Dj Kaoriが4日に、ノンストップ・ミックスCD『Dj Kaori’s Inmix 7』をリリースした。人気CDシリーズ「INMIX」の最新作。収録曲28曲のうち、13曲が国内初のCD化で、最新洋楽の空気を日本向けに閉じ込めた。Dj Kaoriは90年代からアメリカでパーティDJとして活動し、現在は東京に活動の拠点を置いている。ミックスCDの累計売上は460万枚以上。「女性DJとしては売上世界一」と言われているDJ界の女王だ。これまでEDMなどのパーティチューンで作品を構成するイメージが強かったDj Kaoriだが、今回は少しテンポを落とした曲や、ヒップホップの要素が増えた選曲となっている。これについて「時代が変わってきている」と彼女は語る。「毎週末のDJから時代というのが見えてくるんです」、20年近くクラブシーンの最前線にいる彼女が感じる「時代」について、最新作に関するインタビューから届けたい。

日本のパリピも増えた

Dj Kaori

――『Dj Kaori's Inmix』としては3年ぶりの新作となりますね。

 このシリーズの最初の作品(『DJ KAORI'S INMIX』2005年10月)は12年前にリリースしていて、今回は7弾という事で、洋楽のヒット曲満載の内容となっています。最近はCDになっていない音源も多いので、初CD化音源も13曲入ったお買い得な作品なんじゃないかなと思います。

 『DJ KAORI'S PARTY MIX』シリーズではこれまで、時代の流れ的にもBPM早めのパーティチューンっぽい曲が人気だったというのもあったんです。でも、また時代が少しずつ変わってきて、EDMのDJとかもどんどんマーケットを求めてアメリカに活躍の場を移しています。音楽的にも変わってきていますね。

 カルヴィン・ハリスとかもそうですけど、最近の作品でもラッパーをフィーチャリングして今までのEDMよりもアメリカマーケット寄りになっています。そういう時代の流れをこのミックスCDで感じてほしいです。

――確かに収録曲に強烈な音を使ったEDMがない事も印象的でした。

 ゴリゴリなEDMからトロピカルハウスに流行が移って、最近だともっと進んでヒップホップ・R&B寄りだったりしていますね。ジャンルレスになってきたというのも感じます。音楽の壁が取り払わられている様な。ヨーロッパのDJがUS向けに、ヒップホップ・R&B寄りの曲をリリースしたりという事もあります。

 DJはローカルの影響を凄く受けるので、やっている土地土地で色んなものをフィーチャリングしていきます。なので、音楽を聴いている環境が変わると、自ずと作る曲が変わってくる。私の場合だと、今は日本でDJしているから、日本で受け入れられる選曲になります。ローカルのバイブスをいち早く感じ取って、良い物を提供していくという。なのでリミックスも日本で洋楽を聴いている人たちが楽しめる様になっていますね。USで流行っているの物をそのまま全部入れるというわけではなくて。

――ヨーロッパから来たDJといいますと、収録アーティストではどなたでしょうか?

 カルヴィン・ハリスはイギリスで、ゼッドはドイツですよね。色々なジャンルのヒット曲もあるし、クラブで流行っている曲とかもまた違う、それからヨーロッパとUSでもまた違うので日本では「どれを聴いたらいいんだろう?」というのもあると思います。この作品が、是非皆さんに洋楽を楽しんでもらうきっかけになったら良いと思います。

 最近は確かにクラブに来る人は凄く増えたと感じます。だけど、洋楽を熱心に聴いている人口というのは減っているのではないでしょうか。でも、カジュアルにパーティやクラブを楽しんでいる人は増えてきていると思うので、そういうところから音楽に興味を持ってもらって、色んな良い曲が広まれば良いなと思っています。全部推し曲ですね。

――Kaoriさんは、現在東京に在住との事ですが、日本と海外について差異は感じますか?

 今はインターネットもありますけど、年に何回かはアメリカに行って現場を感じるというのが自分にとっては必要かなと思います。アメリカのクラブは確かにノリが良いですけど、日本も最近はノリが良いですね。ただ、アメリカだとヒップホップが強かったり、流行っている曲のちょっとした違いはあります。東京のクラブシーンも楽しいですよ。日本のパリピも増えたなって感じです(笑)。

 最近はスーツを着たサラリーマンの方とかも来て、凄い変わりました。まだまだ敷居が高いと感じている人も多いと思います。でも全然安全ですし、絡まれたりする事もないですよ(笑)。出会いもあるかもしれませんし。

