トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンドのKing Gnu(キングヌー)が10月25日、ファーストアルバム『Tokyo Rendez-Vous』を発売した。King Gnuは常田大希(Gt&Vo)、勢喜遊(Dr&Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo&Key)の4人組。以前はSrv.Vinci(サーバ・ヴィンチ)として活動していたが、今年4月に改名、既に米フェスの『サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)』や『フジロックフェスティバル』にも出演を果たしている。今回は彼らに新作について話を聞いた。「いわゆるミクスチャーバンドではない」と語る通り、彼らが混ぜ合わせるのは洋楽、J-POP、歌謡曲、ジャズ、ロックなど多岐に渡っている。さらにメンバーのキャリアも様々で、常田は「社会と結びついた音楽をしたい」という理由で藝大を中退。日本でも徐々に受け入れられているという実感があると話す、彼らが目指す音楽とは?【取材=小池直也/撮影=片山拓】

昔の曲の方が言葉にエネルギーがある

King Gnu

――まず、新譜がリリースされて、今の心境を教えてください。

井口理 レコーディングを始めたのが年明けからで、2月近くまで録りました。長かったので「留年してやっと卒業できる」みたいな、ほっとした気持ちです(笑)。

新井和輝 録っていた時期がアメリカツアーとも被っていたんです。発売に間に合わせるために、結構急ピッチで取りかかったんですけど、それでもミックスまでしっかりやれました。僕的には今までで一番、手間暇をかけられたので良かったと思っています。

常田大希 「凄くJ-POPなアルバムになったな」という感じです。歌謡曲の感じをバランス良く入れられたと思っています。

勢喜遊 迷うところもあったのですが「Tokyo Rendez-Vous」という1曲目の曲が出来て、良いバランスの方向性が見えましたね。

――アルバムのコンセプトは?

常田大希 まず、このバンド自体「邦楽/洋楽の感じが他のバンドにはない、バランス感覚になる様にしたい」と思って始めたんです。特に理が加入してから「どこに落とし込むのが格好良いのかな?」と考えた時に、井上陽水さんみたいな、詞に色気のある昔の邦楽要素は入れたいなと。サウンド自体はあまりそれに寄せないで、いかつい感じを残しつつ。

井口理 僕が加入したのは2年半くらい前ですね。

常田大希 理とは地元の幼なじみなんです。和輝と遊には、六本木の「Electrik神社」というライブハウスのイベントで知り合いました。

新井和輝 僕と遊は西荻窪の「Clop Clop」というバーで知り合ったんです。そこは中央線ジャズ(前衛的なジャズを指す事が多い)の雰囲気があるお店で。僕が遊の噂を聴きつけて「一緒に音を出したいな」とセッションにいったのがきっかけでした。

――King Gnuはそこまで、即興的というよりも楽曲重視な印象でした。

常田大希 バンドではセッション感を排除してやっていますね。僕たちは、アドリブ至上主義では全くないので。

新井和輝 僕がセッション上がりだったので、そのバランス感覚はずっと模索をしています。大希はそれが凄くあるので、それに寄り添っていますね。決めるところは完全に決めて、ライブで遊ぶところは遊んで、みたいな物がやっていく内に整っていきました。

常田大希 曲の構造がしっかりしていれば、割と自分達も飽きないというか。僕もバックボーン的にはセッションシーンに出入りしていた事が多いのですが、そういう奴でも楽しめる様な曲の強さという物は意識しています。曲の中には自由なところも結構ありますし。

新井和輝 セッションでも基本的に同じ曲ばかりやっていると飽きるのですが、このバンドではないですね。違う楽しみ方ができるので。階層が深いというか。不思議と「この曲飽きたな」というのは、個人的に一度もないです。

――セッションシーンにいなかった井口さんはいかがですか?

井口理 セッション系のプレイに対して、僕が出来る事というのはそんなにないんですよ。とにかく歌う(笑)。本当に遊が気持ち良いフィルインを入れた時に、テンションが上がって歌に反映される事はあります。

新井和輝 理は歌い回しを変えたりする事がないので、そのバランスも多分良い風に作用しているんじゃないかなと思います。そこでフェイク(即興で歌い回しを変える)し始めちゃったら、ちょっとね。

――今回のプロジェクトで最初に出来た曲は?

