2年半の活動に一旦幕を閉じたTRUSTRICK(撮影・Arata Kato)

 神田沙也加(Vo)とBilly(Gt)による音楽ユニット・TRUSTRICK(通称=トラトリ)が12月17日に、東京・中野サンプラザで、全国ツアー『TRUSTRICK TRICK TOUR 2016』のファイナル公演をおこなった。ツアー初日を迎える前日の11月25日に、本ツアーをもって無期限活動休止することを発表していた彼女達にとってこれが休止前最後の公演。10月26日にリリースした3rdアルバム『TRICK』を中心に、「If -君が行くセカイ-」や「kissing」など全20曲を熱演、歌い捧げた。神田沙也加は「TRUSTRICKを見つけてくれて本当に感謝します。本当にまたね」という言葉を残し、2年半の活動は一旦幕を閉じた。

TRUSTRICKが作った自信作の宝たちを目一杯届けます

神田沙也加(撮影・Ayaka Horiuchi)

 雲ひとつないような快晴の土曜日。満員の中野サンプラザには、活動休止前のラストライブを見届けようと多くのファンが会場に駆けつけた。定刻を少々過ぎたところで、ピアノとエレクトリックギターによるオープニングSEが流れ、幕がゆっくりと開いていく。ステージはアルバムの『TRICK』のアートワークをそのまま再現したかのようなゴシックな雰囲気を醸し出していた。ステージ奥に設置されたフレームに神田沙也加のシルエットが映し出された。始まったのはアルバムでもオープニングを飾る「TRICK」。天から降り注ぐようなミックスボイスで会場を彩っていく沙也加。

 続いて、深紅に染まるライティングのなかで「Recall THE END」へ。ガラッと世界観を変えたアグレッシブ且つ情熱的なアッパーチューンで高揚感を煽った。Billyのギターも鋭いリズムを刻んでいく。歓声のなか、沙也加は「たくさんのお客さん、ありがとうございます。すごく嬉しい!」と集まったオーディエンスを見て感極まる声で喜びを表し、そのまま「highness」へ。4つ打ちのリズムはオーディエンスの鼓動にリンクするようにテンションを上げていく。

 「blur blur」ではステージの上部に吊るされたシャンデリアがシーン毎に色を変え、楽曲の表情を視覚でも楽しませた。一方、「pixie」では妖精のような軽やかなステップを魅せる沙也加が印象的で、リズミックな楽曲にオーディエンスは心躍らせているようだった。

 今回のツアーは、全国5カ所をまわるもの。沙也加は、MCでツアー幕開け前日に活動休止を発表した経緯を「ビックリさせてしまって本当にゴメンなさい」という言葉とともに、次の通りに丁寧に説明した。

神田沙也加とBilly(撮影・Ayaka Horiuchi)

 「本当は中野サンプラザの最後のMCで(活動休止)発表をする予定でした。最後に発表するのは一方的過ぎないかなと思って…。その土地それぞれのお世話になった人やみんなに一箇所一箇所お礼を言っていきたかった」(沙也加)

 また、Billyも感謝の言葉とともに次へのステップへの意気込みを語った。

「長期的なビジョンを持って始めたことですが、それは常に持っていないといけないことだと思います。活動を一旦止めますが、再び歩き出すときもビジョンを持って始めたいと思います」(Billy)

 そして、「TRUSTRICKが作った自信作の宝たちを目一杯届けます」と伝えて、「永遠」を届けた。沙也加の凛とした歌声に、Billyのワイルドなギターワークがコントラストとなり、楽曲にインパクトを与えた。幻想的なイントロが心を惹きつける「寂しさの宙から」へ。蒼く染まるステージは沙也加の心情を表しているかのよう。

 「mint gum」を披露。アルバムに収録された「sugarless version」ではなく、『TRICK TOUR 2016』バージョンで届けられた。「何かが始まるように歌おうと思い、ツアーではこちらのバージョンにしました」と沙也加。サビではリズムに合わせて会場全体が手を左右に揺らす。「サヨナラ」を告げているかのようにも見える光景が広がった。エンディングではBillyのストラトキャスターによるメロディアスなロングギターソロが響き渡る。いつまでも聴いていたくなるようなトーンに耳を奪われた。

 ここで、沙也加が音楽グループ・EGOISTと出会った初めての曲だという「Euterpe」をカバー。エキセントリックな模様がステージに投影され、EGOISTの世界観をTRUSTRICK風に聴かせた。そして、「If -君が行くセカイ-」、「kissing」とキラーチューンを演奏。「kissing」では2人がステージを離れ客席に。左右に分かれオーディエンスの至近距離でパフォーマンス。「みんなに逢いに来たよ〜!」と沙也加。身も心も弾む楽曲にボルテージは最高潮に。そして、本日の快晴にピッタリな爽やかな曲「from where to where -ため息の理由-」、ダイナミックな歌と演奏、躍動感あふれるステージングで魅せた「未来形Answer」と聴かせていく。

この濃密な時間は一生モノです

Billy(撮影・Arata Kato)

