彼らのルーツだと語る、奥田民生に「全力少年」のプロデュースを依頼したスキマスイッチ

彼らのルーツだと語る、奥田民生に「全力少年」のプロデュースを依頼したスキマスイッチ

 スキマスイッチが11月30日に、通算24枚目のシングル「全力少年 produced by 奥田民生」をリリースする。05年発売のシングル表題曲を自身初の外部プロデュースで制作。そのプロデューサーに奥田民生を招いた。大橋卓弥は「装いも新たに生まれ変わった同曲を楽しんで欲しい」と自信をのぞかせる。今回は、大橋と常田真太郎にインタビューをおこない、リアレンジを通じて奥田民生から学んだことや、前回語っていた例年の活動ルーティンを外したことで得られたことなどについて話を聞いた。

全曲難しかった(笑)

大橋卓弥使用

大橋卓弥

――10月に『COVER LIVE “THE PLAYLIST”』で全曲カバーライブをおこないました。このような企画をやろうと思った経緯は?

大橋卓弥 もともとライブで他の方の楽曲をセットリストに組み込む事があったんです。僕らは2人組なのでバンド形態を組むという事がなかなか無いので、バンドを組んで何かやりたいという話をしていたんです。そこで「カバーばっかりのライブをやったら面白いかな」という事になって、そこから始まったんです。けっこう前の段階からそういう話は2人でしていたのですが。

――それで一からメンバーを集めて?

大橋卓弥 その頃からメンバーは誰がいいかなと話をしていました。

――メンバーの選出基準などはあったのでしょうか?

常田真太郎 吉田佳史さん(TRICERATOPS:Dr)から逆に「何かやらない?」という話があったんです。相当前の話なんですけど。

――満を持して今回の機会を迎えたということですね。

常田真太郎 そうですね。色んな状況が合って。

――アレンジやキーの設定が大変だったのでは?

大橋卓弥 滅茶苦茶大変だったんですよ! 2回しか本番がなかったので、もうちょっとやりたいなとは思ったんです。でも皆忙しいのと、スケジュールの中で会場が空いているという状況が合ったのが2カ所しかなかったんです。本当は10公演とまではいかなくとも、7大都市くらい回れたらいいなと思っていたんですけどね。

常田真太郎 リハーサルも少なかったんです。5人でやる為には全曲アレンジしないといけないので、合宿みたいのをやってあらかじめ方向性を決めました。足りなくて自主的に集まってリハもおこなったり。

――学生バンドのノリみたいですね。特に苦戦した曲はありましたか?

大橋卓弥 全曲難しかった(笑)。

常田真太郎 特にJ-POPがね。

大橋卓弥 J-POPは難しかったね。

常田真太郎 コードが多いというか。自分達の曲でもそうですけど。僕らも周りにこう思われているんだろうなって(笑)。

――日本の曲の特徴かもしれませんね。今井美樹さんの「雨にキッスの花束を」は個人的に世代というのもあり刺さるものがありました。意外と言っては失礼かもしれませんが、スキマスイッチにかなりハマっていた印象でした。

大橋卓弥 あの曲はKANさんが作っているのですが、僕がKANさんの影響を受けているという事もありますし、そういう楽曲は何となく“スキマワールド”にハマりやすいですね。

常田真太郎使用

常田真太郎

――確かに自然な感じで溶け込んでましたね。自分たちの曲かと思うくらい。

大橋卓弥 僕も意識せず普通に歌ったら、ある種スキマっぽく聴こえる部分もあるなと思ったんです。それは影響を受けた人が作った楽曲だからなんだなと思いました。

――洋楽に関しても影響を受けたアーティストからの選曲だったのでしょうか?

大橋卓弥 そうですね。あとは好きな曲です。最近よく聴いていたりした曲とか。2人で制作中に動画サイトとかで「この曲知ってる?」と話しながらよく聴いていた曲などですね。

常田真太郎 選曲は5人でアイディアを出し合ったんです。

――バンドメンバーの選曲で意外な曲はありましたか?

