銀杏BOYZトリビュート「きれいなひとりぼっちたち」。参加アーティストそれぞれの解釈で演奏、歌われることで、銀杏BOYZの本質が浮き彫りになった

銀杏BOYZトリビュート「きれいなひとりぼっちたち」。参加アーティストそれぞれの解釈で演奏、歌われることで、銀杏BOYZの本質が浮き彫りになった

 2003年から活動を続け、数々のアーティストに世代を超えて支持されている、ロックバンドの銀杏BOYZ(現メンバーは峯田和伸のみ)をトリビュートしたコンピレーション作品『きれいなひとりぼっちたち』が12月7日にリリースされた。

本質が浮き彫りに

 若者に強く支持され、青春時代の想いや葛藤を題材にした楽曲が多い。だが、それを超えてリスナーの心を掴んで離さないのは「もう戻らない、喪失感」なのではないだろうか。その点が、青春を終えたであろう、我々をいつでも切ない気持ちにさせるのだと思う。

 この作品にはYUKI、サンボマスター、安藤裕子、曾我部恵一ら、銀杏BOYZを愛してやまないアーティスト13組が参加。それぞれの解釈で演奏、歌われることで、銀杏BOYZの曲そのものや、個性的バンドサウンドの本質が浮き彫りになる、という面白い構造になっている。

それぞれの解釈

 この作品のオープニングを飾るのはYUKI。「歌詞とメロディが好き」という理由でこの曲を選んだという。若干のお洒落感を加えているが、オリジナルを踏襲したアレンジになっている。おそらく原曲の良さを消したくなかったのだろう。YUKIのキュートな声だけで十分彼女色に染まっているように感じる。

 クボタタケシの「ぽあだむ クボタタケシREMIX Version I」はオリジナルに比べ、幼児退行的なリミックスが施されている。これが歌詞のナンセンスから覗かせる狂気と組み合わされることによって、楽曲の印象をまた違う、違和感の様なものを生み出す事に成功している。

 麻生久美子による「夢で逢えたら」は渋谷系の様なアレンジ。ストリングスも混ざる。峯田とドラマや映画で共演した事がきっかけで、今回の抜擢となったと思われる。女優としてではなく、シンガーとしての麻生久美子に触れる事ができるレアなトラック。

 「あいどんわなだい」はYOUR SONG IS GOODによってインストゥルメンタルのレゲエに改造されている。メンバーのサイトウ “JxJx” ジュンは、この曲がお気に入りなのだという。面白いのは言葉を取り除く事で、銀杏BOYZの音楽を「音楽そのものとして純粋に体験できる」という点ではないだろうか。

 クリープハイプは「援助交際」のカバーを披露している。ベースラインなど、かなりオリジナルを意識したものに仕上がっている。こちらの方が原曲よりもノイジーな要素が減少し、洗練された印象。尾崎世界観も「楽しんでやれた」とコメントしている。

 同じロックバンドでもサンボマスターは「No Future No Cry」をなんとアコースティックでという変化球で勝負。と思いきや中間部からバンドが合流し、ロッカバラード調から倍速で原曲に近い雰囲気まで持っていく。ボーカル山口隆の語りかける様な、フォークの様な質感が印象的。

 空間系のエフェクトがかかったピアノやシンセサイザーを使って、元々弾き語り調の「なんとなく僕たちは大人になるんだ」に挑戦した安藤裕子。段々と大人になっていく、寂しさというか情緒を歌うこの楽曲に対し、終盤になるまでビートを鳴らさずに取っておいて、安藤が得意な耽美な音像を提示する。

 「夜王子と月の姫」をシューゲイザーの雰囲気でカバーしたのは曾我部恵一。終始轟音が空間を埋める。その上で甘い曾我部の声やシンセが綺麗なメロディを淡々と紡いでいく、というギャップ。曲が終わった後、音響がふっと消えた時の余韻がまた切なさを感じさせる1曲だ。

 ミツメの川辺素は峯田から「どんな形でカバーしても大丈夫」と声を掛けられたそう。そんな彼らは「駆け抜けて性春」のBPMを落として、肩の力を抜いた演奏に落とし込んだ。音像もクリーン、サビはファルセットで原曲を崩し、彼ら流に味付けされている。

 印象派な雰囲気のピアノ弾き語りで「BABY BABY」を仕立てたsebuhiroko。1コーラス目と2コーラス目で味わいを変えているところもニクい。ピアノの音色もきれいだ。この様なシンプルな演奏では、素材の良さというか、楽曲の良さが素直に活きる。

 THE COLLECTORSによる「YOU & I VS.WORLD」は彼ららしいとも言える、王道なロックで演奏。メンバーの古市コータロー曰く「意味もなく全力疾走したくなる仕上がりになった」そうで、オリジナルの粗々しいイメージを置き換えて、ノリやすくなっている。

 続くGOING UNDER GROUNDは「ナイトライダー」を披露。知る人ぞ知るな選曲ぶりから彼らの銀杏BOYZへの愛情が伝わってくる。ここではポップなアレンジが選択されている。しかし、そこまで元のイメージを破壊する事は避けて世界観を保持。ただ、より聴きやすくなったという印象だ。

 アルバムのトリを飾るのはYO-KING。曲は「東京」。オリジナルがバンドサウンドに峯田の切ない歌唱が乗る形なのに対し、こちらはローファイ且つ、オルガンの効いたサウンドで望郷を感じさせる仕上がりとなっている。同じ曲でありながら、種類の違う切なさへとリスナーを誘う。(文・小池直也)

参加ミュージシャン

 ◆銀杏BOYZ(峯田和伸) 2003年に前身であるGOING STEADYが突如として解散、その後、銀杏BOYZ結成。その狂気的で破天荒なライブ・パフォーマンスと、クオリティ高き楽曲の溶け合いが最大の魅力の銀杏BOYZ。もはや「ロックバンド」というよりも「エンターティンメイント集団」と形容しても過言ではない唯一無二の集団。圧倒的且つロマン溢れる表現は、たくさんの若者のハートに「ドキッ!」という、ときめいた衝撃音を与え、多くの求心を得ている。

 2005年に、2枚同時発売されたアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」「DOOR」が週間チャートでそれぞれ初登場5位、7位という記録を打ち出し、10年以上経った今も、名盤として輝き続けている。そして2014年、9年振りにリリースされた『光のなかに立っていてね。』、『Beach』が週間チャート初登場2位と4位にランクイン。当アルバムを最後に峯田和伸(Vo./Gtr)以外のメンバーが脱退を発表。2016年シングル「生きたい」を発表後、サポートメンバーを引き連れ5年ぶりとなるツアー「世界平和祈願ツアー2016」を駆け抜ける。

作品情報

銀杏BOYZトリビュート『きれいなひとりぼっちたち』V.A.
2016年12月7日
収録曲
01 漂流教室/YUKI
02 ぽあだむ クボタタケシ REMIX Version I/クボタタケシ
03 夢で逢えたら/麻生久美子
04 あいどんわなだい (Instrumental)/YOUR SONG IS GOOD
05 援助交際/クリープハイプ
06 NO FUTURE NO CRY/サンボマスター
07 なんとなく僕たちは大人になるんだ/安藤裕子
08 夜王子と月の姫/曽我部恵一
09 駆け抜けて性春/ミツメ
10 BABY BABY/sebuhiroko
11 YOU & I VS.THE WORLD/THE COLLECTORS
12 ナイトライダー/GOING UNDER GROUND
13 東京/YO-KING