<記者コラム:オトゴト>
 『はじまりのうた』という映画があります。キーラ・ナイトレイの歌と演技が素晴らしく、アダム・レヴィーンの「Lost Stars」も最高。文句なしの作品です。

 そして劇中、私が最も考えさせられたのは、とある打ち上げ会場でダンスミュージックを流しながら「踊ってはいけない!」と人々がふざけるシーン。最終的に我慢できず、この場にいる全員がビートに合わせて踊ってしまう、というオチなのですが。これが日本だったら恐らく「全員がダンスしてしまう」という状況にはならなかっただろうなと感じました。

 「日本人は世界で一番踊らない民族だ」という意見があります。日本には舞踊や舞踏など、踊り自体は昔からあります。それに世界的に活躍される日本人ダンサーは数多いです。なので、この言葉は日本にダンス文化がない、踊りが下手という意ではなく、「日本人は生活の中で/人前で踊らない」という意味で解釈した方が良いと思います。

 つまり、ここでの<ダンス>は「恋ダンス」や「ランニングマン」を踊ったり、フェスで跳び跳ねるという事を指していません。振り付けやしぐさで人々が同期するのではなく、「居ても立ってもいられず、踊ってしまう」という事を示しているのです。

 とはいえ、ヘッドフォンをしながら脳内でダンスを繰り広げられる方もいらっしゃるでしょう。日本人の美徳が「裏」に有る事も忘れてはいけません。なのでこれはダンスを表に出すか、出さないかの違いである可能性もあります。大事なのは、体が踊る/心が踊る事が日常にあるかどうかという事かもしれませんね。

 ところで幕末では、仮装した民衆が「ええじゃないか」等と言って踊り騒いだ『ええじゃないか』騒動というものがありました。その起因は諸説ありますが、漫画などで描かれる前向きな事柄だったと前提とし、こうした体を思いっきり使って表現するダイナミックなダンスムーブメントがまた起きたら面白いと思います。

 今では「現代的なリズムのダンス」として中学校の必修科目にもなっていますし、近い将来変化が見られるかもしれません。【小池直也】