ヘヴィロックバンドのHEAD PHONES PRESIDENTが先月23日、東京・渋谷のClub Asiaでワンマンライブ『HEAD PHONES PRESIDENT ワンマン公演“REALIZE IT”』をおこなった。【取材=桂 伸也】

 現在、国内のヘヴィロックシーンでもトップを走り続けているHEAD PHONES PRESIDENT。17年という長きにわたりこのシーンを走り続け、世界有数のロックフェスでもある『Loud Park』や『OZZFEST』にも出演、さらには海外でのライブ活動も積極的に取り組み、日本代表のバンドとしてその名をとどろかせてきた彼らだが、今回のライブをもって、一度ライブ活動を休止するという宣言をしている。

 その意図としては「さらに高みを目指し、レベルアップを図るため」であるという。その目的で目指す先は計り知れないが、確かにどんな音楽でも共通した課題として存在するように、「ロック」「ヘヴィロック」「ヘヴィメタル」などといったジャンルの枠組みの中での活動続行は、いくら頂点を極めても成長には限度がある。その意で、さらなる成長を目指し転機を考えることは重要なことでもある。

 HEAD PHONES PRESIDENTは、同月3日にやはりワンマンライブをおこなっている。それは現在の体制になる前、現在のメンバーにギターのMARを迎えた5人の体制でバンドを運営していた時代の楽曲による集大成を飾ったステージ。26日におこなわれたステージは、現在の4人の体制となってからの集大成を見せるためのステージであり、4人体制となってから制作された『Stand In The World』『Disillusion』『Alternation』『Realize』という4枚のアルバムからの選曲によるセットに手ステージがおこなわれ、バンドとして歩いたここまでの道のりの集大成を刻んだ。

活動17年の思いをぶつけたステージ

この日もステージ開始前に会場では、DJ狂犬によるヘヴィサウンドのDJプレイが披露されていた。フロアに訪れた人々は皆、彼に声を掛け、握手を求め、再会の喜びを表情に表す。彼の存在は、ある意味“怖い”“とっつきにくい”と一般体には感じられるヘヴィロック、ヘヴィメタルなどのサウンドのイメージに対し、親しみを感じさせてくれるような雰囲気が感じられる。彼を必ずワンマンライブの際には呼び、DJプレイで人々の緊張を解くその姿勢からは、ある意味DJ狂犬がHEAD PHONES PRESIDENTの中で“5人目の存在”といっても過言ではない。

 定刻を5分と少し過ぎたころ、不意にBGM音が消えるとともに、会場も闇に包まれる。そしてSEが鳴り響くとともにBatch、Narumi、Hiroの3人が、かすかな光の中でステージ上に登場したのが確認できた。そして打ち鳴らされる第一声とともにAnzaがステージに登場、「Too Short」にて、皆が待ちわびた時はやってきた。ステージ前半のセットは、4人体制での第1作『Stand in the World』、第2作『Disillusion』のナンバーでプレイされた。疾走するビートの連打が容赦ない「A New World」、キャッチーでもあり、新たな時の始まりを感じさせる「The One To Break」と、キラーなナンバーですっかり観衆の気持ちを鷲掴みにしてしまう。

 普段はライブ本編ではほとんどMCなど入れず、淡々とその日描くべきライブのストーリーを描いていく彼らだが、この日はAnzaが思い余った言葉を、合間に観衆の胸に訴えかける。17年、一度もバンドとして活動を止めなかったこと、さらにもっと上を目指すために、今ブレイクを入れる期間を設けること、そして、この日はその思いをぶつけに、この会場に現れたこと。

 「だから皆さんも思いをぶつけてくれますか? たっぷり行きますんでついてきて。でないと、私たちは帰っちゃうから!」。その言葉に、観衆も思いたっぷりの感性で返す。続いてAnzaの抜群のパフォーマンス力が映える「My Name Is」、叙情的なバラードナンバー「Rainy Stars」と、一癖も二癖もあるナンバーが続く。出だしの3曲の掴みも、日本のヘヴィロックの代表格といわれるHEAD PHONES PRESIDENTの本領が発揮される一面でもあるが、重々しくも様々な色彩感覚で、情景から人間の深層心理までを複雑に描き出していく。

