レコーディングだけでなくライブなど様々なところでスタジオミュージシャン、いわゆるサポートミュージシャンの力が必要だ。彼らによって音楽の音色は変わり、また、歌い手・楽曲の魅力が最大限に引き出される。そのなかでカリスマ的存在の一人として称えられているのが、ギタリストの佐橋佳幸と、キーボーディストのDr.kyOnだ。

 そんな2人はユニット「Darjeeling」としても活躍中だが、昨年には新レーベル「GEAEG RECORDS(ソミラミソレコーズ)」を立ち上げた。同レーベルでは、第1弾として、シンガーソングライターの川村結花をプロデュースし、好評を集めた。その第2弾として、今年10月にソロデビュー30周年を迎える高野寛をプロデュース。Darjeelingの『8芯二葉〜梅鶯Blend』とともに、高野のアルバム『A-UN』を制作し、2月14日に同時にリリースした。

 高野、佐橋、Dr.kyOnはミュージシャンでもあり、プロデューサーでもある。いわば、プレイヤーだけでなく、“監督者”として長年、音楽業界を見てきたレジェンドだ。そんな3人にインタビューを実施。“ホンモノ”が語る音楽、そしてアルバムとは。同作品を通して見解を語ってもらった。インタビューの要旨は以下の通り。

▽要旨
○美容師が髪を切るようなもの、プロデュースの背景
○3人ならではのレコーディング、大切にした空気感
○アルバムタイトルの意味、収録曲全て揃って1つの作品に
○この作品の作り方が“絶滅危惧種”、玉石混交の時代

 本稿は全8500文字強からなる。前編、後編に分けていないが、アルバムの話を通して、音楽業界の「今」がうかがえる。【取材=村上順一/撮影=片山 拓】

美容師が髪を切るようなもの、プロデュースの背景

――高野さんは、トッド・ラングレン(英ミュージシャン)やご自身でもプロデュースをされていますが、今回、Darjeelingのお2人にプロデュースされました。いかがでしたか? 

高野寛

高野寛 実はいつもプロデューサーは探しているんですよ。

佐橋佳幸 そうなの?

高野寛 自分で自分をプロデュースするのは、美容師が自分の髪を切るみたいな話なので、少し無理があるんです。人のことはわかっても、自分のことはできない。なので今回のお話は渡りに船というか。去年出た前作『Everything is good』はセルフプロデュースでやってみたんですけど、これがけっこう時間がかかって。「どうしようかな次」と思っていたときにお誘いがあったので、これはもうシンガーとギタリストに徹してレコーディングができる良い機会だなと思い、歌の練習だけをしていました(笑)。

佐橋佳幸 プロデュースするにあたって、前回の川村結花ちゃんもそうでしたが、彼女はピアノで、高野くんはギター。ご本人の曲を弾き語りしている段階で、その楽曲の表現ができている方ではないといけないな、と思っていて、もう「ああ、いた!」という感じでした。

 最初に曲をいっぱい送ってくれたんですけど、どういうものにするかということを考えていくうちに、「そういえば高野くんはこれだけキャリアがあるから、色んな人に楽曲提供とかしているんじゃないの?」という話になって。高野くんに「そういう曲で自分がやりたいのはないの?」って聞いたら「これだけやってる割には、思ったほど人に曲を書いてないんですよ」と言われて。でも後日「やっぱり意外と書いてました!」と言って曲を送ってくれて(笑)。

高野寛 本当に全然覚えてなかったんです。いざ調べてみたら30年やっているとそこそこありましたね(笑)。

佐橋佳幸 じゃあ、セルフカバーを中心に選曲していこうということで絞り込んでいきました。ある程度絞り込んだところで、僕の作業場に3人で集まって「この曲どうしようか?」と、もうリハみたいな感じだったよね?

高野寛 リハですね。

佐橋佳幸 「これいけるねえ」なんて言って、3人でやったリハを録音しておこうなんて話して、段々と3人のデモを作っていったんだよね。それで「メンバーはどうしようか?」という話になって。去年9月に「京都音博」で、僕とkyOnさんと、高桑圭(Ba)と屋敷豪太(Dr)とでハウスバンドをやったんです。高桑圭と屋敷豪太はこの時が初対面で、ライブのリハをやっているうちに「この2人のコンビネーションいいよね?」ということに気が付いて、kyOnさんなんか“ヤシキヨ”っていうチーム名を付けたりして。それで高野くんに相談したら、じゃあそのメンバーでやろうと。

――また、このメンバーだと作業が早そうですよね。

高野寛 本当に早いですね。

佐橋佳幸 そもそも弾き語りで出来上がっている曲ですから、それを高野君は「どういう風になるのかな?」って。みんなミュージシャンですから早いんですよ。音を出して確認していけばいいだけですから。「こんな感じ」っていう風に楽器でやれるじゃないですか? それは早いですよ。

――多くは語らなくても音だけで成立してしまうわけですね。Dr.kyOnさんは楽器を色々と使われますが、数あるなかから楽器はどのように選ばれているのでしょうか。

Dr.kyOn 2人でずっとやっているので、ピアノでもアコーディオンでも、パッとやったら大概は「いいね」と(笑)。

佐橋佳幸 「ちょっとアコーディオンで弾いてみてよ」って言うと「いいかもね」という感じで。

Dr.kyOn 「そうやろ」みたいな感じでね(笑)。

――意思疎通がすばらしいですね。スタジオには凄い数の楽器がありそうです。

佐橋佳幸 そうそう。とりあえず全部下ろしておいて。

Dr.kyOn 5人分くらい並べてね。

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