シンガーソングライターの堀込泰行が22日に、EP『GOOD VIBRATIONS』をリリース。今作は新進気鋭のバンドやアーティストを招き、制作されたコラボレーションEPで、全6曲を収録。タイトルからも伝わってくるように、堀込も確かな手応えを感じたという。インタビューでは今作の制作背景についてや、自身のルーツを振り返る。さらに、今年テレビCMでオリジナルヴァージョンが起用され、8月にアナログ盤と配信でリリースされたキリンジ時代の代表曲、「エイリアンズ(Lovers Version)」も収録。この名曲が誕生した時の話などを聞いた。【取材=村上順一】

もっといろんな人に聴いてもらいたい

堀込泰行

――昨年はソロ1stアルバム『One』をリリースされて、3月~4月に掛けて全国ツアー『HORIGOME,YASUYUKI LIVE TOUR 2017』もおこないましたが、改めてツアーを思い返してみるといかがでしたか。

 今思い返してみると、良いツアーが出来たなと思います。ツアーには昨年からのバンドメンバーに加えてヒックスヴィルの真城(めぐみ)さんがコーラスで入ってくれまして、バンドサウンドとコーラスの安定感が両立できて良かったです。

――このツアーが今作『GOOD VIBRATIONS』の楽曲制作に反映されたところはあったのでしょうか。

 特にそれはないですね。『One』を作ってキャンペーンで、取材やラジオに出演したりして、いろんな人と話していると、「最近注目しているアーティストはいますか」と聞かれたりするんです。その中で若いアーティストをチェックするようになっていきました。『One』の完成後に感じたことがあって、もっといろんな人に聴いてもらいたい、曲を広めていきたいという気持ちが生まれてきました。

 そのなかで僕と似たことをやっている人よりも、全然違う音楽性のアーティストとコラボした方が面白いと思い、新進気鋭のアーティストの方たちに声を掛けさせていただきました。

――そう言えば、堀込さんは最近、ラジオのパーソナリティーも始めましたよね。キリンジ時代にもやられてましたよね?

 はい。キリンジのデビュー直後に3年ぐらいラジオ番組をやらせていただいていて、そのあとも3本ぐらいはレギュラー番組をやらせてもらっていました。その時は主に兄(堀込高樹)が喋ってくれて、僕は進行とその受け答えぐらいで(笑)。

――ということは、お一人でラジオをやられるのは初だったのですね。

 そうなんです、これがまた大変でして。やる度に「もうちょっと上手く喋りたかったな」とか反省して、家に帰るということの繰り返しですね。

――その番組の中でも今作の全曲解説をやっていましたね。非常に興味深かったです。今回はコラボレーションをするにあたり、かなりシンプルな状態で楽曲を皆さんにお渡ししたみたいですね。どれくらいシンプルだったのでしょうか。

 大体どの曲も、ボーカルとピアノやアコースティックギター、多くてドラムぐらいですね。

――ピアノで楽曲は作られているのですね。ギターのみで制作しているものと思っていました。

 鍵盤で打ち込みでやってしまった方が、早いというのもありますし、データでコラボするアーティストに渡せるので利便性の問題ですね。

――データですと、目で確認できるメリットもありますからね。WONKさんとのコラボ曲「Dependent Dreamers 」では、かなりコードを崩してもらったと仰っていたのが印象的でした。

 そうなんです。リハーモナイズというのですが、原曲とはガラッと変わりましたね。元のデモはもっとシンプルで、雰囲気的にはキャロル・キングのようなリズム&ブルースでした。それが、見事にWONKサウンドになって返ってきまして。やっぱりベースにジャズがある方達なので、リハーモナイズすることが個性に繋がっていく、という認識をされているんじゃないかなと思うんです。そこはコラボの醍醐味で完全に彼らに委ねてやってもらいました。