常田真太郎 意外な曲というか、バージョン違いとか、皆さんすごく詳しかったですね。

――「American Pie」がドン・マクリーン(米国のシンガーソングライター)ではなくジョン・メイヤー(編注=現在の世界3大ギタリストとも言われるシンガーソングライター)のバージョンだったりしましたね。

常田真太郎 そうですね。それは卓弥がアイディアを出したんですけど「色んなバージョンがあるね」という感じで選んでいって。

――それは選曲も楽しいですね。個人的にはMaroon5の「Sunday Morning 」も凄くハマっていました。

常田真太郎 やってみたかった曲なんですよね!

大橋卓弥 歌うのは難しかったですけどね。ボーカルのアダム・レヴィーンは凄いです。

常田真太郎 自由に歌うからね。

――今回は割とアメリカンな楽曲が多かったなと思いましたがUKの音楽は聴きますか?

大橋卓弥 けっこう聴きますよ。ビートルズも聴きますし、TRAVIS、Cold Playとか。結構UKは好きですね。雑食で何でも聴きます。HIP HOPも聴きますし。

――最近はどんな音楽を聴きますか?

大橋卓弥 最近はBC Jeanという女性アーティストを。たまたま見つけたんですけど、知らない人多いと思います。

――ライブでもビヨンセの「If I Were A Boy」をBC Jeanバージョンで披露されていましたよね。カバー12曲も一気にやるという事はなかなか無い事だと思いますが、それによって得たものは何かありましたか?

常田真太郎 何と言っても“バンドの楽しさ”です。5人で作り上げていくという感じ。選曲会議から5人なので、なるべくバンドという顔をして欲しかったんです。「スキマスイッチ2人+バックミュージシャン3人」ではないよ、という感じの。ステージの立ち位置も、いつもの感じとは違う風にやらせて頂きました。僕もキーボードをいっぱい置いたりしてシンセも弾いたりしましたしね。全部が別物という新鮮さがありました。「得たものはコレだ!」という具体的なものを挙げる事は難しいんですけど、「いつもと違うもので構築して人前でやらせてもらった」という全く違う感覚で2本のライブを終えました。

――「新たな音楽の楽しさ」のようなものを感じた?

常田真太郎 メジャーデビューしてからバンドを組んだ事がなかったので、そこの部分は本当に大きいですね。

聴いた瞬間に「奥田民生だ!」と感動した

大橋卓弥使用

大橋卓弥

――「2人」と「バンド」ではそれぞれメリットがあると思います。今作の「全力少年」を奥田民生さんがプロデュースした背景は?

常田真太郎 やはり自分達のルーツという部分が大きいです。ユニコーンであり、ソロの奥田民生さんであり、という所が凄く大きいです。「全力少年」という曲の持っていき方を民生さんなら凄く上手く料理して下さるんだろうなと思いました。

――「全力少年」以外も提案されたんですか?

常田真太郎 一応2曲出したんですけど、やっぱり「全力少年」で来るのかなあと何となく思ってはいたんです。

大橋卓弥 民生さんに合うだろうなという僕らの判断で選んだら、「全力少年」という答えを頂いたんです。今年は『POPMAN'S CARNIVAL』というツアーもやったんですけど、そこでもリアレンジをふんだんにするライブだったんです。それもあって「リアレンジものに凝っている年」でもあったんです。オーディエンスの皆と一緒に音楽を楽しむ上で、「こういう音楽の楽しみ方もあるよね」という提案が出来たらいいなと思っていて。ただ、ライブだとオリジナルを聴きたいと思って来て下さる方も多いので、たぶん賛否両論だと思うんですけど…。

――そこは永遠の課題でもあるでしょうね。

大橋卓弥 そうなんですよね。そこのさじ加減だと思うんです。あんまりガラっと変えすぎるのもどうかなと。例えばバラードの曲をアップテンポにしたり、そういうのはやめておこうかとか。そこまで大胆にやっちゃうとさすがに。でも「この曲こういうアレンジにしてもカッコいいな」とか「こういう風だと大人っぽくなるな」とか、その辺の“僕らが音楽で遊ぶ感覚”を、お客さんと一緒に共有できたらいいなという気持ちがあったんです。

 それもあって、「全力少年」を奥田民生さんがプロデュースするとこんな感じになるんだという事をお客さんが感じで楽しんでもらえたら、すごく音楽を楽しむ幅が広がっていいなと思ったんです。

――「こういう風になってくるのだろう」というイメージはありましたか?

