初ソロ作『Journey without a map』をリリースしたTAKURO(撮影・松尾模糊)

 GLAYのギタリストでコンポーザーであるTAKUROが14日に、インストゥルメンタルアルバム『Journey without a map』をリリースした。本作は、TAKUROがデビュー22年たったなかで初めてリリースするソロアルバム。その収録曲は、GLAYとして日本のロックシーンをけん引し続け、その楽曲制作を担ってきた彼の一面とは少し違った、ブルージーでジャジーな大人の色気漂うものとなっている。

 13日には、東京中央区のGibson Brands Showroom TOKYOで、アルバム発売を記念した試聴会が開かれ、一足先に音源を聴く機会を得た。本作は<CD>と<CD+DVD>、そして初回生産限定としてアナログ盤の3形態でのリリース。この日は、アナログ盤から5曲がピックアップされ、高性能音響環境のなかで再生された。

 1曲目に流されたのは、アルバムの冒頭を飾る「Lullaby」。南国を思わせる、明るいリフのフレーズが印象的。ジャズテイストのリズム隊とも相性が良い。楽曲を更に盛り立てるのはTAKUROが大好きだと言うサックスソロ。いきなりGLAYのサウンドとは違う面を押し出しされており、聴く者をハッとさせる。

 2曲目は「流転」で、アルバムでも2曲目に収録されている。こちらは「Lullaby」とは打って変わって、激しいドラミングと歪んだギターサウンドが全面に押し出されたロックテイストの曲。

 「Guess Who」は、アルバムの3曲目収録。ピアノから始まる夜の大人の色気を全面に出したジャジーな曲。TAKUROが「グラスを傾けながら聴いて欲しい」と語ったように、そのギターサウンドは艶やかで、怪しく光るネオンのような粘り気を帯びたフレーズ。聴く者を惑わせる。

 続いてアナログのB面に針が落とされ、アルバム10曲目に収録されている、表題曲の「Journey without a map」が会場に響き渡る。このアルバム全体で、TAKUROが今作のメインに使用したという、1950年代に製作された、ビンテージのレスポールギター。風格漂う往年のギターはここぞと言わんばかりに鳴いている。途中でピアノサウンドが入り、ジャズテイストに転調するなどトリッキーさも併せ持つ。さらに、TAKUROがギターに合わせるようにコーラスを吹き込み壮大な仕上がりを見せている。

 最後を締めくくるのは、アルバムでも11曲目の最後に収録されている「函館日和」。タイトルにもある北海道・函館は、GLAYのメンバーとTAKUROの故郷。ピアノサウンドとフルートの音が優しく包み込むように鳴っているアンビエントな1曲。TAKUROのギターサウンドもそのサウンドに寄り添うように繊細に鳴り響いている。まるで、故郷に想いを馳せるようなノスタルジックな仕上がりだ。

 函館は北海道の南端に位置し、海洋性気候で北海道内では比較的降雪量が少なく、穏やかな場所である。TAKUROがこの曲を最後に収録したのは、自身が生まれ育ち、GLAYのメンバーと出会った人生の原点である函館という土地に、自身のアイデンティティを見出しているからではないか。

レコードプレーヤーをバックに撮影に応じるTAKURO(撮影・松尾模糊)

 今までGLAYで、そしてこのソロ作で表現してきたものの全ては、もう一度この原点である函館と言う場所、「函館日和」という曲に立ち返り、ギタリストとしてさらなる高みへと踏み出す、そういう秘めた決意を静かに燃えるように奏でている気がした。

 加えて今回はCD音源ではなく、アナログ盤で再生されたことは、TAKUROという人物の持つ温かみを、音像でさらに具現化できていたように思う。というのも、これまで何度かあったイベントや取材会で見た彼の姿は、常に記者などに対して壁を設けることなく声をかける、気さくさがあった。そこに彼の温かみを覚えていた。

 春の日差しの中で、函館の雪解けをウッドデッキに腰かけ、ウィスキーを片手に見届けているような贅沢で芳醇な音の世界、そしてバーのマスターのように温かみのある彼の人柄。なんとも美しい世界観に浸ることができた。

 プロデューサーを務めた、B’zのギタリストである松本孝弘は「長年に渡る友情をこの様に音楽として形に出来た事をとても嬉しく思います。GLAYのイメージとは違う、彼本来の穏やかな人柄から生まれたメロディ、ギタリストとして今なお、進化しようと努める彼の姿勢がこの作品には網羅されています。音楽を愛し、ギターを愛する者同士が、互いにリスペクトし合い、創り上げたこの作品から、きっと感じて頂ける何かがあると信じています」とコメントしている。

 松本の話すように、TAKUROはこの作品で、自身がGLAYで表現できなかったものを幅広い音楽性で雄弁に語っている様に感じた。そして、この作品を通して、彼が次のステージへと踏み出していることも明らかである。それは、GLAYというバンドが今後、更なる進化を遂げることに繋がることは言うまでもないだろう。(文・松尾模糊)