初ソロ盤の試聴会をおこなったGLAYのTAKUROと箭内道彦氏(撮影・松尾模糊)

 GLAYのギタリストでコンポーザーであるTAKUROが12月14日に、インストゥルメンタルアルバム『Journey without a map』をリリースした。本作は、TAKUROが初めてリリースするソロアルバム。発売日前日の13日には、東京中央区のGibson Brands Showroom TOKYOで、アルバム発売を記念した試聴会がおこなわれた。GLAYの音楽からは想像し難い、ブルージーでジャジーな大人の色気漂う今作。併催されたトークショーでは、クリエイターの箭内道彦氏をゲストに、レコーディングやGLAYのメンバーの反応、制作に至った経緯、今作に込めた想いまでを語った。“ギタリスト・TAKURO”としての考えを知る良い機会となった。本メディアでは当時の様子を全文書き起こし、以下に紹介したい。

恥ずかしいアルバム

TAKURO GLAYがデビューして22年近くですが、初のソロアルバムをリリースします。めっちゃ貫禄ある新人ですけど(笑)。よろしくお願いします。

――『Journey without a map』を聴いてみていかがですか。

箭内道彦 すごく人柄が溢れていて、そこに溺れそうになるというか。これは、TAKURO以外の何ものでもないなと感じて幸せでした。「好きな人が好きなことを味わう」という事って凄く幸せじゃないですか?

TAKURO そう言って頂いて胸にグッときています。

箭内道彦 これを奏でているTAKUROさんがこの歳でソロデビューをして、嬉しそうなのを皆が見ることが、さらに幸せなんだよね。

TAKURO でも、実際マスタリングが終わって家で聴いていたんですけど、「やっぱりリリースするのやめようかな」と思ったんですよ。

箭内道彦 何でですか?

TAKURO 箭内さんの仰る通り、“そのままの自分がここに居る”と感じた瞬間、すごく恥ずかしくなったんですよ。1曲目の「Lullaby」とかも、「カッコいいコードを使ったりしてちょっと頭いいと思われたい俺がいる」みたいな。

TAKURO 凄いプレイヤーを集めて「俺、人脈あるんだぜ!」みたいな(笑)。実際、色んな人達に“おんぶに抱っこの肩車”だったんですけど、それでも自分の普段の暮らしのままの“素のTAKURO”がいるから、皆さんが聴いた瞬間、俺の恥ずかしい所が全部見られてしまうと思うと、「このプロジェクト、無しにならないかな」と一瞬思いました。それくらい自分が出ていて…。

箭内道彦 でも「恥ずかしい」って、一番表現が表現になっている瞬間ですよね。“何も隠していない”という。

TAKURO すごくいい事言う! その言葉を頂けただけでこの恥ずかしさが緩和された気がする。

箭内道彦 昨日ずっと聴いていて、「これは恥ずかしいアルバムだ!」と僕も言おうと思ったんですよ。

TAKURO やっぱバレている(笑)。

箭内道彦 本当に裸ですよね。これは“フルヌード”だと思います。

TAKURO とうとうGLAYからフルヌードが(笑)。

箭内道彦 でも、裸を見せたり、レントゲンを撮ったりという事がヌードじゃなくて。その人の本当の美意識だったり、カッコつける部分だったり、好きなものを隠していない感じだったりというのが“ヌード”なんだなと思いました。

TAKURO もう、これだけ見せたら恥ずかしいもの無いですよ。今、GLAYのアルバムの詞を書いているんですけど、今日を境にもっともっと自分の内面をえぐって赤裸々にいこうかなと。

ギタリストのいばらの道

箭内道彦 本当に不思議なもので、言葉が乗っている訳ではないから、それよりは遠いものになるかなと予想していたんですけど、全然逆でしたね。言葉よりもっと雄弁というか。

TAKURO B’zの松本孝弘さん(今作プロデューサー)の指導が激し過ぎて、レコーディング先のLAから1回逃げてやろうかと思ったんですよ。一つひとつの音を弾くんですけど、「音が無くなっても弾け」と言うんですよ。

箭内道彦 どういう事ですか?

