『第26回日本映画プロフェッショナル大賞』(2016年)で「新進女優賞」を受賞するなど役者としての評価を上げている、グラビアアイドルで女優の間宮夕貴(26)が、12月9日公開の映画『ビジランテ』に出演する。普段は大の音楽好きでもあるという間宮。中学校の時は吹奏楽部に所属し、今も趣味で楽器を奏でることもあるとか。今回は合わせて役柄の印象や撮影時の所感などをたずねてみた。【取材=桂 伸也/撮影=大西 基】

入江悠監督オリジナル脚本による最新作

 『ビジランテ』は、『SR サイタマノラッパー』『22年目の告白―私が殺人犯です―』などを手掛けた鬼才・入江悠監督のオリジナル脚本による最新作で、町の自警団団長・市議会議員である印刷会社社長の次男、デリヘル業を営む三男のもとに、行方をくらましていた長男が父親の死をきっかけに現れ、運命に翻弄されていく姿を描く。

 トリプル主演として、長男・一郎を大森南朋、市議会議員で自警団の団長を務める二郎を鈴木浩介、そして風俗店の雇われ店長・三郎を桐谷健太が担当。さらに二郎の妻・美希を篠田麻里子が演じるほか、嶋田久作、吉村界人ら豪華な俳優陣が出そろう。ヒロインを務める間宮は、長男・一郎からDVを被りながらも、付きまとい続ける女性・サオリ役を演じる。

 目をそむけたくなるほどのバイオレンスな暴力シーン、さらにかなりの過酷さが垣間見えるハードなセクシーシーンと、作品からは出演者全員が全身全霊で演じた様子がうかがえる。さらにそうして物語に真摯に向き合った成果が、映画で見られる人間の本質に現れているようでもある。

 間宮は当初グラビアアイドルとしてデビューしながら、徐々に本格的な俳優としての転身を試み、時にはヌードも辞さぬ体当たりの演技で、2016年には『第26回日本映画プロフェッショナル大賞』で「新進女優賞」を受賞するなど高い評価を受け、近年その活躍フィールドを広げつつある。今回は以下の要旨で話を聞いた。

〇楽器に、サントラに…音楽がないと落ち着かない
〇自分にピッタリ、「サオリ」はまさしく「ファゴットのような人間」
〇仕事が一番。入江監督との戦いで得た成長

 インタビューは以下から。

楽器に、サントラに…音楽がないと落ち着かない

――間宮さんと音楽という接点からお話をうかがっていきたいと思います。普段は音楽などはよく聴かれますか?

間宮夕貴(撮影=大西 基)

間宮夕貴(撮影=大西 基)

 そうですね…結構どんなジャンルでも聴きます。最近ハマっているのはTHE ORAL CIGARETTESとか。あとMUCCが好き。すごく声質が似ていて「カッコいいな!」と思っているんです。ずっと今聴いていますね。

――ロックはわりと好きですか?

 そうですね、結構。それとビジュアル系、中でも声が低めなものが好き。でも実は一番好きなジャンルがあって、それは映画なんかのサントラ系なんです。

――なかなか渋いご趣味ですね。

 大好き。もともと中学校の時、吹奏楽部を3年間やっていたこともあって。

――そうでしたか。では楽器もプレーされていたと?

 やっていました。その影響でサウンドトラックって、気になっちゃうんです。映画とか見ていると「あっ、この楽器を使っているんだ!」とか。

――最近のお気に入りのは?

 『コードネーム U.N.C.L.E.』という映画があるんですけど、その映画のサントラが好きで。ヘンリー・カヴィル(俳優=映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』でスーパーマンを担当)が出演している映画のものです。

――それは本当にサントラという感じのものですか?オーケストラサウンドなんかの…。

 これはそうではないですね。70年代、60年代っぽい感じの曲で、まあガイ・リッチー監督(『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『スナッチ』などを手掛けた映画監督)作品にある「コジャレているな~音楽まで」みたいな。おしゃれな映画なんです。

――わりと軽快な方が好みでしょうか?

 いや、それだけではないです。オーケストラだと『ハリー・ポッター』シリーズとか、一番好きなのは『ロード・オブ・ザ・リング』。ああいったものを聴いて、スコア(譜面)とかあれば買って、一人でずーっとニヤニヤしながら見たりとか(笑)していますね。

――楽しみ方も渋いですね(笑)。ご自身で歌うということではどうでしょうか? 例えば今作で共演されている桐谷健太さんや、篠田麻里子さんも歌手として歌われた経験がありますが。

 歌うのは苦手です…聴くのは好きなんですけど、自分が歌うのは…カラオケも年一回あるかないかというくらいで、あまり行かない感じですね(笑)。

――でも楽器を演奏されていたということもあり、またやってみたいという気持ちはあるのではないでしょうか? 何をプレーされていたんでしょうか?

