ファンの間で“メルティーボイス”と呼ばれているシンガーソングライター橋本裕太の素顔とは(撮影=榑林史章)

 シンガーソングライターの橋本裕太が9日に、メジャーデビューシングル「NEW WORLD」をリリース。『アニソングランプリ2010』出場を機にレーベルの目に止まり、デビューのきっかけを掴んだ。Twitter、MixChannelなどのSNSで発表したカバー動画が話題を呼び、投稿動画の総再生数は5000万回を突破し、とろけるような優しい歌声が、ファンの間で“メルティーボイス”と呼ばれている。「NEW WORLD」は、放送中のアニメ『DIVE!!』のエンディングテーマで、橋本は「2年前から大切に育てて来た曲」と話す。自身のルーツやSNSでの活動、本作に込めた気持ちなど聞いた。

やっとスタートラインに立てた

橋本裕太

——歌手になりたいと思ったきっかけは?

 もともと歌や音楽が好きだったのですが、直接的なきっかけは、叔父からギターを教わったことです。最初はギターに興味を持ったのですが、弾き語りをやっているうちに、ギターよりも歌うことのほうが楽しくなってしまって。

——最初はどんな曲をやっていたのですか?

 ジャンルというよりも、自分の感覚で“良い”と思った曲を歌うという感じでしたが、最初に教わったのは久保田利伸さんの「Missing」です。コード進行がシンプルで、とても弾きやすい曲です。実は先日、久保田さんのライブを見に行かせていただいたのですが、アーティスト性と言いますか、見せる力をすごく感じました。僕もいつかあんな風に歌えたらなと、とても刺激を受けました。

 R&Bに限らず、ポップスやロックも好きです。当時はMr.Childrenさんの曲もよく歌っていました。Mr.Childrenさんは、歌詞にパワーがあって、歌を伝える力をすごく感じます。久保田さんとMr.Childrenさんの2組が、僕の中ではとても大きな存在です。

——橋本さんは、動画コミュニティアプリ「MixChannel」で、いろいろな曲をカバーした30秒動画をアップして人気を獲得しています。「MixChannel」は、どういうきっかけで始めたのですか?

 僕はもともとアニマックス主催のオーディション「アニソングランプリ2010」に応募したことをきっかけに、今のレーベルに所属させていただくことになったのですが、そこから思うような活動が出来なくて。何か自分の現状を変えたいと思って、思い切って1年半前に上京しました。それで、「何か動き出さなきゃ」と思った時に、身近にあったのが「MixChannel」という動画コミュニティアプリです。それを上手く利用して、何か自分から発信出来ないかと考えて、カバー動画をアップするようになりました。

——自分の歌を聴いてもらえる環境を、自分で作ったということですね。

 簡単に言うと、そういうことです。ライブハウスなどでのライブ活動もおこなっていたのですが、なかなかお客さんを増やすことが出来ずに悩んでいて。それで、少しでもライブの動員に繋がれば良いなという気持ちもありました。

——いろいろある動画アプリでも、なぜ「MixChannel」を選んだのですか?

 もちろん並行してTwitterやYouTubeも利用しているのですが…SNSを通じて音楽を身近に楽しんでいるのは、女子中高生を中心にした若い世代で。「MixChannel」のユーザー層は、まさにそうした若い学生を中心にした女性が多いので、そこに上手く訴えることが出来たら、何かのきっかけを掴めるのではないかと思って。

——実際にその「MixChannel」などのSNSで広がった橋本さんの歌は、「とろけるような歌声」ということで、“メルティーボイス”と呼ばれていますね。

 誰が最初に言い始めたのかは分かりませんが、ユーザーさんの間でどんどん広まったようです。最初は「声がきれい」「眠くなる声」「癒やされる」など、いろいろ言っていただいていましたが、“メルティーボイス”と、一言で言い表す言葉を考えていただいたことで、より広がった感じがします。まるで自分のキャッチフレーズを付けていただいたようで、とても嬉しかったです。

——今年1月には、ヴィレッジヴァンガードとのコラボで、MONGOL 800の「小さな恋のうた」、HYの「366日」、いきものがかりの「帰りたくなったよ」などをカバーしたEP『とろけ唄』をリリースしていますね。

 学生時代からヴィレヴァンにはよく足を運んでいました。何を買う訳でもなく、見に行くのが好きでした。雑多な感じが良いし、普通の本屋さんにはないような本があったり、雑貨も面白くて不思議なものがたくさんあって。見るだけでも楽しい空間ですよね。そんな自分も馴染みのあるお店にCDを置いていただけたことは、感無量といった感じでした。

