[写真]ザ・コレクターズ加藤ひさしが語る今(1)

インタビューに応じたザ・コレクターズ加藤ひさし(撮影・紀村了)

 「トニックコードの中で、マイナーセブンスが強調されて聴こえる」。筆者が初めて聴いた、ザ・コレクターズのニューアルバム『言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと』に抱いた印象だった。先に述べた音楽理論のウンチクは敢えて割愛するが、これはかつて古来の音楽理論に対立するかのように発生した、ブルースという音楽の特徴であり、合わせてロックという音楽が生まれ栄えた時に、人々に強い印象を与えたポイントでもある。

 自分の「言いたいこと」を発する時は、必ずしも整った状況でいられるとは限らない。ロックの音は、そのような状態がそのまま音に現れているともいえる。彼らのアルバムは、そんなロックな音で彩られている。人によっては「懐かしい」と感じられる音かもしれないが、この作品が、彼らの新作としてリリースされるのは、そんな雰囲気だけでは済まされない、音にしっかりと裏付けられた「言いたいことを表現する」力が、彼らの作り上げる楽曲、音に存在するからではないだろうか。

 21枚のオリジナル・アルバムをリリースし、2016年に結成30周年、2017年にはデビュー30周年を迎えるロックバンド、ザ・コレクターズ。「重鎮」と呼ばれる存在に近づきつつある彼らだが、近年も変わらずロックフェスなどの大イベントにもコンスタントに参加するなど、積極的な活動を続けている。また、今回のリリースより、かつて日本のロック界でその名をはせ、今年復活を遂げたレーベル「TRIAD」への復帰を果たし、ロックバンドとしての活動意欲をさらにアピールしている。

 ここまで走り続け、そしてさらに未来に向かおうとするザ・コレクターズ。円熟味を増しながら、今もなおアクティブに行動する彼らの原動力とは何なのだろうか? 今回はザ・コレクターズのリーダーであり、ソングライターである加藤ひさしにインタビューを行い、ニューアルバム制作とTRIAD復帰の経緯、そしてこれからの活動に対する思いとともに、彼らの内面に迫ってみた。  【取材・桂 伸也】

言いたいことはたくさんある。それが「Tシャツレボリューション」

――今回リリースされたアルバム『言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと』を聴き、サウンドに「懐かしい」という感覚を覚えました。ザ・ビートルズなどの60~70年代風ロックサウンドというか。最近、この様な感じの音をそれほど聴かないので、逆に新鮮な雰囲気も感じました

加藤ひさし そうですか。俺たちは今までで21枚のアルバムを作ったんですけど、全部こんな感じ。取り立てて今回何がどうこうしたというのはないんですよ。まあそういった意味で「ザ・コレクターズ音頭」みたいなものをやっているだけなんですけどね。

――そういう意味では、バンドの音はかなり完成しているということでしょうか

加藤ひさし そうですね、音という面では、例えばアメリカで流行っているような、ギターバンドの似たような形態で「こういったパワーポップ的なものをやっているバンドの音色にした方が今っぽい」と考えてみるとか、試行錯誤はやってるんですが…何せ30年も活動を続けているバンドなので、そうそう今時の若者には戻れないわけで(笑)。結局はこういうザ・コレクターズの音に仕上がる、という感じですね。

――では、新しい作品を作り上げる工程としては、音よりも詞の方が比重は大きくなるということでしょうか

加藤ひさし そうですね。モデルチェンジしていかなきゃいけない部分は、サウンドよりも歌詞だと思うんですよ。歌詞ってダイレクトにみんなに意味が伝わるし、ありふれた言葉でも使い方によっては、とても斬新に聴こえるし。今の時代って、サウンドメイキングな部分で、楽器の音色なんかが新しいとか新鮮と感じるようなことはもうないと思うんですよ。だから逆に音は、どんな音色を持ってきたところでみんな慣れちゃっていて、新しさは感じないと思う。なので、歌詞の方が、曲を作るよりものすごく大変な作業になる。変な話、曲を変えるのはすごく簡単なんです。それに対して歌詞はストーリー性を持ったものを作るとか、落としどころをどこにするかとか、「これじゃ長すぎる」とか。俳句を作っているようなものですからね。だからいい歌詞ができないと本当に落ち込みますね。でも大変な分、面白い歌詞ができた時には感動がありますし。

――すごくユニークで、ストーリー的な芯の部分がありつつ、言葉の選び方がすごくユニークだと思いました。これまでの作詞・作曲の経験に基づいた、いろんな積み重ねがあってというところなのでしょうか

加藤ひさし そうですね、そりゃもう絶対。実は今、俺はロックバンドの歌詞よりアイドルが歌う曲の歌詞の方が全然面白いと思っているんです。例えば秋元(康)さんの書く歌詞って、やっぱりすごく分かりやすくて明快、落としどころがはっきりしていて、見事だと思うことが度々あるんですよ。その点、文学的といわれる「ロックバンド」みたいなものが、たまに出てくるじゃないですか? そういうのって結局落としどころも何も分からなくて、ただ情景を歌って、何の哲学もねえなって思うことが多いんですよね(笑)。だから今、俺のライバルはAKB48ですよ(笑)。

――確かに、その表現の広さには、影響を受けるに値するものはあるかもしれません。今回のアルバムのタイトルは『言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと』となっていますが、このアルバムを作る上で考えられたことはあるのでしょうか

