80年代のアイドルをほうふつとさせる音楽と衣装で注目を集める243と吉崎綾

 YouTubeなどのツールが発達したことで、自分が生まれる前に流行った昭和の歌謡曲やJポップに触れる若い世代が増えている。女性歌手の243(にーよんさん=20とちょっと)はその世代の一人。当時の歌に憧れを抱き、昭和歌謡曲の魅力を伝えるプロジェクト『243PROJECT』を通じてカバーしている。基本、ライブ以外での顔出しを禁じている彼女だがその歌い方は80年代のアイドルをほうふつとさせる。そんな彼女が今回、人気急上昇中の吉崎綾(20)とタッグを組み、アイドルユニット「243と吉崎綾」として2月22日に1stシングル「恋のロマンス」を発売、その週にレコチョク・ウイークリーランキングで18位を記録した。元チェッカーズの鶴久政治プロデュースの同曲は、彼女達にとって初めてのオリジナル曲。その曲調は80年代の要素が色濃く残る。衣装もその時代を思わせるデザインで、当時を知る人は懐かしさを、若い世代には新鮮に映る。同じ世代の2人は息もぴったり。今回はそんな2人に、本作への想いや苦労した点、歌唱方法、平成生まれから見た80年代の印象について聞いた。

初のオリジナル曲

243と吉崎綾

243と吉崎綾

――「恋のロマンス」はどのような作品に?

243 「恋のロマンス」は80年代の雰囲気が思い浮かぶような懐かしい曲調です。曲も歌詞も私達のオリジナル曲です。知り合いにタイトルを教えると「あれ、カバーなの?」と言われるんですけど、当時の曲をカバーしているような雰囲気を出しています。ミュージックビデオ(MV)も80年代のトレンディドラマ風の仕立てになっていて、現代とはちょっと違う、面白くて、切なくて温かいものになっています。

吉崎綾 「80年代にヒットした曲じゃないの?」と思ってしまうような曲です。私はもともと、243が松田聖子さんの「SWEET MEMORIES」をカバーしたMVに出演させてもらった事がきっかけで、コラボする事になったのですが、MVの撮影に243がいなかったので、皆さんと同じく歌声と仮面の243しか知らなかったんです(笑)。今回のカップリングの「I Don‘t Know!」(BaBeの代表曲)という曲のレコーディングではじめて“実際に”お会いしたんですよ。

――その時に意気投合?

吉崎綾 真逆なんですよ、243と私の性格は。

243 結構(吉崎綾が)喋ってくれるから、私が話を聞いて、2人でお菓子を食べるみたいな雰囲気だったよね。

吉崎綾 レコーディングの時はそうでしたね。でも、もう私が喋りすぎて相槌も打ってくれなくなって(笑)。結構、シカトされちゃって(笑)。

243 段々適当になっちゃうんですよ。「へえー」みたいな感じとか、「そうなんだ」しか言わなくなるんです、私(笑)。

――243さんは歌謡曲のカバーを20週連続配信してきましたが、オリジナルを歌うにあたっての印象は?

243 カバーなら前例があるじゃないですか。もともとの原曲を聴いたり、歌っている姿をみたりして、その雰囲気を参考するんですが、オリジナルだと全く参考にできるものがないので、当初はどうしようと思っていました。でも、私のなかで「80年代のあのアイドルさんに似ている」というイメージがだんだんと膨らんできて、意外と苦戦はしなかったです。聴いた時に歌詞と自分の想像がうまくリンクしてイメージが浮かんできやすかった。

吉崎綾 243さんと、今回のカップリング曲でもある「I Don‘t Know!」とWinkさんが歌った「愛が止まらない」(カーリーミノーグ原曲=Turn It into Love)をカバーさせて頂いたんです。でも私は80年代をあまり詳しくなくて、両曲とも知らなかったんですよ。今着ている「恋のロマンス」の衣装も作って頂きましたし、私たちにとっては大事な歌というか「凄い事になる」という期待を込めた曲です。

