日本におけるヒップホップシーンの現状を語った晋平太

 東京・福生(ふっさ)市が、市の魅力を市内外にアピールするため、PR動画「What’s Up FUSSA」を作成した。その動画に出演しているマチーデフと晋平太の2人に話を聞いた。前回はマチーデフのインタビューを紹介したが、今回は全国大会での優勝経験もある晋平太のインタビューを掲載する。音楽制作の傍ら、MCバトルにも数多く参戦し、2005年には日本最大のMCバトル『B-BOY PARK MC BATTLE』で優勝した晋平太。マチーデフはラップと社会活動や自己表現について語ったが、晋平太はヒップホップの本来の姿と、これからの在り方について言及した。今注目を集め、一般も浸透しているヒップホップの世界について紐解いてもらった。

https://youtu.be/bQf9yvjsRKI

縁のある地、福生市

晋平太

――今回、東京都福生市のPR映像「What’sUP FUSSA」に参加された経緯は?

 福生の市役所に友達がいまして、「こういうのあるんだけど興味ない?」と、直接話を頂いたんです。とても仲の良い友達で。

――福生市をよく訪れますか?

 はい、もちろん。イベントでも行った事がありますね。僕は埼玉県狭山市育ちなんですけど、国道16号線沿いに行くと30分くらいで着く場所なんですよ。よくドライブしたりデートをしたりしていましたね。昔は洋服屋さんがたくさんあったり、クラブが盛り上がったりしていて、けっこう思い出の街なんです。福生出身のラッパーとか、西東京を中心に活動している仲のいい奴らが多いんです。

――とても縁のある土地なんですね。

 ちょっと関係あるだけにやりづらいなとも(笑)

――福生市のPR映像の為に改めて福生の地を踏んでどういった気持ちでしたか?

 懐かしかったですね。意外とディープで面白い街なんですよ。ちょっと変わっている面もあったりして。

――どういった魅力がありますか?

 米軍の基地がある街なので、外国人が外に出て遊んでいる時は、クラブが外国人ばっかりだったりする時があって「ここ日本じゃないでしょ?」みたいな景色になったりしますね。けっこう大物アーティストが基地に来ていて、その流れで遊びに行くと大勢の人が居たりして。

――それはいつ頃の事でしょう?

 ずいぶん前なんですけど、10年くらい前ですかね…。2005年くらいまではそういった感じでした。

――今回、福生市のPRにあたっての気持ちは?

 音楽や洋服のカルチャーがさかんな所なので、子供達がもっとダンスやHIP HOPカルチャーと触れ合える場所になれればいいと思いますね。色んな国籍の子供も居ますし、イベントをやっても子供が主役になれる様になれれば良いですね。そのきっかけになる架け橋がHIP HOPになれば嬉しいですね。そういった形で街が活性化したら、僕がこのプロジェクトに関わらせて頂いた意味があったなと思います。

HIP HOPの本来の姿

晋平太

――ご自身の地元について何か思う事はありますか?

 僕は埼玉県狭山市で育って、今は、東京都東村山に住んでいるんですけど、福生市も同じ西東京の多摩地区という地域。そして埼玉県狭山市と東村山も電車の沿線が一緒なんです。まあ、共通していえることは若者がやる事が無いんですよね。僕は去年まで日本全国でMCバトルの大会をやって、司会をやってという生活をしていたんです。今年は今回の福生市の事もそうですし、西東京や埼玉など、ちょっとローカルな場所に根ざす活動をやっていこうと思っています。僕は33歳でそんなに若くないですけど、西東京や埼玉出身で若者文化を発信しているアーティストが居る事をもっと知ってもらって、「私達も出来るかな」という事が思えるようなきっかけとなる存在になれると良いですね。「晋平太って狭山市の出身らしいよ」という感じで。