大橋卓弥 今回の企画は「この曲を民生さんだったらどういう風に料理しますか?」というオファーの仕方だったんです。歌詞もメロディもテンポも変えていいし、何をやってもいいですよ、と。僕らの中での想像は「民生さんが楽器を全部演奏してやるスタイルだったら嬉しいよね」というものだったんです。そうしたらそれでやってもらえたんですよ。民生さんからのデモが届いて、民生さんが歌っている「全力少年」を聴いた瞬間に「奥田民生だ!」と感動しましたね。

――そのバージョンを聴いてみたいです! ボーナストラックで付けてほしいです。

大橋卓弥 それは僕らしか聴けないというこの特権(笑)。

――バックトラックを聴いただけでも「奥田民生だ」という感じなんですよね。グルーヴから何から。

常田真太郎 そうなんですよね。

大橋卓弥 そこに引っ張られるような感じになりますね。民生さん独特のグルーヴ感があるんです。ギターもそうですし。

常田真太郎 ゆるい感じに聴こえるかもしれませんが、作業は全然ゆるくないんですよ。かなりこだわっているんです。あの感じを出す為に気だるい雰囲気に聴こえるようにしているのかなと思うんです。

常田真太郎使用

常田真太郎

――奥田さんのジャンルというか独特のグルーヴがあるんですよね。奥田さんのコメントに「大橋さんが何回も歌うからやめさせた」とありましたが、それは最初の方のテイクが良かったりするためでしょうか?

大橋卓弥 前日にオケを録って翌日にメインボーカルを録るので、民生さんに「明日ボーカルのディレクションもお願いします」と伝えたら「オィッス!」と仰ってくれたんです。それで当日、僕が1回目を歌ったところまで民生さんは聴いていて、スタジオのコントロールルームから出て行っちゃってしばらく帰ってこなかったんです。

 それで帰ってこられたときに「何かディレクションしてもらえませんか?」と言ったんです。そうしたら「別にそんなのないっすよ…ていうかお前、歌いたいだけだろ!」と言われて(笑)。「いつまで歌ってんだ!」みたいな(笑)。

――普段の歌録りは何度もテイクを重ねるのですか?

大橋卓弥 そうですね。僕はけっこう歌う方だと思います。民生さんは1テイク目を聴いて「これは大丈夫そうだ」と思ったから出て行ったらしいんですけどね。帰ってきたらまだ僕が歌っているものだから「もうええわ!」と言われて(笑)。でも録音の事を見ていない訳ではなくて、もし駄目な時はちゃんと言うんですって。

――では今回は特にアドバイスも無く?

大橋卓弥 アドバイスは一切無かったです。

――これまで何百、何千回と歌われてきた曲だと思いますが、他者の手に委ねた事によって違う曲と思える部分はありましたか?

大橋卓弥 もう違う曲ですよ。民生さんからすると、それこそ何百回も何万回も歌ってきた曲だから、「そりゃ歌えるわ!」と言われて(笑)。そういう言い方だったけど、一応判子を押してもらえたのかなと思いましたね。

――レコーディング現場で民生さんと音楽以外の話などもされましたか?

常田真太郎 もう普通にラーメンの話だったり。

――それでアーティスト写真にラーメンが?

大橋卓弥 そうです。民生さんのレーベルの「ラーメンカレーミュージックレコード」だよね。

――歌詞なのですが、「全力少年」では<世界>という言葉がカタカナで<セカイ>と表現されていますよね。これにはどのような意図が?

常田真太郎 単純に、色んな世界があるね、という話です。いわゆる「世界」と書いちゃうと“地球の世界”みたいな感じになっちゃうし。どの世界でも自分の世界があって、という事をたぶんこだわって。

――その当時?