加藤ひさし そうですね…去年はメンバーチェンジをしているんですよ。23年間一緒にやって来た、2人目のベーシストが抜けて、去年リリースしたアルバムは現ベーシストのJEFF山森が弾いてくれた。それにNHKの「おじゃる丸」というアニメーション番組のエンディングテーマも依頼された。そういう意味では、何となく小さなニュースや話題がザ・コレクターズに集まったんです。ところが今回の29年目のアルバムは、昨年と比べたらタイアップがあるわけでもないし、来年が30周年、30周年ということであればまた取り上げ方も違うかもしれないけど、一番「どうでもいい」アルバムになりそうだったんですよ。だからこそ余計に、ものすごくいい楽曲を入れないとマズいな、と思ってものすごく気合いを入れましたね。

――アルバム制作に関してはコンセプトより、曲ありきでこのタイトルを付けられたのでしょうか

加藤ひさし そうですね。曲が出来上がっていく途中で「Tシャツレボリューション」という曲が出来上がって、それがすごくいいなと思っていたんです。アルバムタイトルにしても分かりやすいし、「自分の言いたいことをTシャツに書いて、街を練り歩け!」って。

――これはそういう意味のナンバーなんですね。Tシャツというのがどうつながるのかと思ったのですが…

加藤ひさし そう。だってみんな、とんでもない意味のメッセージTシャツを着ている人っているじゃないですか? 恥ずかしげもなく着ている姿を見て「とても口じゃ言えないことを、Tシャツは言ってくれるんだ」って。だから最初にこのタイトルがいい、って言ったんだけど、みんなから「TMレボリューションとかぶるからやめた方がいい」って言われて(笑)。で、まあその歌い出しが「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」だったので「じゃあ、こんなのはどう?」と、俺がみんなに提案したら、そっちの方が文学的だ、ということになって。

――それでこちらの方がリードトラックとなったわけですね

加藤ひさし はい。まあ別に「ガリレオ・ガリレイ」でも何でもよかったんですけどね。でも今、世の中が安保法案、原発問題等でざわついているじゃないですか? みんな度々デモ行進をしているし、俺もその中に入ったりしているけど、こんなことってこの数年でなかったことですよね? そんな世相を反映して、すごくタイミングがいいんじゃないかと思ったんです。なかなか一人で言っていると「バカじゃねえの?」って思われる言葉でも、Tシャツ一枚着て行ったら大丈夫! というそんな勇気をみんなに与える曲なので、これは今の日本にピッタリの曲だと思ってそういうアルバムタイトルにしたんです。

――加藤さんからすると「言いたいこと 言えないこと 言いそびれたこと」というものの本質とはどのようなものなのでしょうか? やはり世相のような部分なのでしょうか

加藤ひさし それもそうですし、先程も言ったように、ロックバンドは今、元気がないから、それも言いたい。俺自身がずっと何十年もロックを愛し続けている中で、「ロックバンド風の奴ら」じゃなくてロックバンドがもっと、ちゃんと売れてこなければダメだろうし…。まあ、言いたいことはたくさんあるわけですよ。政治的なところも生活的なことも、ライフスタイル的なこともそれぞれ。それが「Tシャツレボリューション」に集約されているのかな、と思いますね。

――「Tシャツレボリューション」と「ガリレオ・ガリレイ」は割と方向としては近いイメージがあると感じました

加藤ひさし 確かにそれはありますね。ガリレオが言うように、地球は回るわけですから、時代も変わるわけ。例えば未来を変えるのはそういったテクノロジーだけじゃなくて、逆にアニメーションやアイドルとかね。逆に60年代とかじゃ考えられないでしょ? 一方的にザ・ビートルズばかりを押し付けられていた、小さなアジアの国で、今度はアジアのアイドルに欧米人が狂喜乱舞している時代って(笑)。

――激しく共感しますね。考えられない変化です

加藤ひさし でしょ? だからDNAとか、科学的なことじゃなくて、そういうことがどんどん起こっていくのを歌いたかったので、今にしがみついているような連中への警鐘っていうのが「ガリレオ・ガリレイ」。ガリレオも生きている時には、「それでも地球は動く」と言い続けた結果、裁判にまでかけられて。結局周りは信じていなかったじゃないですか? だから今の政治を信じている人だって、30年くらいたったら「ああ、失敗したな」と思うだろうことが今、「分かっているのか、分かっていないのか…」と。そういう曲ですね。

――その2曲の間にある「自分探しの歌」というのは、また何か視点が違うところにあるのではないかと思いました。内面的な視点というか…

加藤ひさし そうですね。いい大人になると、「自分探しの旅」とか出ている奴らって、バカにされるんですよね(笑)。でもやりもしないのにそのことを否定するのって、俺はすごく嫌いで。「自分探し、やってみろよ」と思うんですよ。バカなことだって分かったら、それでいいじゃないか? 結局自分なんて探せないって。でも、それはやってみなきゃ分からない。だから本当にそういうことを言いたい。応援歌ですね。

――歌詞にも「ガンバレ!」とありますもんね

加藤ひさし そう「ガンバレ!」と。同時に「泥水濾(こ)して飲んでみろ」「芋虫焼いて食ってみろ」とね(笑)。

――すごくユニークな表現ですね、これは

加藤ひさし そうですね。だから合わせてこういったものを21枚目で、29年コレクターズをやって、まだまだこういう曲が書ける男がここにいる、ということも言いたかったんです。みんなネタが枯渇すると、オーセンティックでオーソドックスなテーマしか歌っていかなくなるじゃないですか? もうそういう大人もすごく嫌で。面白みに欠けるでしょう? 逆に「うちの父ちゃん、ワニを食ったんだよね」。みたいなオヤジとかいてほしいんです(笑)。たくさんある道の一つをいろんな大人が教えてくれる、そしてそれが最後の曲の「自分メダル」につながるわけ。但し「自分だけの道を最後まで走らないと、光らない」って。

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