 僕も若い時は何もする事が無かったけど、HIP HOPに出会えてエネルギーの向け所が見つかったんです。ラップをやるにしても、ダンスをやるにしても、それを健全な形で真っすぐに「素晴らしいね」って応援出来る社会になったら嬉しいですね。僕がやっている時などは、どうしても人に胸を張って言えるような感じではなかったんですよ。「ラップやってんの?」とか「ダンスやってんだ。不良なの?」みたいな。こっちとしては「そういう感じではないんだけどな」というね。

 だから今回のこういった市のオフィシャルの仕事をさせてもらうと、そういった部分は払拭されると思うんです。ダンスが好きでやっている人なんて、高校球児みたいなものですから…一生懸命やっていて。ラップも今はそうです。だから、若者がそういう風に「頑張っているんだよ」って思ってもらえたら嬉しいんです。 

――ラッパーは、政治面も含めて社会参加の意識が強いと思います。

 元来そういう存在ですよね。

――今回、晋平太さんが参加するのは社会貢献のプロジェクトですが、そこについてどう思われますか?

 非常に誇らしいです。素晴らしい機会を頂けて嬉しく思います。社会的活動は凄く大切だと思うんです。僕らの知っている知識やパワーで社会を良くしたいと思う動きが、本来HIP HOPの持っているパワーだと思っているんです。決して、排他的、疎外的に自分達と他の人達を分けるのではなく、僕達の考え方を分かってもらいたいんです。その為には擦り寄る努力も必要じゃないですか?

 日本には日本のHIP HOPがあるので、ラッパーが世の中に発信していける立場、ポジションになれればいいなと思うんです。例えばZeebraさんなんかはそういう事をしていると思うんです。僕はアメリカの「ズールー・ネイション」という集団の一員という意識を持ってHIP HOPをやっているので、まず自分達みたいな人間が居る事を知ってもらいたいし、僕達みたいな奴は害は無いよというか、やり方は違うけど同じ様に地域が盛り上がって欲しいという意識はあるし、僕達のやり方でそういう事をやりたいから、協力出来たら嬉しいなと思うんです。(編注:ズールー・ネイション=HIP HOPの創始に関わったAfrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)が立ち上げた、社会的政治的活動をするラッパー、Bボーイ、グラフィティアーティストなどの団体組織)

 僕が持っている“四大主義”で「peace・love・unity・having fan」というのがあるんです。“平和に団結して、愛し合って楽しむ”というものですね。みんなの持っているHIP HOPのイメージとは違うと思うんですよね。本来HIP HOPってそういう信念のもとに始まっているんです。それをみんなに伝えたいって思うし、HIP HOPが世の中の役に立っている事が凄く嬉しいんです。

――昨今はラップシーンが盛り上がっており、今回のプロジェクトは日本語ラップと行政とのコラボレーションでもあります。その事についてどう思われますか?

 本当にありがたい事です。感謝をしているとしか言いようがないですね。知ってもらわなければ意味が無いじゃないですか? 例えば、よく分からなくて知られていない競技の世界チャンピオンが居たとしても。そうですね、ノリで言いますけど、「お椀の中の小豆を隣のお椀の中に移す世界競技」があったとしますよ?

――はい(笑)

 そこでダントツに日本が強いとしましょう。小豆を移すのが超速いんですよ? でも、それはブームにでもならない限り、ずっと知られないじゃないですか? その達人も。もちろん、その達人も他者からの評価を得る為に小豆を移している訳ではないでしょうけど、やっぱり知られたいし、その特殊能力で人の役に立ちたいじゃないですか。

 僕らがやっている事なんて凄くマニアックだったものなんだけど、たまたま注目してもらって「すっごい変わった事しているね」みたいな感じで知ってもらえたと思うんです。何であれ、最初の一歩「知ってもらえる」という事は「興味を引いてもらえている」という事だと思うんです。まず、興味を持ってもらえたということが嬉しいですよね。

 それで受け入れられるか、そうでないかは個人の自由、主観があるので、それらはコントロール出来ないですけど、興味を持ってもらいやすい位置に来られたということは凄く嬉しいです。長年ラップをやっていますけど、もっと長くやっているZeebraさんなどの先輩のおかげなんですよね。それを次に繋げたいし、より積極的にHIP HOPをやっていける世界にしていけたら一番良いですよね。

