[写真]縦長シングルでみる音楽メディアの変化【1】

今は懐かしい?8cmシングル。当時はケースに入れて大事に保管していた

 「縦長シングル」「8cmシングルCD」といったフレーズをご存知だろうか。ひょっとしたらその名を聞いた事すら無いという平成生まれ世代なかにはそういう人いるかもしれない。現代ではもはや「化石」とすら言われる録音媒体。「タテに細長いケースに入った8cmサイズのCD」というスタイルでのシングルリリースが、1990年代のJ-Popシーンの主流であり、その縦長シングルCDが100万枚売れる事が珍しくもなかったという時代があった。今考えると信じ難い事実である。

 その後、時代の流れと共に、2000年代あたりからシングルリリースの主流はアルバムサイズ(12cmマキシシングルCD)へと変化し、現在ではインターネットでのダウンロード配信という発展を遂げた。1983年のCD登場、音楽CDでの音源発売開始から著しく変化する「音楽メディアの移り変わり」を、縦長シングルを懐かしみつつ、ややノスタルジックに振り返ってみたい。

もはや化石?縦長8cmシングルとは

 1990年代のシングル盤は、ほぼ「縦長シングル」でのリリースだった。だいたい握り拳くらいのサイズの「8cmシングルCD」。短冊CDという愛称もあったそのジャケットの大きさは、一万円札よりほんの少し大きめのサイズ。二つ折りになったケースを開くと、歌詞が直接書かれた内面と、プラスチックのトレイが貼り付いた面に別れ、そこに8cmCDが収納されている。

 また、中央部には「謎の切れ目」があり、そこをパキッと折るとちょうど半分に割る事が出来るという作りだった。棚などへの収納の際にはけっこう便利という理由で付けられたらしい折り目だが、「折る派」は当時かなりの少数派だった。しかし、半分に折られ正方形サイズの8cmシングルを棚にビッシリと数百枚も敷詰めているその光景は、妙に圧巻であった。

 今では店頭ではほぼ見かけない縦長CDだが、実物を見て確かめたい、という10代の世代の方々もいるかもしれない。その場合は、両親のCD棚などの隅っこを探ってみる事をお勧めする。もしかしたら容易に化石の発掘が出来るかもしれない。今でも現役で活躍するアーティストの「縦長シングル」に出会える可能性もある。

カップリングに隠れた名曲あり

 縦長シングルの内容は、「シングル曲」「カップリング曲」「カラオケバージョン」という3曲で構成される事が多かった。1990年代当時はカラオケブームが浸透しはじめた時期でもあり、シングル盤の最後の曲は、1曲目の歌なしカラオケバージョンというのが殆どであった。

 C/Wと表記される「カップリング曲」。C/Wは「Coupling with」の略称であるといわれる。カップリングはいわばA面、B面の収録曲で言うところの「B面曲」にあたる扱いなのだが、どうもこの「ついで」感のある扱いではあるが、脇役のカップリング曲の方に、実は音楽的に濃い楽曲が隠れている事が多々あった。

 カップリング曲は、シングルタイトル曲である主役のプレッシャー(?)が無いためか、程よく力が抜けていて、ミュージシャンの趣味や背景が色濃く見られるのびのびとした良曲がとても多かった。また、TVやラジオでの宣伝で放送される楽曲はほぼシングルタイトル曲のため、カップリング曲は「シングル盤を買わないと耳に出来ない」といった側面もあり、サブ的な購入欲をそそるちょっとした要素でもあった。

 シングルのカップリング曲は、後に発売されるアルバムには収録されない事が殆どだった。その為、「シングル盤の2曲目でしか聴けない」という事が非常に多かった。更に、「カップリングの名曲っぷり」を打診する様に、カップリング曲ばかりを収録した「B面集」「B-Side盤」がアルバムとしてリリースするアーティストもいる程だ。

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