 それを経て2月に渋谷eggmanで初のバースデーライブ、4月にSHIBUYA O-WESTでワンマンライブ、そして7月に渋谷WWWでインディーズラストライブをおこなわせていただきました。

——2010年にオーディションを受けてから、一段一段といった感じですね。

 インディーズラストライブは、7年やって来た集大成として、すべてを出し切りたいと思いました。特典会では、みんな「おめでとう」と言ってくれて、背中を押してくれて、本当にうれしかったです。

 なかなかデビューが決まらず、気持ちがもやもやとした時期もあったけど、それも含めてじっくりと一段一段やって来たからこそ、今応援してくださっているみなさんと出会えたと思っています。メジャーデビューにあたって、やっとスタートラインに立てたという気持ちです。これまでの7年を糧として、しっかり頑張っていきたいです。

不安よりチャレンジ出来る喜び

橋本裕太

——メジャーデビュー曲「NEW WORLD」は、高飛び込み競技の選手を題材にしたアニメ『DIVE!!』のエンディングテーマで、本さんご自身が作詞をされていますね。

 実は、この曲はタイアップが決まる前から制作を進めていたもので、『DIVE!!』のお話をいただいた時に、歌詞が内容ともリンクするということで決まりました。

 僕自身15歳で歌を始めてから7年、歌を通して楽しいことも嬉しいこともありましたが、将来に対する不安や悔しい思いもたくさんしました。それでも歌を続けていきたいと思った。そういう気持ちの葛藤が、Aメロではすごく表現されています。アスリートと音楽で世界は違いますが、より上を目指したい気持ちは、僕も『DIVE!!』の主人公たちも同じです。

——Bメロは、未来に向けて希望が広がっていく感じになりますね。

 MixChannelをきっかけに、僕の歌に興味を持ってくれる人が増えて、それで僕自身も、もっとたくさんの人に聴いてもらいたいと思った気持ちを書いています。AメロとBメロでは、対照的な気持ちだけど、これまでに僕が感じて来た気持ちを、すべて表現したいと思って書きました。

——タイトルの「NEW WORLD」は、どういうイメージで付けたのですか?

 メジャーの音楽シーン、これまで見ることが出来なかった景色、これから経験するであろうこと…すべてが、僕にとっての「NEW WORLD」です。まだ出会えていなかった人たちと、これからたくさん出会って、その上で見ることの出来る新しい世界で、自分自身をもっと成長させていけたらと思っています。

——インディーズで出した作品はカバーだったので、オリジナル曲をリリースするのは初めてになるわけですが。

 この曲を最初に聴いた時は、僕自身がそれまでに聴いて来た音楽とは違ったので、すごく新しく感じました。僕が個人的に好きな、ゆったりとした音楽とも違っていましたが、でも、これを僕のデビュー曲として、シングル表題曲でリリースしたら、きっといろんな人に良い意味で驚いてもらえるではないかなと。不安みたいなものより、新しいことにチャレンジ出来る喜びのほうが大きかったです。

——レコーディングはいかがでしたか?

 この曲と初めて出会ったのは、実は2年くらい前で、まだ東京に出てくる前でした。それから何度もレコーディングを重ねて、完成形に至ったのは、本当に最近です。そういう意味では、大事に育ててきた曲という感覚です。

 曲と出会った時と、今では自分の置かれている状況は違うけれど、その都度、歌詞も書き直したり、メロディやオケもちょっとずつ進化させていきました。僕の中では、特にこの2年は目まぐるしく状況が変化した時期だったので、もどかしさや悔しい気持ち、それと対照的な希望に満ちた気持ちといった、自分の中で生まれた様々な気持ちを1曲に乗せることが出来たと思います。

——ちなみに高飛び込みは、やってみたいと思いますか?

 高いところは平気ですが、泳ぐのが得意ではないので、ちょっと怖いです。痛そうだし(笑)。

 飛び込み台から飛んで、着水するまでの時間は1.4秒だそうです。選手のみなさんは、その1.4秒で全てを出し切らないといけない。1.4秒のために全てを捧げる、すごい世界だなと思いました。

——アーティストは、1曲3〜4分の中で、自分のすべてを出し切らないといけない。

 僕も主人公の坂井知季くんたちに負けないように頑張ります!