 今はちょっと特殊な事をやっていて「マジ?」という風に思われることもあると思うんですよ。たぶん、僕がもっと若くてバリバリのBボーイの23歳くらいの頃にこの仕事のお話を聞いたら「俺の街じゃねえし」とか「リアルHIP HOPじゃねえし」とか、色んな理由を付けてやらなかったかもしれないですね。前例も無いし。「ポップな事したくねえし」とか言ってね。

 でも、そうじゃなくて、可能な限りベストを尽くしてみんな一生懸命作っているし、ダサいもの作ろうと思っている人は一人もいないんです。こういう仕事は今は珍しいかもしれないけど、今度はこれを真似するところが出てきて、色んな地域でこういう事をやり出して、これが当たり前になって「行政とHIP HOPが絡むのが当然」という風にしていかなければいけない仕事なんです。将来に繋がる最初の一歩だと思うんです。みんなもやろうと思える様な。HIP HOPは参加型なのでね、一度好きになったら止められない魅力もあるんですよね。

フリースタイルと楽曲の違い

晋平太

――今回はフリースタイルではなく楽曲ですが、ラップやリリックなど、聴き所は?

 僕は福生市の街並が好きなんです。国道16号線が通っていて、ゲートがあって、自然も多くて、色んな店や色んな国の人達がいて。決して繁華街ではないけど味があるんです。その情景描写や空気感をリリックから感じてもらえたら嬉しいですね。“雰囲気と景色”がとても良い所なので映像と一緒にそこを観てもらえれば感じてもらえると思います。そこがリリックで伝わる様に意識して作りました。

――気に入っているフレーズはありますか?

 「米軍住宅には住んでいたんだ(忌野)清志郎が」という部分があるんですけど、忌野清志郎さんが昔に住んでいた米軍住宅があるらしいんです。やっぱラッパーなのでそういう部分も入れたいなと思いました。そこが一番気に入っていますね。

――フリースタイルと楽曲でのラップ、その違いは?

 大きく言うと全然変わらないんですけど、ずっと残るものか、瞬発力で出しているものかという違いだけですね。基本的にはそんなに変わらないです。歌詞を書く時も最初はフリースタイルじゃないですか? テーマがある時のフリースタイルみたいな。それを添削したり微調整したりという。

――どちらの方が難しいでしょう?

 フリースタイルの場合は、蓋を開けるまでその出来が分からないじゃないですか? だから何とも言えない難しさがあります。作品の場合はずっと残りますから、その場の勢いでやり切れない難しさがあります。どっちも凄く面白いですよ。同じ事をやっているんだけど、目指すべきポイントが違うんです。

 僕の中では、そのどっちもないと完成しないんです。考え過ぎても仕様がないからフリースタイルするし、フリースタイルの勢いだけではごまかせないから、ちゃんと残るものを作りたいし。今はYou Tubeとかで観られるので、フリースタイルでも残っちゃいますけどね。フリースタイルをしている時は何回も観られるとか、そんなに後先なんか考えていないんですよ。その場の瞬発力で自分の最大瞬間風速を吹かせるというね。

――少しスポーツに近いという所もありそうですね。

 フリースタイルは、よりスポーツに近いですよ。ノウハウとかトレーニングとか練習とかを含めても。武道にも近いですかね。僕はそう思っています。心も重要なファクターですし、常にやっていないと出来なくなってしまうんです。

――スポーツよりも武道に近いと思われたのはなぜでしょう?

