シンガーUruが4日に、東京・昭和女子大学人見記念講堂でワンマンライブ『monochrome~吹き沁む頬に熱いザフサス~』をおこなった。昨年末に1stアルバム『モノクローム』をリリース。同作リリース後の初ライブ。しかも今回は1年半ぶりの東京公演ということもあり、満員のオーディエンスが詰めかけた。ライブではデビュー前にYouTubeで続けてきたカバーを含む全20曲を披露。Uruが「皆さんの力をお借りしてこうやってステージに立つことができています」と語ったように、ステージバックのスクリーンにはあらかじめ送られていたファンの思い出の写真などが映像として流れ、まさにファンとともに作り上げたステージとなった。【取材=桂泉晴名】

心の中のイメージをステージに映して

撮影=西槇太一

 薄い布が天井から吊り下げられ、淡い光が漏れる幻想的なセットの中、会場が暗くなっていき、どこからともなく水音が響いてくる。ピアノとストリングスによる音楽が流れ、ドンと重厚な音が加わっていく。そしてバンドメンバーとUruがステージに姿を現すと、大きな拍手がわき起こった。

 映画『悪と仮面のルール』の主題歌「追憶のふたり」でライブはスタート。愛する人とともに歩けない複雑な心境を歌った曲で、それに合わせて、ステージは照明で赤く染まっていく。

 続くセカンドシングル曲でもある「The last rain」は、別れていく人に対する思いが綴られているナンバー。溜息のような歌声から始まるが、次第に壮大な世界観へと変わっていく。

 Uruは「皆さん、こんばんは」とオーディエンスに対してあいさつ。東京公演が約1年半ぶりで、今回のライブがこれまでの彼女にとって最も大きな会場になるため、ドキドキ、ワクワクしていたという。さらに「~吹き沁む頬に熱いザフサス~」というユニークなライブのサブタイトルは、アルバム14曲の頭文字をつなげて作ったと明かす。最後の「ザフサス」は余ってしまった言葉であり、特に意味はなかったことを説明。

 「タイトルを公表したときに、皆さん『ザフサス』について検索してくださったみたいですけど…。どうもすみませんでした」謝る彼女に会場からも思わず笑い声が起きていた。繊細な歌声に対して、ちょっぴり大胆でほっこりしたMCをするギャップも、彼女の魅力の1つだろう。

 そしてライブのはじまりの音楽もUruが作成し、心臓に近い音も入れたということも話す。「今日は皆さんの心の中のイメージをこのステージに映しながら、ゆっくりと最後まで過ごしていってください」とオーディエンスに呼びかけた。

一色からファンの力で多彩な色へ変化

撮影=西槇太一

 抑えていた恋心を歌った「ホントは、ね」では、素直になれなかった過去を後悔する気持ちを切ないボーカルで表現する。レミオロメンの「3月9日」とスピッツの「ロビンソン」と2つのカバー曲をはさみ、『モノクローム』収録曲の「sunny day hometown」へ。アップテンポなナンバーで、ステージ上も明るい黄色の照明で彩られて、オーディエンスもクラップで盛り上げた。

 再びMCで、Uruは「最近暖かくなってきたから、よく運動している人を見るんですが」と切り出し、「たぶん高校生かな? 運動をしている姿を見るんですが。恋をしているんじゃないかと思った」と言う。そこから小学生のときの恋の話が始まり、「友人の話なんですけれどね」と念を押し、オーディエンスからも思わず笑いが起きる。

 UVERworldの「THE OVER」とback numberの「ハッピーエンド」のカバーを立て続けに披露したあと、Uruは楽曲「鈍色の日」をイメージしたストーリーの朗読を始める。一人の青年の独白。彼女の胸に迫る語りに引きずられていく。そして曲が始まると、<ゆらゆら>という歌詞の文字がステージに浮かびあがる。デビューした後すぐに作って、これまでのライブでも披露されていたこのナンバー。

 頑張ってもうまくいかない。それを乗り越えようとする思い。彼女のボーカルも揺るがない強さがあって、何があっても前に進もう、と背中を押してくれるようだった。

 いつもは曲中におこなっているメンバー紹介だが、今回はUruの一言コメントを添えて紹介。「リハーサルではいつもリーダーシップをとってくれていて、1人で海外に行ったり、馬に乗るのが好きで、すごくアクティブな方です」とギターの飯塚直斗を紹介すると、軽快なギターの音が。

 「そして、デビュー前から一緒に演奏してくださっています。甘いものが意外と好きで、お菓子とかいろいろ持ってきてくださっています。『星の中の君』の作曲者でもあります。キーボードHidenori」。ギターの音にキーボードが乗り、さらに「コミュニケーション能力に長けていて、人見知りの私でも、果敢に話かけてきてくれています。私もすごく尊敬して、信頼しきっています」とコーラスの奈良ひよりへとつなげた。

 「元気の出る曲です」と紹介し披露したのは松任谷由実の名曲「やさしさに包まれたなら」。Uruは曲の間奏でリコーダーを吹きつつ、また歌に戻る。最後はリコーダーでリズムをとるといったかわいらしい場面もあった。

 アルバムの中でライブを意識して作った曲という「fly」。<たまには肩の力抜いて 思い切り泣いたっていいよ>という前向きな歌詞と明るい曲調に会場がいっそう華やぐ。加えて「今、出た映像なんですけれど、皆さんから送っていただいた色をここに使わせていただきました」とこの曲の演出で使われたスクリーンの映像について話す。

 「ステージで歌っていますけれど、皆さんの力をお借りしてこうやってステージに立つことができています」そんな彼女の言葉から、以前インタビュー記事で「一色しかなかった私にたくさんの色をつけてくれたのは、応援してくださる皆さん」と語っていたことが思い出された。

人との絆の大切さが伝わるステージ

撮影=西槇太一

 ライブの後半は彼女の内面とつながりながら、人との絆の大切さを改めて教えてくれるパートとなっていた。ライブで毎回披露してきたという「アリアケノツキ」は、Uruが幼いころに彼女の父親が先立ってしまったときの、母親の日記を歌にした曲。

 「アリアケノツキ」というタイトルがすべてカタカナである理由について、Uruは「サミシイとか、ナンデ、とか、ドコニイルノ、とか、そういう気持ちを表す言葉は、全部カタカナで書かれていたからです」と語る。

 大切な人とずっと一緒にいられるという保証はどこにもない。だからこそ、その存在が、すごく儚く、尊いものだということを伝え、歌う。胸が張り裂けそうな思いを愛しい人へと語りかける詞に、客席では思わず目頭を押さえる人の姿もあった。

 そして、親への感謝の気持ちを綴った「娘より」。ここではファンから送ってもらった写真がステージに映し出される。元気いっぱいの子どもたち、それを見守る大人たち。ライブに参加している人、それぞれの心に温かい光を届けてくれた。

 本編最後はテレビドラマ『コウノドリ』の主題歌である「奇蹟」で締めくくられた。しかし、まだUruのボーカルに包まれていたい、という思いから大きなアンコールの声が止まない。再びステージに登場したUruは宇宙の映像とともにTVアニメ『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第2期エンディングテーマの「フリージア」を歌う。

 ラストは「星の中の君」を披露。Uruが客席にマイクを向けると、オーディエンスは合唱で応え、会場が一体となる。「最後まで聴いてくれて、ありがとうございました」深々とお辞儀をしてステージを後にするUru。深い感動がじわじわと広がっていく、濃くて充実した時間をオーディエンスに体感させてくれるライブだった。