研ぎ澄まされた感性と超絶技巧から“デビルズアヤコ”の異名を持つヴァイオリニストの石川綾子が2月1日に、アルバム『FIGURE CLASSIC』をリリースした。自身の原点でもあるクラシック音楽をフィーチャーし、フィギュアスケート選手たちのプログラムで使用する楽曲を選曲した1枚。その選手たちのストイックな姿勢に共感、感動し作り上げたオリジナル曲「『BELIEVE』」も収録。締め切りギリギリまで自問自答しながら出来上がった楽曲と話す制作背景や、クラシックの楽しみ方やコンサートに望む石川のストイックな自身の追い込み方など、プロフェッショナルな一面に迫った。【取材=村上順一
/撮影=片山 拓】

思い入れが強い1枚になった『FIGURE CLASSIC』

――2017年を改めて振り返るとどんな年でしたか。

石川綾子

 初めてのベストアルバムをリリースできたことが大きかったかなと思います。自分の中であのベストアルバムでひとつの節目を迎えられて、2018年に新たなステップに向かっている感覚があります。今までの石川綾子をひとつ終えて、気持ちの切り替えができました。

――確かにベストや周年を迎えると節目と感じることができますね。

 そうなんです。でもクラシックにはデビュー日というものがないので、周年というものが曖昧でして。3歳ぐらいから始まって、いつのまにか夢中になっていて、生活の一部としてずっとあるといった感覚です!

――なるほど。クラシックの方にインタビューするとメジャーデビューではなく、CDデビューという表現が多いのはそういったところからなんですね。コンサートも多くおこなっていますが、いかがでしたか。

 11月におこなった『ジャンルレス THE BEST Concert Tour』ではストリングカルテット、ピアノ、パーカッション、そこに私のヴァイオリンというすごく私の好きな楽器編成で出来ました。この編成で演奏すると、クラシック音楽はもちろんのこと、パーカッションがいるので、他のジャンルまで幅広く演奏出来て、まさに“ジャンルレス”な編成でおこなえて楽しかったです!

――パーカッションが入ると弾く感覚はやっぱり変わりますか?

 全然違う感覚があります。ピアノとデュオのクラシックリサイタル編成で演奏させていただくことが多いのですが、その時は割とリズムに対して自由に弾き、横の流れの方を重視して演奏させていただいています。一方でパーカッションやドラムの場合はインテンポのなかで、如何にして遊べるかという楽しみがあります。

――同じ曲でも全然印象が変わりそうですね。

 そうなんです。先日はピアノとヴァイオリンだけでコンサートをおこなったのですが、同じ曲でも表情が全く変わります。この場合はいかにして(テンポ)ルバートの中に感情表現を出せるかというのを楽しんでいます。会場の雰囲気を見て、フレーズの“間”を変えて、合図だけでピアノが入るといった阿吽の呼吸で演奏しています。ビートではなくて、“今行くよ!”という体の動きと息だけで合わせます。(編注=テンポ・ルバートとは自由なテンポで演奏すること)

――同じ曲でもその違いもコンサートでは楽しめますね。アルバム『FIGURE CLASSIC』がリリースされました。このアルバムはいつ頃から制作に入ったのでしょうか。

 11月の『ジャンルレス THE BEST Concert Tour』の最中に、この作品の制作も同時進行していました。なので、昨年末は濃い時間を過ごさせていただきました!

――今回フィギュアスケートに絞ったのには『平昌オリンピック』があるからだと思うのですが、音楽的な面でも惹かれるところがあったのでしょうか。

 フィギュアスケートにはクラシック音楽が使われていることが多いのですが、その曲たちが本当に素晴らしい曲ばかりなので、是非演奏してみたいなと思いました。前作のベスト盤がひとつの節目になった感覚もあって、今作では初めてクラシック中心のアルバムとなり、まさに私自身が目指してきたアルバムになりました。クラシック曲の中でも私が好きな曲ばかりで、思い入れが強い1枚になりました。

――名曲揃いですよね。その中でも1曲目に収録されている「トゥーランドットより『誰も寝てはならぬ』」の「誰も寝てはならぬ」は石川さんのコンサートでのテーマ「あなたを眠らせないヴァイオリンコンサート」に近しいものがありますよね。こんな偶然もあるんだなと驚きました。

 気づいていただけて嬉しいです!たまたま私のテーマとリンクするタイトルで、本当に奇跡のようです(笑)。それもあって、1曲目に選曲させていただきました。誰か気づいてくれたら嬉しいなと思っていたので。

――きっとファンの方は皆さん気付くと思いますよ。個人的にはピアソラの「リベルタンゴ」が収録されたのが嬉しいです。コンサートで聴かせていただいて、あの躍動感に感動しました。

 ありがとうございます!今までもレパートリーとしてコンサートで弾かせていただいているのですが、初めて音源に収録できたのが私自身もすごく嬉しいです。元々はソロヴァイオリンの曲ではないのですが、多くの方がカバーされていて、コンサートでもすごく盛り上がる1曲です。あと、「YOU RAISE ME UP」もついに音源化することが出来て嬉しいです。