常田真太郎 若き日の僕らは(笑)。

大橋卓弥 けっこう色んな仕掛けが歌詞にはあって、自分達でも覚えていないのもありますよね。

常田真太郎 カタカナにしているのはカタカナなりに「右へならえのステレオタイプ」で捉えて欲しくないというところでしょうね。

――でしょうねって(笑)

大橋卓弥 フッヘヘヘ! きっと(笑)。

――オリジナルは11年前の曲ですものね。聴いた時に「何て難しい曲なんだろうな」というのが正直な感想ですよ。

常田真太郎 ハハハッ!

――キャッチーなのに難しいという。難しい曲を作ろうと思ったのですか?

大橋卓弥 これは難しい曲を作ろうと思いましたね。「簡単に歌われない曲を作ろう」と言って。それは意地悪をしたいという意味ではなくて、「歌えない所を歌えた時の感動」ですよね。それが楽しめたらいいなと。

“正解”を見せてもらった

大橋卓弥使用

大橋卓弥

――楽器隊のレコーディングはいかがでしたか。

常田真太郎 やり直しというか、何回も聴いて「ここ足りないな」と民生さんが言うんです。それで何をするのかなと思っていたらシンバルを叩き始めたりとか、鳴りモノを探し始めたりとかするんですよ。それで違うとなったらすぐ止めてという感じで。

――現場でトライ&エラーを。

常田真太郎 それが本当にずっと続くんですよ。歌録りが終わった後も続くんです。「まだ何かあるかもしれない」と言って試してみたりとか。そういう姿を見て、やっぱり凄くこだわっているなと思いました。ご自身で楽器を録る時だってもちろんそうですし。そこの部分は本当に勉強になりました。

――そういった事は今後のスキマスイッチの作品に反映される部分もありますか?

常田真太郎 こだわって然るべきなのだなと思いました。

――疑問に思ったらやってみると。

常田真太郎 特に僕らの場合はPC上で再現したものを現場でも再現するという感じの“シミュレート”が主なので、民生さんの場合はデモは打ち込みで作るけど、「それをもとに今日現場で録った音に対して何をするか」という事を大事にされていると感じました。

――空気感やリアリティでしょうか。

常田真太郎 そうですね。それをまたエンジニアさんと一緒に二人三脚でどんどん作りあげていくんです。妥協が無いと言うか、限られた時間でやり切るという。「もういいでしょコレで?」とは言わないんですよ。

――そういうスタンスの方もいるのでしょうか?

常田真太郎 中にはいるかもしれませんね。「何時に終わる」という。

――奥田さんは時間ではなく、納得するまで?

常田真太郎 本当にそうですね。1日目にオケを録って翌日に歌録りでも、その時に何か気になる部分があったらオケの部分をまた考え直すとか。

大橋卓弥 MIXの日ですら「もうちょっとここに何か入れたいんだよね」と言ったりも。

――またマイクをセッティングして録るのですか?

大橋卓弥 録りますね。「低音がもっと欲しい」と言って何か色んなものを叩いていたんですけど、あまりいい音が鳴るものが無かったものだからマイクで「ボンッ! ボフンッ!」と自分で言って音を出していました。

――ボイスパーカッション的な試みを?

大橋卓弥 それも今回入っているんです。とにかく“何か”が聴こえているんでしょうね。それで、「その“何か”を入れないと」という感じなんです。でもそれは、そこに民生さんの口から出た「ボンッ! ボフンッ!」だという事はお客さんには絶対に分からないんですよね。

――確かに今言われてもそれがどこの部分なのかが分かりません。

大橋卓弥 そこがミュージシャンらしいと思うんです。それを見た時に僕らも「先輩の民生さんですらそれをやっているのだから」と思うんです。僕らもこだわって「こんな所、誰も聴いてないな」と、お互い分かっているけど、それは言わないんです。「ここにコレを入れたいよね?」「いいね!」となるんです。「それ、分からなくない?」とはなかなか無いんです。

常田真太郎 「それ要る?」とかは無いよね。「1回やってみようよ」となるんです。それが正解かどうかは誰も教えてくれないので。

――やはり音楽は聴こえていなくても“感じている部分”はあると思います。CDなど容量の問題でカットされる周波数などもありますが、録音の時に入っているといないとでは結果は大きく違うと思います。

常田真太郎 そういう意味でも“正解”を見せてもらったというイメージがありました。

“ゆらぎ”が音楽の面白い要素の一つ

常田真太郎使用

常田真太郎

――カップリングには「ハナツ(premium ver.)」が収録されていますが、これを選曲した理由は?