 武道の方が精神性が出ると思うんです。勝てば良いという訳ではないというか。例えば、柔道や剣道など、大元を辿ると人を殺す為の武術だと思うんです。それを、殺人の為ではなく使って強さを見せつつ。でも反則もある訳じゃないですか? MCバトルも似た様なものでして。悪口を言い合うので何でもアリとか、悪口を言い合う文化と思っている人もいると思うんです。

 だけど、そうではなくて、言葉の扱い方とか、人の心に言葉を刺していく能力とか、僕は美しい方がいいと思いますし、思っている事を瞬発的に言葉にしちゃうので武道よりも内面がより出ると思うんです。ルールでは何でもアリみたいになっているんですけど、判断しているお客さんの気持ちの中では、ある種の“ルール”があると思うんです。具体的な陰湿な感じの誹謗中傷とかは聞きたくないじゃないですか? そいつは勝つ為に言っているかもしれないけど、そういうのは言ってはいけないとか。おおまかに誰も言わないけど、“世の中のルール”みたいのに則ってやっているんじゃないかなと思います。

 これからずっとやっていったら、ルールも出来るかもしれないですけど、そうやって精査されている途中なんじゃないかなと思います。詳しくは知らないですけど、柔道や剣道なんかもきっと、それぞれの流派や信念があってそういう風になっていったんじゃないかと思うんですよね。

 MCバトルもそうだと思うんです。今は雑多で、各流派の代表しか居ない、みたいな。その人達、例えば僕が書いた本を読んだ人達は、良いか悪いかはわかりませんけど、多少は影響を受けると思うんです。そうやって広がっていくんじゃないかなと。「“何でもアリ”を良しとするMCバトルの大会」とか、「より美しさを競い合う大会」とか。そうしたら、バラエティに富んで良いですよね。“天下一武道会”みたいな「誰が一番強いんだよ?」みたいな大会とかね。今もそうなりつつありますけど、よりクッキリそうなっていくんじゃないかと思ってます。

――強さの先に精神性を追求するという事は硬派な事だと思います。発祥である米国でのMCバトルのスタイルはどういった感じなのでしょうか?

 もうムチャクチャじゃないですかね? 米国は「上手い事を言う文化」みたいな。アメリカンジョークもそうですし、それでライムがかかっていて、引っかかっていて、それでいて上手い事を言った奴の勝ち、という感じでしょうかね。日本にもそういった側面はもちろんありますね。とんちが効いていたりと、色んな要素が含まれた結果、今僕は何千、何万試合やったか分からないですけど、決勝の試合でただの悪口の言い合いで終わった事は、ほぼ無いんです。やはり内面とかをさらけ出しながらやってという…ただ上手い下手というよりも、どっちが「好きで勝ちたいか」という想いを、如何にお客さんに伝えられるかという部分も、今の日本のMCバトルにはある気がしますね。

――百人一首や俳句、川柳などもお互いに言い合うという面が繋がる気がしますね。

 そうなんですよ。言葉をやりくりして、どっちがどうなのかという文化は世界的にずっとあるんじゃないかと思いますね。例えば松尾芭蕉とか各地を転々としながら一句詠んで「これがお題だ!」みたいなのは、僕らとやっている事はそう変わらないなとも思いますね。僕らも各地でやったフリースタイルが歴史的に残っていけばと。それこそ松尾芭蕉みたいにね(笑)。文化があったから残っていったという事だと思うんですよね。ちょっと大袈裟かもしれないですけどね。

ラップの地域性

晋平太

――各地でやるフリースタイルバトルでは、地域による方言もありますか?

 ありますよ。県民性とか、その土地が持っている色や風土などはモロに出ますね。「何を言ったらウケるか」というのも全然違いますし。例えば大阪のラッパーが言う事は面白いですし、突っ込みが鋭くて韻を踏む事に特化していたりと。言葉遊びとか駄洒落的要素の強いものには非常に反応しますし。

 九州の大会では、みんな一本気で熱くて真っすぐな事を言って、という特色があったりしますし、それで大阪の「韻を踏んでとんちが効いているスタイル」を揶揄したりして「そんなのがやりてえんじゃねえんだ俺たちは」みたいにね。九州の人が大阪に行ったら「何も考えねえで真っすぐアツい想いばっかぶつけてきてんじゃねえよ」みたいな。それが関東に行ったらスタイリッシュになったりするんですよ。東北に行くと、東北弁って独特な訛りがありますよね。音的に日本の言語で一番面白いんじゃないかと僕は思うんです。“フロー”って言うんですけど、抑揚を付ける能力が高い人がウケるんですよ。

