結成8年目に向け飛躍を誓った吉田山田(撮影=岩崎 真子)

 ボーカルデュオの吉田山田が3月25日に、東京・ディファ有明でワンマンライブ『吉田山田 7周年7カ月7会場マンスリー企画「Over The Rainbowツアー」ツアーファイナル 有明コズミックダンスホール』をおこなった。昨年9月から彼らの結成7周年を記念し始められ、8年目に突入するためのステップとしておこなわれたこのツアーでは、初回には7m四方のキャンバスに山田義孝(Vo)がライブペイントをおこなうなど、通常の音楽ライブとは趣を異にした様々なアイデアが実施されていた。この日おこなわれたそのファイナルステージでも、この日ならではの趣向がたっぷりと施されたライブが披露された。

アッパーな楽曲でダンスホールに

歌う山田義孝(撮影=岩崎 真子)

 今年で結成8年目に突入する吉田山田は、吉田結威(Vo、Gt)と山田の2人からなるユニット。2009年にファーストシングル「ガムシャランナー」でメジャーデビューを果たした彼らは、NHKの番組『みんなのうた』で、2013年にリリースしたシングル曲「日々」が放送され、同曲が大きな反響を呼び注目を集めている。また、2015年に公開された映画『ボクは坊さん。』(真壁幸紀監督)の主題歌を務め、タッキー&翼のアルバム『TRIP & TREASURE TWO』にも楽曲提供をするなど、幅広く活躍している。

 この日の会場であるディファ有明は、普段はプロレスの試合が数多く披露される会場。近年ではアイドルのイベントがおこなわれるなど、多種多様な文化が交差する場所でもある。様々なアイデアを凝らした彼らのこのツアーにはピッタリの会場と言えるだろう。会場に入ると天井にはミラーボール、ステージには大きなテーブル、その前面に「吉田山田」と書かれた幕が下ろされている。そのテーブルの上ではターンテーブルやミキサーなどが置かれ、この日のステージで2人のサポートをするDJ U-ICHIが、忙しなくDJプレーを展開していた。そして、多くの観衆がTシャツやパーカー姿に、首にタオルを巻いた姿で踊るように体を揺らし、彼らの登場を待ちわびていた。

 ステージスタートの予定を15分程過ぎた頃、DJ U-ICHIの発していた音が急に大きくなったかと思うと、曲の終わりとともにフェードアウトし、会場は暗闇に包まれた。そしてミラーボールに青い光が当てられ、会場には1つの電子音、さらにもう1つの電子音と2つの音が繰り返し鳴らされ、アンビエントな雰囲気を作り出していた。

 やがてその音は4つ打ちのバスドラのような音とハーモニーを形成し、その音楽の鳴り響く中2人が現れた。鍔の付いた帽子とサングラス、そして紺のスーツと2人とも同じ格好でビシッと決めたそのスタイルは、まるで米映画『ブルースブラザーズ』(1980年)のジョン・ベルーシとダン・エイクロイドのようだった。ステージにはクールにたたずむ吉田と、そのビートと観衆の興奮に酔いしれたように体を動かす山田と、好対照な2人の姿が見えた。

 オープニングナンバーは「夏のペダル」。DJ U-ICHIのプレーによるREMIXサウンドに乗せて、吉田、山田それぞれの声が交差する。ソウルフル、というタイプではない彼らの歌だが、絶妙にクラブサウンドと溶け合う。まさにこの時点で、今までにない吉田山田の一面が披露され、観衆は肩透かしのようなその振る舞いに戸惑うどころか狂喜し、体を揺らしてその音を感じていた。

 まさに会場が「有明コズミックダンスホール」となった瞬間。普段はギターを手にステージを見せる吉田が、山田と同じようにハンドマイクで歌っているのも、新鮮な姿だ。続いて「水色の手袋」、吉田がギターを手にし、バンド編成のサウンドにチェンジしさらに続いた「カシオペア」「涙流星群」と、アッパーな雰囲気で呼び起こされた熱気が会場を支配していた。

躍動感の中に見える吉田山田の本質

緩急織り交ぜたステージを見せた吉田山田(撮影=岩崎 真子)