常田真太郎 やはりリアレンジというテーマ的な所が多いです。去年、高校ラグビーのテーマ曲に使ってもらって、今年も使っていただけることが決まったので、同じものをやるのも何ですし、何かちょっとやってみようというのとリアレンジというテーマがあったという所ですね。

――この曲のアレンジはお2人で?

常田真太郎 そうですね。ストリングスも全部生演奏です。

――ストリングスはいつも生演奏で録音されるのでしょうか?

常田真太郎 いつも基本は生でやります。打ち込みではあまりやらないですね。

大橋卓弥 昔はやっていたけどね。「奏(かなで)」はサンプリング音源で打ち込みです。

――やはり生だと臨場感が大きく違いますよね?

常田真太郎 特にフルオーケストラの規模になるとまるで違うんです。

――ちなみに今回は何人編成で?

常田真太郎 1回で録る人数は少なめではあるんですけど、色々な録り方があるので。

――何回かオーバーダビングして。

常田真太郎 そうです。結果的には30人分くらいですかね。

――相当スケール感が大きくなりましたね。

常田真太郎 そうですね、プレミアムなので(笑)。

――普通のバンド編成とオーケストラ編成では歌い方も変わってきますか?

大橋卓弥 全然違いますね。前に一度フルオーケストラのコンサートをやりましたが、その時は基本的に僕は「ここをこういう風にしたいな」とか「この曲はこういう風にしたいな」とか、「シンタ(常田)君がアレンジする上でこういう気持ちでやって欲しいな」とか、というだけで、僕は歌い手としてそこに存在するようにしようと思っているんです。やはり歌は全然違いますし。

 例えば同じアレンジでもミュージシャンが違えば変わりますしね。もっと言うと、ミュージシャンが同じでも毎日違うのかな? オーケストラになると、その中に僕がどういう風に存在しようかなという事を意識しながら歌うようになるんです。

――ポップスやロックではビートがはっきりしている事と比べて、オーケストラの場合はリズムが流動的と言いますか。そのあたりの兼ね合いはどのように?

大橋卓弥 僕らはライブでもクリックを使ったりしないんです。人間がやる事なのでもちろん“ゆらぎ"があって。逆に言うと、どれだけインテンポで歌おうとしても、僕もどこかしらゆらいでいるはずなんです。その“ゆらぎ”が音楽の面白い要素の一つだと思うんです。だからあまり気にしてはいないですね。今回も「ここ速くなっているな」とか思わないですし、あまりそういう事を考えた事はないですね。

――感じたまま自然に?

大橋卓弥 そうですね。感じたままです。僕がそこにどういう風に乗っかれるかという感じです。例えば一緒に歌も録ったのだとしたら、ミュージシャンが僕に寄り添ってくれる事もあるでしょうし。ただレコーディングの時は順番があって別々に録る事もあるので、そういう時は後に録る人が乗っかっていきますよね。だからクリックというのは一つの基準としてありますけど、あって無いようなものと言いますか、そういう感覚はあります。

一定のグルーヴで一定の人とやり続けるのとはちょっと違う

大橋卓弥

大橋卓弥

――グルーヴに対して何か意識している事はありますか?

常田真太郎 例えば、バンドの人達と僕らの解釈は違うでしょうね。毎回ミュージシャンが変わったりしますし、曲によってもレコーディングでも演奏者が変わったりしますので。同じ速さのクリックでも解釈は違いますね。そういう曲の触れ幅というのも楽しみでもあるんです。一定のグルーヴで一定の人とやり続けるのとはちょっと違うでしょうね。

――良い“ゆらぎ”がある人の方が好きだったり?

