「WREP」開局セレモニーに出席したZeebra、AK-69ら

 ヒップホップシーンが一般社会に浸透しつつあるなかで、日本初のヒップホップ専門ラジオチャンネル『WREP』が開局した。先月都内でおこなわれた、開局セレモニーに出席した、ヒップホップ・アーティストのZeebraらは同チャンネルへの期待感を示した。この専門チャンネルの開局により、ヒップホップを毎日聴ける環境が整うとともに、豪華アーティストによる番組が届けられることで、シーンが寄り身近になることが期待される。そして、この取材ではまた別の希望を感じた。

細分化と区画化

 この日は、Zeebraをはじめ、AK-69や番組のパーソナリティを務めるアーティストが多数出席した。その顔ぶれは、DJ TY-KOH、JASMINE、LEON a.k.a. 獅子、Lick-G、TKda黒ぶち、KEN THE 390、DABO、KEITA、UNO、LUNA、Jinmenusagi、CREAM、CHOZEN LEE、DJ RYOW、S7ICKCHICKs、ISH-ONE、MC正社員、EGO、高木完、LETYと豪華な面々だ。

 会見のなかで印象に残ったのは、AK-69が語った「日本のヒップホップの歴史で、東京や地方のシーンが取り沙汰される事があっても1つになることはなかった」という発言だった。

 昨今、インターネットの普及などにより、音楽だけに限らず、様々な分野の細分化が進んでいる。同じジャンルでも、小さなシーンが散在するような状況は「多様化」ともいえるが、「区画化」ともいえよう。

 日本のヒップホップは、この20年弱でかなりシーンが細分化した。不良っぽいMCもいれば、内気なMCもいる。ストリートから出て来たMCがいれば、ネット動画の現場から出て来たMCもいる。韻を踏むMCがいれば、踏まないMCもいる。フリースタイルをやるMCもいれば、やらないMCもいる、という状況だ。

 AK-69の発言「1つになることはなかった」が象徴しているように、ジャンルやスタイル、立場によって日本のヒップホップシーンにはある種の境界線が生じていたのかもしれない。だから、例えばネット出身のラッパーと、フリースタイルが得意なラッパーが同じ現場に居合わせる、という様なことは「あまり」起こらなかった。

ユニティという概念

Zeebraはラップを披露し、その期待感を示した

 それを踏まえ、今回の『WREP』に参加するパーソナリティの顔ぶれを見て、特筆すべきなのは、東京のMC、地方のMC、ネットMC、フリースタイルするMC、またはしないMC、さらにはダンサーやレゲエ、R&Bからもアーティストが抜擢されているなど、年齢、性別、シーンを超えて人材が混ぜられている点かと思われる。

 スタイルの垣根を越えて、立場を越えて、集ったアーティストたちが並んだのは壮観であった。もしかしたら、異論もあったかもしれない。しかし、「日本のヒップホップのキング」と呼ばれるほどの立ち位置にいるZeebraだからこそ、誰もが納得できたということもあるだろう。

 ヒップホップには元々「ユニティ」という概念がある。アーティスト同士がヒップホップという1つの「文化」を持ち上げようという意味だ。全体でシーンを盛り上げていく「総力戦」の文化である。それをZeebraは、CMなどで日本語ラップが取り上げられている良い流れの中で、より強めたいと考えているのではないだろうか。そうした全体的な視野を持つ、リーダーがいるコミュニティには発展性を感じる。

 そして「分断」の時代と言われているからこそ、今大切なのは「団結」なのだ。その流れは新しいスタイルの音楽にも繋がっていくだろう。この様な考え方が他の音楽ジャンルにも広がり、枠を超えた交流が生まれ、いくいくは、互いのジャンルが良い意味で影響を与え、新たな音楽、いわば「まだ名前の付いていない音楽」が生まれる、という様なワクワクするような状況になることを願いたい。(文=小池直也)