(撮影・ヨコマ キミヨ)

(撮影・ヨコマ キミヨ)

 結成11年を超えるハードロックバンドの「快進のICHIGEKI」が5月25日、自身初となる渋谷TSUTAYA O-EASTでのワンマンライブを行った。バンドのキャッチフレーズとして「江戸前四重奏」を名乗り、和的なコスチュームと個性的な楽曲、並外れた演奏とパフォーマンス力で活動を続けていた彼ら。メジャーでの活動はないものの、その存在は広く知れ渡り、近年では往年の日本ハードロック界の大御所にも認められ、メンバー個々にたびたびセッションを繰り広げる機会もあるほどの実力を揃えている。

 その活動規模は年々拡大傾向にあり、昨年は初の渋谷CLUB QUATTROワンマンライブを実施、そして今年はさらに会場を広げ、今回のステージに挑んだ。渋谷TSUTAYA O-EASTほどの、1000人規模のライブハウスは、現時点で彼らが次へのステップとして目指す目標でもあり、彼らの先を見据えた活動の中でも大きなターニングポイントとなる。その節目となるこの日のステージを以下にレポートする。  【桂 伸也】

「明日は来ない。だからこの瞬間、命を燃やせ!」

(撮影・ヨコマ キミヨ)

(撮影・ヨコマ キミヨ)

 定刻。ステージ前に張られた幕に、彼らのこれまでの軌跡を辿ったオフショット映像が流れる。やがてその映像が消えると、会場にはオルゴールのような物悲しい音色が響き、赤い円形の光がスクリーンの上をいくつも浮遊し始めた。その円形は3つとなり、ステージと平行に並び、同時にBGMが途切れた。次の瞬間、ドラムのカウント音に続いて幕が開かれ、いよいよ快進のICHIGEKIがその姿を現した。刹那、フロアから怒号のような歓声が上がり、待ちわびた時間の到来を歓迎していた。

 ステージは、何もかも吹き飛ばしてしまうような猛烈なビートを叩き出すナンバー「ありったけ」でスタート。常に新しいスタイルを模索し続けてる彼らだが、リリースされた最新アルバム『the period』は、彼らの原点回帰ともいえる、終始ハードでへヴィなロックサウンドを前面に押し出したスタイルだ。素の自分をさらけ出すような彼らの姿勢は、そのサウンドだけでなくステージングの中でも強く感じられる。

 この日彼らが見せたコスチュームは、ステージ衣装としてはそれほど派手なものではない、ごく普通のシャツやパンツなどのたぐい。取り立てて奇抜なギミックがあったわけでもない。しかし、そんなシンプルなたたずまいにもかかわらず、彼ら4人がステージに立つと、ステージの広さを感じさせないくらいに、彼らの存在が大きく見える。大きなステージこそ、まさしく彼らのプレーの真骨頂が発揮できる環境だ。オープニングナンバーから容赦なく叩き付けられるキラーチューンの数々に、観衆たちはもはや身をゆだねるしかないといった有様だ。

 「いつも討ち入り(彼らは自身のライブを、こう呼ぶ)で口を酸っぱくして言っているけど、『明日は来ねえよ』って。だから今この瞬間、命を燃やしてほしいんだ!」「渋谷ァ!ぶち上げるぜ!」「お前らの願い、かなえてやるよ!」「その手を、拳に変えろ!」と、ボーカルのコータが観衆に向かって叫び、導いた。彼が曲の中で歌詞として描く世界には、前向きな意思を見せる中で、荒々しくもたくましいイメージが描かれている。この日その意思に同調した観衆は、高鳴るビートに合わせて拳を突き上げ、大きな声を上げてステージをさらに盛り上げた。

皆とのライブこそが「俺のロック」

(撮影・ヨコマ キミヨ)

(撮影・ヨコマ キミヨ)

 中盤では、猛烈な勢いで押しまくった序盤とは対照的に、プレーや曲をしっかりと聴かせるパートが続いた。アルバム未収録の新曲「獣道~Be Myself~」や、彼らの大事なステージでは外せないメロディックなナンバー「四季-喜怒哀楽-」、コータとギタリスト久雄のデュオで情感たっぷりに歌い上げられた「乳母車」、彼らのルーツを深く感じさせるへヴィナンバー「快感すっからかん」「人類デストロイヤー」、その間にはベーシスト潤と、ドラマー佑一のソロタイムも設けられた。快進のICHIGEKIの強靭(じん)なビートを支える2人が、普段は見せない、彼ら自身の内面を表すような貴重なプレーを披露、観衆はより深く彼らの世界観を味わっていた。

 そして、クライマックスを迎えるにあたり、コータは快進のICHIGEKIがこの日を迎えられたことに対する感謝の言葉を、会場の人々に投げかけた。「俺らがよ! お前ら相手に快進のICHIGEKIをやっていること、それこそが俺の人生のロックそのものなんだよ! ありがとうな!」。その言葉に共鳴するように、大きな歓声とともに拳を振り上げた。ひとり一人の観衆に敬意を表す「戦友」というキーワードから作られた曲「戦友協奏曲」より、いよいよステージはクライマックスへ。

「全員、敬礼!」に従い一体感を増す

(撮影・ヨコマ キミヨ)

(撮影・ヨコマ キミヨ)

 プレーが続く中、コータは一度ステージから捌け、今度は3人の男性よりなる騎馬に乗りフロアに登場、そのニクイまでの演出に観衆はまた歓喜の歓声を上げた。「全員、敬礼!」。コータの号令に従うようにフロアの観衆は全員が敬礼し、次の「ピンポンDAマーチ」へとつないだ。

 フロアとステージはより一体感を増しながら「MASAKAレボリューション」へ続き、ラストは彼らのアンセムともいえる「音座芸夢」へ突入。一心不乱にそれぞれの楽器にくらい付き、かき鳴らし続けていた久雄、潤、佑一。その中で、コータは叫ぶように自らの言葉を発し続けていた。

 一番力の入るサビの部分では、もはやメロディも消失しかかっていたが、それがかえって生々しくリアリティのある感情を会場いっぱいに放出し続けていた。そしていよいよ迎えたエンディング。コータがステージから生声で叫んだ。「ありがとうございました!」その感謝の念と共に、彼らはステージをあとにした。

 快進のICHIGEKIがステージを去ったあとには、彼らを呼ぶ声が続いた。「ICHIGEKI!」「ICHIGEKI!」。いつまでも続くと思われたその声の束に引き戻されるように、盛大な拍手に迎えられた久雄がステージに現れた。

 全身全霊をギターとフロアの観衆に集中させ、まるで何かが乗り移ったようなワイルドなギターソロを響かせた久雄。その響きに続けて、彼らが大事にプレーし続けた曲の一つ「共存」へ。まさにそのタイトル通り、会場の全員で「共存」した瞬間。そして厳しい世の中で、明日を生きる勇気を与えてくれる「SHURABA音頭」で、盛大なステージは終わりを迎えた。

 しかし、和やかにステージの記念撮影を行いながらも、まだ飽き足らない観衆の声援に応え、4人は再びステージに現れた。そして、一時はリラックスした雰囲気を一蹴するかのごとく、激しいビートを打ち鳴らす「絶体絶命の愛の結晶」で、セカンドアンコールに応え、すべてを発散するかのように見えたこの日のステージは幕を閉じた。