 それを全国大会でやるので、誰が勝つか、何を求めているかはお客さんが決めるので分からない。その中で最終的に生き残るのは、気持ちが強くて、一番自分の言いたい事をひねくれずに真っすぐ投げられる奴ですね。そういうのが一番強い気がしますけど、結果誰が勝つかは蓋を開けるまでは分からないんです。

――そうなってくると九州の人は強そうですね。

 九州の人も強いですね。

――私は東北派ですね。

 はははは! 僕は関西風味も好きだけど、スタンダードでスタイリッシュにライムしながら、強いものを伝えたいという東京出身なので、“ド正統派”が好きですね。スタイルも色々あって面白いんですよ。「岡山の奴は常にキャラが濃い」とかね。すっごいのが毎年来るね、みたいな(笑)。地域性からか、岡山はヤンチャな男の子が多いんですよね。その猛者共の地元の奴らが納得しなければ、各地の予選ではに勝てないんですよ。一番濃くて岡山っぽい奴が勝つんですよ。

 それを色んな所でやりたいんですよ。福生市でもやりたいし、西東京でもやりたいし。今は全国大会ですけど、各地の街でちょくちょくあったら楽しいじゃないですか? “わんぱく相撲”じゃないですけど、数が増えるだけ面白い奴が出てくるでしょうし。画一的になってしまう部分もあるとは思いますが、文化なのでね。

――去年は全国を回られて忙しかったと思いますが2017年、やりたい事は?

 ローカルに根ざして、色んな人と触れ合いながら、HIP HOPをもっと日なたの方に向けられたら良いなと思います。本も出させて頂いたので、ラッパーも増えたらいいなと。アーティストとして曲を作って出してライブをして、という事以外にも文化的な事をしたいし、それを繋げていかなければいけないポジションに就いて、そうなっていければいいなと思います。アーティストとしては、誰かの心に刺さる曲をひとつでも多く作って出したいなと思っています。

――今後より多くの日本語ラップのアーティストがオリコンランキングに入るとか?

 そうですね。入るでしょうし、入りたいですし、入る様な動きをしたいですよね。

――自分でもそう動いて行こうと?

 みんなで、ですね。僕だけじゃ無理だし、みんなそうなれば、よりそうなる可能性が高くなりますしね。最初って大変じゃないですか? 今回の仕事もそうですけど、「それは無理でしょ」って思う事は、誰かがぶち破っていかなければいけないんですよね。それを誰がぶち破るかは分からないですけど、「俺がぶち破るんだ」という思いもあるし、「みんなでぶち破ろうぜ」という気持ちもみんなあるだろうし。誰かがぶち破ったら僕も続きたいし。というゲームだと思うんですよね。

――連帯感は強い?

 HIP HOPはみんなでやってますからね。色んなスタイルの人が居て、色んな流派があって。その中で敵視し合っている部分も、もちろんあります。僕が順風満帆にやって来れているかと言ったらそんな事はないですけど、完全に同じものが好きで、その角度がちょっと違うだけでいがみ合っても、HIP HOPには掠りもしないで生きて行く人が日本ではほとんどでしょうし。それが、HIP HOPに夢中になって、ダンスだろうがグラフィティだろうがDJだろうが、かなり近いチームじゃないですか? そう思うんですよ。その数を全部足したらけっこうな数が居るはずだと。そう思うと何か出来そうじゃないですか? やっぱり一人では何も出来ないので。

 さっき言った四大要素の中の“Unity”する事が目的で始まっている音楽なので、「俺達の町、面白い事ないからみんなで盆踊りやろうぜ!」みたいな感じで始まったパーティなんですよ。始まりが団結する為の音楽だったから「連帯感が強い」と感じたのかもしれませんね。