TAKURO 例えば、チョーキングをして、ゆっくり弦を下ろしてビブラートをしていって、他のパート、ピアノソロが始まったとしても気を抜かないで、「本当に音が必要無くなるまで心を込めてビブラートをしろ」って言うんです。最初は「何を言っているんだろう?」と思っていまして。でも、だんだんセッションを重ねていくうちにその意味が分かってくると“いばらの道”が広がるんです。どこで自分は止めるべきか、まだ行くべきか、“聴こえない音を聴きながら”という禅問答の様なものでしたね。

初ソロ作『Journey without a map』をリリースしたTAKURO

箭内道彦 ギターが上手くなりたいって、ずっと練習してきて、プロになっても練習して、いばらの道を進み続けていますよね。

TAKURO あちこちで言ってるんですけど、40歳の誕生日を境に「もっと自分のギターを見直そう」と思って、渋谷の楽器屋に教則本を買いに行ったんですよ。「5分で弾けるジャズ」とか「39歳からのBLUES」とか、「地獄のメカニカルトレーニングフレーズ」とか…。練習しながら「コレ要るか?」と思いながら時間を重ねて、徐々に弾ける様になってきて音の粒が立ってきて、だんだん自分の色が出てきた時に、「何歳になっても酒と練習は裏切らねえな」と本当に感じることができましたね。いくつになっても上手くなれるし、自分の出したい音が明確にあったら、そこに向かって真っすぐ歩いていけばいいんだという事を、この5年間すごく意識しているんです。

 B’zの松本さんと「前からソロアルバムを作るとは言っていたけども、全然作らないじゃないか」と、去年の夏にそんな風な話をしていたんですよ。B’zの松本さんは出会った当初から「ギタリストでソングライターならば、一度ギターを見直す上でもソロ作品を作ると色々見えるものがある」と言うんです。それこそ「ギタリストでソングライターなら1回は歌え」という事も松本さんからの教えの中にあったんです。「何でですか?」と言ったら「ボーカリストの孤独が分かる」という事を教えてくれたんです。

 そういった流れもあって、去年の夏に「いつか、いつかって言ってないで、もうやりなよ」と言われたんです。それを「TAKUROはもう出来るんじゃない?」というメッセージに受け取ったというのもあったんです。やってもいい頃なのかもしれないな、と思ってようやく重い腰を上げたというか「勇気が出た、覚悟が出来た」というのかな。

箭内道彦 松本さんがソロアルバムを出したのって、今のTAKUROさんくらいの歳の頃でしたっけ?

TAKURO B’zをやる前からずっとコンスタントに出していたと思いますよ。B’zをやりながらもコツコツと。「わざわざソロの期間をとっていない」と言っていました。空いた時間にスタジオに入って、本業のB’zをやりながら自分のソロをという感じで。

GLAYメンバーとソロ作の関係

箭内道彦 このアルバムには、すごく面白いDVDが付いていて…あれは恥ずかしいですよね?

TAKURO “ひとり情熱大陸”みたいなね、恥ずかしいです(笑)。

箭内道彦 あの中で、TAKUROさんがギターに対してコーラスしているシーンがすごく象徴的だと思いました。ギターがリードボーカルで、それにハモっているんだなと思ったんです。

TAKURO 普段だったらTERU(GLAY・ボーカル)がいて、その声の情報量みたいなものを考えながら詞を書いたり、メロディを作ったりするんです。彼の声は本当に豊富な「ビタミン、タウリン1000ミリグラム」みたいな感じなんですよ(笑)。「あっ」と言っただけとか、笑っただけで何となく周りが元気になるという。だから、あまり歌詞で説明する必要が無い曲もあるし、メロディが高く上がっている時はその声を聴いてもらえば、バンドが何を言わんとしているかが伝わるだろうから。

