春の暖かい空気に移りかわる3月は新生活に向けたシーズン。日本の音楽シーンの風物詩である「桜ソング」は、この時期に新たなステージへ進む人達の背中を押してくれる。春夏秋冬色とりどりの世界観が味わえる日本では、季節ごとに独自のカルチャーが生まれ、四季折々の美しい一瞬一瞬を噛みしめさせてくれる。

 数ある「桜ソング」の中には、“定番曲”として定着し、毎春さまざまな場所で耳にする曲がある。

 「さくら(独唱)」森山直太朗/「春よ、来い」松任谷由実/「桜坂」福山雅治/「SAKURAドロップス」宇多田ヒカル/「桜」コブクロ/「さくら」ケツメイシ――これらの桜ソングは、少なくとも来月末までに一度はきっと耳にすることがあるだろう。

 どの曲もタイトルに“桜”や“春”というフレーズが入っているのは、ある種必然の統一感なのだが、不思議なもので、タイトルを伏せても、歌詞の内容を加味せずとも、曲調から“春らしさ・桜の雰囲気”が醸し出されている。これは、桜を愛する日本人のDNAが成せる業なのだろうか。

 どの曲も、旅立ちと別れの感情があり、叙情観に溢れ、凛としている。「日本人の耳の琴線に触れる」という表現がピッタリな曲ばかりである。その楽曲のテイストを色で言ったら、白でも黒でも赤でも青でもない、まぎれもなく“桜色”の美しい楽曲たちだ。

 日本のネイティブな音楽といったら、ロックやクラシックではないにしろ、「桜ソング」はそのひとつとして、世界に向けて発信できる音楽なのかもしれない。

 ここで、「桜ソング定番中の定番とは」ということで先に挙げた中から1曲をご紹介したいところだが、あえて、「桜ソングとして完全に定着している」と言ったらそうでもないかもしれないが、「春」「桜」「出会いと別れ」「新たなステージへの展開」「新生活への勇気」という要素を十二分に味わえる「桜ソング」を紹介したい。

■エレファントカシマシ – 桜の花、舞い上がる道を

 30周年を迎え、新たなステージを邁進中のエレファントカシマシの桜ソングは、「これぞ日本の楽曲」といわんばかりの大和魂に溢れている。春は、環境の変化も多く、体調面・精神面も不安定になりがちな季節である。桜ソングは、不安定でどこか心許ない時期に、勇気を奮い立たせ、これまでのことを淡い気持ちで振りかえらせ、真っすぐエールを送ってくれる。そんな春の風物詩は、まぎれもなく、日本の風土が生み出した文化そのものと言えるのではないだろうか。【平吉賢治】

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