HIPHOPの未来

晋平太とマチーデフ

――先ほど「排他的ではない」との事でしたが、外部から見るとそうでない印象もあります。

 そうだと思うんですよ。僕もバリバリそうでしたし。「HIP HOP? お前にHIP HOPの何が分かるんだよ」って、つい数年前までそうだったし、そういう風に思っている奴もいっぱいいると思うんです。だからこそ、そうじゃない奴もいるんだという事が分かったんです。最近、ちょっとずつラッパーに対する印象って変わってきていると思うんです。昔程いかつくないと。例えば僕をみて「凄い怖そうだな」と思う人はそんなにいないと思います。そういう所からちょっとずつ変わっていくんじゃないかと思うんです。

 排他的になってしまうのは、自分達が弱いから「自分達は特別だ」という主張をしていないと、「他と一緒になっちゃう」みたいな。でも、もうそんな時代じゃないと思うんです。誰がやってもいいと思うし、HIP HOPはもうそんなに吹けば飛ぶようなものではないと思うんです。

――排他的ではなくなったきっかけはありますか?

 全国を回ってMC達と触れ合って、ヤバい奴がいっぱい居るのが分かったし、それまで僕は自分がバトルに出て自分が優勝する為に出ていました。自分の為にHIP HOPがあった。でも、それじゃあ続かないじゃないですか? 誰かの為にHIP HOPをやらなければならなくなって、そういう視点で見ていると、どいつも一生懸命にやっている人はカッコいいし。そう思うと、みんなで作っていくものなんだなと感じたんです。言われるんですよ「日本一のラッパーなんだよ、こいつ」とか。確かに日本で一番大きな大会で勝ちましたけど、僕が「一番ブッ飛んでヤバいか」と言ったら、まだまだそんな事ないと思っているし、ヤバい奴はたくさんいるからそういう奴らも見て欲しいんです。

 自分の為だと思ってやっていない奴はすっごい綺麗事だと思うし、でも回り回って全て自分に返ってくるので、人の助けになる様なHIP HOPをする事が、将来自分の為になるし、それをまた返せればいいなという、循環をイメージしてHIP HOP活動をしている途中という感じです。

――これからの課題は、まだHIP HOPがポピュラーになりきれていないという点以外にもありますか?

 ポピュラーになりきれていないですし、ポピュラーになったら、ラッパーになりたいと思っている人が少ない、その準備が出来ているプレイヤーも少ないという、何か複雑な状態なんですよね。「じゃあ何でラップやってんの?」と思った時に、本当の心の声とかを忠実に「じゃあ本当に今のままで良いのか」って問いかけた時に、心の底からラップでスーパースターになりたいって、なかなかイメージが掴めないから言えないじゃないですか?地方の町いる30歳超えた奴がまだラッパーになりたくても、「ラップで100万枚売りたい」って言いづらいんですよ。

 でも、言ったり目指している奴が居なかったら、永遠にそういう状況にならないじゃないですか? ならない事には世の中は変わらないので。「その最初の一人になりたいんだよね」って言える準備が出来ているラッパーが少ないですよね。「俺ポピュラーになりたいんだよね」って、力強く言える奴が少ないと思う。何故なら、言ったら恥ずかしいじゃないですか? 今なってない状況で。「いいんだよ、俺はアンダーグラウンドでやっているスタイルは変えたくないんだよ、分かる奴に分かればいいんだよ」と。

 でも「本当にそうなのかよ?」って、僕も全員にそうやって面と向かって話した訳じゃないですけど、「こうやってるのがカッコいいんだよ」って思っている奴もいっぱいいるだろうし。でも、「じゃあそれで一生を費やすの?」と言われたら、そんな事もないと。そこまでみんなラップに向き合っていないと言うか、その願望を口にしていない気がするんですよね。それは、凄く大きな障害なんじゃないかなと思います。誰かがそこを目指さないとその先には行けないし、後輩もその先には行かないし。自分がやりたいと思って、これでいいんだなって思う人がいないといけないですよ。

