ゴスペラーズ

 日本のボーカルグループ・シーンをリードするゴスペラーズが3月22日に、2年半ぶりとなるアルバム『Soul Renaissance』をリリースする。早稲田大学のアカペラサークルを母体に1991年に結成、94年に「Promise」でメジャーデビュー。ソウルミュージックをキーワードに23年にわたり最前線で活動してきた。アツいソウルと美しいハーモニーが同居した今作について、メンバーは「ソウルマナーに則って、自分たちのソウルミュージックをアップデートした濃い目の作品」と話す。彼らが今問うソウルミュージックとはどのようなものなのか? 新曲に触れながら根底にある想いを聞いた。

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黒沢薫

――約2年半ぶりのアルバム『Soul Renaissance』は、ソウルという部分で、どこか懐かしさもありながら今風もあり、そのあたりがすごくバランスよく収められている印象でした。ルネッサンスという部分では、どんな気持ちを込めていますか?

北山陽一 2000年に『Soul Serenade』というアルバムを出したのですが、ここには「永遠(とわ)に」が収録されていたりして、初めてチャートトップ10入りをしたアルバムだったんです。その頃に感じた、曲がどんどん生まれていくことの高揚感や、そこにすごく影響を与えた90年代当時の音楽を、今の僕らがやったらどういうものになるかをテーマにしました。おっしゃっていただいた通り、懐かしいテイストのものを今の僕らが表現するとどうなるか? それを突き詰めていったら、面白いアルバムになるんじゃないか? と。

 実は、20周年のツアーをやっているとき、フッとまったく違った世界にいけたみたいな、急に景色が変わった感覚になったときがあったんです。続けていくことで、見えていくものもあって。たとえ『Soul Serenade』と同じことをやったとしても、きっと違う世界が見えるという、期待とワクワクがすごくありました。

――バブルな香りもすごくあって。ブルゾンちえみさんとか平野ノラさんとか、90年代ネタのお笑いも流行ってるし(笑)。そういうところでも、今の時代感覚とも絶妙にマッチした感じがありました。

酒井雄二 それは、たぶん距離感なんだと思います。誰も知らないほど遠くはないけど、今世の中にあるかといったらないことがはっきりしている。そういうものの良さが、平野ノラさんやブルゾンちえみさんのネタにはあって。このアルバムにも、それがあるわけです。

村上てつや 僕らがテーマにした時代の音楽は、歌が主体になっている曲が多くて。だからこそボーイズIIメンのようなコーラスグループがたくさんいて人気を集めていました。でも、今はそういうグループが本当に減ってしまって。そういうところに対して、僕らなりのアップデートを加えながら問うてみたい、と。そういう気持ちが、今作を作る上での推進力になったと思います。

安岡優

黒沢薫 僕らって、90年代にK-CI & JOJO(ケー・シー&ジョジョ)の荒々しいゴスペル丸出しの歌い方が、当時のモダンなサウンドに乗ったときに、こんなに新しく感じるんだ! というものを最初に体験した世代なんです。それがぐるっと回って、今の子たちが僕らの曲を聴いて、同じように感じてくれたらうれしいです。

安岡優 歌手って、30代から40代にかけての10年間でも、まだまだこんなに上手くなれるんだ! ということを今実感しています。1人ひとりの実力もそうだし、グループとしてのハーモニーもそう。昨日より今日のほうがちょっとだけ上手くなっていることが、何よりの喜びだから、それを実感しながら作れたのはすごく大きかったです。

――ソウルやR&Bは、そもそも古くからある音楽で、根底にあるものは決して変わってない。それでも海外では最先端の音楽として流通しているわけで。

村上てつや ブルーノ・マーズだって、決してすごく新しいことをやっているわけではないんです。魅せ方が新しいのであって。

安岡優 ブルーノ・マーズも若い子たちにとっては、それが新しいものとして届いていて。我々の世代からすると、全部知っているものなんだけど、それが好きだしそこにすごく価値を見いだしているわけですよね。だからこそ、僕らが好きなど真ん中を、23年目だからこそ出来る手法でやるのが良かろうというのがあったんです。

――自分たちの中にあるものに対して、自らルネッサンスを起こしながら制作したと。今作には、作詞・作曲・編曲者として、いろいろな作家が参加。アーティストとコラボした楽曲もあって。

