TAKURO

 GLAYのギタリストでコンポーザーであるTAKUROが、自身初のソロ・インストゥルメンタルアルバム『Journey without a map』を記念して、発売日前日の12月13日におこなったクリエイターの箭内道彦氏との対談。前編では、B’zの松本孝弘からの助言もあって同作の制作を決めたことや、インストゥルメンタル曲を作るにあたり、改めてGLAYのメンバーの個の能力を再確認したことなどの内容が含まれていた。後編では、東日本大震災が与えた自身への意識変化、そして、本作に寄せた想いなどが更に踏み込んだかたちで語られている。

【対談前編】勇気が出た、TAKURO ソロAL制作を決意させたB’z松本孝弘の言葉

ギタリストTAKURO

TAKURO 普段の楽しさと、音楽作りというのは完全にくっついていると思います。ツアーの前は変な夢ばっかり見て、汗びっしょりになるんですよ。いくつかクリア出来る事も学びましたけど、それでも何年経っても慣れない緊張はありますね。

箭内道彦 緊張しているんですか?

TAKURO “緊張しい”なんですよね。本当に緊張するから、これはもう俺は馬鹿なんだと思ったんです。20年経ってもこんなに緊張するという事はアホになってしまったのだと。だからいくら練習しても駄目だと。だって、100回やって100回弾けるものがライブだと精度が落ちる、これはおかしいと。だから、お寺に行こうと思いました。

箭内道彦 (笑)。

TAKURO 気持ちから直してもらえれば練習通りに弾けるかなと。「俺、お寺に行くかもしれない」って言ったんです。そうしたら息子が「練習は本番みたいに、本番は練習みたいに弾いたら?」って。

箭内道彦 おおっ!

TAKURO 一瞬「おおっ!」って思ったけど、「うるせえこの野郎! あっち行け!」って追い出してやりましたけどね(笑)。でも後から考えたら「確かに」と。

箭内道彦 でも緊張は、慣れや手癖でやらないというか、その場に対して常に誠実であり続ける証拠でもあると思うんですよね。

TAKURO GLAYの「BELOVED」という曲があって、そのイントロが緊張するから好きじゃないんですよ。10何年前の大きなライブでトチったりして、それ以来はもう「ああ、あと3曲やったら『BELOVED』か、嫌だなあ」なんて思っていたんです。それでもやっぱり頑張ろうと思ってドキドキしながら弾いてるんです。もし、今後皆さんが「BELOVED」をスラスラ弾いている俺を見たら、それはもう完全にテープか何かを流していると思ってください(笑)。

箭内道彦 あははははは!

TAKURO 歌手で言うところの“口パク”です。俺が「BELOVED」を前にヘラヘラしていたら完全にコンピューターで音を流してますよ(笑)。でも、それだけは出来ないと思うんです。それで、今度は俺の緊張がHISASHIに伝染するんです。HISASHI、最近「BELOVED」のイントロのフレーズが違うんですよ。たぶんちょっと簡単にしているんですよ。「あれ、やっぱちゃんとやった方がいいんじゃないの?」って言ったら「お前の緊張のせいだよ!」って言われました(笑)。

レコードプレーヤーをバックに撮影に応じるTAKURO(撮影・松尾模糊)

箭内道彦 ギターの話ですけど、他のギターには無いレスポールギター(編注=ギブソン社製の代表的なエレクトリックギター機種の名称)にだけあるものって何ですか?

TAKURO 色々と持ってはみましたけど、レスポールは「俺に似合う」。

箭内道彦 おお!

TAKURO 例えば、ストラトギター(編注=ストラトキャスター。Fender社製の代表的なエレクトリックギターの機種)を持つと急に自信が無くなります。でもレスポールを持つと自分がロックヒーローになった様な気持ちになるし、胸を張って「よし、GLAYを張ってやろう!」と、そういった気持ちになれるのは、色んなギターをさまよいながら、最初に買ったギブソンのレスポールカスタムから始まって。ここ何年かはレスポールスタンダードだったり、50年代のレジェンドみたいなギターに引き上げられている気がするし。ギターに対する関わり方がものすごく変わりましたね。

『Journey without a map』に込めた想い

――さて、アルバム『Journey without a map』はどの様な思いで作られましたか?

