ガットギターのみのバッキングで、インプロヴィゼーション風に呼吸を合わせながら情感豊かに歌い上げた「White Lies」。キーボード×2、ガットギター、フォークギター、ベースの編成で披露された「Obsidian」。そして、再びフルバンドに戻って演奏された「Tears Of Asyura」はとても素晴らしかった。哀愁に満ちたメロディを多彩なニュアンスを交えながら表現する歌声、壮大な叙事詩のように迫ってくるサウンドを噛み締めながら、思わず息を呑んで聴き入っていた観客。この曲を歌い終えると、アウトロが続く中、お辞儀をしてステージから一旦姿を消した浜田に対して大きな拍手が贈られていた。

 観客が打ち鳴らすハンドクラップに迎えられながら、ステージに再登場した浜田が身を包んでいたのは真っ赤なドレス。そしてスタートした「Sparks」では、彼女とバンドメンバーたちには内緒のサプライズが待ち構えていた。開演前に全観客にリストバンドが配布されていたのだが、これは無線制御で様々な色彩の光を放つシンクロライト。「Sparks」が始まった瞬間、観客の腕に巻かれていたリストバンドが一斉に赤く輝いた光景は壮観。鮮やかな色彩に染まった空間に轟いたサウンドの心地よさは格別であった。その後もリストバンドのライトの演出を随所で交えながら「Dystopia」「Superior」「Crisis Code」が披露され、観客の盛り上がりは止まるところを知らなかった。

ステージから見た観客席と浜田麻里(撮影・M.キセキ)

ステージから見た観客席と浜田麻里(撮影・M.キセキ)

 終盤で生まれた開放感たっぷりの楽しさも印象深い。1983年にリリースされた1stアルバム『Lunatic Doll』に収録されていた「Lights」のイントロが始まると、浜田は明るく笑顔を輝かせた。観客は激しく拳を突き上げながら興奮を露わにする。この熱気をさらに痛快にエスカレートさせたのが、同じく1stアルバムの収録曲「Tokio Makin' Love」。その後、ハモンドオルガンによる荘厳な幕開けを経てダイナミックに雪崩れ込んだ「Rainbow After A Storm」では、会場全体で掲げられたタオルが勢いよく回転。最高の一体感が生まれていた。

 本編を「Rin」で締めくくると、バンドメンバーたちと共にステージを後にした浜田。彼女を讃える「麻里! 麻里!」というコールとハンドクラップが激しく鳴り響いた。その声に応えたアンコールでは「Historia」「Carpe Diem」「Orion」が披露されたが、観客の興奮は全く収まる気配がなく、ダブルアンコールが行われた。

 まず、このライヴの模様がWOWOWで9月に放送されるということ、追加公演が7月18日に行われる旨を語った後、浜田はバンドメンバーたちを紹介。増崎孝司(G)、藤井陽一(G)、若井望(G)、山田“YOU”友則(B)、増田隆宣(Key)、宮脇“JOE”知史(Dr)、中尾昌史(Key, Mp)、絵里(Cho)……各人に関するエピソードを添えて語る姿からは、深い愛情と信頼が窺われた。メンバーたちも彼女のことが大好きなのだろう。ギタリストの増崎はステージの模様を撮っていたテレビカメラにスマートフォンの画面を向けた。大型スクリーンに映し出されたのは「7月18日は麻里ちゃんの誕生日。みんなでお祝いしよう!」という文字。用意されていたこの粋なメッセージは、浜田にとって一足早い心温まる誕生日プレゼントになったのではないだろうか。

浜田麻里のステージ(撮影・M.キセキ)

浜田麻里のステージ(撮影・M.キセキ)

 早い時期から“音楽”という“mission=天命”に出会えたことが1人の人間として幸せだったのかは分からない……とダブルアンコールのMCで語った浜田。しかし、音楽と歩んだ人生は、多くの無意識の啓示を与えてくれたのだという。「このミッションは、深い人生を歩ませてくれています。ミッションに忠実であり続け、強い覚悟で進もうと思います。みなさん、これからもずっと見守ってください!」、固い意志を感じる言葉を添えて披露された「Fantasia」が実に清々しかった。

 ラストを飾ったのは1985年にリリースされた1stシングルの表題曲「Blue Revolution」。観客の大合唱を身に浴びながら自由に舞い踊るかのように歌い、パワフルに声を響かせていた姿が眩しかった。彼女にとって“音楽”と“歌”がかけがえのない存在であることを、あの輝きは鮮やかに示していたと思う。長年に亘るキャリアを経て改めて浮き彫りとなっているこのミッションと向き合い、浜田麻里はさらにどのような進化を遂げるのか、期待は膨らむばかりだ。(文・田中大)

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