村上てつや 今作では、森 大輔くんとか、AILIさんとか、自分たちよりも若く新しい作家さんたちに入っていただいたことも大きいです。彼らには、90年代のソウルにあったメロウさやアツさ、90年代の俺たちの楽曲にあったテイストというものを意識して作ってほしいとオファーしました。それに対して、すごく良い答えが返ってきたので、それだけですでにルネッサンスだったなって。

安岡優 彼らは、15年前の僕らの歌声をキャッチして、そこからミュージシャンを志してくれた。そういう人たちとの出会いと再会に、僕ら自身も刺激を受けて制作ができました。

北山陽一 僕らの音楽が響いてくれた人と、今度は一緒に響き合えたらそれ以上に最高なことはないです!

村上てつや そういう、一緒にやれるツボを分かってくれている人は、随時募集中です! 

Suchmosへの回答ですか?って、絶対聞かれると思った

村上てつや

――今作には、RHYMESTERやJazztronikなども参加。Jaztronikが編曲した「暁」という曲は、90年代のジャミロクワイやガリアーノなんかを彷彿とするアシッドジャズ系のサウンドが特徴的で、すごく疾走感があってクールですね。

黒沢薫 Jazztronikは、今まではバラードばっかり作ってもらっていて。実際の彼はクラブミュージックが専門なので、いつかそういう曲をやって欲しいと思っていました。今回「やっとクラブミュージックをやってもらえる時が来た」と。

 野崎くん(Jazztronik)も、すごく楽しんで制作してくれて。ビートを2パターン作って、「こっちはインコグニート風、こっちはSoul II Soul風ですけど、どっちが良いですか?」って(笑)。「じゃあ、Soul II Soulのほうで」とか、そんな話をしながらだったのが、僕らもすごく楽しかったです。

――最近だとSuchmosが流行っているので、90年代当時を知らない若い子にも入りやすいと思いますね。彼らもジャミロクワイなどをネットで見て刺激を受けたと言っていましたし。

村上てつや 「Suchmosに対する回答ですか?」って、絶対誰かに聞かれると思っていました(笑)。ああいうシティポップとソウルの際どいところにいる音楽が流行るのは、僕らとしてもすごく心地良いですね。だからこそ、こういうサウンドの上で、ゴスペラーズ流のボーカルスタイルを聴かせたいというのもありましたし。

 彼らが、サッチモ(ルイ・アームストロング)がかっこいいからSuchmosと付けた話は最初は笑ったけど、俺たちだってゴスペルだからゴスペラーズなわけで(笑)。そういうシンプルさは、同じじゃんと思うし。

安岡優 要は、子どものような衝動のままと言うか。それをどちらも持っているんだと思います。

――RHYMESTERとは、「Hide and Seek feat. RHYMESTER」を。荒野に立つような壮大さや荒々しさが、また違ったかっこよさを発揮していますね。

黒沢薫 彼らが僕らの楽曲に参加してくれたのは、2002年のアルバム『FRENZY』収録の「ポーカーフェイス」以来で、僕らが彼らの楽曲に参加したこともあって。そろそろ一緒に新しい曲をやりたいなって、昨年彼らが主催したフェス「人間交差点」に出たときに思ったんです。

――さっきのSuchmosの話ではないですけど、今ラップがすごく流行っているので、そことも時代性という部分でマッチした感じですね。

酒井雄二

黒沢薫 でも僕らは、意識せずにやっていたので。期せずしてシンクロした感じです。だから、こういう取材でいろいろ話してもらうことで、そうなんだと気づくことも多くて。

村上てつや ラップがブームになっている背景には、RHYMESTERが守ってきたものが、すごくありますよ。彼らが、“売れること”と“クオリティ”の両方をしっかり守りながら、いろんなメディアにも出て頑張ってきた。まあ、彼らだけの功績ではないんだけど。

 彼らは大学の先輩だし、デビューのきっかけを作ってくれた恩人でもあります。以前はレーベルメイトでもあったし。普段から遊ぶとかの仲の良さとは違う、契(ちぎり)にも近いと言うか、お互いくたばるなよっていう関係ですから。他の若いラッパーとやるという選択肢もあったけど、ここはやっぱりRHYMESTERとやりたいですよね。

