テレビ朝日系オーディション番組『ラストアイドル』から生まれた秋元康氏プロデュースのアイドル「ラストアイドル」が「バンドワゴン」でデビューした。暫定メンバーの座をかけて、挑戦者と熾烈なバトルを繰り広げてきた暫定メンバーが晴れて正規メンバーとして船出を切った。毎週、挑戦者の指名を受けてパフォーマンスバトルをおこない、審査員のジャッジにより勝利を得たものが暫定に入れる過酷な半年間を乗り越えてきたメンバーは今、何を思うのか。出身も経歴も年齢も、そして動機もそれぞれ異なり、昨日まで女優や一般人だった子がアイドルとして表舞台に立っている。出演前後で変わったことはなにか。いま一つのグループとして立つメンバーに、現在の心境を聞くとともに、秋元氏作詞の「バンドワゴン」を自身の思いと重ねてもらった。【取材=木村陽仁/撮影=片山 拓】

阿部菜々実、15歳若きセンター

阿部菜々実

阿部菜々実

 ミュージックビデオやライブなどで見せるパフォーマンスは堂々としている。168センチの身長も手伝って一つひとつの動きにはダイナミックさがあり、そして繊細だ。阿部菜々実(あべ・ななみ)。10月14日放送回で間島和奏を破りセンターの座を獲得した。3歳から芸能活動を始め、トップアイドルになる機会を待ちながら東北で力を蓄えてきた15歳。夢だったアイドル、しかもセンターという座でデビューを迎えることをどう思っているのか。

 「応募した時からラストアイドルになるという夢は叶ってはいるんですけど、全然、その実感がなくて。あんまり、(握手会などや取材など)こういう活動をさせていただいても、自分が、アイドル、そしてセンターという実感がまだないんです。けど、今こうやって活動が出来ているのが本当にうれしいです。目標はたくさんあるんですけど、音楽番組にもたくさん出たいし、個人としては(ファッション)モデルとかにもなりたいし、いろんなことに挑戦したいと思っているので、アイドルだけではなく、いろんなことに挑戦して、ラストアイドルとしては最強のアイドルになりたいです」

 「挑戦」という言葉を何度も並べた。15歳の若きセンターは今希望に満ちていることだろう。ちなみに彼女の出身地は山形県。同県の代表的な食べ物に「冷やしラーメン」などがあるが、消費量が高いものとして「ビーフジャーキー」も有名だ。彼女に好きな食べ物を聞いたところ「アイスとフルーツと…」「ビーフジャーキー」と笑顔で答えた。その表情にはまだあどけなさが残っていた。

吉崎綾、グループの柱

吉崎綾

吉崎綾

 放送開始当初から座を守ってきた21歳の吉崎綾(よしざき・あや)。アイドルや女優の経験を持ち、過去に出演したローカルテレビCMが話題になり、“福岡の奇跡”とも呼ばれた。MusicVoiceでも過去に何度か取材をおこなっているが、一見、天真爛漫のように見えるが「負けず嫌い」という性格もある。今、彼女は何を思うのか。そして、番組を出たことで変わったことは。

 「デビューするということへの自覚がないです。番組を出て変わったこと? それは『覚悟』です。強さ…というか、ちょっとしたことじゃあへこたれない、というか。いつ何が起きても大丈夫。アイドルって、いきなり報告されることが多い。そうしたことがあるとびっくりして『え! なになに!』と戸惑うと思うんですけど、今は全くないですね。負けず嫌いではありますけど、でもメンタルはそんなに強い方ではないんですよ。それでも少しは強くなったかなと思います。将来の夢はマルチに活動すること。エンターテイナーになりたいです」

 彼女は、ラストアイドルのなかでは最年長で、経験も豊富であることからメンバーからは“姉”として頼りにされている。この日の取材も、メンバーの輪の中心に立って、盛り上げていた。若いメンバーが言葉に詰まるとフォローする。そんな姿に13歳の大石夏摘からは「頼りになる存在です」と慕われている。

大石夏摘、最年少13歳の思い

大石夏摘

大石夏摘

 メンバーの最年少は大石夏摘(おおいし・なつみ)、13歳だ。10月28日放送回で、暫定メンバー最年少・当時14歳の小澤愛実を破り、立ち位置3番の椅子を手にした。阿部と同じく、パフォーマンス中は年齢を感じさせない堂々たるものがあるが、トークとなると年相応の表情をみせる。今見る景色は新しいことだらけで戸惑いもあろう。現在の心境についてこう語った。

 「(デビューする)実感はないです。入るのが遅かったからまだまだあるのかなと思っていたけど、数回しかなくて。そのあと、2回指名されましたけど、逆に指名されたのがうれしかったところはあります。ちゃんと見てくれたんだなって。やっぱり実感がないから逆に怖い。ミュージックビデオを撮り終わっても全然実感がなくて…。みんなは実感してきたみたいと言っていたけど…。今はメンタルが強くなりたいし、ダンスや歌もまだまだだから頑張っていきたいです」

 他のメンバーとは異なり、最後の方に加入したこともあって「実感がない」ということを何度も口にしていた。不安は人を大きくさせる。現状、自身の課題もしっかり見えている。若いだけに伸びしろは豊富にある。今後の活躍が期待される。