TAKURO 言葉通り「地図の無い人生」を生きてきたなと感じるんです。「なりたい自分像」とか「立派な地図」は、GLAYの4人には無かったんです。運転はTERU、それでJIRO(ベーシスト)は助手席、俺とHISASHIは後ろの席に乗ってブーンって走るんですよ。それでTERUはハンドルを持つと人が変わるというね。飛ばしながら行くんですけど、JIROが「そこは絶対行き止まりだから!」と言って。「道細いから! 軽しか通れないから…ほらぁ!」みたいな(笑)。実際に青梅街道で雪の日に俺とHISASHIが車を押しながら進んだなんて事もありましたし。

 地図が無いながらも、それぞれが持っている知恵を出し合いながら、時には腹をくくって、時にはイチかバチかで思い切って、本当にたくさん良い風景を見せてもらったなという気持ちでいるんです。そんな思いをこの『Journey without a map』の中で描こうと思って、4パートくらいに割って自分の人生を表そうと思ったんです。

 ある意味「人生における不条理」ってありますよね? 俺は北海道出身だから、悩みの半分は人間関係だけど、残りの半分は自然とどう向きあうか、という事なんです。朝学校に行こうと思っても目の前は大雪で、まずここを雪かきしないと次に進めないという状況。でも学校に遅れる、みたいな。そんなジャッジの連続の中で究極だったのが東日本大震災。

 3・11のあの日は、多分、誰もがそんな事になると思っていなくて、大好きな人を「いってらっしゃい」と朝、送り出したと思うんです。だけど、その午後2時46分にああいう事が起きて、その後の津波があった時に、もう俺が地図を持っていようがいまいが、これはまた全然別の事で…。この不条理に何ていう名前を付けていいか分からないし、どう向き合っていいか分からないからこそ、言葉でなくてギターで表現しようと思ったんです。

 あの日以来、自分の死生観や、1日1日を大事にしていこうという気持ちや、明日言おうと思っている事は今日中に伝えておこうとか、好きだったら「好きだ」という事を照れずに伝えておこうとか、随分と生き方自体が変わりました。そういった想いがこのアルバムを通して皆さんに伝わったらなと思います。それが1番大切なテーマでしたね。地図があっても無くてもどう生きるか。

箭内道彦 今、こうしてアルバムの曲が流れていますけど、ギターがそう言っている様に聴こえますよね。僕は今の話と聴こえてくる音が重なりました。地図の無い旅の良さ、旅の最中に何に出会うかというメッセージもありますよね。だから毎日の色んな出会いを楽しんでいくという事も「地図の無い面白さ」なのかなと思いました。

TAKURO 今年から皆さんにお勧めしている事が2つあるんです。1つは「何事にもひと手間かける」です。例えば、箭内さんが夜中に小腹が空いてカップラーメンを食べるとしましょう。ネギを刻むんです。もしくは、ちゃんとどんぶりに入れたりするんですよ。それはまあ、今俺が伝えたい事じゃなくて(笑)。

箭内道彦 はははは!

TAKURO 旅先での迷子のすすめ。自分の住んでいる見慣れた街でも良いのですが、迷子になってみると自分が見慣れた街でも違った角度から見られるんですよね。ツアーで何度も行っている都市でもまだまだ知らない表情があったりするし、色んな国に行っても、半分は各地の名所に行って、残りの半分は地図を捨てて迷ってみると。治安の悪い国はやめた方がいいですけどね。そういう事を心掛けると、よりツアーも楽しくなったし、自分の住んでいる函館という街もどんどん知らない表情を見せてくれるんです。

 知らなかったのかな、と気付かされる事が今回のセッションでも多かったですね。ギターに関してもそうだし、自分自身に対してもそうだし。すぐ人の言う事を信じてしまうという、俺の短所でもあり長所でもある所、その素直さがアルバムに出てくれたおかげで、真っすぐな一本の筋が通った気がするんです。かと思えば、「これからいい事言います」という様な雰囲気を出しているフレーズを弾いているというのも自分で気付くと、自分自身がここまで映し出されて、描かれて…今は恥ずかしいですけど、10年経ったら「若かった」で済みますからね。

 まだ出来立てのホヤホヤなので「あそこ、ああすれば良かったな」というのが出てくるんですけどね。俺が70歳くらいになったらどこかのジャズバーで弾いているから、その時は箭内さん是非。その時はもうちょっと上手いと思いますから。あと30年くらいありますからね。

自由に楽しむライブ

――年明けの2017年2月2日に東京のステラボールをスタートとして全国9カ所15公演のツアーが決定しています。緊張するというお話もありましたが、どんなソロライブになりそうですか?