常田真太郎 それ故に「この曲はあの人にお願いしようか」という事も生まれるんです。こういうノリで演奏して欲しいという方はいらっしゃいますので。それこそ同じ譜面でもまるで違う演奏になりますし、「これは誰でも同じでしょ」というものを求めるのだったら譜面を全部書きますし、それはよりクラシック音楽に近いかもしれませんね。

 どのオーケストラと一緒にやっても同じ風になるという譜面を作って演奏するというのがクラシカルな方向になると思うんです。そこではない、ジャズやポップスというのはオタマジャクシが書いていない譜面でやっていくという方向になると思うんです。

――インプロビゼーション(即興)という部分があるのですね。

常田真太郎 そうですね。グルーヴの捉え方も人それぞれですし。それを5人なり7人なりで作っていくというグルーヴの捉え方がバンドっぽかったりすると思うんです。「その日限りのバンドのグルーヴ」というのをパッケージしたいなと思っているんです。そこにどう歌が乗るかという。

大橋卓弥 けっこうそこの話をしている段階が大事なのかもしれないですね。海外のミュージシャンのインタビューで、まずクリックという基本の軸があって、例えばBメロ部でドラマーが「走る」とあらかじめ言うらしいんです。それについてきてくれと。そのかわりサビに入ったら1拍目で絶対に合わせるからと言って、わざとBメロを速くしたりする“ゆらぎ”をみんなで打ち合わせるそうなんです。そうする事によって楽曲により躍動感が出たりとか、グルーヴィーになったりするという事だそうなんです。その事前の話し合いをする事で、楽曲に躍動感が出るのでしょうね。

――グルーヴの打ち合わせをしているとは知りませんでした。

大橋卓弥 けっこう細かくしてるようなんです。「ここの2拍目で合わせるから」とか。

常田真太郎 プロデューサーが譜面を見ながらやってるんですよ。

大橋卓弥 逆に言うとクリックが正しいかどうかも僕らは分からないですもの。アナログメトロノームの時代は振り子の原理で打っていた拍が、本当に寸分狂わずに同じテンポを刻んでいるのか分からないです。そう言われているだけで。

――僕もメトロノームなど、アナログで刻むものに関しては正確ではないかもしれないという気もしますね。メトロノームにもグルーヴがある気がします。

大橋卓弥 昔ポンタさん(村上秀一=ドラム奏者)がよく「クリック走ってるなコレ!」と言って(笑)。

常田真太郎 曲のアウトロになると「クリックが遅い!」と言ってヘッドホンを外してしまうドラマーさんもいましたね。「この楽曲にはクリックが遅過ぎる」と。まあ、クリックは一つの基準ですよね。

――グルーヴとは永遠のテーマであり難しいですよね。

大橋卓弥 ゴールは気持ち良ければいいんじゃないですか?(笑)

期待感があって逆にハードルは上がっている

常田真太郎

常田真太郎

――次回作でもプロデューサーを立てるという展望はあるのでしょうか?

大橋卓弥 やはり興味は出てきますね。今回プロデューサーを立ててやって面白かったのは、アーティストでありプロデューサーである方にお願いしたという部分が凄く良かったので。リアレンジやカバーで色々とやって「何かをアレンジしてやる」という所は一つのテーマとしてもっとやって行きたいと思います。もちろん新曲も作りたいですけどね。

――この間のカバーライブでは新曲も作っていると仰っていましたね。

大橋卓弥 作ってます!

常田真太郎 出来つつあります(笑)。

――オリジナルとしては前作「LINE」から約1年とスパンが空いていますが、長いキャリアの中で、新しいものを提示していかなければならないというハードルがあったり?

常田真太郎 むしろそこが自分達を苦しめているからこそ、色々と面白い事もやってみようかというのもちょっとありましたね。

――前回のインタビューで「ルーティンを壊したい」という事を仰っていましたが、今年は正にそうでしたね。

常田真太郎 シングル、アルバム、ツアー、というルーティンではなかったという事から、自分達でも「次は何をやるんだろう」という期待感があって逆にハードルは上がっていますね。そこを新曲に落とし込めるなという事は感じています。

――今年のスキマスイッチは音楽をより一層楽しんでいるという印象がありました。

常田真太郎 そういう風に受け取ってもらえると嬉しいです。そこはリスナーさんも含めて、みんなを巻き込んで作っていってやっと完成するものなのかなと思います。

――次はどのプロデューサーを立てて、という具体的な展望はまだない状態ですか?

