243と吉崎綾のMV撮影の合間に取材に応じた鶴久政治

 女性音楽ユニットの「243と吉崎綾」をプロデュースする、元チェッカーズの鶴久政治。同ユニットは、昭和歌謡曲の素晴らしさを伝えるため、これまでに小泉今日子や中森明菜などといった80年代のアイドルソングをカバー。実際に彼女達が歌うオリジナル曲は当時を彷彿させるとして、その時代を知るファンをはじめ、初めて耳にする若年層まで幅広く好評を得ている。鶴久はチェッカーズ時代、作曲も手掛け「夜明けのブレス」などの名曲も生み出した。その後は、多くの歌手に楽曲を提供し、現在はアイドルをプロデュースしている。長年、シーンを見てきた鶴久は今の音楽シーンをどうみているのか。そして、80年代と今のアイドルソングの違いはあるのか。話を聞いた。

シンプルさ

――80年代の歌謡曲の良さを伝えるため「243と吉崎綾」のプロデュースをされています。その動機は。

 243の歌声を聴いた時にその歌い方にクセがなくて、何と言うか良いフィーリングだったんです。感性もとても良かったし、クセもついてなかったので「OK」ということになったんです。それで、80年代の楽曲をカバーして、レコーディングしてみたら、(オリジナルの)本人とダブるような瞬間が何度もありました。キョンキョンの歌を歌うとそういう色になるし。そういう素質は凄い。彼女は色で例えると「白」。染まるのが上手いと思いました。

――80年代と今とではアイドル曲に違いはありますか。

 その違いは僕はあまり感じていなくて、それはやっぱりAKB48がそのシーンの中心にいて、それは秋元康さんがやられているので。当然サウンドは変わってきて、色んな作り方はありますけど、やっぱりみんなが感動する、ツボに入るメロディというのは何十年の前から培ってきた“秘伝のタレ”があるんですよね。

 歴史を感じない物に僕はあまり魅力を感じないですよ。「なぜこの店は行列ができているのかな」と思って実際に食べてみると、大体は「余計なことをしていない」。歴史がある店ほどそうしたシンプルさがある。

 今の時代は音で余計なことができますが、メロディと歌詞、歌い手は基本的に変わりません。いつもメロディを作る時に一音一音責任を持って作るのは、歌詞とメロディが結婚すると人と違って一生離婚できないんですよ。アレンジという、住む家は変わるんですけどね。自分が作ったメロディにいい言葉と結婚できるといいなと思う親心。それを広めてくれるのが243と吉崎です。

――この曲が何年も先も歌われるかもしれないということを考えて作ったりもしますか?

 何年後とかあまり意識はしないですけど、僕自体が歴史を感じるものが好きだから、必然とそういう感じになると思うんです。それが「何年代風」とか「ちょっと古過ぎる」とか「レトロ」とか言われても、それが好きだから別に何も気にしないですね。