『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~』を開催したMUCC(撮影=西槇太一)

 4人組ビジュアル系ロックバンドのMUCCが6月20日・21日、東京・日本武道館で『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~』を開催した。この公演は、1997年に結成してから今年5月で結成20周年を迎える記念におこなわれたもの。20日に「第I章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6」、21日に「第II章 06-17 極志球業シ終T」と銘打ち、両日とも異なるセットリストでライブを展開。初日公演では、11年振りに披露された「朽木の塔」や、メジャーデビュー曲「我、在ルベキ場所」など懐かしい曲を含むセットリストでライブをおこなった。アンコールのラストでは、新譜から「脈拍」を披露するなど、過去から現在までのバンドの歴史を振り返るような20周年の集大成を見せたライブとなった。今回は、その初日におこなわれた「第I章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6」の模様を伝える。

20年の闇を痛みを開放しよう

逹瑯(Vo)(撮影=西槇太一)

 MUCCにとって武道館でライブをするのは、2011年以来約6年振りで、今回開催されたライブで5度目となる。この日は特別に、武道館フロア前方の座席を無くし、スタンディングエリアとして開放。会場にはMUCCと書かれた黒いTシャツを着用した観客などで溢れていた。ライブ開始時刻は午後6時9分。バンド名にちなんだ定刻になると、暗転しメンバーが一人ひとり登場。紫色の蓮の花のモニュメントをバックに、20周年の幕開けを飾ったのは「朽木の塔」。11年振りに披露された懐かしの名曲に、会場からは黄色い歓声が湧く。SATOち(Dr)の重く圧し掛かるドラムプレイに、ミヤ(Gt)とYUKKE(Ba)の厚みのあるサウンドが重なる。そして、ドス黒い負の感情を吐き出すかのように逹瑯(Vo)は歌い紡ぐ。

 「20年の闇を、痛みを、開放しよう」と逹瑯が叫びを上げると、ライブ定番曲の「蘭鋳」を披露。髪が乱れるほどのヘドバンや、手を前後に振る手バンなどをする観客も見られた。「武道館、楽しみにきたんだろうがおい。騒ぎにきたんだろうがおい。吐き出しにきたんだろうがおい。全部てめぇらのすべてをよこせよ、おい行けるか!」と逹瑯がフロアを煽っていくと激しさが更に増していき、フロアが揺れるほど会場のボルテージが上がった。

 逹瑯の「それがお前らの全部かよ、足りねぇよ」の言葉を合図に、攻撃的で恐怖を感じさせるヘヴィチューン「茫然自失」や「スイミン」、1stアルバム『痛絶』に収録の「娼婦」を立て続けに披露していく。6曲目では静寂を愛でるような心地よいサウンドから始まり、サビで激しく変化するメジャーデビュー曲「我、在ルベキ場所」へ。赤と青と紫の照明が彼らを目まぐるしく照らし、狂想を奏で続ける。

 その後、ミヤ(Gt)の鋭いギターが印象的な5thアルバム『鵬翼』に収録の「サル」を披露し、中盤戦へ。ここでは、今年1月25日に発売されたニューアルバム『脈拍』収録の独特なナンバー「りんご」や、繊細なバラード「勿忘草」を連続で演奏。ミヤの奏でる情緒豊かなギターサウンドが響き渡る。

 SATOちのリズミカルなプレイからYUKKEのアップライトベースがサウンドを肉づけるように始まったのは「1979」。逹瑯がテクニカルにハーモニカを吹きながら、魅惑なサウンドを曝け出していく。

明暗分けるステージ

ミヤ(Gt)(撮影=西槇太一)

 前半のヘヴィで攻撃的なナンバーから空気は一変し、観客に寄り添うように歌い上げる「断絶」や「9月3日の刻印」を披露。彼らの訴えかけたい想いが力強く、そして、優しく観客の心にすっと沁み込んでいくように逹瑯は熱唱する。

 6thアルバム『6』に収録の「666」のインストから続いたのは「空虚な部屋」。ステージでは炎の特効が燃え上がる中、デスボイスを炸裂させる逹瑯。そのまま「絶望」へと続き、激しさは止まることなく走り続けていた。

