怪談というのはこの世とあの世の交流

鈴木研一(Vocal&Bass)

鈴木研一(Vocal&Bass)

――ニューアルバム『怪談 そして死とエロス』で苦労された曲はありましたか

和嶋 苦労したのは「恐怖の大王」ですね。曲自体はうまいことカッコよく出来たんですけど、歌詞の面で苦労しました。曲はダークサイドから光に上がるという内容にしたかったんですよ。だけど、歌詞を書いたらダークサイドだけの恐ろしい曲になってしまいまして、救いがない、聴いた人が嫌な気持ちになる歌になってしまって。歌入れは全部終わっていたんですけど、「これじゃまずい、そのうちライブでやらなくなるだろう」という話になりまして、歌詞を全部書き換えて歌い直したんです。ダークサイドだけどただの怖さじゃなくキャッチーさをつけたいと思って、ノストラダムスを持ってきたんです。これならば皆がちょっと笑ってくれると思うんです。

――「芳一受難」の般若心経パートはどのような経緯で入れられたのでしょうか

鈴木 リフがお経っぽかったし、ここはもうお経だろうと思っちゃったんですよ。和嶋君は仏教学部出身だから良いお経を当ててくれるだろうと思ったし、前にも一曲お経の曲があったから、ここらでまたやりたいなと思ったんです。

和嶋 お経でいきたいって聞いて、これはもう「耳なし芳一」の歌しかないって思いまして、これは悩むこともなくすぐに歌詞は書けましたね。

――お経は何トラックほど重ねているんですか?

鈴木 1人2トラックなので合計6トラックです。(編注=1つのセクションに6人分のお経が重なっている)

和嶋 ライブでやるのが非常に楽しみですね。怪談という怖いアルバムですけど、ここに般若心経を入れることによって、有難いものになったというかお祓いが出来たかな。本当に入れて良かったと思います。

――曲のタイトルはどのタイミングで付けられるのでしょうか

和嶋 曲にもよりますけど、こういうテーマで作りたいと思って作った曲は、作曲が2番(途中)しか出来ていない段階でも「雪女」というタイトルだったり、最初からそのつもりで曲を作って歌詞も書くという流れもありますし、或いはある程度曲が出来上がってから、イメージをふくらませてようやくタイトルがつく場合もあるので、曲によって違いますね。

――アルバムのタイトルのタイミングは?

和嶋 どのアルバムもそうなんですけど、前もって決めるようにしてますね。そうした方がアルバム自体はぶれないというか、散漫にならないんですよ。それに沿ってアレンジを煮詰めて出来たり、全曲揃ってない状態でもコンセプトに沿った感じの曲が作れるので、イメージは大事ですね。

――『怪談 そして死とエロス』のコンセプトは? 特にエロスの部分が興味深いです

和嶋 怪談というのはこの世とあの世の交流なわけですよ。あの世の存在がないと怪談って成り立たないんで。死を意識するから生が浮き上がり、よりリアリティを帯びてくるということで怪談というタイトルをつけました。それだけでは言葉が足りないので、「そして死とエロス」と付けたんです。エロスは生命の側面というか、もちろん生きるということすべてがエロスではないんですけど。エロって言ってしまうと品がないけど、エロスって言うと美しい。観念ということなんだけど、いろんな美しさが持っている、儚さとか。山の景色とか花がなぜ美しいのかというと、生きているからなんですよ。造花は綺麗だけどあまり感動しないわけです。なぜ生きている花を切ったり活けたりするのかというと、やっぱりそこには美しさがあり、その裏に死を感じているわけで。その一瞬の美しさがあるから皆感動する。そこにエロスを垣間見ていると思うんですよね。で、死とエロスを勉強したくてバタイユ(編注=哲学者ジョルジュ・バタイユ)の本を読んだんですけど、分厚い本で挫折しましたね(笑)

――挫折したんですか?