 ずっとそういう状況下で音楽を作っていましたけど、今回ギターをやるにあたって最初、そのメロディが作れないんですよ。歌う曲は書けるにもかかわらず、ギターの曲は何で書けないのだろうと。もっと言うとギターソロを作る事自体もあんまり好きじゃないというか、苦手意識があったんです。だけど松本さんとの色んな話の中で、ギターの個体差について教えてもらったんです。

 ギターの年代によってもキャラクターが違うし、シンガーで言ったらアレサ・フランクリン(編柱=米ソウルシンガー。“クイーン・オブ・ソウル”と呼ばれている)みたいなギターもあるという。その「ギターの個体差」を理解していないなら、良い曲になる訳がない、と言われて。

 アルバム最後の曲の「函館日和」のテーマは、1955年製のギターを持って弾いた時に、そのギターの良い音色と、メロディと気持ちがちょうど良いくらいに混ざり合った時に初めて「このメロディは良いメロディだ、これはOKだ」と思ったんです。その“ギターの声”を自分が理解するまで全然曲が作れなかったんです。でも、それが分かってからは3カ月くらいでアルバムを作り終えたんです。

箭内道彦 僕は日本語が大好きだし、歌詞がある歌が好きだし、洋楽より邦楽の方が好きなのは「言葉」があるからなんですね。でも別な意味では、よく「ラララ」ってあるじゃないですか? あれって究極の歌詞だといつも思っているんです。

TAKURO そうですね。

箭内道彦 オフコースの「言葉にできない」じゃないですけど、言葉が無くても言葉になっている状態で、その「ラララ」よりもっと進んだものが“ギターの声”なんだなと、このアルバムを聴いて思いました。

TAKURO 同じメロディでも、ギターってどの弦を弾くかでまた違うんですよね。だから「ギターのどの弦で弾くか」というテーマが出てくるんです。巻弦で弾くのか、ストレートの弦で弾くのか、スラーなのか、プリングなのかハンマリングなのか、チョーキングなのか…。

 1つの音符にしてみると五線紙では同じなんだけど、これをどう弾くかという問答が始まる訳なんですよ。それを一つひとつ検証していく作業も、ギタリスト1年生としては難しいんですよ。正解が分からないから、やってみるしかないということで。スタジオでずっと「このメロディに対してどの演奏具合が1番良いんだろう」と。

 そんな事をやっていると、今度はどのアンプがとか、指弾きなのか、ピックなのかとなってくるんです。自分の今までのギタリスト全キャリアをもう1回見直すという、凄まじい時間になりましたね。自分の弱点がバンバン見つかってキツかったですね、それを認めるという事は。

箭内道彦 その経験、財産をまたGLAYに持ち帰る訳だと思うんですけど。僕は、TAKUROさんのマネージメントという部分のGLAYにとっても凄く大きなソロアルバムだと思っています。自分をどう確認しようかという、大きな刺激をこのアルバムからもらったんじゃないかなと思います。

TAKURO DVDの撮影で、HISASHI(GLAY・ギタリスト)が「よくお前、こんな売れねえアルバム作ったな」と言われて。「お前、なんてことを言うんだ」と思いました(笑)。「HISASHIがそう言っていた部分はカットだ!」と言うと、小さい男と思われるんじゃないかなと。

箭内道彦 ははははは!

TAKURO 受け入れる自分を演じてはみたものの。16歳からお互い知っている訳ですけど、GLAYがデビューしてからは特にそうなんですが、リーダーとして、ソングライターとしての仕事に重点を置いていた気がするんです。GLAYを1歩ずつ進めていくという事に心血を注いだ20年であった気もするんです。

 それを彼の目からしてみれば、世の中にどうGLAYが受け入れられるかという事ばかりを意識している時期もあったと思うんです。タイアップに対して、きっちりとそれに値するような作品にするとか。それを見ていると、ちょっとかわいそうだったと。でも今回は少なくともHISASHIが知ってるTAKUROだから、「本当に好きな事が出来て良かったね」ということみたいです。「いや、言葉足りねえよ!」と言いましたけどね(笑)。じゃあ俺が言葉を足しておくよ、という訳で今ここで補足を(笑)。