――ひとりが顔を出していて、もうひとりは仮面を付けているユニット、というのもユニークですよね。

吉崎綾 凄いシュールだなと。初めて243のライブを観に行った時、お面して出てきたのに歌う時にはお面外すってお面の意味あるのかなと思っていました(笑)。チェキ(ファンとの写真)ではかたくなに仮面を付ける、という姿をみて面白いなと思っています。休みの日に、一緒に遊びに行っても、写真を撮る時はお面なんです。家には家用のお面もあるんですよ。

243 私は逆に、これまでこういうスタイルできたから普通なんですよ。知り合いに「こういうことやっています」と言って映像を見せると、爆笑するんです。でも私からしたら「なぜそんな笑う?」と。

吉崎綾 イベントの時に、お客さんからはお面をきれいに付けている243が見られるんですけど、私からはその横顔が見られるんです。パッと243を見ると、お面で顔が潰れていて(笑)。いつも顔が真っ赤になっていて。

243 めっちゃ圧迫されて跡が付くんですよ。いつも目が乾燥しちゃうし。見せられないですね。まだ改良されてなくて。

吉崎綾 でもライブの見どころは素顔が見られるところなんです。

243 この間も「顔を見たくて来た」という方がいました。「よし!」って思いました。嬉しかったです。

吉崎綾 「超かわいいっす」って言ってたよね。「ガチやん」って(笑)。でもこの仮面が身体の役割を果たすときもあるんです。ある番組でスケジュールが合わずに出演できなかった時も、仮面だけで出たり。仮面を持っていれば誰でも243になれるので(笑)。

――吉崎綾さんは243さんのパフォーマンスをみてどう思いましたか。

吉崎綾 243の歌が上手いので、コラボが決まった時は「私、足を引っ張るだろうな」という思いがありました。年齢も変わらないのに、尊敬しています。

80年代と今の曲の違い

243

243

――80年代の曲の印象は?

吉崎綾 歌もメロディもそうなんですけど、歌詞に特長があると思いました。例えば「ロマンス」という言葉。今はあまり聞かないですよね。歌詞が熱いというか。振付も「80年代」っぽさがあって、その時代で踊っている感じがします。母はYouTubeを見て「感動した!」と連絡くれましたし。友達の親からも声を掛けられます。その時代の人からしたら懐かしんだろうなって。私たちも初めてイベントした時に、ファンの方の合いの手や掛け声をみて「凄い曲をカバーした」という気持ちになりました。

243 私も今までカバーした曲全てを知っていたわけではないです。そうしたなかでもサビだけは知っているというものは何曲もありました。私が『243PROJECT』をやっている事を言ってない友達もカラオケで歌っていたりするから、知らない時代だけど曲は知っているんだなと。

243 約30年も経っているけど、自分たちにもしみ込んでいるので凄い時代だなと思います。歌い方は80年代を意識していて、ちょっと息を多めに入れるとか。上手くは言えないけど、語尾をさっと引く感じとか。可愛い曲もあるので、凄い笑顔で歌ったり、当時の振付を真似しながらレコーディングしました。YouTubeやテレビの80年代特集を録画して予習もしました。

――歌ってみて80年代のイメージは変わりましたか?

吉崎綾 私のイメージは平野ノラさんなんですよ。肩に何が入っているんだろう? みたいなのとか。

243 それめっちゃ現代じゃん(笑)。私は、皆キラキラしてるというイメージがあります。あと当時、活躍していたアイドルの方たちは、今の私たちよりも年下の10代が多いけど皆大人っぽいなって思います。

吉崎綾 先ほどもあったように、ファンの方から「自分たちの青春時代」と言われたりもするんですけど、でも私たちからしたら新曲なんです。あと同世代の人たちは、私たちが今風じゃないので固まって観るんですよ。「何が起きているんだろう?」という感じで。マイクスタンドを立てて踊ったりしていますし。その魅力を今の世代の人にも知ってほしいなと思います。

243 そういう意味では、音楽は凄いなって思います。ちょっと聴いただけで当時の事を思い出す事が自分でもありますし。当時、リアルタイムで聴いていた方がそう感じてくれていると思うと、嬉しいですよね。

