日本武道館公演を行った聖飢魔II(撮影・今元秀明)

日本武道館公演を行った聖飢魔II(撮影・今元秀明)

 【ライブレポート】聖飢魔IIが去る19日・20日に、東京・日本武道館で『聖飢魔II ~地球デビュー30周年記念・期間限定再集結 大黒ミサFINAL~ 地球の再審請求』が行われた。

 80年代に、日本のロック・ポップスシーンに彗星のように現れたバンド、聖飢魔II。「悪魔5人衆によるへヴィメタルバンド」というコンセプトは、へヴィメタルというテーマからすればごく自然なものにも感じられるが、あえてマスメディアに「悪魔」というタブーな要素で世にはこびるという、ありえない思想がブレイク。一躍社会現象にまでなった、国内では伝説的ともいえるバンドの一つだ。

撮影・今元秀明

撮影・今元秀明

 今回の大黒ミサ(彼らのステージを指す)は、彼らのデビュー30周年を迎えた記念として昨年8月よりツアーを開始。そしてこのファイナルとして、19日に「控訴」、20日を「上告」と、悪魔らしい「往生際の悪さ」を称えたサブタイトルを命名され行われた。今回の再集結は、デーモン閣下(ボーカル:以下、デーモン)、ライデン湯澤殿下(ドラム:以下、ライデン)、ゼノン石川和尚(ベース、以下ゼノン)、ルーク篁III世参謀(ギター:以下ルーク)、ジェイル大橋代官(ギター:以下、ジェイル)の5人に、サポートキーボードプレーヤーとして怪人松崎様を加えたメンバーにて敢行された。

 この2日の大黒ミサでいよいよ本当にラストとなるという事前談のもと行われたこの公演。今回は、20日に行われたラスト公演より、悪魔というスタイルから彼らが成し遂げようとしたこと、バンドとして彼らが伝えたかったことを、レポートを通じて触れたい。

「審判」の時。彼らの「布教活動」の証しが刻み込まれる

撮影・今元秀明

撮影・今元秀明

 定刻を少し過ぎたころに会場は暗転し、ステージのバックにわずかなライトが当てられ、岩肌のような背景がうっすらと映し出された。そんな不穏な光景の中、会場にはナレーションが流れ始めた。聖飢魔IIの創始者といわれているダミアン浜田によって語られる、悪魔たちの生い立ち、そして今。ダミアンは断言した。今回で再集結は6度目であるが、7度目は無い、と。やがて厳かなシンフォニック・サウンドのSEが会場に流れ始めると、観衆はアリーナから2階席まで全て総立ちとなった。そしていよいよライデン、ゼノン、ジェイル、ルークと「悪魔の構成員」がステージに登場、怒号のような歓声が会場に沸き起こった。そして第一声を打ち込むように上げる4人。その瞬間、観衆、いや信者たちは皆腕を振り上げ、メロイックサインを掲げた。

 「審判」の時は来た。ジェイルがギターを弾き込む。彼らのセカンドアルバム『THE END OF THE CENTURY』のナンバー、「聖飢魔IIミサ曲第II番『創世紀』」。激しくも厳かなハーモニーが、信者たちの気持ちを高ぶらせる。そして勇ましいビートの中、いよいよステージ中央には、デーモンが現れた。そしてけたたましく響く彼の笑い声から、オープニングナンバー「地獄の皇太子」をコールし、大黒ミサの時を迎えた。彼らのファーストアルバム『悪魔が来たりてへヴィメタる』のオープニングナンバーであり、まさしく彼らの原点ともいえるナンバーだ。これぞ大黒ミサ。熱くなる一方の空気に信者たちは歓喜の声を上げ、そしてデーモンを賞賛した。

