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完全燃焼した9mm(撮影・橋本塁)
 9mm Parabellum Bulleが9日、東京・新木場STUDIO COASで、自主イベント「カオスの百年 vol.7」を開催した。以下レポート。
 あれから1年。あの場にいたすべての人が、いまもなお鮮烈な記憶として脳内に浮かべることができるであろう、2009年9月9日に行われた9mm Parabellum Bullet初の武道館ワンマンライヴ『999(アット ブドウカン)』。
 西暦も含めて9並びという、これ以上ない条件がそろった「キューミリの日」に最高のパフォーマンスをもってシンボリックかつエポックメイキングな音楽空間を創出してみせたあの夜からもう1年。その時の流れの速さに、感慨を覚える人は多いだろう。
 ただ、言わずもがな、9mmにとってあの夜はゴールではなく、新たなフェイズへの突入を告げる巨大な号砲でもあった。この1年のあいだにも数多くのライヴを重ねるなかで、現在進行形でさらなる進化を遂げながら、それを顕在化するための楽曲制作に入魂する。
 その過程において今年4月にリリースした3rdアルバム『Revolutionary』は、全10曲33分のなかで、9mm Parabellum Bulletのロックがもはや“異端の刺激物”から“未曾有の王道”へと昇華していることを証明するような傑作だった。何ものにもとらわれなきリベラルな音楽的感性を息吹かせ、パンク、エモ、メタル、ハードコアから歌謡曲まで、時にはジャズやスカも飲み込み血肉化してみせる9mmの音楽世界。それは、まごうかたなきスタンダードとなった。
 そして、2010年も9月9日はやってきた。今年は新木場STUDIO COASTでインディーズ時代から続いている恒例の自主企画イベント『カオスの百年 vol.7』を開催することになった。さらにこの日は前述の武道館ライヴと2009年を駆け抜けたバンドの姿をあらゆる角度でカメラが捉えた『actIⅡ』、今年6月30日に行われた『Revolutionary Tour 2010』の追加公演である横浜BLITZのライヴと『Revolutionary』のレコーディング映像やオフショットを収めた『act Ⅲ』という超充実の内容を誇るDVDを同時リリース。それぞれ2枚組、計6時間半以上のフルボリュームで9mmの実像を克明に映し出している。
 記念すべきこの日、ゲスト出演として名を連ねたのは、BOOM BOOM SATELLITESとSOIL & “PIMP” SESSIONS。ともに国内だけではなく世界各国の音楽リスナーからも熱狂的な視線を浴びている強者である。イベントは19時にスタート。オーディエンスの期待感が渦巻き、開演前から既に“できあがっていた”ともいえるフロアの熱をさらにSOIL & “PIMP” SESSIONSとBOOM SATELLITESが天上知らずに上昇させ、21時を少し回ったところで満を持して9mmがステージに登場。
 耳をつんざくようなSEとフロアからの地鳴りのような歓声が、メンバー4人を包み込む。「今晩は、9mm Parabellum Bulletです」と卓郎が口を開き、それをはじまりの合図に4人が各楽器の出音を確かめながら音を咆哮させる、刹那的セッション。空間を一気に混沌のものにする、毎度おなじみともいえるこの“儀式”、何度見てもヒロイックな高揚に満ちている。そうして導かれた1曲目は、「Wildpitch」。劇的な展開のなかで、かみじょうの正確無比な速射砲のごときドラミングと地をはってうねるような和彦のベースラインがソリッドなグルーヴを形成し、滝の勇ましく狂い咲くギターフレーズと忘れがたき和メロを紡ぐ卓郎のヴォーカルがダイナミックに浮かび上がる。フロアのオーディエンスはその音塊を全身で浴び、自由なモーションで踊りながら声を上げ、それぞれの熱を放出する。会場全体の温度が一気に上昇していくのがわかる。立て続けに放たれた「Living Dying Message」、「Discommunication」と、イントロが鳴るだけで大歓声が上がり、フロア全体が震えるように揺れ動く。その光景はもう、ひとつの“現象”として痛快だった。
 「『カオスの百年 vol.7』へようこそ。みんなすっかり沸騰しているようだな。いやあ、すばらしいね、今日はね」。この日最初のMCで卓郎がそう言うと、オーディエンスからは、同意を表する大きな拍手。
 「まるで、異国のフェスにいるような、素敵な夜になっていると思います。『actII』を観た人ならわかると思うけど、去年の9月9日に演った因縁のある曲をいまからやりたいと思います」鳴らされたのは、メタリカのカヴァ—「Motorbreath」!
 1年前の武道館、高速ギターフレーズと格闘する滝の手がつってしまうというハプニングが起きたこの曲。ちなみに、このハプニングをきっかけに9mmの折れないバンド・ポテンシャルがあらわになる名シーンが生まれているので、詳細はぜひDVDで確認してほしい。ただ、それでも4人にとってはあれから1年後の今日にふたたびこの曲に挑み、勝ちたかったのだろう。結果は見事、完璧なプレイでリベンジを果たしてみせた。
 この「Motorbreath」の再演も含めて、本編のセットリストはコアなオーディエンスの琴線をかなり刺激するもので、インディーズ盤1st『Gjallarhorn』に収録されている「Beautiful Target」から、最新作『Revolutionary』の楽曲まで、時系列はランダムに新旧幅広い楽曲が紡がれていった。この日強く印象に残ったのは、通好みの選曲もあいまってか、メンバーのプレイがいつもの苛烈さのなかに成熟味を帯びていたことだ。それは、ある種の風格ともいえるもので、なんというか、10年後、20年後もこの4人はこの4人にしか体現できない音楽をデッカい音で鳴り響かせているのだろうな、ということがはっきりと想像できたのだ。9mmのライヴを観てそんなことを思ったのははじめてで、なんだかとても喜ばしい気持ちになった。本編ラストは『Revolutionary』から「Lovecall From The World」を全力で疾駆させ、全11曲を完全燃焼。
 アンコールでは、卓郎が「また来年もよろしくお願いします」と、次の「キューミリの日」にもライヴを行うことを約束。ここまでバイオレントでカオティックに振り切れているサウンドスケープなのに——いや、だからこそ生まれる得がたい多幸感がそこにあった。
 「ありがとうございました! BOOM SATELLITESとSOIL & “PIMP” SESSIONSにも大きな拍手を!」
 いつまでも鳴り止まないギターのフィードバック・ノイズとオーディエンスの拍手が、9mm Parabellum Bulletというバンドの核心を雄弁に物語っていた。