 そうですね、マイ楽器を持っているので、なにか機会があれば吹きたいとは思うんですけど。楽器はファゴット(木管楽器)をプレーしていました。なかなか見かけないもので…。

――ファゴット? それはまたレアな楽器ですね。逆に本格的な楽器という感じがあります。それをマイ楽器として所有されているというのは、スゴイですね。

 クラリネットやトランペットだったら使いやすいんですけど、だいぶコアな(笑)。オーケストラや吹奏楽でも、一本あるかないかというくらいの楽器ですし。中学校の時に、買っちゃいました(笑)。

――そうでしたか。ではかなり音楽と深い関係で毎日を生活されていますね。間宮さんにとって、音楽とはどのようなものだという認識を持たれていますでしょうか?

 実は私、台本を読む時も何か音楽をかけて聴きながら台本を覚えた方が早く覚えたりできるんです。だから音楽って、癒やしというか、心を落ち着かせるためのものというか。感情を変えるためのものかな。

 モチベーションを上げる時には、マキシマム ザ ホルモンやTHE ORAL CIGARETTESなどを聴いて、モチベーションをガーッと上げるとか、落ち着きたい時にはクラッシックを聴いてみたり。自分の気持ちを切り替えるためのものかな、と。

――では、今何か音楽が鳴っていないとすごく落ち着かない?

 落ち着かないですね。家に帰ると、まず絶対にテレビをつけて、MVを流しながら何か作業をする、という感じだし。本当に無くてはならないもので、お風呂に入る時も曲を流して、みたいな。本当にないと落ち着かないし、聴くのは大好きなんです。

――そういう意味では、なかなか今回の『ビジランテ』は、音楽という部分ではそれほど派手なところはないですが…。

 そうですね。でも、ちょっと途中でロックな曲も時々入っていて、気になっていますよね。

――ちゃんとチェックしてますね(笑)。

 そう。車の中で女の子が「CDをかけて」というシーンがあったけど、あの曲はカッコいいな、という。本当にサントラが好きなので、気になっちゃうんです。この前好き過ぎてドキュメンタリー映画、『すばらしき映画音楽たち』を見に行っちゃいましたし(笑)。ジョン・ウィリアムスとか、ハンス・ジマーとか、そういう有名な作曲家の人たちのインタビューがある映画がありまして。メチャクチャ面白かったです。今回の『ビジランテ』のサントラがあれば、私は欲しいです(笑)。

自分にピッタリ、「サオリ」はまさしく「ファゴットのような人間」

――さて劇中で間宮さんが演じているサオリという役ですが、これはもともとどういう話でオファーを受けられたのでしょうか? 脚本を読んだり、あるいは入江監督から「こういうキャラクターなんだけど」というお話があったり、というところかと思いますが…。

間宮夕貴(撮影=大西 基)

間宮夕貴(撮影=大西 基)

 オーディションで最初に本を読ませていただいたんです。サオリとまた別の役があって、それでオーディションを受けてもらいますという話をもらい、読んだんですけど。でも私はその時に私自身を「サオリだ!」と思いました。もう一つの役もあったけど、私は多分その子より「サオリをやりたい」という気持ちがあって。

――人物のイメージが、自分に近いということを感じたと?

 感じましたね。それと、なんかちょっと共感するな、という感じで。本を読んでいる中で「サオリという人間が、テンポを崩していく」という雰囲気を感じ取りました。ずっと緊張感が続いているようなところに、サオリが現れると一回落ち着かせるというか、一回そこまでの雰囲気をクールに変えるような、そういう役だと感じて面白いなと思いました。

――それは、脚本を全体的に読んだ時にそう感じられたのでしょうか? 確かに劇中では、大森さん、鈴木さん、桐谷さんが演じられた三兄弟の関係が、ストーリーの中で一番強い部分なのかなという印象がありましたが、そこにこのサオリが入ると、アクセントというか印象的な雰囲気が出てきていましたね。

 そうですね。例えば音楽にすると、まさにファゴットという楽器。ちょっと腑抜けというか力強い音質、音色ではないので、結構ジブリ映画でも、ふわっとした曲の時に使われたりしています。だから例えば『ビジランテ』がオーケストラとして、曲を演奏している中だと、サオリってまさしくファゴットみたいに「フニャっとさせる」という気がするんです。