――最近のポップスと比べると歌唱法も違いますよね。

243 最近の歌は、ハイトーンで強めに歌うのが多いし、歌詞もそのままでストレートなものが多いと思います。私も世代的にそういうものを聴いてきました。なので、最初は80年代の歌詞は遠まわしでその想いを表現されているなと感じました。言い回しが難しかったり、意味深かったり、歌詞も音楽もちゃんと聴かないと情景がイメージできないですよ。そこが違うなと思います。

吉崎綾 プロデューサーの鶴久政治さんからも歌い方に対して特に言われてなくて、「緊張しなくていいよ」という感じでした。でもファッションもそうなんですけど、時代は回るじゃないですか。回って巡って絶対また来ると思うんですよ、この時代の音楽やファッションが。

243 昔は音楽を聴く時は「音楽を聴く」という感じだったじゃないですか。今はケータイしながら音楽は聴けるし、お風呂に入ってケータイやりながら聴く、みたいな事もできるし。だから逆にストレートな歌詞じゃないと「ながら聴き」では頭に入ってこないと思うんです。そうした環境の変化もあると思います。気軽にCDを買わなくても配信ですぐ聴ける時代だからこそ、そう感じます。

吉崎綾 昔の曲を聴いたら「80年代だな」って分かるけど、今はアイドルもバンドも色んなパターンがあってはっきりとは分からないですよね。できるなら、そういう時代に戻ってみたいです。楽しそう。今って草食系男子とかって言うけど、私の中で昔は王子様がたくさんいる感じ。みんなストレートで。

――そういう男性に惹かれますか。

吉崎綾 どうでしょうね。人によります(笑)。結局、人やんってね(笑)。でも男女問わず自分に自信を持っている人が多かったんじゃないですか。あとワインの印象が強いです。

MVにも80年代の空気

吉崎綾

吉崎綾

――「恋のロマンス」のMV撮影はどうでしたか?

吉崎綾 本当に寒かった。走るシーンがあったんですけど、今は絶対にこんな風にしないという感じの演技でした。現代のドラマは結構リアルな描写が多いと思うんです。多分、このMVは「そんなことあるかい!」という部分も含めて昔風なんだと思います。紙袋をわざとらしく落としてから3人で走るみたいな。あれ何回も走りました。でも楽しかったし、新鮮でした。そういう演技もこのユニットだからこそだなとも感じます。「SWEET MEMORIES」の時は意識せずに撮ったんですけど、今回は撮影の時にも80年代な雰囲気がありました。台本を渡された時に絵を見て、これは成りきった方がいいなと。ショックなら、思いっきりショックを受けるとか。台本自体があり得ないような内容で。実際に撮ったものを見たら結構「何これ!」ってクスっときましたけど。でもこれは、今観ているからで、バブリーな頃に観たら「切ない!」と感じたかもしれない。

243 私は家で映像を確認したんですけど、爆笑しましたよ。何回も見直して「いいなあ」と思いました。

――カラオケの背景映像を思い出しました。

吉崎綾 確かに使われてそう! トレンディドラマっぽい細かい設定もあるんです。丸い筒(美大生が使う、図面などを入れるもの)とか。意味わからなかったです。こんなの持ってたのかと。本当に1stシングルにぴったりのMVで、凄く自信があります。

243 次回はトサカ前髪とかやりたいです。前髪も肩パッドも。服装まで80年代みたいな。全身で感じたいですね。

吉崎綾 聖子ちゃんカットもやりたい。前髪も薄くカールして、外巻きにふわっとさせて。二階堂ふみさんも凄い似合ってましたよね。私、凄い聖子ちゃん好きなんです。声なのかな、このプロジェクトに関わる前から好きなんですよ。

243 私も聖子ちゃんが好きなので、実際に聖子ちゃんカットしたいです。ただ私の場合は聖子ちゃんカットのお面があるので、それで隠れてしまうけど(笑)。

吉崎綾 この衣装も、私たちからしたら「プリキュア!(アニメ番組)」と感じなんです。昔はこうだったのかって思うと可愛いなと。変身したみたいで。出来上がったイラストも観ましたけど、「こんなに派手だったのか」と本当にびっくりしました。今のアイドルさんは制服が多いので。「ステージに立つ女の子」という感じがしますよね。

――次のステージはいつ頃?

