ヒット曲を量産し続けるスキマスイッチ。カップリングは彼らの実験室

スキマスイッチ。カップリングはヒット曲を支える実験室

 スキマスイッチが13日に、ベストアルバム『POPMAN’S ANOTHER WORLD』をリリースする。今作は、2013年にリリースしたオールタイムベスト『POPMAN'S WORLD〜All Time Best 2003-2013〜』と対をなすアナザーベスト。彼らが音楽の“実験室”と呼ぶカップリング曲を中心にまとめた。活動13年のなかで常に人々に寄り添うポップミュージックを提供してきた。「聴いてもらいたい」という想いを胸に、大衆性に寄り添いながらも、歌詞の意味やサウンド、歌い方などに様々な細工を施している。空気の様に当たり前に存在するスキマスイッチの楽曲だが、無意識から意識に変わるように、ふと気づいた時に意識するそれら細工の巧妙さと奥深さ。それこそが彼らの深層であり、それらの本音をかたどるのはカップリングだ。いわば彼らの音楽への追及心“エゴ”はカップリングに体現され、それは大衆性を重んじる表題曲へと繋がる。ポピュラーとマイノリティを通う彼らの音楽。このバランスはどのように保たれているのか。今回は大橋卓弥と常田真太郎の2人に話を聞き、“スキマ音楽”の根幹を支える物の考え方などを探った。

変わった部分と変わらない部分

大橋卓弥

大橋卓弥

――2013年にオールタイムベスト『POPMAN'S WORLD〜All Time Best 2003-2013〜』をリリースされていますが、その対となるベストアルバム『POPMAN’S ANOTHER WORLD』というカップリング集をこの時期にリリースする意図は?

大橋卓弥 「今だから出した」という訳ではないのですが、シングルをたくさんリリースしてきた中で「カップリングベスト」みたいなものも出したいなという思いはありました。「カップリングベスト」という呼び方はあまりしていないんですけど、“アナザーベスト”というか、いわゆるカップリングを集めたものですね。僕らはカップリングを実験室として使っている事が多くて、普段あまりやらない事をカップリングではやっていて。それを集めたものを聴いてもらう事で「表題曲のここにこれが活かされているのかな」とか、そういうものを感じてもらえたらいいなと思っていまして。そういうものを集めたものを出したかったという思いがありました。

 あとはずっとオリジナルアルバムを出してツアーをやって、またシングルを出してオリジナルアルバムを出してツアーをやって、という流れを一度断ち切りたいというのがありまして。やるこちら側もそうなんですけど、お客さんもみんな「アルバムが出たからツアーなんだな、という事はまた新曲を書いているのかな?」と何となく想像がつく事もあるだろうし、そういう流れを一回断ち切って、ちょっといつもとは違うタイミングでツアーをやったりするのもいいなと思って。それで今、これをリリースする事になったんです。

――“断ち切る”という言葉には深い意味が?

大橋卓弥 やっぱりそれをずっと続けてくると、単純に同じルーティンで年間回って行くのも、何か面白くなくなってくるところもありますし、“お客さんが想像してしまう”というのが…。まあ、悪い事ではないんですけどね。何か違う動きをしている所を見てもらいたいなというのもあって。「マンネリ化を避けたい」というのもありますけどね。

――2008年にソロ活動をされていましたが、その頃とはまた違う意味合いでしょうか?

大橋卓弥 その頃とはちょっと違うかもしれないですね。ソロ活動というのは一度してみたいと思っていた一つの企画でもあったんですけど、それ以上に、あのソロ活動はたぶん賛否両論あって「何でこのタイミングなんだろう?」と思った人もたくさんいるでしょうし。でも僕らがあそこでソロ活動をやっていなかったら、スキマスイッチ自体が続いているかどうかもわからなかったと言うか。アルバム3枚出して、ベストアルバム出して、何か一段落してしまったところもあるので。