 だからこそ、この子が好きだと思いました。演奏していると、そういう部分で使われることが多くて、緊張感がある時に、ファゴットはソロで吹いたりすると、平和なシーンになるというか、緊張感を緩和させる何かがあるんだろうなと。それを吹いていたからこそ、何かそういうい感じがしますね。

――人生、ファゴットですね(笑)。

 本当に、ファゴットみたいな人間になりたい(笑)。緊張感を緩和させる。嫌な緩和じゃなくて。

――ストーリー全体を俯瞰して見ると、そういう面も感じられますね。対して主観的に見てサオリという自身のキャラクターについてはいかがでしょうか? 劇中では大森さん演じる一郎というキャラクターに暴行を受けつつ逃げても、また戻ってきてと、ずっとついていくような印象というか。この人は、どんな人なんだろうと思いましたが…。

 私が大学で心理学を教わっていた時に習ったことがあるんですけど、DV(家庭内暴力)を受けている女性は依存気質というか、暴行をする人に対して、依存していることが多いんだそうです。一緒にいればいるほど、暴力を振るわれているけど「でも、普段はいい人なの」と言うし、暴力を振るわれても離れられない。「私がいないとこの彼は生きていない」と思うからこそ一緒にいるというというか。

 多分一郎は薬をやっていて、やめろと言ってもやめない。喧嘩して逃げちゃったけど、やっぱり一郎は私がいないとダメかもしれないない、心配になって帰ってきちゃう。そういう様子は、DVを受けている女性の性質がはっきり見えていました。

――それはかなり典型的な例を踏襲している感じだったのですね。最後に何もかも失って、フラフラと歩きだす部分もありますが、それもそういう症状に流れていくものなのでしょうか?

 といいますか、最後には精神的に崩壊しているので、何をするか、多分予想ができない状態だったんだと思います。女性によっては一緒に死んじゃう人とか、意外とケロッとしている人もいた利するかもしれないけど。その中で、多分まだ迷いを感じるというか、死ぬか生きるかを迷いを感じながら、気づいたら自分の周りには誰もいない、みたいな感じかなというので。

 でもあのシーンは、見た人によってどういう感じ方をするのか? と思わせるところがあると思うんです。だからご覧になった方に、あのシーンでどういう気持ちになられたかを教えてもらいたいですね。

――ではある意味、演じるという意味では典型的な形みたいなところにうまくはまる印象があり、それほど役的には難しい感じはなかったと?

 そうですね。サオリという女性自身が、あまり深く考えない、どちらかというと直感で生きている性格だと思うので、かえって役作りをあまり考えないようにはしようと思っていました。

仕事が一番。入江監督との戦いで得た成長

――撮影の話に移りたいと思います。以前、入江監督にインタビューをさせていただく機会があり、とても物腰が低い方だ、という印象を受けましたが、映画『22年目の告白―私が殺人犯です―』の舞台挨拶では、藤原竜也さんや伊藤英明さんが撮影でかなり苦労されたということを言われていて(笑)、仕事、撮影という面に対しては、かなり厳しい方なのかと感じました。その意味では『ビジランテ』も、皆さん大変だったのでは、と思いました。作品でも激しい乱闘シーンもあり、特に女優の方は皆さん、体を張って演技されているというところもありましたね。今振り返って、出演された感想などはいかがでしょうか?

間宮夕貴(撮影=大西 基)

間宮夕貴(撮影=大西 基)

 想像以上に「あれ、撮影ってこんなに大変だったっけ?」と思うくらい大変ではありましたね(笑)。眠れない日々が基本ずっとあたりまえで、1日で睡眠1時間取れたらラッキーという感じだったので。もう撮影の時間的に朝の9時、10時に終わって、12時集合、休憩が2時間みたいな。

――それはかなりキツい感じですね。仮眠すら難しいくらいで…撮影期間はどのくらいで?

 私自身は5日間くらいかな。

――ではその間は、かなり濃い時間を?

 濃いですね。何というか、1日は24時間ですけど、大体6~7時間は寝ているわけじゃないですか。だから18時間ほど、それでもその時間ずっと一緒にいたとしたら、結構濃い。それが24時間ずっとみんなと一緒で、1時間だけ会っていないという感じなんです。実際には1日しか経っていないのに、感覚的には4日くらい経っている感じでした(笑)。

 撮影の感覚だと2週間くらいそこにいる感じなんだけど、実際には4~5日とかだったので、あれ?体内時計と合わない?みたいな。だから『ビジランテ』の後遺症はすごかったですね。ずっと朝9時までから、次は12時から…という生活だったので、7、8時くらいまで寝られない感じになりました。しばらくは朝の8時から寝て、昼の3時とかに起きて「あ~もう寝なきゃ」って(笑)

――精神的にはどうでしょう?