 「どう? みんな驚いた? 驚いてくれたら嬉しいYO!」慣れないラッパー言葉でおどけながら、吉田が観衆に語り掛ける。スタートは、まさに彼らの狙い通り。前列から後列までびっちりと埋まったフロアは、ステージの開始から総立ち。彼らのサプライズにも大喜びという感情が、皆の笑顔に表されていた。さらに躍動感あふれるステージにすべく、吉田は観衆に向かって「有明の皆さん、準備OK? 踊っちゃっていいからね! 最後までよろしく!」と叫んだ。

 続いたポップなナンバー「未来」で、山田がラストの詞にある<もう一歩!>という言葉を観衆に歌わせ、ステージと観衆の距離はさらにぐっと近くなる。その後に披露されたリズミカルな「地図にない路」の詞にある<今やるべきことをちゃんとやって ほら苦手な一歩を踏み出して>と、心に迷いを持つ人を後押しする言葉が、観衆の胸の内に染み込む。力強いバンドサウンドとは対照的に、メインでボーカルを撮る山田の声は優しさすら感じられる。そして、このような言葉を人々にしっかりと伝える力を持っている。これこそが、吉田山田の大きな魅力の一つなのではないだろうか。

 そしてこの日は、この日の2日前におこなわれた「LINE LIVE」の際に発表された、12枚目のニューシングルの曲「街」を初披露。地響きを思わせるファズの利いたベースで刻まれた、ロックなビートが会場を満たす。そのサウンドに山田と吉田は日常に感じる様々な思いをちりばめた詞を、力強い歌で響かせる。初めて聴かされたその音に、観衆はまた嬉しそうな表情を見せながら、リズムに合わせて体を揺らしていた。

 さらに「新しい世界へ」「押し出せ」とアクティブな雰囲気に、まだ春の暖かさが感じられない有明の夜にも猛烈な熱気を醸し出していった。一方でそんな熱い雰囲気に続き、2人のハーモニーをたっぷりと堪能できる「日々」「僕らのためのストーリー」も披露。彼らの歌が広いホールの隅々まで響き、彼らの世界観がしっかりと描き出されていた。

新たな「魔法のような」道の始まり

最後に観客の喝采に応える吉田山田(撮影=岩崎 真子)

 いよいよ後半。ステージには再びDJ U-ICHIが呼び出され、気持ちを盛り上げるグルービーなビートを生み出す。そのリズムに合わせ、ステージ前面からフロアを中央より区切り、左を「吉田」チーム、右を「山田」チームとしてコールアンドレスポンス合戦を始めた。それぞれの掛け声に合わせ、観衆も大きな声で答える。

 これが効いたか、「サンライズ」からラストナンバー「てんてんてんて」までの展開は、まさしく怒涛のような流れだった。ロック的でもあるその力強いサウンドの中、彼らの美しいハーモニーが自由に宙を舞う。そして時にそのサビに歌われる詞が、ハッとさせられるようなインパクトを醸し出し、聴くものの胸に突き刺さる。さらにまた挟み込まれるコールアンドレスポンス、手拍子、山田の「右手を挙げろ!」という声で振り上げられたタオル、そのタオルを「イッパツ」のサビで、みんなで振り回す姿も壮観だ。

 彼らの後ろで2人を支えるコズミック・バンドのプレーヤーたちが、途中バンドセッションをおこなうコーナーも設けられ、絶妙なプレーを見せる。そんな中、吉田、山田もそれぞれのスタイルでバンドのメンバーに絡み、プレーを盛り上げる。猛烈な勢いのまま、ステージは「てんてんてんて」まで駆け抜けた。「サンキュー、トーキョー!」という山田の言葉とともに、2人は深々と一礼を見せ、ステージを降りた。

 さらに鳴り響いたアンコールに応え、再び登場した2人はこの7カ月、そしてこの7年の思いを明かし、自分たちを後押ししてくれたファンへの感謝と、これからの躍進を誓った。最後に彼らが歌った「魔法のような」は、まさにこれまで彼らが歩いてきた中で見てきた夢のような時間を表していた。演奏が終わり、「7カ月、いや7年間、ありがとうございました!」吉田は生声でフロアに向かって叫んだ。「8年目もよろしく!」続いてと山田が叫ぶ。吉田山田の新たな「魔法のような」道は、この瞬間から始まった。(取材=桂 伸也)