常田真太郎 それ、話したい!(笑)

大橋卓弥 ははははは!

常田真太郎 色々と言いたい事はたくさんありますけど、やってはいます。

――それは楽しみです。それでは今回の「全力少年」の新バージョンを聴いて頂けるリスナーにメッセージをお願いします。

大橋卓弥 「全力少年」という曲を聴いた事がない人が、今作を聴いて気に入ったら是非オリジナルも聴いてもらいたいです。オリジナルを聴いた事がある方は今作を聴いて「民生さんがプロデュースしたらこんな風になるんだな」と楽しんでもらえたらと思います。音楽って演奏者などが変わるとこんなにも変わるんだという事をみんなで共有出来たらいいと思うんです。

 「民生さんバージョンの方が好きだ」という方がいると嬉しくなりますし、それは僕らが否定されたと言うよりかは、「やっぱり音楽を一緒に楽しむってこういう事なんだな。音楽って楽しいな」と僕らも思えるんです。聴き比べはもちろんして頂きたいです。民生さんファンの反応はけっこう気になりますね。そこは僕が一番気になる所でして。僕らも実際「民生さんからどんな『全力少年』が上がってくるのかな?」と楽しみにしていましたので、聴いてくださる方も同じ気持ちで楽しんで頂けたらいいなと思います。

常田真太郎 今年ずっとやってきた「リアレンジ」というテーマですけど、そこの部分で原曲との違いを楽しむという事もありますし、ハードルは上がりますけど本当に期待感を持ってもらっていいかなと思います。“POPMAN'S CARNIVAL”というリアレンジを色々施したツアーを経て、何が生まれるのかなというところは「きっとこの流れで来るだろう」という考えが皆違うかもしれないので、その部分を感じでもらえたらなと思います。

(取材・村上順一/撮影・冨田味我)

インタビューカット

作品情報

スキマスイッチNew Single(24th Sg)「全力少年produced by 奥田民生」
11月30日(水)発売~TVアニメ「ALL OUT!!」エンディングテーマ~
「全力少年 produced by 奥田民生」。ジャケットは、TVアニメ「ALL OUT!!」の原作者である雨瀬シオリさんが描き下ろした