――堀込さんはジャズは通って来られているのでしょうか。

 通ってきていますね。すごく沢山聴いてきているわけではないのですが、実家に暮らしていた幼少期に、父親がジャズやラテン、カントリーを聴いていたので。父はザ・ビートルズを聴くよりも前の世代だったので、そういった音楽をよく聴いていました。なので、そこでかかっていたジャズは多少なりとも影響は受けていると思います。そのあとに兄がザ・ビートルズやローリングストーンズを買うようになって、ロックも聴くようになっていきました。

――順序よく聴いて吸収していったわけですね。

 そうですね。もうロックの名盤と呼ばれるレッドツェッペリンを聴いたら、次にディープパープルに行って…みたいな感じでした。他にもXTC(英・ロック・バンド)やトッド・ラングレン(米・ミュージシャン)なんかも聴いていました。挙げていけばきりがないのですが、兄が聴いていたレコードの影響も受けましたし、当時中学生だった僕はハードロックにハマっていました。

――デフレパードやモトリークルーをバンドでやっていたというお話も聞きました。個人的には意外な事実なのですが(笑)。

 はは(笑)。とにかくギターが好きだったんですよ。自分が歌うということをあまり考えていなかったんです。もともとクイーンが好きで、そこからロック好きになりました。

――現在はその要素はあまり出ていないですよね?

 そうですね。当時は毎日ギターを練習していたので、かなり正確にしっかり弾けていましたね。その時のテープを聴くと、今より全然上手いんですよ(笑)。ハードロックって、ちょっとクラシックっぽい要素が入っていて、ギターで使うスケールなんかもハーモニックマイナーというクラシックの匂いのするスケールを使うことがあります。

 僕はイングヴェイ・マルムスティーンも好きだったので、よく高校時代には弾いていました。今ではやっている音楽は違いますが、ラテン調の曲を演奏するときに、ハーモニックマイナーがすごくハマるんです。なので、当時やっていたことが生きているんですよね。

一聴して耳触りがいい音楽だけが良い音楽ではない

堀込泰行

――様々な要素を吸収して今があるわけですね。レコードの話が先ほど出たのですが、11月3日のレコードの日に、今作に収録されている「EYE」が800枚限定でアナログ盤としてリリースされました。堀込さんにとってレコードはどのような存在ですか。

 何が何でもレコードというタイプではないんですけどね。CDよりも物として持っていたい感じが強いです。パッケージされた物の面白さがあると思います。ジャケットの中から出して、再生するまでの手順もいいですよね。盤にスプレーを吹きかけて、埃を取って、プレーヤーに乗せて丁寧に針を落とすというね。それが、音楽の聴き方を、ちょっと特別なものに変えてくれるんですよ。ただの情報じゃないものにしてくれる感覚はあります。

――私も最近はアナログで聴くことが多いのですが、一度かけると頭から最後まで聴きたくなります。この曲を飛ばそうという気にならないと言いますか。

 そうですね。一回聴いてパッとしないなと思った曲も、今言っていたように飛ばさないで聴くので、聴いているうちにだんだん好きになってくる、ということもあります。地味だなと思った曲も地味であるところが好きになったり(笑)。一聴して耳触りがいい音楽だけが良い音楽ではないということは、レコードみたいに簡単に音楽を飛ばさないで聴く環境があったから、養われた感覚はあるかもしれませんね。

――この「EYE」はD.A.N.という3ピースバンドとのコラボレーションですね。

 そうですね、彼らとは20歳くらい年齢は離れています。どのアーティストも同じ接し方なのですが、先輩とか後輩という観念は無しで同じミュージシャンとしてフラットに接しました。彼らも自分たちがやっていることに誇りを持っていて、それがしっかり音に表れていると感じたので、上から目線で接するのは良くないなと感じまして。

――逆に堀込さん自身も対等に接してもらった方が?