和嶋 まだ途中です(笑)

和嶋慎治(Vocal&Guitar)

和嶋慎治(Vocal&Guitar)

――バタイユの小説から「マダム・エドワルダ」が出てきたんですね

和嶋 そうですね。わかりやすくエドワルダを入れたんです。

――「マダム・エドワルダ」のイントロのベースの上で鳴っている音はギターですか

和嶋 あれはアッパーオクターブファズのオクターブ音を強調するようなセッティングにして、最終的にハモったりしているので8本ぐらい重なっています。ホラー映画のサウンドトラックみたいにしたかったのでヴァイオリンのつもりで入れてみたんです。ベースはチェロのイメージです。

――歪みが掛かっていて極悪サウンドのベースも存在感ありますよね

鈴木 和嶋君が作ったファズ(編駐=歪ませるエフェクター)が掛かっています。ちょっと宣伝しつつ(笑)

和嶋 鈴木君にこれを使ってくださいってお願いして(笑)

――和嶋さんはエフェクターも作られるんですよね。ファズが特に好きなイメージがあるのですが

和嶋 うん、好きですね。歪ませたりすると倍音が異常に出たりして、より心の叫びに近づけるので大好きなんです。

――「菊花の数え唄」のラストには津軽三味線のサウンドが入っていますが、これもギターですよね

和嶋 そう、たまにやるやつですね。弦をつまんでフレットを関係なく弾いていく奏法ですね。

――ナカジマさん作曲の「超能力があったなら」はこれもギターリフからですか

ナカジマ そうですね。一応僕もギターでリフを考えます。基本的に普段からそんなにギターを弾かないのでリフが思いついたら携帯電話に音声を入れて、そこからギターで探って形にします。そして、1小節2小節ぐらいのリフをスタジオで2人に聴いてもらうという感じです。いくつか考えて「これはきっと膨らましたらいい曲になるんじゃないか」とかアドバイスをもらって、家に帰って考えて、またスタジオで聴いてもらって、を繰り返して、紆余曲折して出来たという感じですね。

――けっこう完成まで時間が掛かっているんですね

和嶋 アルバムのハードルが高くなっているので、カッコイイ“上がる”リフじゃないと良いアルバムにならないと思って、やたらダメ出しをしてしまいました(笑)

ナカジマ どの曲もそうですが、アルバム収録曲に、捨て曲という概念は一切ないじゃないですか。だから僕が作ってくるリフも、人間椅子のハードルにそぐわなければダメ、良いものは良いってしっかり言ってくれるんです。で、いくつかリフを持っていったなかで聴いてもらって、更に膨らまして出来た曲が「超能力があったなら」なんです。

――ドラムのリズムパターンから作るというのは?

ナカジマ リズムパターンからというのはやってないですね。

――ナカジマさんの考えたリフがそのまま使われる可能性はどのくらいですか

ナカジマ 確率は高くないです(笑)

和嶋 でも作曲ってそんなものですよ。

――鈴木さんも作曲はギターですか

鈴木 ギターですね。同じくリフを作ってという感じですね。

――「超能力があったなら」の歌詞は和嶋さんの願望でしょうか? それともナカジマさんの願望を代弁してとか?

和嶋 自分自身の願望でもあります。楽曲のビートが効いていて、シンプルで前に進むわかりやすいメロディだったので、わかりやすい言葉で(ナカジマ)ノブの歌声に合う感じで書いたんです。

――サビの「超能力〜♪」の歌詞のはめ方が面白いですよね

和嶋 これは仮歌がそんな感じだったんです。それが凄くカッコ良かったんですよ。

ナカジマ 僕はハミングというよりも“ラララ”とか“ダダダ”で歌うんです。言葉じゃない擬音語みたいな(笑)

――この曲の歌詞はちょっと毛色が違いますよね

和嶋 怪談という平たく言えばオカルト的なところから全曲外しちゃイカンと思って、小泉八雲(作家)的な古い怪談ではなく現代の不思議な話に持っていくとスゴくハマるかなと。それで超能力というテーマがこれは良いと思って。ここでアルバムの空気を変えるという意味もあってライブっぽい流れでもあるよね。

――ナカジマさんは以前所属していたバンドでも歌っていたのですか

ナカジマ この30年ぐらいを紐解くと人間椅子加入以前に2曲ぐらいはありましたけども、ちゃんとバンドでメインを取るというのは人間椅子が初めてですね。

――ライブで歌う時、アニキコールがすごいですよね

ナカジマ あれは凄く嬉しいですね。


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