常田大希 「Tokyo Rendez-Vous」ですね。この曲が出来て、全体のトーンが定まっていきました。曲は僕がまずデモを作って4人に投げます。リハでアレンジを決める曲もありますし、色々ですね。

新井和輝 「Tokyo Rendez-Vous」は僕も好きです。盤で聴くと、ベースで重ね録りしているところもありますよ。大希が弾いたシンセベースに重ねたり、僕のベースラインに合わせて大輝が弾き直してくれたところもあります。それとは別に、ベースのフィルイン(演奏の刺激となるフレーズ)を後から入れたりもしました。そういう事が効果的に出来たなと個人的には思っています。

勢喜遊 あと「ロウラヴ」はバンドで最初に出来た曲なんですけど、アレンジを変えて収録しました。

井口理 個人的には「McDonald Romance」が気に入っています。この曲は皆好きですね。

常田大希 歌謡曲っぽいメロディだけど、トラックはヒップな感じで独特なバランスになっているので、僕も好きですね。

勢喜遊 僕は「破裂」が好きです。ストリングスとギターソロの上で、しかも歌があるという、せめぎ合いが気に入っていますね。自分の演奏とは関係ないところなんですけど。常田の才能が爆発しているなと(笑)。

――「NIGHT POOL」という今時感のある言葉のタイトルもありました。

勢喜遊 僕らの方が早いんですよ(笑)。

新井和輝 3月の段階でレコーディングしていましたから。今年の夏に流行ったから、このタイトルにした訳ではなくて。

井口理 「うちらの方が前だよ」と言うのもちょっと恥ずかしいよね。

常田大希 基本的にタイトルはフォークシンガー的というか、思った事やあった事を書くという感じが多いです。

――「フォーク」や「歌謡曲」という言葉が何度も登場しますね。

常田大希 never young beachとか、Tempalayもそうですけど、古い物を再構築するというバンドが多い気がしています。意図的というか、口裏を合わせた訳ではなく。レトロな物の中に魅力を見つける若者が多い気がしていて。何か違う事をやろうと思ったら、どうしてもそうなってしまいますよ。あとは、やっぱり昔の曲の方が言葉にエネルギーがあるなと感じます。

新井和輝 大希の要望に合わせてベースラインは考えますが、歌詞は見返せば見返すほど「パンチライン凄くあるな」と思います。でも基本的に歌詞を共有してから、スタジオ入ったりするバンドではないので、音の感じだけで「こういう歌詞なんだろうな」と思う事が多いですね。

井口理 「McDonald Romance」は刺さりますよね。「財布の底は〜」と始まる段階で。

勢喜遊 「あ、俺だ」って(笑)。

井口理 そう。僕もそう思っているという事は、聴く人も多分皆なるんじゃないですかね。

常田大希 理よりもお金あるんじゃないの?

井口理 …らしいです(笑)。

社会と結びついた音楽を目指して

King Gnu

――「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」というキャッチコピーもついていますね。これは自身で名づけられた?

常田大希 いわゆる「ミクスチャーバンド」ではないですね。東京は、海外のどこに行っても無い感じ。上海などと近い感じかもしれないです。建物の感じなど。アジアならではなのかもしれません。

井口理 東京は統一感がないと思います。それが全体として見た時の空気としてある。同じアジアでも、台湾とは少し違うんですよね。東京の建物の感じは、良くも悪くも少しダサい。

常田大希 音楽に関しては、もっと色々あっても良いと思います。海外リスペクトが強すぎるじゃないですか。それこそ、ブラックミュージックも、もっと好き勝手にやってしまえば良いのに。みんな真面目な気がしますね。「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイル」はKing Gnuのテーマです。

――“混ざる”という意味では、皆さんのキャリアも様々ですね。常田さんと、井口さんは東京藝術大学で勉強されていますし。

常田大希 学校では力のある方が多かったので、音楽のクオリティについて勉強になりました。クラシックは伝統芸能みたいなところがあって、技術の磨き方も含めて皆一つの高みを目指しています。ブラッシュアップして、本番に臨む姿勢やその過程、ストイックさはとても刺激になりました。

 でも、僕はそこを目指してはいなかったので、その道には行きませんでした。僕がやりたかったのは、カルチャーや社会と結びついたものだったので。ただ、学校で出会った仲間とは今でも交流があります。

井口理 僕は舞台など、やりたい事が結構あったので、ちゃんと声楽を勉強したという訳ではないです。ミュージカルをやったりはしていました。そういう場としては糧になったなと思いますし、ライブの見せ方も変わりましたね。色々な物を見て、「こういう風に格好良く見えるのか」と感じる事が出来たりして、環境としては凄く良かったです。

 「どう見えているのか?」というのは、今も課題なんですけど。演奏だけじゃないと思うんですよ。「見せ方」というのも絶対あると思います。

――新井さんと勢喜さんはいかがですか?