 いや、僕は先輩風を吹かされても嫌なことはないですよ(笑)。まあ彼らも大丈夫でしょうけど、今回はイーブンな関係の方がより良いものが出来ると思いました。

――D.A.N.との制作はどのような感じだったのでしょうか?

 これはWONKとは逆で、僕のデモのコード進行を活かしてアレンジしてくれました。彼らの場合はリフやフレーズの集まりをループして行くなかで、展開をつけて曲になるという作り方で。櫻木(大悟)くんと初めてあった時、コードはあまり気にしないで作って行くという話を聞いて。おそらくコードに支配されるということが好きではないのかなと感じました。そこから解き放たれて自由に作っていくという感覚でしょうか。

――コードといえば、お聞きしたかったことがありまして。お好きなコードというのはありますか。

 あるんですけど、秘密です(笑)。まあ、僕が作る曲の中で頻繁に出てくるコードですね。もしよかったら分析してみてください。

――探してみます! 2曲目に収録されている「THE FLY」はハエのFLYだとは思いませんでした。

 もともとは虫が火の中に飛び込んでいってしまうように、「僕らは恋愛というものに振り回されている、だけどやめられない」というような歌にしようと思ったのですが、ハエが食虫植物に取り込まれて、最後には溶かされてしまうみたいな感じに変わっていきました。

 例えばお酒にハマってしまう人とか、悪い女性や違法なものにハマってしまって身を滅ぼしてしまう人など、広い意味で誘惑に捕まって抜け出せなくなってしまう、悲哀と滑稽さを書こうと、変化していきました。

――堀込さんも誘惑に負けることが?

 もちろんあります。お酒を飲んではいけないタイミングで飲んでしまったりとか。今日はもうちょっと仕事をした方が良いんだけど、という時に飲んでしまったり(笑)。それが後々自分の首を絞めることになるわけで。

――それで後悔することも。

 あとで忙しくなってきて、後悔することはありますね(笑)。

――ちなみに今作は割と制作期間に余裕はあったのでしょうか?

 サウンドをコラボ相手に委ねているので、自分のやる作業が多すぎて大変だったということはなかったのですが、それぞれのアーティストとスタジオで実際に会ってコミュニケーションを取った際、それ以上にメールでやり取りをすることが多くて。

 ミックスダウンの加減とかをメールでやり取りするんですけど、一緒にスタジオに入れば「ここもう少し上げて」など簡単に伝わりますけど、それを文章化して、その場所を細かく指定しなければいけないので結構大変でした。結局エンジニアさんに電話で説明したりもしましたけど。割と苦労した部分ですね。

――確かに話せばすぐなんですけど、メールで打つのは大変そうです。そして、シャムキャッツとコラボした「Beautiful Dreamer」なのですが、「バンドっていいなあ」というコメントをラジオで仰っていたのが印象的でした。

 音楽の聴き手として、バンドサウンドが好きなので、そういったところから出てきた言葉です。なので、ソロのライブをするときも実際バンドで演奏しているんですけど、ずっとやってきているバンドのようになれたらいいなと思いながらライブをやっています。

 シャムキャッツのメンバーはずっと一緒にやってきているわけなんですけど、もしかしたらレコーディングやライブがなかったとしても、みんなでスタジオに入って練習しているんじゃないかなというのを、息の合い方や発する熱量を彼らの演奏から感じまして。これは僕がいつもやっているようなミュージシャンを集めて、やってもらうやり方とは明らかに質が違うものだと思いました。

――同じメンバーで長年やってきたグルーヴ感みたいなものですね。

 そうです。それはすごく感じましたね。この演奏を聴いて「やっぱりバンドっていいな」と思いました。

――「Beautiful Dreamer」のタイトルは『うる星やつら』の劇場版「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」からインスパイアされて?

