イベントでの“進行役”の存在、技術は、イベントそのものに大きく影響を与える。バンドの場合はボーカルなり、フロントマンであったり、クラブイベントではMCやDJがその役割を担う。煽りやコール&レスポンスがあるのとないのでは、イベントの盛り上がりも違ってくる。=写真・紅白リハーサル時の模様=

 昨年末の第68回NHK紅白歌合戦では「総合司会」として抜擢された内村光良が全体的な“進行役”を務め、視聴者やネットユーザーからは、その見事な司会進行を評価する声が多数挙がっていた。

 ライブなどでは、その空間独自の臨場感をつくり出すことで、ある種の異世界をオーディエンスと共に楽しむことができる。その臨場感の仕掛人こそが“進行役”である訳だが、これがグループやアーティストによって多種多様。音楽の好みが別れるように、イベントの“ノリ”が合うか合わないか、という点に大きく影響される。

 “進行役”は、喩えるなら、レストランの給仕やソムリエに似ているところがある。食事をする前に、ワインを飲む前に、そのメニューの魅力やおいしい食べ方、産地やら、様々な背景を言葉で説明し、イマジネーションをそそる。何の前知識もなしに食べるよりも、想像力と知識というスパイスを引き出して、受け手が「これから楽しむ」という準備活動を、代わりに担ってくれるという役割があるように思える。

 バンドのライブでは、楽曲のエピソードを説明したり、コーラスのメロディをレクチャーしたり、曲中で振りを煽ったりと、様々ある。DJは言葉を発しなくとも、オーディエンスの空気を読んでその場その場の流れに応じた楽曲を繋いでいく。

 これらは、音楽に限らず、あらゆる人間関係のシーンでも同じだということを感じる。何かをプレゼンするような場面だったら、わかりやすく、徐々に知ってもらい、自然とこちらのペースに相手を引き込むことが有効であるし、恋愛でも、いかに自分の魅力を知ってもらい相手をエスコートするか、いかにそれに乗って楽しむか、ということも言える気がする。

 ライブのフロントマンでも紅白の司会でもクラブDJでも、その“進行役”として最も需要なのは、どのようにしてこれからおこなうことを相手に楽しんでもらうか、一緒に共有するか、一体感を生み出せるか。それは、音楽の知識や経験、技術に加えて、大勢の人間を引き込むカリスマのような立ち位置と、場面の空気を支配する能力が求められる。

 昨年末の紅白もそうだが、良いライブやイベントで「面白かった」「楽しかった」と感じるときは、必ずそういった能力を持った“進行役”の存在の大きさがあることに気付かされる。内村光良が紅白の番組中で言っていた「“総合司会”とは、どういったものなのか?」ということは、“総合的な人間力”のことではないだろうかと感じた。【平吉賢治】

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