TAKURO すごく自由度のライブにしたいと思っています。サックスの音が好きだから、サックスプレイヤーに「みんな出てよ!」と言ったら、ある時3人来ちゃったんです。1人ずつソロを回したらえらい長いという(笑)。でも、それも突発的だなと思ったんです。

 今回の『Journey without a map』には1つテーマがあって。そこからピアノやサックスや色々なパートがあるけど、テーマを終えたらそのプレイヤーに全部差し出して、その場所、その土地で感じた事を弾いてもらおうかと思っているんです。僕もそうしたいですし。1本として同じライブにはならないと思うんです。同じようには弾かないんじゃないかなと。

 プレイをしていて、みんなの想いが重々理解出来るから、「HOWEVER」はみんなの知っているフレーズでいきたいし、「誘惑」や「BELOVED」もそうですけど、ある時、疑問に思ったりするんです。「このメロディ、違う方に行っては駄目なのだろうか?」「じゃあ、何で駄目なんだろうか?」「俺は誰に遠慮してるんだろう?」「自分の何に気持ちを抑えられて今こうしているんだろう?」と。

 ジャズの理論の勉強をしている時にあらゆる音に名前がある事に気がついて、「コード進行上、避けるべき音=アボイド・ノート」があるならば、「いいじゃん、たまにはアボイド・ノートでも」と思ったんです。毎日律儀に生きている様な顔をしているけど、「たまには変な音を出してもいいんじゃない」と思うんです。それを知ったおかげで、出さないで済むんです。そういうツアーになれば良いなと思います。参加してくれるオーディエンス、ミュージシャンが自由を感じて、お客さんの楽しさが俺達に伝わって、俺達の楽しさもお客さんに伝わって、というライブになれば良いなと思います。

箭内道彦 今お話を伺っていると15公演全部観たいですね。

TAKURO B’zの松本さんがもし来るという時のライブは、CD通りに演奏します(笑)。

箭内道彦 それもそれで観たいですね(笑)。

TAKURO あんまり外れると「お前さあ!」って言われるから。

――最後に、皆さんにメッセージをお願いします。

TAKURO TAKUROソロアルバム『Journey without a map』がリリースされますが、ここがスタート地点だと思っています。このアルバムに収録されている曲達を大事に大事に、繰り返し弾く事で、10年、20年経った時の自分のギタリストとしての成長を確認出来ればなと思います。このリリースの前に皆さんと時間を過ごせて凄く幸せです。どうもありがとうございます。

(取材/撮影・松尾模糊)

作品情報

Journey without a map
発売日=2016年12月14日発売
商品形態=
 CD+DVD盤/3500円+税/PCCN-00025
 CD only盤/2500円+税/PCCN-00026
 アナログ盤(初回生産限定)重量盤2枚組/4000円+税/PCJN-00001
収録楽曲=
 M1.Lullaby
 M2.流転
 M3.Guess Who
 M4.Autumn Rain
 M5.RIOT
 M6.Istanbul Night
 M7.Francis Elena
 M8.Fear & Favors
 M9.Northern Life
 M10.Journey without a map
 M11.函館日和
DVD収録内容=
 Guess Who ミュージックビデオ
 Guess Who ミュージックビデオメイキング 
 Journey without a mapドキュメンタリー

ツアー情報

Journey without a map 2017
2017年2月2日、3日 東京 ステラボール
2017年2月6日 愛知 Zepp Nagoya
2017年2月7日 大阪 Zepp Namba
2017年2月9日、10日 広島 BLUE LIVE HIROSHIMA
2017年2月13日、14日 福岡 イムズホール
2017年2月18日、19日 北海道 函館 金森ホール
2017年2月21日、北海道 Zepp Sapporo
2017年2月23日、24日 宮城 チームスマイル 仙台PIT
2017年2月27日、28日 東京 Zepp Tokyo