“やっと会えた”という感覚

橋本裕太

——カップリングには、大切な人に向けた気持ちを温かくやさしく歌ったミディアムバラードの「ねぇ」を収録していますね。

 伝えたい気持ちがあるけど、照れくさくてなかなか言えずにいる男の子の目線で書きました。僕自身、そういう相手にはきっと上手く伝えられないだろうと思うし、友だちから話を聞いても、やっぱり照れくさいと言うし。じゃあ、どういう時なら素直に言えるんだろう? と、妄想しながら書きました。

——まさしく“メルティーボイス”の魅力が満載の曲ですね。

 ありがとうございます。ぜひイヤフォンやヘッドフォンで聴いてみてください。

——もう1曲の「心」は、ピアノが印象的なバラードで、どこか懐かしい雰囲気を持ったメロディが独特ですね。

 KOBASOLOさんに作詞作曲していただきました。KOBASOLOさんもYouTuberで、いろいろな曲をカバーしたり、いろいろなアーティストさんとコラボして動画をアップしている方です。動画を通してお互いに知っていて、それでコメントし合うようになって。簡単に言うと、ネットで繋がったみたいな感じです。以前はカバー曲を一緒にやらせていただいたのですが、今回はオリジナル曲を作っていただきました。

 大切な人を失ってしまったけど、自分の心の中にはまだいるんだよ、という曲です。切ないけど、どこか温かさのある楽曲ですね。〈大事な人、好きな人、全部君だよ〉というフレーズは、自分では絶対に思い浮かばないフレーズだなと思いました。

——きっと女性ファンが、橋本さんから言われたいフレーズなんじゃないでしょうか。

 どうでしょうね(笑)。でもそこは、すごく気持ちを込めて歌ったので、じっくりと何度も聴いてほしいです。

——リリースイベントなどで、全国各地で歌声を聴いてもらえる機会が増えたわけですが、SNSで繋がるのとは、違った楽しさがありますよね。

 はい。動画はいつも横顔で撮影しているので、ユーザーの方の中には、僕の横顔しか知らない方も多くて。なので、「初めて正面からの顔を見ました」という声もいただきます。でも一番多いのは、「動画も良いけど、生で聴くともっと良い」というもので。それは、すごく嬉しいですね。

——ネットで繋がっていた人と、初めて直接対面したりということも?

 僕としては“やっと会えた”という感覚です。今までリプしていた人とライブで会えて、その後にまたコメントをいただけて。イベントが終わってから「今日行ったよ」とコメントをいただいたり、お手紙もいただきます。それを読んで、僕の中で繋がって「このアカウントの子は、あの子だったのか!」と、ユーザーとお客さんが一致することもあります。

 全員とたくさんお話出来るわけではないですが、こういうちょっとしたコミュニケーションが、SNSではなくリアルでも広がっているのが、すごく嬉しいし楽しいです。好きな歌を通して、いろんなところに行けて。初めて行く土地も多いですし、そこで歌を聴いてもらえる。とても幸せな状況にいさせていただいていると思います。

——今後の目標は?

 大切にしたいのは、歌と声です。声を聴いただけで「橋本裕太だ!」と、分かってもらえるように、僕の声を知っていただくための活動をして行きたいです。

——では最後に、『DIVE!!』に引っかけて、最近何か思い切って飛び込むつもりで始めたことはありますか?

 洋服が好きで、作るまではいかないけど、既存の服を自分でカスタマイズしたいと思って。まだワッペンを買って付けるとか、別の布を縫い付けて、一カ所だけ違う柄にするとか、そのくらいしか出来ませんが。いずれはミシンをガンガンに使えるようになって、自分でちょっとした衣装くらいは作れるようになれたら良いな、と思っています。

(取材・撮影=榑林史章)

◆橋本裕太とは? 2010年にアニマックス主催オーディション『アニソングランプリ2010』に応募し、全国大会では1次で敗退するも、ソニー・ミュージックの目に止まり所属することに。2015年から「MixChannel」などSNSに30秒カバー動画をアップして、その歌声が「メルティーボイス(とろけるような声)」と話題になり、投稿動画の総再生数は5000万回を突破、MixChannelのフォロワー数は約6万人を数える。今年1月には、ヴィレッジヴァンガード限定でカバーEP『とろけ唄』をリリースし発売1週間で1000枚を越えるヒットを記録した。

作品情報

橋本裕太
1stシングル「NEW WORLD」
8月9日発売

【初回生産限定盤】
(CD+DVD)1481円(税抜)SECL-2167 〜 SECL-2168
【通常版】
(CD)1111円(税抜)SECL-2169
【期間限定生産盤】
(CD+DVD)1481円(税抜)SECL-2193 〜 SECL-2194

▽CD収録内容
1.NEW WORLD
2.ねぇ
3.心

▽初回生産限定盤DVD収録内容
NEW WORLD Music Video
心 -Another Version-

▽期間生産限定盤DVD収録内容
DIVE!! エンディングテーマ ノンクレジット映像