箭内道彦 DVDに入っていたHISASHIさんの事で印象的だったのが、「『このアルバムに1曲書いてよ』ってTAKUROに言われて、凄い良いのを書いたのにやんわりボツにされた」という場面ですね(笑)。「でも、やっぱりアルバムを聴いてみると、それは入らないと分かった」と言うんです。僕はその曲を聴いていないですけど、これはもう全曲TAKUROが作曲しないと成立しないアルバムだったんだなと思うんです。だから「書いてよ」と言ったのも罪なのだなと(笑)。

TAKURO どういうものにしようかなと思っていて、一番最初に誓った事は「心の中にあるどうしても表現したい欲求」、本能みたいなものに対して成立させたいなという事だったんです。ジャジーだとかブルージーだとかいう要素自体は実は曲作りの段階では意識しなかったんです。多分、メロディだけを取り出してみると、皆さんに馴染みのあるもの、GLAYでもよくある流れなんだと思うんです。

 そこでたくさんの理解者の人達に「TAKURO君の今持っているムードというのはこんな感じなんじゃないか?」という一つひとつの確認で、「ああ、そうかもしれない」という…。大人がふと仕事を終えてリラックスしている時に思わずかけちゃいたくなる様な、そこにお酒があったら、そしてギターを持ってポロンっていう様なイメージだったんです。そういう意味では彼の曲が入る余地は無かったですね(笑)。

箭内道彦 ステージの上で曲が出来上がっていくシーンがありますね。TAKUROさんが弾き始めて、「みんな手伝ってよ」と呼びかけて、みんな集まって来て。あの感じが凄いカッコ良くて、いいなと思ったんです。普通はステージで曲は作れないと思うんですよ。

TAKURO TERUの話だと、ステージで彼がつまづいて方向を見失っている時に俺は黙って「無」になるんです。そういう時にふと思いついたりしますね。俺はあんまり「降りてくる」というタイプのソングライターじゃなくて、書こうと思って書くタイプなんです。ステージの時の異常な興奮状態とか、MCのカオスとか、何かあるんでしょうね。夢の中で作るという事もたまにありまして、あの時の“ラッキー感”といったらないですよ(笑)。もう「創作時間ゼロ」で、吹き込めば一丁上がりですからね。

箭内道彦 でも、起きて冷静になって聴くと何かにそっくりだったりってよく言うじゃないですか? でも今の話だと結構良いのが出来てる?

TAKURO 夢の中で曲を作っていても「これ何かに似てるな」というのは途中で気付くんです。「今のは違う」って直して「これは出せるな。GLAYに持っていけるな!」と思って起きて「あ、夢か! ラッキー!」というのは実際にあるんです。デビューしてからずっとなんですけど、ライブ前は嫌な夢ばっかり見るんですよ。どうしても靴紐が結べないとか、衣装が変な色のシャツしかないとか(笑)。ドラムがカウントを出したら知らない曲、とか。

 「どうすんねん!」みたいになるんですけど、もう20年選手なので、本番でも夢でも永井さん(GLAYのサポートドラマー・永井利光)が叩き出して曲を知らなければ、放っとくんですよ(笑)。曲のキーが分かればあとは適当に。夢の中でも成長しているんだなという発見でしたよ。

箭内道彦 とある夢の診断をしてくれるTV番組に出演した時に「どんな夢を見ていますか」と言われて、「基本的に仕事をしていたり、物を考えていたり、発表したり…イマジネーションが自分には無いのかなと、ちょっと心配なんです」と言ったら、それは夢は現実と上手くバランスを取っている状態らしくて、現実がつまらないと夢が面白いらしいんですよ。

TAKURO なるほど!

箭内道彦 だから夢が現実とあまり変わらないのは、現実が充実している証拠だという風に言われたんです。だからTAKUROさんはそれなんじゃないですか? 現実も楽しいんじゃないですか?

TAKURO 3日くらい前に『君の名は。』を観に行ったんですよ。その夜『君の名は。』の夢を見たんです。

箭内道彦 ははははは! 完全に直結していますね。