「全力少年 produced by 奥田民生」。ジャケットは、TVアニメ「ALL OUT!!」の原作者である雨瀬シオリさんが描き下ろした


期間生産限定盤[CD]:AUCL-217 1300円+税 ※2017年2月末日までの期間生産限定盤
※TVアニメ「ALL OUT!!」原作者・雨瀬シオリ描き下ろしジャケット&デジパック仕様+anime ver.音源収録
▽収録曲
M1.全力少年 produced by 奥田民生 ~TVアニメ「ALL OUT!!」エンディングテーマ~
M2.ハナツ (premium ver.) ~「第96回全国高校ラグビー大会」大会テーマソング~
M3.全力少年 produced by 奥田民生 (anime ver.)
M4.全力少年 produced by 奥田民生 (KARAOKE)
Live Album「スキマスイッチTOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”」
2016年10月26日(水)発売
(1)初回生産限定盤[3CD:Blu-spec CD2×2+Bonus CD]:AUCL-30037~39/3,500円+税
(2)通常盤[2CD]:AUCL-212~213/3,000円+税
※BONUS TRACK:アンコール「サウンドオブ」、東京セミファイナル公演(2016.7.11)のライブ音源「またね。」・「スカーレット」を収録
初回特典(初回生産限定盤のみ)
※高品質CD:Blu-spec CD2仕様
※全国ツアー『スキマスイッチTOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”』から2人の貴重なMCを厳選し収録したボーナスCD 「スキマのはなし(3)」(MC集)を付属
※11月発売の映像作品「スキマスイッチ TOUR 2016“POPMAN’S CARNIVAL”THE MOVIE」(Blu-ray/DVDの初回仕様限定盤)との連動応募抽選特典[応募券]を封入。抽選で100名様に『TOUR 2016“POPMAN’S CARNIVAL”』STAFF Tシャツ<別注カラー/非売品>をプレゼント。
※詳しくは、商品に封入されている応募券を。
▽収録曲(初回生産限定盤/通常盤共通)
All Songs Written , Arranged and Produced by SukimaSwitch
Live at 昭和女子大学 人見記念講堂(2016.7.12)
DISC 1
1.POPMAN’S CARNIVALのテーマ
2.晴ときどき曇
3.LとR
4.飲みに来ないか
5.かけら ほのか
6.時間の止め方
7.1+1
8.僕と傘と日曜日
9.ソングライアー
DISC 2
1.君曜日
2.フレ!フレ!
3.ボクノート
4.LINE
5.ユリーカ
6.パラボラヴァ
7.Ah Yeah!!
8.全力少年
9.ハナツ
BONUS TRACK
-encore-
10.サウンドオブ
11.またね。 Live at 昭和女子大学 人見記念講堂(2016.7.11)
12.スカーレット Live at 昭和女子大学 人見記念講堂(2016.7.11)
BONUS CD(初回生産限定盤のみ)
DISC 3
「スキマのはなし(3)」(MC集)
1.名前は言いませんよ 2.意外と聞こえてるからね 3.不動産やさんの測り方 4.タクヤ生誕祭 5.聞けよ! 6.ハントンライス 7.メンバー紹介 8.ゆうすけくん 9.アフロの話
Live Blu-ray&DVD「スキマスイッチTOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”THE MOVIE」
2016年11月30日(水)発売
Blu-ray:AUXL-31/6,800円0+税│LIVE本編 約154分+特典映像 約22分収録
DVD [2 DISCS]:AUBL-53~54/6,000円+税│ LIVE本編 約154分+特典映像 約22分収録
※BONUS MOVIE:東京ファイナル公演の密着ドキュメント&バックステージ・インタビュー映像、愛知・緑文化小劇場公演(2016.6.9)の「スカーレット」スペシャル映像を収録
初回特典(初回仕様限定盤)のみ。※初回仕様限定盤はなくなり次第、通常盤仕様となる
※スリーブケース+『POPMAN’S CARNIVAL』ツアーロゴ・ワッペン型ステッカー付属
※10月発売のライブCD「スキマスイッチTOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”」(初回生産限定盤)との連動応募
抽選特典[応募ハガキ]を封入。抽選で100名様に『TOUR2016“POPMAN’S CARNIVAL”』STAFF Tシャツ<別注カラー/非売品>をプレゼント。応募締切日:2017年1月27日(金)当日消印有効。※詳しくは商品に封入されている応募ハガキを。
▽収録曲(Blu-ray/DVD共通)
All Songs Written and Produced by SukimaSwitch
Live at 昭和女子大学 人見記念講堂(2016.7.12)
POPMAN’S CARNIVALのテーマ
晴ときどき曇
LとR
飲みに来ないか
かけら ほのか
時間の止め方
1+1
僕と傘と日曜日
ソングライアー
君曜日
フレ!フレ!
ボクノート
LINE
ユリーカ
パラボラヴァ
Ah Yeah!!
全力少年
ハナツ
-encore-
電話キ
デザイナーズマンション
サウンドオブ
BONUS MOVIE
Documentary & Interview
スカーレット Live at 緑文化小劇場(2016.6.9)

ライブ・イベント情報

「毎日がクリスマス2016」
開催日時:2016年12月13日(火)、14日(水)開場18:00/開演19:00
会場:赤レンガ倉庫1号館 3Fホール ○出演:スキマスイッチ、平原綾香(13日)、Aimer(14日)

「COUNTDOWN JAPAN 16/17」
2016年12月28日(水)・29日(木)・30日(金)・31日(土)
会場:幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イベントホール
※スキマスイッチは12月29日(木)13:05~13:45 @GALAXY STAGEに出演
公式サイト http://countdownjapan.jp/

「Daiwa Sakura Aid Dedicate to – gang451- 星屑の隙間に木村基博」
開催日時:2017年2月12日(日)開場17:30/開演18:30 ○会場:大阪城ホール
出演:スターダスト☆レビュー、KAN、スキマスイッチ、秦 基博