

 気持ちを高揚させるポップでフリーキーな「ロミオの心臓」。続く「NOT the END」を合図に、会場は晴れ晴れとした、心がウキウキと沸き立つカーニバルの風景へ色を塗り替えだした。

 明るくパンキッシュに弾けた「Never starting song」を通し、心地好く気持ちが舞い上がれば、ふたたびカオスでノイジックな「SAY YES」を通し、研究員たちは熱く拳を振り上げ、絶叫した想いを舞台上へぶつけていた。まさに、これはバトルだ。

 エモーショナルなメロチューン「I can't say NO!!!!!!!」を通し、高揚した気持ちを互いに優しく押し上げれば、心の闇をえぐるようにぶつけたスケールあふれた「明日が来るなら」に触れ、感情が心地好く堕ちてゆく気分も覚えていた。

 マジカルでパラレルな世界へ連れ出した「Human after all」。会場中がピンクのサイリウムに包まれた「primal.」では、美しい高揚を心に覚えずにいれなかった。胸をキュンキュンうずかせながら、興奮が大きく膨らんでゆく。その気持ちを、さらにロマンチックにうずかせた「gives.」。そして…。

 プー・ルイが、卒業へ向けての想いを語りだした。彼女は「新メンバーが成長していく中、わたしだけが1人2014年(第一期BiSの解散した年)に取り残されていました。みんなが頼もしくなれるまで成長したのだから、わたしもBiSという呪いを断ち切ろうと決めました。BiSはわたしにとって一番の汚点であり、一生の誇りです。わたしはBiSとわたしとの戦いに、自分の手で決着をつけてやろうと思います。そして、止まっていたわたしの時計を進めます」と語っていた。「BiSはわたしにとって一番の汚点であり、一生の誇りです」という言葉がプー・ルイらしいじゃない。

 最期に、BiSの始まりを告げた「BiS」を歌唱。改めて始まりの姿へ立ち返り、プー・ルイという象徴を擁したBiSは、一つの消えない歴史を音楽シーンへ刻みつけた。

 アンコールは、プー・ルイを除いた6人が登場。つまり、ここからが本当の意味での第二期BiSのスタートだ。「わたし達がBiSです」と力強く宣言した言葉が、そのすべてだ。その新生BiSは、最期に胸いっぱいの愛を込め、最新ナンバー『WHOLE LOTTA LOVE』を披露。新たな狼煙を上げるように、激しくも熱狂的な風景を会場中に作り上げ、新しい船出へ乗り出した。「誰にもアイドルを殺せない!!」、メンバーが最期に叫んだその言葉が、胸にグサッと突き刺さった。

 なおBiSは、今年47都道府県ワンマンツアー『I don't know what will happen TOUR』を4月から開催する。