復活を待ちわびたくなる集大成

 前半最後の「Breeze」をプレイし終わると、Anzaは一時ステージからはける。それと同時にBatchの刻み続ける音に、Narumiがベース音を合わせる。それは音程のあるようなフレーズでもない、奇妙な音にも聴こえたが、ドラムの音と相まって何か一つのグルーヴを作り出す。やがてその音に対してHiroのギターが加わり、3人の音に調性を加えていく。その音は、やがてそのまま3人の声になったような錯覚さえ与えた。

 そして再びステージに登場したAnza。前半は白のヒラヒラとしたスカート姿で登場していたAnzaだが、後半は黒のミニスカート。

 白のスカートで、長い髪を振り出して踊り狂うようにパフォーマンスをするのもAnzaのステージの、見どころの一つではあるが、前半、後半と趣を変えたこのステージで、このように衣装を変えたことには、Anza自身のパフォーマンスに対する思惑もあったに違いない。

 そんな思いをさらに感じさせるように、後半は4人体制になって3枚目のアルバム『Alternation』の1曲目「ALIVE」から始まり、4枚目のアルバム『Realize』の1曲目「Failed」で終わった。時に「Too Scared」のように強く、そして「Everything Has Changed」のように静かに。しかし、その展開はあくまでバランスよりも、何かの物語の展開を表すような流れにも見える。前半の楽曲構成から、さらにHEAD PHONES PRESIDENTとして確立した広い世界観を、いかんなく発揮する彼ら。特にNarumiの鳴らす、一見不協和に見えながらも印象的な響きを聴かせるフレーズに、Anzaの牧歌的に歌う歌メロが絡むイントロは、彼らならではの物語を語り始めるスタイルとして強い印象を残し、彼らがこのステージに“ぶつけた”思いを余すところなく表現していた。

 そして活動休止前最後の曲としてアンコールでプレイしたのは「Stand In The World」。彼らが4人の体制となり最初に発したのがこの音だった。胸の高鳴りを表すようなイントロから、一気に世界への広がりを見せるような奥行き感。まさしくこの音は、新たな彼らを示す象徴のような楽曲だった。その重圧なハーモニーがこの日訪れた観衆を包み、彼らが成し遂げたこれまでの軌跡をしかと胸に焼き付けていく。

 こうしてステージは、終わりを告げた。特別大サービスで何曲もアンコールをやるわけでもない、ある視点からするとあっけなくも感じたステージであった。しかし、同時に何か深い充実感を得たステージでもある。これまで彼らが築いてきたもの、それは確かに大きな意味を持ったものであることを、この日プレイした24曲は確かに示していた。そしてAnzaが告げたように、彼らがさらなる高みに向かうためのステップとなったことも間違いない。彼らが再び息を吹き返すのは1年、またはそれより先に伸びるかもしれないという。しかし今現在で、ここまでの礎がある以上、復活の時に彼らはきっと何かをしでかすに違いない。今はただ、その日が早く来ることを待ち望みたい、その一心だけだ。

セットリスト

『HEAD PHONES PRESIDENT ワンマン公演“REALIZE IT”』
2017年11月23日 @東京・渋谷 Clubasia

01. Too Short
02. A New World
03. The One To Break
04. My Name Is
05. Rainy Stars
06. Miss You
07. I Mean It
08. Just a Human
09. Rise And Shine
10. Enter The Sky
11. Where are You
12. Breeze
13. ALIVE
14. Waking Life
15. Too Scared
16. Far Away
17. Not a Fantasy
18. Everything Has Changed
19. Twilight is Gone
20. Live With
21. It's a Still Not The End Of The World
22. Around The World
23. Failed

encore
24. Stand In The World