<音楽評:小室の軌跡で見る音楽シーンの変化>
 2014年4月21日にデビュー30周年を迎えた音楽ユニットがいる。TM NETWORKである。

 TM NETWORKは、前身バンドのSPEEDWAYを経て小室哲哉氏、宇都宮隆氏、木根尚登氏の3人によるユニットとして1984年4月21日に、EPICソニーより『金曜日のライオン』でデビューした。1990年にはTMNに改名し、94年の東京ドーム2Days公演を最後にプロジェクトを終了。そして5年後の99年にTM NETWORKとして再始動した。

 若い世代の人達には“小室哲哉のユニット”と言った方が認識は早いかもしれない。

 前回のコラムで90年代のJ-Popについて触れた。小室氏は90年代半ばにおいて日本で一番知名度の高いプロデューサーであったと思われる。そしてまた、この頃からプロデューサーが表舞台に出てくるようになった。

 有名どころでは、Mr.Chirdrenやレミオロメンを手掛ける小林武史氏、そしてSpeedの伊秩弘将氏などである。筆者の中では当時、この2人に小室氏を加えて3大プロデューサーと呼んでいた。なかでも小室氏には多大な影響を受けた。

 同氏の音楽に触れたのはTM NETOWORKの『Get Wild』。この楽曲は日本テレビ系アニメ『City Hunter』の初代エンディング曲として流れていた。当時小学生だった筆者は幼いながらもこの曲を聴き、衝撃を受けた。

 打ち込み音楽の中にディストーションの効いたギター、シンセサイザーのキャッチーなリフ、そして宇都宮氏の歌―。自分の感性のツボにハマった最初の音楽だった。ちなみにこの時、ギターを弾いていたのはB’zの松本孝弘氏である。

 筆者はギタリストなのだが、小室氏の影響を受けてシンセサイザーも多少は弄(いじ)るようになった。今となってはパソコンで比較的簡単に音を作り出すことができるが、当時はこのサウンドを構築していくのは大変だったと思われる。タンスほどの大きさもあるシンセを何台も用意して音を重ねたり、パソコンとの同期も今より遥かにシビアだった。

 氏自身も「ライブは準備が大変だからあまり好きじゃない」とどこかのテレビ番組で語っていたようだが、これには納得である。それほど、レコーディングした音源をライブで再現するのは簡単ではなかった。

 TM NETWORKの特徴としては打ち込みのシンセ音楽が基本ではあるものの、意外と生の要素も多く取り入れている。件(くだん)の『GetWild』もDrumの音色自体はシンセの音だが、実際にはドラマーが生で叩いたデータをシンセドラムの音に差し替えている。ライブではツインドラムを起用したこともある。打ち込みと生楽器の同居が高次元で成功していたユニットであった。

 また、特筆すべき点はコード進行と転調の仕方にオリジナリティがあったこと。作曲家および編曲家の志望者には一度アナライズしてみると新しい発見があると思われる。前触れもなくいきなり転調してくるので最初はびっくりしたものだ。

 TM NETWORKの楽曲をあまり聞いたことがない人におススメしたいのは『Welcome to the FANKS !』というBestアルバムと『Self Control』、そして『CAROL-A DAY IN A GIRL’S LIFE 1991-』と題した2枚のオリジナルスタジオアルバムだ。特に『CALOR―』はコンセプトアルバムとしても素晴らしいアルバムだと感じている。プログレッシブな1枚である。

 今年4月22日に39thシングル『LOUD』、そしてセルフリプロダクトアルバム『DRESS2』が届けられた。さらに『TM NETWORK 30th 1984~the beginning of the end』と称したツアーは4月26日から始まっている。千秋楽は5月20日の東京国際フォーラム。

 彼らの魅力にハマった我々世代が“TM NETWORKの音”を通じて再び青春を謳歌しようとしている。次回はTM NETWORK後の小室氏のプロデュース時代を深堀してみたい。  【上村順二】