吉崎綾 次はリリースイベントです。3月18日からインストアイベントを中心に始まります。やっぱりアイドルさんの後に私たちを観てもらえれば、もっと違いを感じると思います。別物みたいな。80年代のアイドルなんですけど、全然違うという。

243 異空間だよね。他のアイドルさんは、「おい! おい!」という感じのノリとか、ヲタ芸を打っている感じなんですけど。そこからガラリと変わって「懐かしい」という空気になります。「I Don't Know!」と「愛が止まらない」は去年のライブでもやったのですが、一緒に踊ってくれたり、「ふっふー」って言ってくれるんですよ。あれは嬉しいですね。

吉崎綾 合いの手が多分、当時の物だと思うんです。イベントでは私たちだけじゃなくて、合いの手をやってくれる皆さんも80年代の感じがするね。「恋のロマンス」はどうなんだろうね。

243 「恋のロマンス」はオリジナル曲で、皆初めて聴く曲だから、どんな感じで反応してくれるか楽しみです。

――ここを見てほしい、聴いてほしいポイントは?

243 間奏の英語の部分ですね。いきなりガラッと変わるじゃないですか。80年代って2コーラス目だけ英語というのが結構あるんですよ。「SWEET MEMORIES」もそうだし、「恋に落ちて」も2番からガッツリ英語。レコ―ディングしている時に「英語入れたらそれっぽくない?」という話になって。<Love is over>とか<Love is mystery>が入っている所を聴いてほしいです。

吉崎綾 そこは一番緊張しました。「ら、ら、Love is over」みたいな(笑)。

243 ドヤ顔で慣れない英語を喋りましたね。カラオケでも恥ずかしがらずに歌ってほしい点です。

吉崎綾 あと、振付も注目して欲しい。

243 それから歌う時に声だけじゃなくて、顔でも歌ってレコーディングしました。雰囲気を出すんですけど、悲しい歌詞はめっちゃ眉毛さげて歌ったり。ちょっとオーバーにやりました。

吉崎綾 80年代はドラマチックなんですよ。

――では最後に読者へメッセージをお願いします。

243 ライブに来て頂いて、一緒に懐かしい気分になってください。恥ずかしがらずに「ふっふっふー」とか合いの手を言ってくれると嬉しいです。顔を見に来てくださいね。

吉崎綾 1stシングル「恋のロマンス」聴きどころ、見どころ沢山あります。ライブでは243の顔も見られるので是非遊びにきてください。

(取材=小池直也、撮影=編集部)

 ◆243(にーよんさん) 20歳とちょっと、それ以外の詳細は一切不明の女性シンガー。トレードマークは頬のペイント。特徴はちょっとちいさいところ。

 ◆吉崎綾(よしざき・あや) 20歳。2016年1月、吉崎が着ているシャツを恥じらいながら脱ぎ捨てヌードとなる寸前で、それを隠すように配送員が現れるという高田引越センターのCM動画が話題を呼び、YouTubeで再生回数280万回を突破。これをきっかけに、5月に「ヤングジャンプ」のグラビアページに登場。同誌では「福岡の奇跡」というキャッチコピーの下、同誌初となる、初登場・初表紙・初水着・初巻頭・初巻末ぶち抜きの五冠を達成。サンデージャポン等のバラエティ出演の他、2017年2月公開の映画「咲-Saki-」にも出演。

インタビューカット

作品情報

鶴久政治プロデュース。
「243 PROJECT」、第二章。
243と吉崎綾「恋のロマンス」
ファーストシングル「恋のロマンス」
2017年2月22日CD&配信 同時リリース
▽収録内容
1、恋のロマンス
2、愛が止まらない
3、I Don't Know!

イベント情報

243と吉崎綾/恋のロマンス 発売記念イベント
3月18日12時00分〜 タワーレコード渋谷4F 店内イベントスペース
3月19日午後1時00分〜 ヴィレッジヴァンガード高円寺2F 店内イベントスペース
3月25日午後2時00分〜 新星堂 錦町ヨーカドー店 1階正面入口イベントスペース
3月26日午後7時00分〜 HMVエソラ池袋店内イベントスペース