小池都知事の政治塾「希望の塾」に入塾した仮面女子の桜雪(撮影・桂 伸也)

 去る10月30日、地下アイドルグループ・仮面女子のメンバーで、“東大卒アイドル”の桜雪(24)が、小池百合子都知事率いる政治塾「希望の塾」に入塾、その際にあくまで出馬の意思を否定し「政治を志すというよりは、アイドルの立場として東大で勉強したことや、吸収したことを、ファン層の若者やその家族など、自分の影響の与えられる範囲で発信していきたい」(10月31日既報)と宣言したことが、頭の片隅に留まっていた。

 【関連記事】仮面女子の桜雪、小池都知事の政治塾入塾も出馬意思はナシ

 この意向に関し、桜からは「アイドルのファンの方は、投票という行動が根付いているにもかかわらず、(選挙では)投票率が低いというのが現状なので、そこはアイドルファンの熱量が政治に向くように、うまく私もアシストしていきたい」(同)というコメントも発せられた。

 6月には仮面女子内で選挙ユニット『秋葉仮面』を結成、桜はそのリーダーという立場にある。ちょうど7月の参院選、そして都知事選という時期、秋葉仮面は「選挙行こうぜ!」というテーマソングをリリース、やはり選挙での投票率の低さに対する呼びかけをおこなっている。一方それより前の4月には『トランプ仮面』というスペシャルグループを設立。ある意味ジョーク的な意味合いで結成されたグループであるが、アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が次期大統領に当選したために、ネットではちょっとした話題になっている。

 このように政治にかかわる呼びかけのような活動が、桜には目立つ。政治をもウォッチし、これまでの自身の経歴から培った洞察力で自身の考えをコメントするという、アイドルという立場としては一風変わった個性を見せている。一見異色ではあるが、政治という固さを感じさせる話にキャッチ―な雰囲気を与えていることは、大きな実績でもある。

 社会学者の毛利嘉孝さんが2008年に発行した『はじめてのDiY~何でもお金で買えると思うなよ!~』(出版・スペースシャワーネットワーク)という本がある。これは家事や自宅の整備など、一般家庭でもよく用いられるDiY(Do it Yourself)という言葉をキーワードに衣食住などの生活を見直し、自身の独立体制で新しい生活を始めてみようという思想を、様々な例を用いて啓発していくというものだ。ここで毛利さんは、DiYという思想について「自律していること」「享楽的ということ」「ストイックであること」「いま、ここでということ」「メディアになること」「共有すること」という6つの思想を掲げている。

 その意図として描かれている内容の一つとして「現代の若者は昔に比べるとむしろ政治に強い関心を持ち始めているが、そんな傾向があるにもかかわらず、政治へのかかわり方が不透明で、どちらかというと遠くのことに思われている」といった要因を挙げ、その解決の糸口として本の第五章(最終章)では「DiYの政治を作り出そう!」というテーマを掲げている。これは現存する「政治」という枠組みを相対的に見る、新しいタイプの「政治」的な枠組みを自主的に生み出すことで、現存する様々な問題に人々が向き合う方法を模索するというものだ。

 仮面女子という存在は、地下アイドルという「自律した」立場であり、彼女らが2016年に提供してきた数々の話題は、様々なDiY的思想を感じさせるものがある。その意味で桜が語ったこの今後の目標は、まずは「伝えること」という行動には限られるものの、その呼びかけに応じるものが増えていくことで、人々が遠いと感じていた政治という領域に、少しでも近づいていく一つの糸口にもなるのではないだろうか。

 近年は仮面女子のスポークスマン的な立場で、メディアの取材を受けることも多くなった桜。そんな彼女の活動は、エンターテインメントというアイドルの側面から一歩前に進み、アイドルという存在の新しい可能性の一端を示しているようにも思える。それは人々をポジティブな方向に導く明るい材料にもなり得るのではないだろうか? 桜をはじめとしたそんな動きが、新たに迎える年に、小さくても何らかの反応をファンから見られるようになれば、また面白いことにもなるのではないだろうか、などといったことを考えて、実は同時にちょっと期待していたりもする。(文・桂 伸也)