匂いを音にする

さユり

さユり

――デモはもっと暗かった?

 多少はアレンジでキラキラしたとは思いますが、割と最初からこんな感じでした。そんなに変わってはいないですね。音の面でいくと明るい暗いというよりは、例えば“誰かが居なくなった”というテーマがあったら、その時の自分の中での匂い(感じ)をいかに音にするかなんです。

――2月24日にリリースされたセカンドシングル「それは小さな光のような」の2曲目の「来世で会おう」はどのような時に作った楽曲ですか。

 私はたくさん後悔をしてきている人間なんですけど、自分の選ばなかった道の先にいる、もう1人の自分というのが良く夢に出てくるんです。月に2回ぐらいなんですけど。そのもう1人の自分の夢を見た後が、愛しいような悲しいようなそういう気持ちなんですよね。選ばなかった道の先の自分には会えないし、そこで出会えたかもしれない人にももう会えなくて。愛しさとか苦しさがあって、その感じを曲にしたくて、それを忘れたくないという気持ちがすごくあって。後悔しているけど、今を生きていきたい、愛していきたいという気持ちがあった。苦しいものは苦しい、ポジティブなものはポジティブなままの気持ちとして、その2つを曲にしたくて作りました。

――例えば同じ道を歩いていても見ている景色が違うことはありますか。雨なのに晴れとか。時代が異なるとか。

 パラレルワールドや妄想が好きなので、そういうのはよく考えますね。その自分の選ばなかった道というのもパラレルワールドで、同じ空間で起こっていると思うんですよね。たまたま私はこのチャンネルにいるというか。

共感を得ている安心感と嬉しさ

――こうして、みなさんから支持されていることについてどう思いますか。

 それはスゴく嬉しいです。中学の時は変わっていると言われていたんですけど、でも私はノーマルな人間だと思うんですよね。みんなが思っていることを、めちゃくちゃ考えているだけなんです。みんなだって後悔することはたくさんあると思うんです。それは共通だと思うから、私はただそれを深く考えすぎてしまうだけなんです。私が思っていることはみんなも思っていることだと思うので、こうやって共感してもらえたということは、ズレてはいなかったんだと安心というか嬉しさがあります。

――音楽活動を初めて、最初はライブハウスでやっておられました。そこから活動の場をストリートライブへと移行されたようですが、その意図は?

 最初ライブハウスでやっている時はほとんど人がいなくて、見てもらえることが少なくて。もっとたくさんの人に聴いてもらいたい!と思って路上にでました。路上ライブは、最初は怖かったけど、とにかく聴いてもらいたいという思いで叫ぶように歌ってました。

――人前で歌おうと思ったきっかけは?

 学校の外で何かやることに、救いや居場所を求めていたんだと思います。

――歌ってみて気持ち良かった?

 最初は2人組のユニットだったので、私は歌ってなかったんですよ。歌いたかったけど歌声に自信がなかったので、自分で作った曲を相方に歌ってもらっていたんです。最初は「みんな聴いてくれている、嬉しい」という感じだったんですけど、だんだん自分で歌いたい欲が出てきて、あるイベントの時に1人で出たんですよ。そこで初めて人前で歌って、やっぱり歌いたいなと思って、1人で歌うようになりました。でも歌って気持ち良いというのはないんです。でも、歌うことは好きで、歌うことが苦手だったからこそ辞められなかったですね。簡単に歌えてしまっていたら趣味というか、ここまでそばになかったと思うんです。辛かったからこそ自分のそばに置いてしまったという部分があるんです。音楽がウェルカムしていたわけではなくて、音楽がいて、そこに私がすがっていたみたいな感じですね。

同期する音楽と心

通常盤「それは小さな光のような」

通常盤「それは小さな光のような」

――さユりさんの魅力なのか、さユりさんの音楽や声に触れると心と心がつながっている感覚になります。心と心が同期すると言いますか、リスナーもきっとそう感じていると思います。

 路上ライブをしていて、ある日思ったのは、肉体って自分と他者を分ける境目だとして、それがスゴくいらないなと思ったんです。ライブをしていて「自分の体消えちゃえ」といいますか、人混みの中に溶け込んでしまえばいいのに、と思ったことがあって。それに近いですかね?

――言葉がなくても分かり合える感覚といいますか。身体は平然を装っているけど、心と心は会話しているような、そんな感覚です。その時の思考が反映されていれば曲調も当然、今後変わっていく可能性もありますよね?

 変わっていくと思います。基本的に今作っている曲は、今までの自分を作ってきた過去を、その匂いを忘れないようにするために作ってる部分もあるので。生きてきた経験で曲は変わっていくと思います。

――過去と向き合えているということは、中学生の頃とかの自分を整理できているということですよね?

 その辺がよくわからないんですけど、私はただ単純に絶望が好きなだけかもしれないですね(笑)。楽しいことは楽しいって言えば伝わるけど、悲しみは言語化できないから音とかにするわけで、過去のことがないと音楽はできないから忘れたくないというのがあって、向き合えているかどうかといったらわからないんですけど。

――ちなみに過去とはどんな匂いだった?

 私は雨が好きで衣装もポンチョだったりするんですけど、雨は自分の中で記憶にあって、雨はその匂いに近いものがありますね。

――雨と言っても夏の雨や冬の雨などいろいろありますが、どれが好きですか。

 う〜ん、全部好きだけどな。車の中にいて、アスファルトが車のライトに照らされていて、そこに雨が落ちていたという風景は記憶にこびり付いていますね。

――表題曲「それは小さな光のような」は梶浦由記さんが作詞作曲されていますが、これまで自分が作ってきた曲との違いは?

 音楽的に言うと、私が使わないコード感とかリズム、それらは全然違うし、スゴく新鮮でした。私は自分の中で考えるのが好きな人間で、自分の弱さを飛び越えて、人に向ける優しさや思いをぶつける曲というのがなかったので、この曲は「君のことを守りたい」という外に向かっている部分が、自分の中にもある思いだけど今まで自分が歌にしてこなかった部分だなと思いました。

――これまでは自分が感じたことや匂いというものを曲にしてきたと思うのですが、作ってもらったものを自分に合わせて歌っていくというのは、また違うと思うのですが。

 これはTVアニメ『僕だけがいない街』(フジテレビ“ノイミタナ”アニメ)の歌なので、その原作があって、元々それに自分を重ねていたので、『僕だけがいない街』をもとにしたこの曲というのは、スっと入っていけたんです。

――「憑依」するという言葉がありますけど、これに関しては自分自身が憑依したという感じですか?

 それはありますね。歌っている時はその作品の匂いとか、悲しみとかというのが体に入ってくる感じはあります。

――今後続けていく上でキーポイントになる楽曲になった?

 そうですね。学ぶことはたくさんありました。

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