 そして大黒ミサは「アダムの林檎」「秘密の花園」「MASQUERADE」へと続いた。彼らのサウンドは「へヴィメタル」とカテゴライズされるものだが、この三曲はポップな要素など、かつては日本のこのジャンルでは想像できなかったスタイルやアイデアを積極的にサウンドに取り入れ、彼らならではの個性を作り上げた、その経過が分かるナンバーであり、強く聖飢魔IIらしさを感じるもの。様々な展開を巻き起こしながら、「MASQUERADE」ではジェイルとルークという「悪魔掛かった」超絶ギターのバトルが、さらに猛烈な熱気を巻き起こした。そして続いたのは、「へヴィメタル」という音楽が、まだ日本の世ではマイノリティだった時代に、一躍彼らの名前を知らしめたナンバー「蝋人形の館」へ。エンディングの歌メロを、デーモンと信者たちは高らかに合唱する。やがて演奏も止まった中、アカペラでの大合唱が会場に響いた。その神々しさは、まさしく聖歌を唱歌している姿にも見えた。

 そして、前半のラスト。ジェイルとルークによる合唱メロディの「説法」が行われ、前半ラストナンバー「悪魔組曲 作品666番 変二短調」へと移った。この曲はファーストアルバムに収録されたもので、「序曲:心の叫び」「第一楽章:STORMY NIGHT」「第二楽章:悪魔の穴」「第三楽章:KILL THE KING GHIDRAH」「第四楽章:DEAD SYMPHONY」「終曲:BATTLER」という、へヴィメタルらしい重々しくハードな空気を保ちながら、緩急を付けた小曲6曲から構成されたもの。冒頭の信者の合唱が見事に融合し、「ミサ」という名にふさわしい、激しくも荘厳な時が演出された。

「まだまだ戦うつもりはあるのか?」デーモンは皆に問うた

撮影・今元秀明

撮影・今元秀明

 しばしのインターミッションを終え、再び暗闇の時を迎えた。後半は6/8拍子のリズムからなる、スパニッシュな雰囲気を持ったナンバー「GO AHEAD!」、そしてOVERTUR(序曲)より、豪快に街中を闊歩するような、震えるほどにワクワクするような雰囲気が満載のナンバー「WINNER!」へ。「ヘイ!武道館!第二部へようこそ!楽しむ準備は出来ているか?」信者に語りかけるデーモンと、その言葉に歓声で答える信者たち。続いて聖飢魔IIのまさに「キラー」なナンバー「JACK THE RIPPER」から、疾走するような16ビートナンバー「BRAND NEW SONG」、優しさすら感じられるバラード「BAD AGAIN~美しき反逆者~」、そして燃え盛る炎を、熱い会場に呼び起こした「FIRE AFTER FIRE」と、めまぐるしく変化するサウンドで、6人は信者をさらに魅了した。

 いよいよ迎えたクライマックス。デーモンが改めて会場の者たちに語りかけた。マイノリティの星となり、未来への近道へ導くことを思いとして活動を続けていたこと、彼らがシーンに登場して以降の世の変化。「諸君は、まだまだ戦っていくつもりはあるのか?」彼は、信者にそう問うた。それは30年という長い期間で、彼らがこの地球、日本という国の中で築き上げてきたものを確かめるようでもあった。その言葉に、大きな拍手と歓声で答えた信者たち。そんな人々に、彼は後押しの言葉を掛けた。「早くゆけ!見失わないうちに!」大黒ミサもいよいよ大詰め、そのフレーズを歌うラストナンバー「EL.DORADO」へ。そしてプレーの終了とともに、別れの時がやってきた。信者へのエールとともに、別れの言葉をささげたデーモン。「聖飢魔IIの無いどこかで、また会おう!楽しい時間をありがとう!」そして、舞台背面に設けられた「宇宙への扉」より、彼らは地球を去った。最後にステージ背面に映し出された判決は「死刑」。その決定に、会場の信者たちは大きな拍手を送っていた。

 彼らの常套句ともいえるナンバー「EL.DORADO」で終結を迎えたエンディングは、劇的でもある一方で、私には意外にもあっけなくも感じられた。しかしデーモンの語った言葉や、彼らの考えを考えれば、それはまさしくあるべき姿であったようにも思われた。単にスタイルや楽器のテクニックとしてへヴィメタル音楽を追求していた、彼らはそんなバンドではなかったはずだ。彼が問うた「戦い」という意味、「早くゆけ」と導いたその道の先。聖飢魔IIというバンドが無いこれからの世界で、彼らの訴えたかったこと、それがどんな広がりをこれから持っていくのか?今後はその成り行きを見守ってみたい。(取材・桂 伸也)