 ありがたい事に、バタバタといろんなお話を頂いて、それに対して応えなければいけないから、制作過程においてもスピードを上げていくしかない、というのを続けて「ただただ量産していく」ような音楽のやり方をしていくのも嫌でしたし…。あの時、スキマスイッチを活動休止してソロ活動した訳ではないんですけど、「客観的にスキマスイッチというものを見てみたい」と思ったのもあったのでソロ活動を選びましたけど、そういう意味では“流れを断ち切りたい”というのと一緒かもしれないですね。やっている側としては意味合いは少し違うんですけど。

常田真太郎 まだルーティンを語るには早い時期だしね。

――今こうしてカップリング曲を一つのアルバムに収めました。活動13年という長い年月を振り返って何か変わった事はありましたか?

常田真太郎 やっぱり並べて思うのは、大きく2つあって「変わった部分」と「変わらない部分」というのを感じますね。メロディに対する部分だったり、あとはその時にやりたかった事なんか、カップリングには特にそれがダイレクトに反映されているので。頂いたタイアップがあったりする事もありますけど、それがあったらタイアップを意識しながらの作品づくりになるので、“エゴの塊”みたいな曲は減ってきますけど、その分カップリング曲は“エゴの部分”が多いので、そこが出ている分、「変わった部分」と「変わらない部分」がよく出るんですよね。メロディの部分でアプローチに対する部分だったりとか、「ああ、こんな事やりたいと思っていたな」というのは凄く感じますし、それは今でも同じようにやっているなと思います。「変わった部分」としては、“こういうことを当時、凄くやりたくて”というのは、今では当たり前になっている事がいくつかあって。

 もっと言うと、最初は制約をつくった中で音楽をやるのが凄く好きで。エレキギターを使わない、ループを使わない、シンセも使わない、というところで最初は勝負していて徐々に解禁していくっていうのは、結構カップリングから解禁する事が多いんですよ。なので、解禁した後は当たり前になるという風にしたかったんですよ。最初は手狭にした方が作りやすかったというのがあるので、今となってはもう、エレキもシンセもループ、サンプリングですね、それらも今では普通になっているんですけど、そういうのは最初全てカップリングで挑戦してみて、それこそソフトの使い方から挑戦してみるんですね。それで、何となく操作が分かってきたらやってみて、それを2人で判断して「コレだったら音源としてリリースしてもいいね」というところまで上がっていって、その次の制作からは一つの手段として使えるようにする、それまでの大事なプロセスですね。そこは「変わっていった部分」ですね。

――2008年のソロ活動以降のサウンドを聴くと、シンセなども使っているという印象を受けますが、それまで溜め込んできたものを、それを機に出していったという事でしょうか?

常田真太郎 そうですね。やっぱり「やりたくてもやれなかった」という部分もありますし、「あえてやらなかった」という部分もありますし。アナログシンセなんかは「やりたかったけど分からなかった」という。世代的には、音作りはツマミではなくソフトシンセでやる世代だったので、その部分は一回触ってみたかったですね。触ってから、ソフトシンセに反映するという方法で。ただ僕の中で、触るにも勇気がいる感じだし、持ってもいなかったので。一回触ってみてから臨みたかったですね。

――ファンの方は聴き慣れている曲ではあると思うのですが、その中でファンの方に「あえてここを楽しんで欲しい」という想いはありますか? 「僕らの実験のところを楽しんでもらいたい」とか。

大橋卓弥 やっぱり、その実験室で生まれた何かが「あ、ここに活かされているんだな」と繋がってくれると、これをまとめた意味もでてくると思うので。後はシンタくん(常田真太郎)も言った“エゴが強めに出る”カップリングという位置の作品というのは、普段あまりスキマスイッチで想像しないサウンドだったりとか、メロディに関しても、表題曲を作る時よりも自分達が「こういう事をやりたい!」という衝動だけで突き進んでいるところがあるので、そういうところを見てもらう事で、それこそ“ANOTHER WORLD”を見てもらうという、そういう風に感じてもらえたら、僕らの作品の表題曲もアルバム曲も、ちょっと違う聴こえ方がするかと思うので、それは楽しんでもらえたらいいなと思いますね。