女性からの支持が高いCHIHIRO。彼女の曲作りに迫る

 福岡県出身のシンガーソングライター、CHIHIROが3月29日に、通算6枚目となるフルアルバム『KISS MISS KISS』をリリースする。2007年にCDデビュー。切ない恋模様を歌った楽曲が共感を得ており、特に女性からの支持が高い。今作は、前作『NAMIDA CARATS』から約2年ぶりとなるオリジナルアルバム。「過去になってしまった切なさと、その日がくれた温かさと、その両方を表現したかった」と語る今作のリード曲「君がいない世界は切なくて」は、KEN THE 390をフィーチャリング。悩みながらも制作したという楽曲は、自身のマストソングとなる予感を感じさせたという。デビューのきっかけから恋愛観、今作の制作背景や自身が思う幸せとは何なのか、話を聞いた。
 

作曲オーディションに参加しつつ、クラブでライブ

CHIHIRO「KISS MISS KISS」

――最初はシンガーとしてではなく、作曲家として音楽キャリアをスタートしたんですよね?
 
 昔から洋楽が大好きで色んなジャンルを聴いていたんです。ブライアン・マックナイトやマライア・キャリーが好きで、“美メロR&B”をよく聴いていて「こんな綺麗なメロディが作れるようになったらいいな」と思って独学で作曲をしていました。作曲オーディションに出してみようと思って20社くらいに応募してみました。
 
――楽器はやられていたんですか?
 
 3歳からピアノをやっていました。両親が私を音大に行かせたくて3歳からソルフェージュ(編注=音、楽譜、音楽理論全般に対する基礎訓練)などをやっていたんです。毎日ピアノの練習だけで8時間の日もあったりして(笑)楽譜通りに弾く、同じ事を何度もやるという事の反動から「自分の曲が作りたい」と思うようになったと思うんです。独学で趣味程度にやっていて、デモ程度のものをつくっていました。誰にも聴かせる事はなかったんですけど、突然「出そう!」と思って、まとめて曲を色んなレコード会社に送ったんです。
 
――何社くらいから反応がありましたか?

3社から連絡を頂き、それがきっかけで東京に行くようになりました。その時にアドバイスをしてくれた方に自分で歌ってみたらと言っていただいたので、それまで人前で歌う機会がなかったんですけど、ライブをさせてもらったり、ボイトレを習ったりして自分の曲を自分の声で表現できるようになりました。
 
――シンガーソングライターの方向でと。
 
 そうなんです。それでちょっとやってみようかなと思ったんです。

――クラブで歌う事がはじまりだった?

 自分が歌った曲がをクラブのDJに気に入ってもらって、まず「アナログを出しませんか?」という話を頂きました。それで3枚のアナログレコードを出したんです。その当時で3000枚くらい売れて、全国のDJが流してくれるようになった時にライブをしていたら、今の事務所の方が観ていてくれてCDを出させて頂くようになりました。

――最初に作曲をしていた時も、今のようなラブソング系を?

 はい。2013年にベストアルバム『BEST 2007-2013』を出したんですけど、その中の一曲は昔作ったデモをそのまま形にしたものもあります。
花火大会の夜ふられて、悲しかった気持ちをそのまま花火に例えて歌に書いた曲なんです。

――ラブソングを主軸にシンガーになろうと決意した時は?
 
 クラブ出身だったので、アップチューンやクラブサウンドなど色々な曲を書いていたんですけど、支持してくれるのが段々とラブソングが多くなってきたんです。「私はそれを求められているんだ」と思って、そこからはほぼラブソングになりました。
 
 最初はDJの方に支持して頂いていたんですけど、徐々に女の子のファンが増えてきたんです。そこからシフトしていって「ラブソングのシンガーソングライターになろう」と思いました。でもR&Bは好きなのでそこは崩さず、「R&B」と「恋」と「シンガーソングライター」という事を両立させて行こうと思いました。
 
――恋愛とは一般的にとても幅広いものかと思いますが、どういったシチュエーションから着想を得ていますか?
 
 自分の経験ばっかりですね。同じ恋でも見方を変えて書いたりもしているんです。自分が経験していない事や、自分が分からない感情は書かないようにしているんです。
 
――そこはこだわっている?
 
 そうですね。自分が苦しんだ部分や悲しかった部分をちゃんと書いて、ただの“好き嫌い”の恋の話ではなくて、「こんなに苦しい時期があって、だから私はこうなりたくてこうなる」という起承転結がちゃんとあるラブソングを作りたいなと思っています。だから「こんな事書いたら重たいよ」という歌詞も書くようになりました。
 

「リアルさ」や「怖さ」は面白いなと思う

CHIHIRO

CHIHIRO

――歌詞を読むと男性視点でも共感できる部分がありました。
 
 踏み出せない部分などは男性も一緒だと思うんです。男性の方にもたくさん聴いて欲しいです。
 
――「好きになっちゃいけない人」は、こういう経験がある方も多いかと思います。
 
たとえば、先生を好きになってしまった、彼女がいる人を好きになってしまった、好きなアイドルを想う気持ちと重なった、そういうひとりひとりの聞き方をして下さる方が多くて、私も新しい発見が多いです。
 
――“好きになっちゃいけない”と一口で言っても、様々なシチュエーションがありますね。アルバムを制作するにあたって、選曲はどのように進めましたか? テーマはやはり“KISS”?
 
 タイトルが『KISS MISS KISS』ですが、幸せなKISSも切ないKISSもあって、このタイトルに表しているのはどちらかというと「切ないKISS」です。だから昨年リリースした『片恋集』からも『Christmas Love』からも切なさがある曲を選びました。でも切なさだけではなくて、その先に何があるかという所まで書きたくて新曲を持ってきたりしたんです。
 
――1曲目の「アイマイな二人」はハウス調で他の曲とは違う色ですよね。この曲の着想は?
 
 私は今、1年の半分くらいはハワイにいるんですけど、そこにいるとよくトロピカル・ハウスがかかっているんです。ハワイではトロピカル・ハウスの上に、切ない歌詞をのせる曲が多いんです。「この感じは凄く良いな」と思って、私はそれを日本語でやろうと思いました。R&Bにも通じるものがあるので、今までにないサウンドの上に、今までの私らしさが出る歌詞をのせようと思ったんです。

――ちなみに海外の歌詞はCHIHIROさんから見てどういった印象でしょう?
 
 洋楽の歌詞の「リアルさ」や「怖さ」は面白いなと思います。
 
――それが自身の歌詞に反映される事もありますか?
 
 そうですね。日本の歌詞にはあまり「本音で言う怖さ」というのはないと思うんです。多くはきれいに終わるというところがあると。でも私は少しトゲがある方が好きです。だからこの曲も「あなたはどうなの?」というフワッとした感じではなく、「これって遊びなの? 遊びじゃないの?」みたいにはっきり言っていて、普段あまりラブソングには入れないようなキーワードをたくさん入れています。