――「日本人は踊らない」という話も耳にします。

 そういう環境が無かっただけで、今は時代も変わってきてクラブに入った事のない人も少なくなってきていると思います。私がDJするのもクラブだけじゃなくて、ショッピングモールのイベントだったり、商工会議所のイベント、企業のパーティとか色々です。様々なロケーションで歌ったり踊ったりする機会は増えたんじゃないですかね。

 なのでイベントでは、ただアーティストのライブを観るだけではなく、DJタイムで踊って、歌って参加してほしいです。パーティはDJというよりも、お客さんが主役なのでそういう盛り上がり方が出来ると嬉しいですね。皆で集まって遊んでお酒を飲む延長線上で、良い音楽をかけるというのは良いですよ。

毎週末のDJで時代が見えてくる

Dj Kaori

――2007年頃に新聞で大々的にKaoriさんが取り上げられた記憶があります。結構な紙面を割いてKaoriの姿が。ちょうどあの頃が境目だったようにも思えますが、その前後で何か変わった事や思った事はありましたか?

 最初はメディアにもDJは取り上げてもらえなかったですね。段々ミックスCDもヒットするようになって、DJの知名度も広がっていった面もあります。最近は世間的にもDJに触れる機会も多いと思うんですよ。新聞に出て、大ブレイクしたかといえば、そうでもないですね(笑)。

 でも、良い曲を良い感じで最初から最後まで聴いてもらいたい、という基本的な方向性は変わってないです。昔はレコードを2枚使い(する技術の事)してみたりとか、結構色々やっていましたけど、最近はそういう無駄が省けてもっとシンプルに聴きやすくなったと思います。

――それは、なにがきっかけがでしたか?

 そこまで考えてないですね(笑)。その時々の選曲とかもそうなんですけど、私は時代や現場の雰囲気に沿いたいと考えています。20年近くクラブシーンの現場にいて、毎週末DJをやるというスタンスは変わらないので、そういうところから時代というのが見えてくるんです。音楽のトレンドや他のトレンドとかも含めて。

 例えば2000年頃だったらヒップホップ/R&Bが強かったけど、後半になってくるとEDMとかが出てきてBPM(テンポ)が早くなったり。トレンドというのは、その時々にやっぱりあると思います。そのトレンドに「自分も合わせなきゃ!」というよりも、その流れに乗った曲を聴く機会が自然と増えるので好きになっていくんですよ。私はパーティDJなので、皆を踊らせるのが仕事です。その時に皆が楽しめる曲を選びたいなとは思いますね。

――音楽サブスクリプションサービスなどの台頭で人々の聴き方も変わってきています。

 そうですね。音楽も携帯とかで聴いたりするようになってきて、ミックスCDとかも厳しいと思うんです。CDを買う機会も減ってきていますし。MP3の音はアナログから聴いていた人間からすると、爆音で流してもちょっと盛り上がりきれない事があるんですよ。絶対的にCDで聴くと音が良いので、是非皆さんに聴いてもらって音楽の良さを感じて貰いたいです。

 圧縮されたファイルで聴いていると限界があるので、気持ち良さのレベルも限られてきてしまいます。音楽というのは気持ち良い物なので、気持ち良い状態で感じてほしい。聴けば違いがわかると思うので、良い音で楽しんでほしいなと。私も普段はCDとか、なるべく音の良い音源で聴く様にしています。

 今の若い子はCDプレイヤーも持っていないだろうから、逆にレトロで良いかもしれないですね。カセットテープも今ブームじゃないですか。ラジカセならまだ安く売っていますし(笑)。買ってみるとオシャレかもしれない。安いプレイヤーを探して家で楽しむのなんて、結構良いかも。後々、段々と高くなってしまうかもしれませんし。

Dj Kaori「Dj Kaori’s Inmix 7」ジャケット

――そんなKaoriさんは、どうやって新しい音楽を探すのでしょうか?

 レコード屋にいったりとか、ラジオでエアチェックをしたり、クラブに行ったりとか、音は常に探します。現場で探す事が多いですね。行った土地でラジオを聴いたり、音楽がかかっているイベントに行ったりします。もちろんSNSとかも情報としてはありますけど、やっぱり言葉の情報だけじゃなくて、体で感じてみないとわからない部分が音楽にはあると思うんです。だから難しい事を考えないで、感じて、ピュアに楽しんでほしいですね。

 マニアックになると、音楽に優劣をつけてみたいな事ってやっぱりあるじゃないですか。でもそういう事じゃないと思うんですよ。それぞれが自分の良いと思う物をチョイスして楽しめば良いので。色々なスタンスの、色々な楽しみ方があって良いと思います。それが浅かろうが、深かろうが。

――今の考え方はアメリカで活動されていた経験からくるものでもありますか?