新井和輝 大学は元々辞めるつもりで入って、適当に通っていました。でも、当時から音大生の友達は多かったです。洗足(学園音楽大学)とか、国立音楽大学が多かったですね。なので芸大だ、音大だ、という意識は無くて。音大に行っている人は、結構その中で完結してしまう人が多い気がするんです。「その学校の中でどれだけ上手いか」と。でも、割と外から見るとその尺度はあまり重要じゃない。大希も中退していますし。

 結局僕は、色々な音大によく顔を出していて、自分の大学よりもそっちにいる事の方が多かったんです。外から音大に触れる事で、逆に音大に通っても、培えないものを得る事が出来た様な気がします。

勢喜遊 僕は音大に行こうかと、高校の時は迷いました。でも、音楽的に信頼している人に相談したら「音楽は習うものじゃない」と。色々な考え方があると思いますけど、それで「何でも良いんだな」と思えたんです。なので、音大生と一緒にやることに関しては、全然何とも考えていませんでしたね。

常田大希 藝大も才能ある人ばかりじゃないですよ(笑)。結局どこにいても、同じだと思うんです。

新井和輝 音大生でも外に出る人は出るし、出ない人は出ない。

海外よりも日本で売れたい

King Gnu

――皆さんはアメリカの音楽フェス『サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)』にも出演されましたね。

新井和輝 アメリカは日本人のバンド・CHAIとWalkingsの3バンドで回りました。意外と海外のバンドを観る機会がなかったです。

常田大希 ジ・インターネット(米バンド)は観たね。

勢喜遊 凄い人気でした。女の子たちの黄色い声援も(笑)。

常田大希 オーディエンスは日本より派手というか、知らない曲でも楽しみ方を知っている感じでした。日本だと反応が良くなかったりするんですけど、そこが如実に違いましたね。

新井和輝 州によって反応が違いました。

常田大希 シカゴはギターを弾きまくると喜ぶ、とか(笑)。

勢喜遊 地方はギターヒーローが人気という感じで。ニューヨークだと「McDonald Romance」みたいな曲がウケたりとか。

井口理 南部は基本的に盛り上がる、みたいなノリがありましたね(笑)。西海岸の方もハッピーでした。

常田大希 あと、アメリカのエンジニアの方に音響をお願いして、必ずしも格好良くなるわけではないという事もわかりました。音が良かったというわけではなかったです。

井口理 人とハコだよね。

――音響的に、平均は日本と変わらない感じですか?

常田大希 アベレージは日本の方が高いかもしれないです。ただ、良いハコの音は凄く良かったです。

新井和輝 本当に良かったね。

勢喜遊 サンフランシスコは良かった。あとポートランド。ポートランドはメタラーみたいな人に担当して頂きました。メタラーみたいな外見の人は音楽愛がありますね。

井口理 メタラーは信用できる(笑)。

――今後も海外に向けて、活動していくのでしょうか?

常田大希 King Gnu的にはないですね。「日本で売れたい」という感じです。海外を輸入して日本人向けにやっているバンドにはなりたくないですね。オアシスの「Live Forever」という曲があるんですけど、それをやると大合唱が起こるんですよ。

 それはイギリス人の若者たちに歌が刺さっているというか、共鳴し合ってその場が生まれるからだと思うんです。それを日本でやりたい。King Gnuの曲で大合唱が起きる様に、もっと大きい場所に行きたい。「届き始めたな」という実感もありますね。

新井和輝 大阪のフェス『ミナミホイール2017』に出た時も入場規制になったり、街で声をかけられたり、という事も起きていて。

勢喜遊 こういう事なんだなと。

――1月28日には渋谷WWWで初となるワンマンライブもあります。今後の展望などもあれば教えてください。

新井和輝 僕らは意外とお客さんの反応にピュアなところがあるんです。反応あったら嬉しいし、無かったら寂しいというのは、普通にあるので(笑)。なので、歌とか口ずさんでくれると嬉しいですね。盤も出て、その区切りとしてのワンマンでもあるので、楽曲を知って来てくれると良いなと思います。

井口理 あとは、出演するフェスのメインステージをかっさらっていきたいです。

常田大希 インターネットでMVが何本も上がってますので、是非観てみてください。

作品情報

King Gnu
ALBUM 「Tokyo Rendez-Vous」
2017年10月25日 ON SALE
UXCL-128 1800円(税込)
01.Tokyo Rendez-Vous
02.McDonald Romance
03.あなたは蜃気楼
04.Vinyl
05.破裂
06.ロウラヴ
07.NIGHT POOL
08.サマーレイン・ダイバー
 

ライブ情報

■odol TOUR 2017 “視線”
11/10 名古屋 池下・CLUB UPSET ※ゲストアクト
 
■あらかじめ決められた恋人たちへワンマン
12/7 大阪・CLAPPER  ※ゲストアクト
■Ruby Tuesday
12/12 渋谷WWW  出演 :I Don’t Like Mondays., FIVE NEW OLD
■King Gnu 1st ONE-MAN LIVE
「Tokyo Rendez-Vous」
日時:2018年1月28日 OPEN 17:00 / START 18:00
会場:渋谷WWW
料金:前売り2800円(税込/ドリンク代別)
    当日3300円(税込/ドリンク代別)
King Gnu official web site先行発売: 10月28日 12:00~11月5日 23:59
一般発売:11月11日 10:00~