シンガーソングライターのナオト・インティライミが昨年、活動を一時休止して、アフリカや欧州など19カ国を巡る世界の旅に出た。忙しさに追われ、純粋に音楽を楽しむ心を取り戻したいと、原点回帰するために半年かけてまわり、現地の人々や音楽を通して自然と「伝えたい」「歌いたい」という思いになったという。旅では黒人奴隷の歴史にも触れ、彼らの血と涙の上に現代のポピュラーミュージックが存在することを再認識した。2020年の東京五輪・パラ五輪に向けて日本文化が再認識されるなか、世界の旅から戻ってきたナオトは今、日本の音楽をどう感じているのか、そしてブラックミュージックをどう捉えているのか。【取材・撮影=木村陽仁】

 今回の旅に密着したドキュメンタリー映画『ナオト・インティライミ冒険記 旅歌ダイアリー2』は前編が昨年2017年11月23日に、後編が2018年1月5日に公開され現在絶賛公開中だ。これに関連して、新曲の「Sunday」「You are」などが収録されたコンセプトアルバム「旅歌ダイアリー2」も2017年11月22日にリリースされた。

 1月7日、都内でおこなわれた後編の公開を記念した舞台挨拶では、今回の旅をきっかけに「自分の夢を追い始めた」として、世界マーケットを意識した音楽づくりにも着手したことを明かした。その一つが、米ロサンゼルスで作った「You are」で、新たな音楽性が垣間見える楽曲になっている。

 さて、先の舞台挨拶の場では、2018年は「4度目のデビュー」と位置付け、「20年経って振り返った時に、この旅がマイルストーンのようなキーポイントだったと感じられると思う」と語っていたナオト。彼の音楽人生のなかでこの旅は今後の活動を占う重要な意味を持つ。そこで今回は以下の要旨でインタビューを実施。日本と世界の違いや旅後の変化などに迫った。

○自然に湧き出た「伝えたい」「歌いたい」という思い
○黒人の歴史とともに現代のポピュラー音楽はある
○自分の夢を追い始めた、日本、そして世界のマーケット
○日本と世界の違い、ナオトにとって音楽とは

自然に湧き出た「伝えたい」「歌いたい」という思い

――改めて旅に出た理由をお聞かせください。

 2010年のデビューから6年の間に、19枚のシングル、8枚のアルバムを出して、ツアーやテレビにも出させて頂いて、これはものすごく有り難いことですし、幸せなことです。凄く感謝しています。ただ、それに伴って、圧倒的に時間と余裕が無くなっていったというのがありまして。自分から追っていたはずの音楽に、いつの間にか追われていた。そんな音楽をもう一度、自分から追いたいという思いがあり、ちょうど1年前ですね。ライブを止め、テレビ・ラジオを止め、リリースも止め、日本での公の活動を1回止めて、インプットの旅に出ようということで今回の旅となりました。

――最初に降り立ったモザンビークでいきなり音楽ライブのステージに上がって現地のミュージシャンと共演されていました。言葉が通じなくても音楽で心と心が繋がった瞬間を見たような気がして鳥肌が立ちました。人間が求めているのはこういうことなのかもと。音楽の意義を旅でどう感じましたか。

 歌うということが一方的なものではなくて、キャッチする人がいてくれて成り立つものだということを感じましたね。

――ルーマニアでジプシー音楽を体験されたときに現地のミュージシャンから「最大限の真心を込めて送るんだ」という言葉をかけられ、感動されているシーンがありました。ナオトさんは普段からそういうことを意識されていると思ったので意外だったのですが。

 実は映画のワンシーンにもあるのですが、ルーマニアに行く前のカーボベルデという国にいたときに、お客さんがいないのにただただ歌っている、歌いたいから歌い続けるという時間があって、そういう時間は僕にも昔はあったけど、今はないなと思っていて。お客さんがいるとかいないとか、仕事でとか関係なく歌っているという。お客さんがいるライブでは当然歌うけど、リハーサルが終わってお客さんも誰もいないところでずっと歌い続ける。歌いたいから歌い続ける、というあのシンプルなマインドは凄く響いて。そこを経てのルーマニアでのあの言葉だったので感じるところがあったというか。

――旅の目的が純粋に音楽を楽しむ心を取り戻すということでした。旅のなかで自分の考えが変わったターニングポイントはどこですか?

 それは後編のマダガスカル島・モララノ村です。子供たちの前で歌を歌おうとしたという気持ちになったというところがターニングポイントです。インプットの旅で来ているから、別に自分から歌を歌わしてくれとか、曲を作らなきゃいけないというのは一切ないんです。でもそのなかで、そう思えたのは僕にとって大きなことでした。「俺、歌いたいな、この子たちのために」ということを思えたことが。

――ナオトさんの歌に応えるように現地の子供たちも歌い出していましたね。

 「Catch the moment」という曲ですが、この曲はトラベラーズソングとして作ったので、サビを意味がある言葉ではなくて<Shalalalala-♪>という歌詞にしています。世界万国共通と言っても良い<Shalala>を言葉ではなく“音”で表現しようと狙って作った曲です。これが日本語だとね、現地の子供たちは日本語が分からないし、覚えづらいですからね。でも、ああいうときに思い出して歌ってくれるのは冥利に尽きます。

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