 沙也加は「1曲1曲みんなと、コミュニケーションをとった記憶が詰まっているから愛おしい曲になりました。みんなのおかげです。中野サンプラザが決まった時、びっくりしたし、大丈夫かなと思ったけど、ライブが始まって出てきた時から嬉しかった。新しい一生の宝物ができた」と喜びを示した。

 Billyは「音楽を作って世に出すということは、様々な人の人生に関わることなんだなと改めて思った。いろんな方々にお力を頂いて、僕たち2人では見ることのできない景色をたくさん見せて頂きました。ちゃんと言ったことなかったけど、姫(沙也加)、TRUSTRICKを始めてくれて感謝しています。この濃密な時間は一生モノです」と沙也加に感謝を伝えた。

 さらに沙也加はTRUSTRICK結成からの話を語った。

 「スタッフさんとチームを組んでやるということはTRUSTRICKが初めてだった。チームのためにたくさんの人に聴いてもらいたいとか、成功したいと思ったのもTRUSTRICKが初めてだった。いろんな奇跡が輪になって今日があるのかなと思っている。このツアーでTRUSTRICKはすごくいい空気。このままずっと続いていくんじゃないかと思えるくらい。でもそれは活動を休止すると発表したから、優しい空気が流れているんだと思う。これを経て大きくならないといけない」(沙也加)

 「誰のためでもないみんなへのメッセージです」と投げかけ、本編ラストを飾ったのは「Proud」。今の沙也加の心情を投影したような、温かい光に包まれながら気持ちを込め丁寧に歌い上げていった。そして、Billyのギターソロを見守るような視線を送る沙也加も印象的であった。様々な感情が込められた楽曲で本編を終了した。

TRUSTRICKを見つけてくれて本当に感謝します

神田沙也加(撮影・Ayaka Horiuchi)

 オーディエンスの手拍子に呼び戻されるように、ステージに戻ってきた沙也加とBilly。サポートメンバーを一人ずつステージに呼び込み、メンバーからコメントをもらう。角本雄亮(Dr)、山崎英明(Ba)、coba84(Key)の3人がこの2年半を支えてきた。もう、TRUSTRICKという1つのバンドと言っても過言ではない信頼関係がこのMCで受け取れた。

 アンコール1曲目は、SUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN)がCD音源でバイオリン参加した「I wish you were here.」を壮大なスケールで届け、TRUSTRICKの原点であり大切な曲だと語った「ATLAS」の2曲を熱演した。

 そして、まだ鳴り止まないトラトリコール。ダブルアンコールに応え、「innocent promise」を披露。プレゼントを持ってきましたとメッセージが書かれたカラーボールを歌いながら、客席に向かって投げる沙也加。再び客席に降り、ボールを直接手渡しする場面も。そして、「Honey Complex」では会場が回転するタオルで埋め尽くされた。サウンドの弾力感とダンサブルなビートに心踊る瞬間だった。

神田沙也加(撮影・Arata Kato)

 まだ鳴り止まないコールにトリプルアンコールに応える。Billyは「同じ時間、同じ場所に集っているということはすごいこと。物事が続くということは様々な奇跡が重なって成り立っている。また、僕たちがTRUSTRICKの音楽に向き合おうとなった時は、また元気な姿でお会いしましょう」とメッセージを送り、ラストは「いつかの果て」。2人の姿を目に焼き付けようと、静かにステージを見つめるオーディエンス。2年半の全てをぶつけるような、ソウルフルでエモーショナルな演奏と歌で大団円を迎えた。

 ステージに2人。「どうしよう、終わっちゃった...」。堪えていた涙があふれる沙也加。「TRUSTRICKを見つけてくれて本当に感謝します」と話すと会場からは「待ってるよ!」と声が上がった。そして、握手とハグを交わす沙也加とBillyに大きな歓声と拍手が降り注いだ。沙也加の「本当にまたね」という言葉とともに2年半の活動に一旦ピリオドを打った。

 珠玉の20曲を届けたTRUSTRICK。このライブでは、活動休止とは思えないほど笑顔が絶えなかった。素晴らしいステージだった。1曲1曲に大きな決意が感じられた。音楽に対し真摯に向き合ってきた2人が下した決断は、休止は次のレベルへ上がっていくためには不可欠だということ。活動再開を待ちつつ、沙也加がMCで語ったように今ある楽曲を、ファンのみんなが育てていって欲しいと心から思うのであった。(取材・村上順一)

セットリスト

TRUSTRICK TRICK TOUR 2016
12月17日 中野サンプラザ

01.TRICK
02.Recall THE END
03.highness
04.blur blur
05.pixie
06.LOVELESS
07.永遠
08.寂しさの宙から
09.mint gum
10.Euterpe(EGOISTカバー)
11.If -君が行くセカイ-
12.kissing
13.from where to where -ため息の理由-
14.未来形Answer
15.Proud

ENCORE1
16.I wish you were here.
17.ATLAS

ENCORE2
18.innocent promise
19.Honey Complex

ENCORE3
20.いつかの果て