<記者コラム:オトゴト> 
 東京・新宿界隈の中古レコード店は、「プログレッシブロック」「ジャズ」「ヘヴィメタル」「クラシック」など、 あらゆるジャンルに別れ、それぞれの音楽色の盤に浸ることができる。そこでは、音楽ジャンルにより様々な人間模様の違いが見てとれるという角度でも楽しめる。

 「クラブミュージック」専門の店舗に足をふみ入れると、幾何学図形を音にしたようなミニマルテクノサウンドが響く店中で、現代的なファッションに身を包んだお兄さんやお姉さんが、片足で軽くビートを刻みながら盤を選別している。

 「プログレッシブロック」専門店では、まどろむような精神世界を醸す変拍子のシンフォニックなBGMが鳴る中、ひと味違うといったスパイシーな物腰の方々が神妙に前衛ロックの吟味をしている。

 「昭和歌謡」専門店では、入店した瞬間に雰囲気だけで昭和の時代に戻った感覚が味わえる。80年代アイドルのブロマイドや縦長シングルなど、時代を象徴するアイテムを老眼鏡を支えながらチョイスする御仁、カセットテープを物珍しそうに眺める若者カップルも居る。

 中島みゆきの「糸」という曲の音源を探していて、あらかじめスマートフォンで収録アルバムを調べてから行ったのだが、いざ「昭和歌謡」専門店に入ったとき、「盤を選別しながらお目当てを発見する楽しみを一つ損してしまった」と、やや悔しい思いをした。

 CD盤の販売数が減ってきたり、逆にアナログレコードが再燃したり、動画サイト閲覧が音楽との初めての出会いの機会であったり、ストリーミングで大量の楽曲を楽しんだり、時代により音楽との接し方はうつり変わる。

 レコードショップなど、ライブ会場もそうであるが、ある種の“音楽現場”でさまざまな人間模様にふれると、このように感じる。人や物質を介しての直接的なふれ合いを含む音楽の味わい方は、人間がアナログな生き物である限り、今も昔もこれからも、音楽文化の中でも最も濃く、いちばん美味しい部分なのではないだろうかと。【文=平吉賢治】