高野寛×佐橋佳幸×Dr.kyOn、ホンモノが語る本来のアルバムとは
INTERVIEW

高野寛×佐橋佳幸×Dr.kyOn、ホンモノが語る本来のアルバムとは


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年03月04日

読了時間:約22分

3人ならではのレコーディング、大切にした空気感

――そのなかで新しいチャレンジはありましたか?

佐橋佳幸

高野寛 「時代は変わる」の録音かな。

――ボブ・ディランのカバーですね。この曲はパンニング(定位)が独特ですよね?

高野寛 あれはエンジニアさんのアイデアなんですけど、録音自体は真ん中に置いた2本のマイクと、Dr.kyOnさんのアコーディオンに内蔵されているマイクがあって。

佐橋佳幸 あれはイヤホンとかで使うやつ?

Dr.kyOn そうですね。要するにそこに電気を送れば鳴るし、逆に録ればマイクになるという。クリスタルマイクといって、昔よくあったんですけどね。

――ヘッドホンをアコギに挟んで録るという手法がありましたが、似た感じでしょうか?

Dr.kyOn 理屈としては全く一緒ですね。古いアコーディオンで割とクリスタルマイクを使用した例はあるんです。もう1台はAKGのコンデンサーマイクを仕込んだようなのがあって。アコーディオンを2台並べて、クリスタルマイクとコンデンサーマイクのエアーを2種類混ぜて。

高野寛 それが凄く味があって、古くさい音なので、普通のマイクの音にそれを混ぜると、いつの録音なのかわからないような感じになるんです。

Dr.kyOn クラシックとかの室内楽的な感じにしたくなくて、もうちょっと空気感が出ないかなということで。

佐橋佳幸 そもそもデモテープを作ってくる前から、高野君の弾き語りで成立している訳だから、「こんな感じでいいね」と。「コーラスだけ入れてさ」という風に言ってたんだけど、圭と豪ちゃんを別室に入れこんで、「俺達今から同録するから、コーラスやって」と振って録りました(笑)。

高野寛 あと、CDの裏ジャケにその3人が輪になっている写真が使われているんです。今のレコーディングってだいたいみんな別室に入るから、輪になってのレコーディング写真ってだいたいはヤラセ写真なんですよ(笑)。

佐橋佳幸 そんなの普通あり得ないからね。

高野寛 でも、今回はそれを普通にやってたからそういう写真が撮れたんです。

――貴重なショットですね。

高野寛 音楽に詳しい人が見ると「ヤラセかな?」って思うかもしれないけど、リアルなんです。

佐橋佳幸 高野君はギターも同時に弾いて録っていて。だから、それ自体がほぼないことですよね。

高野寛 歌とバンドを一緒に録るというのは、僕は前々作で一回やったんですけど、今回ほど突き詰めてやったのは初めてです。

佐橋佳幸 昔はそれしか方法がなかったと思いますけど、今は音が被ってしまったら後でやり直せないということで、アーティストもエンジニアも嫌がるんです。でも今回は誰も嫌がらなかったという(笑)。むしろ「やろうよやろうよ!」という感じで。大変だったのは高野君です。一発勝負ですからね。

――空気感が感じられるサウンドですよね。

佐橋佳幸 バラバラで録るとこうはならないよね。

高野寛 ライブと同じ気持ちでみんなやっているから、演奏の緊張感が違うんですよね。

佐橋佳幸 オーバーダビングが少ないのも、多くなるとリアリティが薄れていっちゃうんですよね。「みじかい歌」と「とおくはなれて」もかな? あまりダビングしないでいいというか。「でもコーラスはみんなでやりたくない?」とか、そういう感じですよ。

――必要最低限の楽器と声だけで構成されているという感じでしょうか?

佐橋佳幸 消去法で考えた方が、この曲をみんなで一緒に録ったときのパッションが残るんだなと。持続するというか、失われないんだなと思いました。「凄いの録れちゃったね」って初日に思って。

高野寛 初日の2曲が順調だったから、そこで一気にハードルが上がったというか。

――その2曲とは?

佐橋佳幸 「みじかい歌」と「Affair」です。豪ちゃんが「僕の持ってきたこのループに合わせてやってみたらどうかな?」というのがあったんです。「Rambling Boat」はもうちょっとフォーキーにやるつもりだったんだけど、豪ちゃんが持ってきたループのおかげで一変しました。一気にアンビエント感が。「豪ちゃんはこの曲こういう風に聴こえてたんだ」と、面白い人だなと思いました。

高野寛 歌詞の世界観と合っているんですよね。だから凄く歌を聴いてくれているんだと思いました。

佐橋佳幸 豪ちゃんの譜面台を見ると、いつも歌詞カードしか置いてないから。一回、譜面を逆に置いているときあったしね(笑)。「逆だよ?」「あ! 歌詞しか見てなかった!」って。そういう人なので。

高野寛 海外ってあまり譜面を使わないですしね。

佐橋佳幸 そうだよね。レポート用紙に印を書くくらいで。あと、このメンバーは歌モノが好きなんだよね。

高野寛 みんな歌うしね。

佐橋佳幸 そういう風に曲を覚えてきてくれるから、どういうアプローチをしようかなって思いながら考えてきてくれるので、そこが良かったですね。高野くんのこの歌で、自分は何ができるかなって考えるんです。考えてみたら、このメンバーは全員プロデューサーじゃないですか?

Dr.kyOn そうそう。みんな目線がプロデューサーなんですよね。

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