安田愛里、辞めようと思ったことも

安田愛里

安田愛里

 シュッとした顔立ちで自身も「ヒョウ」と例える安田愛里(やすだ・あいり)は、初期メンバーとして立ち位置4番を守り抜いた18歳。ダンスや民謡、三味線の趣味を持つ彼女にとってアイドルは、小学生のころ抱き続けてきた永遠のあこがれ。そんな彼女も吉崎と同じく、女優として活動、テレビ番組の出演経験もある。番組出演前後で変わったことは。そして、今夢だったアイドルになりどう感じているのか。

 「やっと夢だったアイドルになれたので、夢のような時間といいますか。この間、MVとジャケット撮影をしたんですけど、ずっと夢見てきた、『やりたい、やりたい』と妄想してきた世界に自分がいるということ自体が不思議。この時間、レラストアイドルとして衣装を着られるこの時間、一分一秒を大切にして、デビュー曲『バンドワゴン』を皆さんにしっかり届けられるように頑張りたいなと思っています」

 夢だったアイドルだが、番組出演中はあきらめかけたこともあったという。

 「最初はアイドルのためのオーディションという軽い感じでみていて、こんなに過酷とは思っていなくて。想像もできていなくて実感もなくて。番組の中盤のころはすごく苦しかったです。芸能界をやめようかという瀬戸際にいたので、毎日が苦しかったんですけど、頑張るしかないし、どんなに考えても時間って進むから、ポジティブに考えようと思って、番組の収録中はそうして生きてきました(笑)」

長月翠、唯一の敗者復活

長月翠

長月翠

 唯一、敗者復活を遂げたのは長月翠(ながつき・みどり)、17歳。10月21日放送回で、沖縄出身の歌ウマ15歳・蒲原令奈に指名を受けて敗北するも、「シンガーでやっていきたい」との意向を受けて蒲原が辞退。敗者復活がおこなわれ、清原梨央との戦いに勝ち、立ち位置5番に戻ってきた。

 「負けたのに戻りました、という気持ちです。(戻れること自体が)ありえないと思っていたので。敗者復活をしたいと落ちた子たちのなかで言っていて、自分だけ(復活)というのは申し訳ない気持ちがあるんですけど、蒲原さんがもう1回私にチャンスをくれたんだなと思って、感謝していて」

 敗北当時は、審査方法を巡って炎上騒ぎが起きたが、彼女自身は前向きだ。包み隠さず、笑顔で率直に当時を振り返った。

 「負けた時も大炎上だし…でも戻ってきたときは思っていたほど(騒がられなくて)ちょっと寂しかったんですけど、今後もちょっとずつSNSとかで話題になれたらいいなって。でも『ラストアイドル』でツイッターのトレンドで1位になれて、それがすごくうれしかったです」

鈴木遥夏、ダンスの表現力

鈴木遥夏

鈴木遥夏

 阿部と同い年の鈴木遥夏(すずき・はるか)は千葉県出身。9月30日放送回で暫定メンバーの山田まひろを破り、今の位置を手に入れた。ダンスが得意で「歌って踊れる」ことを自己PRに挙げている彼女。この時もダンス対決を制し、12月2日放送回では初めて指名を受けて、中村守里と対決。歌だけでなく伸びやかな振付が評価されて、この座を守った。この時のバトルをこう振り返った。

 「すごく緊張していたし、恥ずかしくて。あの時は、指名を受けるんではないかと感じていたんです。同じ14歳だし、アイドルを経験していない方だったので、指名される準備はできていたので、笑顔で頑張ろうと思いました」

 そんな彼女もアイドルを夢見てみていた。その夢が叶って今どう思うのか。

 「小さいころから目指していた夢なので、私がテレビに出たり、みんなの前でパフォーマンスしたりしていても、私がアイドルという実感がなくて、とりあえず今は、まわりの子たちはアイドルをやっていた方も多いので、それについていくのが必死です」

古賀哉子、セブンティーンファイナリスト

古賀哉子

古賀哉子

 7番手は19歳の古賀哉子(こが・やこ)。『ミス セブンティーン2012』のファイナリスト。当時、ミス セブンティーンには4人が選ばれたがそのなかには広瀬すずもいた。8月26日放送回で相澤瑠香を破り、番組初のメンバー入れ替えを演じた。アイドルが夢だったと語るメンバーが多い中で、当初は「そこまで強くなかった」と語る彼女。長らくその座を守り、そしてイベントなどに参加していくにつれて、気持ちに変化が現れてきた。

 「もともとアイドルに対してすごくなりたいという強い気持ちはありませんでした。だけど、だんだんとアイドルの魅力がわかってきたから、なりたいという気持ちが強くなっていって、デビュー前から握手会やイベントに出させてもらっていたので、自覚が出てきています。まだアイドルらしいところとかは、みんなと比べたらまだまだ。歌も踊りも勉強中なので、頑張って成長していく姿を見せられたらいいなと思います」

 本人もチャームポイントとして挙げているキリッとした目。しかし、力強い目の奥にはどこか不安な気持ちも見え隠れした。「歌も踊りも勉強中」。彼女が、揺るがない自信は得る日は、努力、ステージの経験数に比例して増していくことだろう。インタビューを終えて雑談しているときはホッとしたのか笑顔だった。彼女もまた等身大の19歳だった。