黒沢薫 楽曲制作に参加してくれたAILIさんは、もともとヒップホップのトラックメーカーなので、「RHYMESTERと仕事するのが夢でした!」とすごく興奮していて。僕らとRHYMESTERが一緒にやることの意味やすごさを感じてくれていた。ファンもきっとそんな風に感じてくれていると思います。ただ、歌詞が、まさかでしたけど(笑)。

村上てつや Mummy-Dの歌詞で、いきなり<“F. U. R. I. N.”>ですから(笑)。

北山陽一 先行配信されたものを聴いてくれたファンからは、「あんなに素敵な愛を歌った同じ口で、不倫を歌うのか! けしからん!」ということで、逆に好評ですけどね(笑)。

村上てつや その「けしからん!」というのは、RHYMESTERの決めゼリフなので、ファンは分かってくれてるな〜と思いました。

――ソウルやR&Bは、本来ドロドロとした愛憎劇を歌ったものも多くて。むしろ歌ってなんぼという、その魅力もあったわけですけど。昨今は、色恋が歌いずらい世の中だとか感じていますか?

村上てつや いやいやいや。むしろ最高のタイミングです。だって、この曲が引き立つじゃないですか!(笑)

安岡優 そもそもアルバムタイトルに「Soul」とついている限り、基本的には色恋について歌っているアルバムなので! ラブソングの帝王=鈴木雅之さんしかりですけど、我々もラブソングを歌うボーカルグループとして、この国の先頭を走っているつもりですから、そこは曲げられませんね!

――そして、お菓子の小枝の誕生45周年を記念したコラボ楽曲にもなった「angel tree」という曲は、ハーモニーを存分に味わえるミディアムバラード。次の世代に繋いでいくみたいな大きくて温かいテーマ性が、すごく感じられました。

北山陽一

北山陽一 小枝は、45年も続く定番のお菓子。決してただ同じ物を作ってきたわけではなく、改良に改良を重ねてきたそうです。そういう、時の流れに逆らわずとも流されず、しっかりとものを作っている姿勢に共感して制作しました。

――90年代にみなさんが様々なミュージシャンから受けた影響やスピリット、共に同時代を歩んで来たRHYMESTERら盟友と共有してきた気持ちが、AILIさんや森 大輔さんなどの次の世代にも受け継がれている。そのこととも重ねて考えられますね。

北山陽一 まさしく、そんな風にリンクさせて捉えてもらえたらうれしいです。

――でも、不倫を歌っている同じ口でというのがミソで。「本当にけしからん!」アルバムです(笑)。

黒沢薫 そこまで含めての、ソウルマナー(流儀)なんです。

酒井雄二 Rケリーなんかもそうですよね。聖と俗が、同じ口でよくもそこまでというくらい同居しています。どゲスな歌もうたうし、どホーリーな歌もうたうし。歌って、あくまでも歌なので、現実よりももうひと段階上のことを表現するもの。恋愛をもうひと段階上のレベルで表現しようとすると、どうしてもそういうものになりますよね。

村上てつや 僕らは基本的に、聴く人の気持ちをプッシュしたいから歌っているんです。聴いてくれる人が、よりその感情を疑似体験出来るようなものにしたいと思っています。その点で今回は、味付けがすごく良かったんじゃないかな。かなり濃い目の味ですけど。

(取材=榑林史章)

ゴスペラーズ『Soul Renaissance』ジャケ写

 ◆ゴスペラーズ 北山陽一、黒沢 薫、酒井雄二、村上てつや、安岡 優からなるボーカルグループ。1994年にシングル「Promise」でメジャーデビュー。以降、「永遠(とわ)に」「ひとり」「星屑の街」「ミモザ」などがヒット。他アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ、ソロ活動など多才な活動を展開している。

 4月22日(土)千葉・松戸森のホールを皮切りに、7月1日(土)、2日(日)大阪国際会議場(グランキューブ大阪) メインホール、7月8日(土)、9日(日)東京国際フォーラム ホールA、7月15日(土)、16日(日)名古屋国際会議場 センチュリーホールなどを含む全国ツアー『ゴスペラーズ坂ツアー2017 “Soul Renaissance”』を全国31都市34公演で開催。