 これまでも先輩がそうやってHIP HOPを目指してきたんだから。誰も知らなかったと思うんですよ。でも今は知ってるじゃないですか? この間、「相田みつをさんの息子さんの講演会×HIP HOP」という変わったイベントをやらせてもらったんです。相田みつをさんもブッ飛んでて、凄いじゃないですか? 字体もヤバいし、メッセージもヤバいし。何より、書家であり詩人であるという人はなかなかいないですよね。自分のスタイルを確立して、それを普及したかったんだけど、「にんげんだもの」という本が出て、世に知られる様になったのが60歳過ぎで。それからしばらくして亡くなって、そのままにしていたら世の中に相田みつをさんの言葉は、溢れていないと思うんですよ。息子さんが普及したと思うんですよね。実際にそういうお話されてましたし。

 HIP HOPも一緒だと思うんですよ。さっきのお椀競技の話じゃないですけど、Zeebraさんとかが噛み砕いて咀嚼して少しでも伝わる様に広めてくれて、色んな誤解とかもあったと思うんですよ。いまだに「Yo, Yo」とか。「アレでしょ? 駄洒落でしょ。韻踏むやつでしょ?」とか。生まれて初めてブレイクダンスをいきなり見たら、びっくりすると思いますよ。それを普通のものとして認識してもらっているので、HIP HOPも出来るはずなんですよね。

 先輩達はそういうつもりで、もっとハンパじゃない白い目で見られていたと思うんです。20年前にHIP HOPの格好して電車に乗ってたらそうだったじゃないですか? 30年前だったらもっとヤバいじゃないですか? そういう所からここまで来たと思うと、余裕だと思うんですよね。それをやっていかないといけないと思うし。これは僕の考えだし、凄い極端な話かもしれないですが。

――今、ご当地アイドルがたくさん居ます。ご当地ラッパーみたいなことも考えますか?

 いいじゃないですか。「ご当地ラッパー」がいっぱい居たら超楽しいじゃないですか! アメリカってそういう感じなんですよ。各地に人気者のラッパーが居て、それが100万枚売れちゃうという。各地のラジオ局でラッパーが番組を持っていて、ご当地ソングを歌っていてというのは、凄く良いじゃないですか。地元を誇る文化だし、ラッパーはそういう存在になった方がいいと僕は思います。みんなが各町でやって、その中で誰が一番良いかというコンテストとかあってもいいと思いますね。B級グルメみたいなものだと思うんですよね。探せば各地にラッパーは1人は居るんじゃないかと。ご当地アイドルが居るんだから、ご当地ラッパーが居てもいいと思いますね。

――今回の福生市のPR映像「What'sUP FUSSA」はそのきっかけになる?

 ご当地ラッパーが出てきて欲しいですね。

――子供がそれを見てラッパーを目指したり。

 そうそう。小学生くらいから学校の授業で「この町の自慢をラップにしてみよう」とかね。それで一番良かった人をプロデュースしたりして。それ楽しいじゃないですか。すっごい生意気な奴ばっかり並んだりして(笑)

――教育にもなりそうですね、それは言っちゃ駄目とか。

 「それを自分が言われたらどう思う?」「イヤでした!」とかね(笑)。人に言われて嫌な事は言わない方が良いよねって。

――最後に福生市のPR映像「What'sUP FUSSA」をふまえて、メッセージをお願いします。

 観てもらって気に入ってもらえたら嬉しいし、自分の町にラッパーが居ないか探してもらって、「〜市ラッパー」みたいに応援してやって欲しいですね。これを観て「俺も出来そうだな」と思ったら、やってみたらいいと思うし、HIP HOPは排他的なカルチャーではないです。全員参加型の音楽と僕は思っています。好きになったら参加して、応援して、やってみて、一緒に楽しめたらいいなと思います。

 こういう事がきっかけで未来のスターや「ご当地ラッパー」をプロデュースしていったりと、HIP HOPは色んな地域発展に役立てると思うんです。お互い協力し合って、広い所に行けたら嬉しいです。今回、福生市はこういう事をしてくれて非常に嬉しいですし、色んな町でこういう動きがあると嬉しいなと思います。

――どうもありがとうございました。ちなみに、紅白歌合戦に出たいという思いはありますか?

 出たいです。当然出たいです!

(取材=小池直也)