 映画自体からというわけではないんですけどね。確か夜中にお酒をちびちびやりながらYouTubeを見ていたら、「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」が流れてきまして、その言葉の響きが何かいいなあと。「ビューティフル・ドリーマー」という言葉がこの曲の出だしにぴったりとハマって、すごく綺麗な響きだし、字のごとく夢のある言葉でこれをタイトルにしたいと思いました。なおかつシャムキャッツのサウンドが甘酸っぱい青春感に溢れている演奏だったので、その雰囲気を壊さないような歌詞の世界観を作らないといけないなと感じました。

「エイリアンズ」は中野通りの風景がモチーフ

――そして、「エイリアンズ(Lovers Version)」なのですが、これはライブでも披露されているバージョンでの収録ですね。

 これはアナログ盤と配信でしかリリースできていなかったので、今回入れさせていただきました。割とロマンチックではない理由なんですけど(笑)。

――このアレンジはいつ頃出来たものなのでしょうか?

 確か、『One』をリリースしたあとですね。12月におこなったライブぐらいでしょうか。ラヴァーズ・ロック(ラブ・ソングをメインにしたレゲエの一種)っぽい感じでやったら面白いんじゃないかという提案をスタッフから受けて、やってみた感じなのですが、これが結構ハマりまして。バンドで演奏する度にサウンドも膨らんでいって、良い感じになっていきました。

 何よりこのアレンジがすごく気に入っていて、バンドで一緒に作っていった感がすごくあるんです。元の「エイリアンズ」をレゲエアレンジにした以上の変化を求めて、スタジオでみんなと話し合いながら作っていきました。

――完全にパーマネントのバンドのような作り方ですよね。この曲はキリンジ時代の楽曲で、もう15年以上前になりますが、出来た時のことは今でも覚えていたりしますか。

 意外と覚えていますね。メジャーデビューして2ndアルバム『47'45"』を出した時ぐらいまでは実家にいて、確か「エイリアンズ」が収録されているアルバム『3』のレコーディングあたりで東京に出てきたんだと思います。中野で一人暮らしを始めて、知り合いはいるけど、一緒に飲むというほどの仲間もいなくて、飲み屋もたくさんあるけど、行ってなかったと思います。

――飲み屋に行かなかったなんて、今となっては考えられないですね。

 そうですね(笑)。中野通り沿いに住んでいたんですけど、家の近くは夜中になると車もあまり通らなくなるようなところで、道路で寝っ転がっていても大丈夫なんじゃないかなという。

 その人気のない中野通りの風景であるとか、プロになってレコーディングで帰りが遅くなり、スタジオからタクシーで帰る時の、都心の風景が歌詞のイメージになっています。飲み友達さえいなかった感覚と、コンビニと家の往復、孤独だったけど中野通りの夜の綺麗さは今でもすごく覚えています。

――この楽曲の哀愁的な感覚はその風景だったんですね。今回はコラボ作品となったわけですが、今後もこういった作品を期待しても大丈夫ですか。

 最初はどうなるか不安だったんですけど、結果良いものができて、嬉しいという気持ちがあるので、シリーズ化していっても良いかなというのはあります。でも、さっき話したメールでのやり取りは中々大変なものがあったので、そこはもう少し考えなければいけないかもしれませんね。僕が慣れれば良いだけかもしれないですけど(笑)。

作品情報

2017年11月3日
7inch 「EYE」/ YASUYUKI HORIGOME + D.A.N.

COKA-54 1,389円+tax (800枚限定生産)
A面:EYE  B面:EYE(Instrumental)

2017年11月22日リリース
EP「GOOD VIBRATIONS」 / 堀込泰行

       <CD>              <LP>

CD:COCP-40191 2,000円+tax   LP:COJA-9329 3,000円+tax (800枚限定生産)

1.EYE + D.A.N.
2.THE FLY + tofubeats
3.バース・コーラス + □□□ (クチロロ)
4.Beautiful Dreamer + シャムキャッツ
5.Dependent Dreamers + WONK
6.エイリアンズ(Lovers Version)