 色々な経験ですよね。アメリカでDJしていたのもそうですし、日本でDJしていたのもそうです。そういった事が今の自分に影響していると思いますね。「USで流行っているから日本でも流行る」という楽観的な考えでは勿論ありません。でも良い物は黙ってても広がっていったりするので、それは国とか人種とか関係なく、パワーを持っていたりするというのはあると思います。

日本でもラッパーの客演が増える?

Dj Kaori

――今回の収録曲の三分の二が客演(feat.)や共作のものですが、それについてはどうでしょうか?

 フィーチャリングみたいなのが沢山出てきたのは、ヒップホップとかだと思うんです。リミックスで、オリジナルと違うアーティストが客演したり。『ホットなところをすぐに取り入れる』というのが、アメリカの国民性としてあるのかなと。今売れている物とコラボレーションする、という文化ですよね。日本はあんまりないのかな? でも増えて来てはいますよね。最近だと小沢健二さんとSEKAI NO OWARIさんがコラボしたり。アメリカの方が自由度は高いと思いますが、日本でももっと広まれば曲の幅も広がりそうです。

 特にラッパーは客演しやすいですよね。バース(Aメロに相当する事が多い)も1人でラップすると単調になりがちですから、そう意味で色々な人をフィーチャリングしたりというのも多いですね。シンガーもラッパーをフィーチャーしたりとか。

――日本ではMCバトルの人気も高まっていますが、どう思われますか?

 『フリースタイルダンジョン』ですか? たまに観ていますよ。何でもそうやって「盛り上がっていく」というのは良いなと思います。日本のヒップホップも2000年くらいまで盛り上がって、Def Jam Japan(現在のDef Jam Recordings)が出来て、という動きもありました。今はマーケットがアイドル中心になってたというのもあると思うんです。そういう意味で『高校生ラップ選手権』とか『フリースタイルダンジョン』とかを中心に、自発的に若者が集まって勝手に盛り上がっているじゃないですか。ここからまた大きなシーンになっていけば良いですし、楽しみですよ。

 夜コンビニでサイファー(ラッパー同士のセッション)している人とかも最近見かけますけど、お金もかからないし、デフレにはぴったりなんじゃないですかね(笑)。それでスキルを磨いてもらって。勝ち上がるシーンがあれば、もっと良いなと思います。アイドルみたいにラッパーも推してくれる人がいれば良いですよね。なかなか手を挙げる大人がいないという問題もあります。

 でも、自分達でシーンを温めていってほしいなと思っています。ラップするスタイルも変わってきています。色々な人がいるし、そういう意味では日本なりのスタイルも出てくると思います。私も是非機会があれば、客演してもらいたいですよ。

――Kaoriさんにとっての「日本なり」というのは何でしょう?

 アメリカだと、悪ければ悪いほどウケるんですよね。やっぱりそういうところがある。だけど日本は土地柄そういう国ではないですから。だから日本は日本で、何か違うスタイルができるのかな。でも色々な人がいて良いと思います。そういう事で幅が出来て、シーンが活性化すると思うんですよ。ラッパーをフィーチャリングして曲を作る、という様な時代に今はなっていますし、それこそAKB48 feat.ラッパーみたいな(笑)。ももいろクローバーZさんとかもするかもしれませんけど、そういう風に日本もコラボレーションが変わってくるんじゃないかなと。

――他に今注目している動向などありましたら教えてください。

 そうですね。あんな事件がありましたが、最近は(ラス)ベガスにハマっていたんです。やっぱりクラブシーン的にみると、ベガスが一番盛り上がっているかなというのがあって。カルヴィン・ハリスとかもそうですけど、トップDJや、マライア・キャリーやクリス・ブラウンの様なアーティストがレギュラーでショウをやったりして、エンターテインメント面で盛り上がっています。事件は残念でしたが、ベガスは熱いですよ。

 10年前は私もベガスでやったりしていましたけど、あの頃とは段違いに盛り上がっています。週末はもう回りきれないくらい、トップDJが色々なクラブでやっています。“毎週末フェス”みたいな感じですよ。それだけじゃなくて、シルク・ドゥ・ソレイユだったり、マイケル・ジャクソンのショウもあったり。大人から若い人まで楽しめると思います。エンターテインメントを楽しむなら、今ベガスが一番良いです。

――東京についてはいかがですか?

 東京も凄いですよね。ここ何年かで東京に来る観光客が凄い増えました。クラブも凄い盛り上がっていますし。オリンピックに向けて風営法も改正されたりして、もっともっと眠らない街として経済効果が上がっていけば良いですね。

【取材=小池直也】