「第25回モンブラン国際文化賞」授賞式に出席した坂本龍一

 音楽家の坂本龍一が「第25回モンブラン国際文化賞」を受賞した。去る21日には都内で授賞式がおこなわれ、受賞の喜びを語るとともに、自身が監督を務める東北ユースオーケストラの奏者ととともに「Merry Christmas Mr.Lawrence」(戦場のメリークリスマス)などを弾いた。奏でられた音楽は、同映画で共演したデヴィッド・ボウイさん(2016年1月10日逝去)を思い馳せるように、憂いをまとった雰囲気が漂っていた。

 「モンブラン国際文化賞」は、モンブラン文化財団が、若い才能の擁護・育成などに尽力する芸術と文化の支援貢献者を表彰する国際的な文化賞。坂本は、音楽や舞台芸術、絵画などあらゆるフィールドで活躍する、若きアーティストの才能を伸ばすプロジェクトや、楽曲リリースおよびコンサートを通じて多くの観衆へ彼らの才能を広めるサポートをしてきた功績が評価された。

 授賞式に出席した坂本は受賞の弁を述べるとともに「オノ・ヨーコさんや、小澤征爾さんみたいな人が受賞してきたものを僕なんかが貰っていいのかな、これをしっかりと受け止めて、精進していきたいと思います」と歴代受賞者に敬意を示した。

 式典では、坂本と自らが監督を務める、東日本大震災を体験した小学生から大学生までの混成オーケストラ「東北ユースオーケストラ」からヴァイオリン奏者とチェロ奏者が出演し、「美貌の青空」を演奏。演奏中は取材陣もスチールの撮影を禁じられた静寂の中で、坂本のピアノ伴奏と、少年2人の奏でる弦の音だけが会場に響き渡った。

 誰もが一度は聴いたことがあるであろう、今や普遍的名曲となった「Merry Christmas Mr.Lawrence」も、ヴァイオリンとチェロと、ピアノという演奏形態で多少アレンジされているのだろうか、また違った曲のように憂いをまとった雰囲気が感じられた。

 式典後の囲み取材で坂本は、同曲が主題歌の映画『戦場のメリークリスマス』でも共演し、今年1月に亡くなった英アーティストのデヴィッド・ボウイさんの死を悼んで「本当に信じられない。もう少しゆっくりと話す時間を持てば良かったな。後悔しています」と語っていた。もしかしたら、その様な想いが彼の演奏にも表れていたのかもしれない。

 坂本は、2014年に中咽頭がんを患っていることを公表したが、現在は克服したという。今年は米映画『レヴェナント:蘇えりし者』をはじめ、邦画でも『怒り』で映画音楽を手掛け、その完全復活をアピールした。坂本は体調について「神のみぞ知るというか、やれることはやっていますけど」と吹っ切れている様子も見られた。

 そして先日、『レヴェナント:蘇えりし者』のサウンドトラックが、来年2月に発表される第59回グラミー賞の最優秀スコア・サウンドトラック・アルバム(映像作品)部門にノミネート。坂本自身「こればっかりはどうにもならない」と話すように、グラミー賞の行方は分からないが、今年の坂本の快進撃、そして授賞式での一点の曇りもない、透き通ったような卓越した演奏を見ると、これからもまだまだ彼が第一線で活躍していくことは間違いないだろう。

 また、その世界的レジェンドと大舞台でも堂々と演奏して見せた2人の少年たちが、いつか坂本の背中を超えて活躍することがこの賞の最大の意義となるはずだ。(取材・松尾糢糊)