デビュー5周年を記念しZeppツアーを開催中の家入レオ(撮影=Hayato Araki)

 シンガーソングライターの家入レオが7日に、東京・Zepp DiverCity Tokyoでデビュー5周年ツアー『5th Anniversary Live at Zepp』をおこなった。6日を皮切りにツアーをスタートした。2日目となるこの日は、彼女はピンク色のスカートにポニーテールという出で立ちで登場。4月30日に開催した初の武道館公演『5th Anniversary Live at 日本武道館』はシングル曲を中心にしたベスト盤的な内容だったが、「今日はコアなファンが多いと思うから。アルバム曲や普段はあまりやらない曲をたくさんやろうと思います」と話し、今までより格段にロック色やバンド色の濃いサウンドと共に熱い歌声を自在に聴かせ、よりアーティストとして成長した新しい姿を見せた。

変化する「サブリナ」

家入レオ(撮影=Hayato Araki)

 新しさは、デビュー曲「サブリナ」でも明らかだった。エレキギターがかき鳴らされる激しいイントロで、最初は何の曲か分からなかったほど。よりバンド色の濃いサウンドに勢いのあるボーカルが重なり、新しい「サブリナ」で早くも観客の心を掴んだ。

 昨年リリースした最新オリジナルアルバム『WE』からは、「Party Girl」や「恍惚」を披露。「Party Girl」は、洋楽のガールポップのようなダンスチューンで、今っぽい歌詞が明るい曲調にぴったり。観客も曲に合わせてクラップして楽しんだ。「恍惚」は、疾走感溢れるクラブミュージック調のサウンドで、普段の熱く真っ直ぐな彼女とは少し違うクールな雰囲気で聴かせた。時折横や後ろを向いて、バンドメンバーとアイコンタクトを取る様子もあり、その時の表情はとても楽しそうだ。

 このツアーでは、サポートバンドのメンバーにバンマスの本間昭光(Key)を始め、山本陽介(G)や玉田豊夢(Dr)など業界屈指の凄腕プレーヤーが勢揃いし、ほとんどの曲を新たなアレンジで聴かせた。実は、「サブリナ」のアレンジは1日目と2日目だけでも違っていたとのことで、ツアー最終日までには一体どんな「サブリナ」に成長しているのか楽しみ。そんなバンドを従えた彼女は、ライティング以外余計な演出は一切ないステージで、バンドの音だけを頼りに己と己の声だけを客席にぶつけていた。

“でも、これがやりたいんだもん”

家入レオ(撮影=Hayato Araki)

 こうした今回のツアーの趣向について、「(みんなが知っているものだけをやって)仲良く歩んで行くのも良いけど、時には怒られてしまったりもしながら、“でも、これがやりたいんだもん”というものをやっても良いんじゃないかと思った」と、彼女。そうした“家入レオ色”は、たとえば開演前の場内に流れていた音楽にも溢れていた。スザンヌ・ヴェガなどの懐かしい洋楽のシンガーソングライター系が流れていたが、これは彼女が好きな小説家の江國香織の作品中に出てくる楽曲を選んだとのこと。会場に足を踏み入れた瞬間から、家入レオのオンステージが始まっていたと言えるだろう。

 歌だけでなく、楽器演奏も披露してよりアーティストとしての高まりを感じさせた。2014年にリリースした2ndアルバム『a boy』の1曲目に収録の「Lay it down」は、「かなり久しぶりにやる曲です」と紹介して、アコギを演奏しながら披露した。さらに最新シングル「ずっと、ふたりで」のカップリングに収録の「だってネコだから」は、「この曲は『君がくれた夏』のコードで作りました」と紹介して、ピアノを弾きながら可愛らしい歌声を響かせた。

 見どころの一つになったのは、中盤に歌った歌謡曲のカバーだ。「母親の影響で小さい頃から中森明菜さんなどの歌謡曲を聴いていて、最近は移動中に山口百恵さんなどを聴いています。きっとDNA的に、歌謡曲があるのだと思う」と話し、「洋楽のカバーをやったことはあったけど、邦楽のカバーをやったことはなかったので、ここで披露したいと思います」と、山口百恵の「ひと夏の経験」と中森明菜の「少女A」のカバーを披露した。「ひと夏の経験」では、間奏で横を向いて立つ姿が、まさしく山口百恵の佇まい。原曲よりロック感の増した演奏と、艶とパワフルさを携えた歌声で、彼女の新しい魅力が発揮されていた。2曲を歌い終え、「ヤバイ! カバーアルバムを出したい!」と、拍手と歓声に嬉しそうに応えた彼女。きっとそこにいた誰もが「カバーアルバムを是非出して欲しい!」と思ったことだろう。

 今までの家入レオは、きれいに整えられた真っ白いステージの上で、せっかくお膳立てしてもらったのだからとそのステージを汚さないように、どこか自分を抑えていたところがあったように思う。今回のツアーは、そのステージを一度全部ぶち壊して、バンドのメンバーと一緒に一から作りながら、その過程すらも楽しんでいるような雰囲気だ。リラックスして楽しんでいる様子は、端々に博多弁が出てしまうMCからも感じた。5年前の「サブリナ」の印象で、今もそのイメージを家入レオに持っている人は多いかもしれないが、そんな人こそこのツアーは見て欲しい。アーティストとして新たなステージに立ち、今も急速な成長を続ける彼女の今の姿に、きっと驚くだろう。

(取材=榑林史章)