 それもすごくありましたね。入江さんはOKを言わないし、かつ何かダメなところも言わないで「カット!はいもう一回」「ヨーイ、はい!」みたいな感じで追い込まれて(笑)。それでおのおのに「何がダメだったんだろう」「今は自分がダメだったのかもしれない」「こうしよう」「ああしよう」そして「ダメだ、もうネタがない!」みたいになっちゃって(笑)、最後にはひねり出し尽くして、みたいな感じで撮影していました。

 でもその分入江さんは、相当強いこだわりをもってやっていたと思うんです。よく現場で大森さんや桐谷さんとも「監督がそこまで決めてやっているんだったら、自分たちもそれを超えるものを出していかなきゃね」ということを、お話ししていましたし。「なかなかこういう監督って、出会えないものだから大切にしないとね、こういう現場も」というお話もいただきました。

――ではまさしく今回は、入江監督との戦いという…。

 本当に戦いでした(笑)。でも本当に良い戦いでした。みんなが足を引っ張り合うような悪い雰囲気じゃなくて、もう「良くしていこう!」という戦いだったので。

――役柄を演じるにあたって、最初に言われた“私はサオリだ”というところはピッタリはまって、気になったのは、入江監督が何も言わなかったところだと?(笑)。

 そうですね。ずっと未だにその話をしていないので、どう思われていたんだろうな…と気になっています(笑)

――いつか直接おたずねしてみてはいかがでしょう?

 そんな、怖くて聞けないです(笑)。まあ怖くはないんですけど、意外に「何も考えてなかった」といわれるのもショックだし、黙ってそのままあやふやにしておいた方がお互いにいいんじゃないかと(笑)。でも正直答え合わせはしたいし、興味はあるんです。どう思っていたんだろう?って。

――ご自身としての評価としてはいかがでしょうか? 近年では様々な賞も受賞されるなど、徐々に女優としてのキャリアを確立されているところかと思いますが。

 いや~そんな誉め言葉は、私自身に対しては全く無いです。撮影の時はそれがマックスだったんですけど、今見れば“この時、こうすればよかったな”と思うこともある。ただそう思えたということは、またこの短期間で成長できているのかなと思うし、もっとちゃんとやらなきゃとも考えるようになったので、この作品で根性を叩き直された気がします(笑)。

 一方で、撮影で追い込まれた瞬間が多かったこともあって、“何もない”というところから何か作り出す、という。そういう瞬間って、どんな人生でも、なかなか出会えない。スポーツ選手だとまた違うかもしれないけど、なかなか出会えないことだと思いました。

――“入江マジック”ですね。マジックといいつつ“何も言われなかった”だけかもしれませんが(笑)。

 プラシーボ効果みたいなものかもしれません(笑)

――タイトルの『ビジランテ』とは、“自警団”という意味があります。このストーリーからは「自分の大切なものを、最悪は法を犯してでも守る」という雰囲気があるのかと感じましたが、間宮さんにとって現在「何を差し置いても守らなければいけないと思うもの」はありますか?

 何でしょうかね? 家族かな。

――ご家族とはかなり仲が良いのでしょうね。

 すごく良いです! この前も映画を見に行ってくれたりとか、DVDを買ってくれたりしているので。家族LINEがあって、毎日会話もしているし。

――やっぱりすごく応援もしてくれるのでしょう。まさしく“間宮家ビジランテ”という感じで(笑)。

 うん…でもなんか“仕事だ!”と言われたら、家族も捨てる自信もあったりして(笑)。

――そうなんですか? それはショッキングな…。

 そんな気もするんです。仕事が一番かな、今は。何を捨ててもやろうというくらい、仕事が楽しいんです。だから彼氏に「嫌だ!やってほしくない!」と言われても「関係ねえ!」と。

――「仕事と俺、どっちをとるんだ!?」と言われたら、迷わず「仕事だよ!」と?(笑)。

 言いますね、「あたりまえだろ!?」みたいに(笑)。それに例えば家族から「お父さんが死んだ」と言われても、その日が撮影だといわれたら、撮影に行く、多分行ってしまうだろうな…という気がします。