トークセッションに参加した日野皓正(右)と柳樂光隆氏(撮影・小池直也)

トークセッションに参加した日野皓正(右)と柳樂光隆氏(撮影・小池直也)

 ジャズ・トランペット奏者の日野皓正が13日、都内で開かれた、映画『ブルーに生まれついて』と『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』の合同試写会トークセッションに登壇した。日野は「お父さんはマイルス」など興味深い発言を数多く残し、会場を盛り上げた。

 今回の試写会は、この年末に公開される、ジャズ映画を取り扱ったもの。『ブルーに生まれついて』は、トランペット奏者のチェット・ベイカーの伝記映画で、彼の愛と悲しみの人生を描いた作品。続く『MILES AHEAD/マイルス・デイヴィス 空白の5年間』は「ジャズの帝王」と呼ばれたマイルス・デイヴィスのストーリー。彼が演奏を引退していた5年間を題材に物語は展開していく。両作ともジャズトランペッターの伝記映画という事もあって、試写会の後に日野のトークセッションが催された。

 日野のトークセッションの聞き役として登場したのは、ユニークな現代ジャズの入門書「Jazz The New Chapter」シリーズの生みの親である柳樂光隆氏。この2人によって映画の内容から、マニアックな音楽話やはたまた全く関係の無いあれこれまで話が展開していった。

 まず、日野は映画の感想について「ジャズを題材にした映画が浮上してくるということは、世界中の文化の低迷に際して、良いなと思いました」とコメントした。

日野皓正(撮影・小池直也)

日野皓正(撮影・小池直也)

 米国での演奏経験も豊富で、マイルス・デイヴィスを親父と呼ぶ日野。これについては「僕のおじいちゃんはサッチモ(ルイ・アームストロング)だし、お父さんはマイルスと、僕の系統はなっている。アメリカの中で、落語界の師匠と弟子で伝わっていくでしょ。『Each one, teach one』という言葉があって、代を追って伝わっていくんですよ」とジャズ流のバトンリレーを解説した。

 さらに「マイルスはインテリジェンスだから、アートについても何についても。時代っていうものを大事にしている。歌舞伎の人たちも古典をやっているんだけど、2016年の歌舞伎を演じていると思っているのね。六代目(尾上)菊五郎さんが台詞を変えちゃったりして、最初は『何だあいつは』と言われてもそれが当たり前になったりする」と述べ、表現の時代性についても言及した。

 また、日野は「年配のお客さんが新しいジャズを求めてくるわけじゃないですか。そうすると『どこまでゴマを擦らなきゃいけないのかな』というのもあるんですよ。でも(自分は)次の時代を作りたいと思っているわけだ。クラシックもそうじゃないですか。新しい時代の物をクリエイトしなきゃということと、(その反面)お客さんは『運命』を聴きに来たりする。そういうギャップはどのアーティストも持っている。たかがジャズ、されどジャズ。そういうところで葛藤はしてますね。一生葛藤すると思うな」とアーティストと観客の関係性についても言及した。

 ドラッグが物語の鍵を握る2つの映画。これについては「僕はドラッグはいらないと思ってるの。禅の坊主が瞑想している時に『庭の草木の葉っぱが息をしているのが見える様になった』って、これ飛んでるよね(笑)。東洋にはそういうものがある。やっちゃ駄目よ」とユーモアを交えながら語った。(取材・小池直也)