 「武道館踊れんのか? おい?」と逹瑯が会場を煽り、後半戦に突入。暗く痛みを感じる黒い世界観から打って変わり、明るく光を感じさせる曲「前へ」。スタンディングエリアは、拳を振り上げるなど熱狂的な人々で溢れ、逹瑯も軽やかにステップを踏み自由奔放に動き回りながら歌った。その熱狂的な空気を保ったまま、16曲目には「夕紅」が届けられた。

 そして観客から大きな観声が上がったのは、20周年記念のために制作された会場限定シングル「家路」。さらに『脈拍』収録のアッパーチューン「絶体絶命」へ突入。

 「武道館のみなさん、落ちるぐらいの勢いで暴れちゃってちょうだいよ!」と煽り<キライキライキライキライキライキライキライ〜♪>というネガティブなフレーズが連呼される曲「大嫌い」を披露。ラストは2ndアルバム『葬ラ謳』の最後を飾るミヤの実体験を元にしたナンバー「ズタズタ」を披露し、本編を終了。

明日はどんな夢を見ようか?

YUKKE(Ba)(撮影=西槇太一)

 アンコールでは黒いTシャツに着変えたメンバーが再びステージに登場。1曲目には冬のバラードナンバー「ジオラマ」をそっと囁くように歌った。ここでMCへ。逹瑯は「ついにこの日が来ましたね。もう終わるんですが(笑)。1回目のMCだったら、この日が来たね! 楽しみにしてた? となると思うけど、もう終わるんですよね。よくもまあ、こんな暗いバンドをやっていたもんです。よくもまあ、こんな疲れるバンドをやってたもんです。よくもまあ、ついてきてくれてるもんです」と20周年を振り返った。

 5度目の武道館にして初めて、フロア前方をスタンディングエリアにしたことに関してYUKKEは「楽しい? あ、良かったね~。上の人も見てて面白いでしょ?」と緩いキャラ立ちで語る。

 ミヤは「武道館って良いですね。ありがとう。なんかね、当時の初めての武道館を思い出した。演奏始める瞬間に浄化されました、あの曲が。ありがとう。しかし暗いバンドだね~」と久しぶりに演奏した「朽木の塔」について触れながら、振り返った。

 SATOちは「やっぱり俺、始まりって緊張するよ。初めての武道館も凄く緊張したんだけど、今日の緊張感はなんか、ワクワク緊張感ですげー良かった。本当に。今日、MCがないし、立つタイミングがなくて、みんなの顔全然見れなかった(笑)。ちょいちょいここかな? というタイミングでパッて見たんだけど、ドロドロしてる曲だからまた座って(笑)。明日はもっと立てるといいなー」と公演を振り返り、笑顔を見せた。

SATOち(Dr)(撮影=西槇太一)

 そして「好き勝手にやってってちょうだい、よろしくね」と逹瑯が煽り、1stミニアルバム『アンティーク』収録曲「オルゴォル」を演奏、ステージ横から発射された銀テープが鮮やかに舞う中「名も無き夢」を続けた。さらに、今までの闇や痛みを払拭するかのような、恍惚感溢れるナンバー「つばさ」を届けた。

 20周年のアニバーサリーライブのラストを彩ったのは、新譜『脈拍』の表題曲「脈拍」。全25曲というラインアップで彼らのステージは幕を下ろした。懐かしの楽曲を演奏しつつも、最後は新曲で飾るというセットリストが20年の歴史を思い起こさせ、彼らの長い歴史と重みが観客に伝わったことだろう。「暗闇の中、明日はどんな夢を見ようか?」と告げた逹瑯の言葉通り、闇の中でもがき続けながらも、明日への希望を捨てないバンドの姿勢が示された一夜だった。(取材=橋本美波)

セットリスト

『MUCC 20TH-21ST ANNIVERSARY 飛翔への脈拍 ~そして伝説へ~』
「第I章 97-06 哀ア痛葬是朽鵬6」

6月20日 東京・日本武道館

1.朽木の塔
2.蘭鋳
3.茫然自失
4.スイミン
5.娼婦
6.我、在ルベキ場所
7.サル
8.りんご
9.勿忘草
10.1979
11.断絶
12.9月3日の刻印
13.666~空虚な部屋
14.絶望
15.前へ
16.夕紅
17.家路
18.絶体絶命
19.大嫌い
20.ズタズタ

アンコール

EN1.ジオラマ
EN2.オルゴォル
EN3.名も無き夢
EN4.つばさ
EN5.脈拍