ベテランアレンジャーによる匠の技

[写真]クマムシ世界デビュー2

完成した英語版「あったかいんだからぁ♪」のジャケット写真

 それもそのはず、アレンジャーは音楽家の十川ともじ(そがわ・ともじ)氏が担当している。十川氏は、CHAGE and ASKAの「SAY YES」や、岡本真夜の「TOMORROW」、Classの「夏の日の1993」などヒット曲のアレンジを多数手掛けている大ベテランだ。

 「あったかいんだからぁ♪」というタイトルからか、アコースティック楽器を全面に押し出した温もりあるサウンドで、シンプルに仕上げられ聴いていて心地が良い。途中からのファンク調になるセクションもアクセントになり、効果的に転調して飽きさせない工夫が施されている。

 また、意外と軽視されがちだが、楽曲のキーもポイントだ。キーは、カラオケにもある音程を上下させる機能だ。楽曲の雰囲気を変えてしまうほど重要な要素で、割と明るいキャッチーな楽曲を作る場合、ハ長調を使用するとより耳に残りやすくなる。

 この楽曲もワンコーラス目は、しっかりそのセオリーを踏まえて制作され、エンディングに向かうまでにドンドン転調し、メロディのループに変化を付けていく手法を使っている。

耳に残るメロディライン

 そして、楽曲の中で最も肝心なメロディも、どこか懐かしさがある旋律となっていて聴き心地が良い。クマムシがアイドルを目指しているというネタの発端からか、どことなく80年代アイドルソングの雰囲気があり、40歳以上の人たちにも受け入れられやすく、若い人たちには新鮮さもある。これも支持されている理由のひとつになっているのだろう。

 この懐かしさというのが非常に重要なファクターになっていて、ノスタルジックにさせる楽曲はヒットしやすい傾向にある。文字通り、3月30日付オリコン週間カラオケランキングでも、お笑い芸人としては猿岩石以来18年振りの1位を獲得した。

ダンスビートを強調した英語バージョンの魅力

 今回配信された英語バージョンは、アコースティックな感じではなくハウス系の「16ビート4つ打ち」を基本にし、ラップも取り入れたカッコいい仕上がりとなっている。4つ打ちとは、ドラムのバスドラムを1小節に4つ打つことからきている。EDMやHOUSEなどダンス系ではビートに乗りやすく、近年ではロック系でも良く使われるアレンジのひとつである。

 「あったかいんだからぁ♪」のカップリングになっている「スーパーキューティクルver.」も同じ4つ打ちのアレンジになっている。同じ楽曲でも4つ打ちのアレンジが入るだけで趣が異なるものとなり、面白い。そこからは、テンポやコード進行などが違うだけで色々な表情が見えてくるのだ。

 カストロさとしが歌う出だしも、誰も聞いたことがあるであろうDAFT PUNK(ダフト・パンク)の「one more time」ようなピッチエフェクトを使い、エレクトロな雰囲気を押し出している。前記の日本語バージョンが素朴さをウリにしているとすると、両極に位置するアレンジになっていて非常に興味深い。

 アレンジを中心に分析したが、どうアレンジされてもこの楽曲のイメージはしっかり残っており、メロディのパンチの強さを改めて感じられる。他の言語やジャズアレンジバージョンなんかも面白そうだ。世界に配信されることによって国外ではどのように評価されるのか、今後のクマムシの動きに注目していきたい。  【上村順二】

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